2026年は『ポケットモンスター』シリーズが30周年を迎え、公式からは今後の展開を期待させるアナウンスもされている年です。
では29周年となる2025年は何もなかったのかというとそんなことはなく、シリーズの“新たな挑戦作”と銘打って『Pokémon LEGENDS Z-A(以下、ポケモンZA)』がニンテンドースイッチ/スイッチ2向けにリリースされました。

本作は『ポケモン』本編シリーズお馴染みのターン制バトルの要素を引き継ぎつつ、技にクールタイム・範囲の概念を取り入れたリアルタイム・アクションRPGとして昇華しています。
筆者は何度もバトル系のエンドコンテンツを繰り返し、サイドミッションやポケモン図鑑もコンプリートするほどにまでハマりました。

100点満点とまではいかずとも、欠点を補っても余りある魅力の良作として楽しんだ筆者。同年12月10日にはDLC「M次元ラッシュ」も配信され、初日から徹夜プレイし、1週間以内に追加サイドミッションと図鑑をコンプリートしています。
……したのはいいものの、「期待していたほどでは無かった」という結論に。

本稿ではそんな「M次元ラッシュ」について、ストーリーからシステム面まで“手放しでは褒められなかった部分”から、“ここは評価しておきたい点”を見ていきます。
なお、記事本文の説明はネタバレを出来るだけ抑えつつも、『ポケモンZA』本編クリアを前提にしているほか、掲載のスクリーンショットなどには本編やDLCのストーリー内容が多分に含まれているため、ネタバレにご注意ください。
また、本稿はDLC発売から2026年1月16日時点のゲームをベースに執筆したものとなっております。以降のアップデート等でゲーム内容と差異がある可能性があるため、ご了承ください。
ファンサービスはあったが……設定の甘さが目立つ後日談
さっそくDLCのストーリーについて見ていきたいところですが、その前提として“『ポケモンZA』本編”と、“それに対する筆者の所感”を語っていきます。

まず本作は2013年にニンテンドー3DSで発売された『ポケットモンスター X・Y(以下、ポケモンXY)』と舞台を共有しており、その中でもカロス地方の大都市「ミアレシティ」を中心に物語が展開されます。
時系列としては、同作で起きた事件(以下、フレア団事件)から5年後です。

本編ストーリーではフレア団事件の後始末が “縦軸”、いわば作品を通してのメインストーリーであり、“横軸”として本作初出のキャラクターたちにスポットライトを当てた、1話完結のサイドエピソードを挟んで進行する形式です。

筆者の所感としては、主人公の味方サイド、特に相棒的存在である「ガイ/タウニー」の描写不足は感じつつも、横軸で取り上げられたキャラクターたちについては十分掘り下げられていた印象。
縦軸も『ポケモンXY』ありきとはいえ、事件と因縁のあるキャラクターらのおかげで深みが生まれており、自然な形で「伝説のポケモン」も話に絡ませているため、舞台が「ミアレシティ」という1都市に限られているにもかかわらず、他シリーズ作のような“壮大さ”を感じました。

その上で筆者のDLC「M次元ラッシュ」ストーリーに対する感想ですが、一言で言えば「縦軸が弱かった」でした。
本編は縦軸をフレア団事件、言ってしまえば“『ポケモンXY』の遺産”に頼る形で構築されていましたが、その後を描いたDLCでは、完全にゼロから組み上げた話が展開されます。
フレア団事件を首謀者や間接的な被害者といった様々な観点から描いているのが本編で、「このキャラクター/ポケモンだからこそ、この話が成り立つ」という説得力がありました。しかし、それに対してDLCはキャラクター/ポケモンがストーリーに根差していない、“縦軸とのリンクの弱さ”が気になりました。

たとえばDLCには2つの縦軸があり、ひとつはメインストーリーとして「ミアレシティ」に現れた異次元への“ひずみ”とその先にある「異次元ミアレ」の謎を巡る物語。もうひとつは、その後の話として調査の協力者「アンシャ」のために伝説のポケモン「レックウザ」を追う物語が展開されます。
本編では市から都市再開発を引き受けたハイテク企業「クエーサー社」がフレア団事件の影響で発生していた「暴走メガシンカ」現象を調査、その解決にあたって主人公らに対応を依頼する……という流れがありました(※現象がフレア団事件の影響であった件はストーリー終盤で示唆される)。

DLCでのクエーサー社はというと、「本編の後始末と都市開発で忙しい」という名目で街で起きている異変の調査役を、「サビ組」なる別組織に委託することに。以降DLCストーリーを進めるにあたり、サビ組の事務所が中心拠点のひとつとなります。
このサビ組はいわば極道風の集団であり、本編ではボスの「カラスバ」を中心に横軸で掘り下げられていました。
しかし、“他人と交渉するときに先にポケモンバトルで痛めつけて有利に話を進めようとする”こと、“恩人である若者に金を貸した際、契約書の小さすぎる文章を根拠に法外な利子を請求する”といった、明らかな反社会的しぐさを見せています。
一方で“請け負っている仕事は人助けや街の掃除が中心”であり、“街の危機になれば率先して協力、必要なら自分すらも踏み台にする”という、善か悪か二元論的には片付けられないキャラクターとして描かれていました。

ただ問題なのは、「異変の調査役として最適なのか」という点です。サビ組は人数こそ揃っていますが、テクノロジーを使った解析が得意な描写は本編でもありません。また特筆すべき点として、DLC冒頭でサビ組が「異次元ミアレ」の調査を主人公らに委託する……言ってしまえば、調査の再委託が行われる流れがあります。
一応、特定の異次元の調査に必要なアイテム(調味料)の調達を担っているものの、これだけであればサビ組にしか行えない役割とは言い難いのです。人数による人海戦術や、圧のある交渉術などが明確に活きてくるシーンがあれば良かったものの、事務所から指示する場面が多め。
話をまとめて進行するのであれば、クエーサー社の社長秘書「マスカット」でもできるため、極端な話、“間にサビ組が挟まる意義はあるのか”という問題が出てきます。

また、仮にゲーム外でクエーサー社以外を絡ませなければいけない何らかの事情があったとしても、テクノロジー系解析の観点では一身上の都合で市に協力せざるを得ない、ポケモン研究所の所長代理「モミジ」、また調査専門としては、探偵事務所ハンサムハウスの2代目所長「マチエール」がおり、両者とも本件に関わる十分な立場と動機を持っています。
これらキャラクターと比べると、味方サイドに入れるには結構ダーティな所業を本編で行っており、関わる建前も比較的弱いサビ組は、「DLCストーリーの中心に入れるには若干浮いているかな……」と感じてしまいました。

なお、「ストーリーの中心となったことでサビ組の魅力が深まったか」と問われると、筆者としては首を傾げざるを得ないのが本音。
組織のボス「カラスバ」は特にスクリーンタイム(出番)が多いものの、ストーリーを回すための記号的なやり取りが大半であり、キャラクターとしての魅力は出番が限られていた本編の方が描けていた印象です。

DLCメインストーリーの事件では、“本編中の出来事により能力が暴走したポケモンが発生させた現象だった”というオチが付きますが、本作の登場人物らには当のポケモンと何の関連性もありませんでした。
仮にサビ組をメインに据えるのであれば、カラスバに何らかの形でポケモンとの接点を用意させて、直接的な解決の糸口にするなど、「この人がいなきゃ駄目だったな」と思わせる設定や展開があっても良かったかもしれません。

一方、DLCのもうひとつの縦軸である“伝説のポケモン「レックウザ」を追う物語では、逆に登場した伝説のポケモンたちは「関わる建前は十分あったが、活かせていなかった」と感じました。
この物語には『ポケモン XY』と同じく、「メガシンカ」について描いた『ポケットモンスター オメガルビー・アルファサファイア』からホウエン地方の伝説のポケモンたちが登場します。

『ポケモンZA』本編ではDLCリリース前からNPCやEXサイドミッションという形でメガシンカとホウエン地方の関係について言及されていたため、ここでそれらの掘り下げ、または関連した物語が展開される……のかと思いきや、本当にただレックウザを捕まえるのが目的の話となります。

なお捕獲の背景としては、メインストーリーの協力者だったアンシャが「強いポケモントレーナーである母親に強いポケモンをプレゼントしたい」とのことで、だから「好きな昔話に登場する、異次元で見かけたレックウザを選んだ」というものです。
ゲーム外のメタ的な都合として、“メガシンカのシステムがある以上、それに関連したポケモンを登場させる”というのは理解できます。

ただ、ポケモン世界における“昔話に登場する強い伝説のポケモン”自体はいくらでもおり、せっかく設定レベルで深くメガシンカと関係しているのにもかかわらず、“登場理由が他ポケモンでも替えが効く”のは惜しい部分。
“強いポケモンであることがプレゼントに重要なのか”という問いでアンシャの成長を描いた物語としては成立していたものの、これら伝説のポケモンが「捕獲イベント」として消費されてしまったのは少々もったいないなと思う次第です。

また、DLCストーリーでほかにももったいなく感じた点としては、出番こそ多かったが魅力が描かれていなかったキャラクターとして、主人公の相棒的存在である「ガイ/タウニー」が挙げられます。
本編では肝心な時に限って不在だったり、プレイ次第で緊急時に非合理的な行動を取ったりした結果、一部ユーザーからは反感を買ってしまった側面もありました。

筆者としては“描写不足も反感を買った一因”と考えており、DLCで補完してほしかったものの、蓋を開けてみればストーリー進行のための記号的なやり取りや日常会話、要所のバトル参加こそするけれど、キャラクターとしての成長や深掘りは控えめだった印象です。

特にストーリー最序盤で描かれ、しかし本編では目立たなかった“街中での人助け”が報われている展開は正にキャラクターの掘り下げとして機能していたため、全編この方向性で描かれなかったのが余計に悔やまれます。

一応、DLCのやり込み要素をクリアすると、「俺/私たち良いコンビだったよな」とストーリーを振り返る展開もあるものの、今までの道程の描写不足から筆者としてはあまり感情移入できず、本編含めもう少し上手く描かれていれば……と思った次第です。
総じて、メインストーリーは“一部のキャラクター描写や設定の作り込み”に物足りない部分があり、個人的にクリア時の満足感は本編ほどではありませんでした。

ただし、DLCを通して“異変調査の助っ人”としてメインを張った『ポケモンXY』からの続投キャラクター「コルニ」は、メガシンカに関わる「継承者」という設定など、今回の役回りにピッタリな動機と実力を備えています。
経験豊富なトレーナーとしての貫禄も描写されており、DLCの中で最も上手く魅力が引き出されたキャラクターの1人だと感じました。


さらに、横軸では本編で実現しなかったキャラクター同士の交流が描かれたり、サイドミッションは本編同様にバリエーション豊かだったりと、縦軸を意識せずその場のやり取りを単発のイベントとして見れば、ファンサービスとしては十分に機能していたように思います。
値段を考えると物足りない……本編の延長線上にとどまったゲーム面

ここからはDLCにおけるゲーム面について語っていきますが、「そもそも本編はどうだったのか?」という点も改めて説明します。
『ポケモンZA』のバトルシステムは冒頭で述べた通り、リアルタイムで処理されるクールタイムや位置の概念を取り入れたアクションRPGです。

本編ではこれを踏まえ、シリーズ従来における野生ポケモン/トレーナーとのバトルが街中で展開。これにより、植え込みなどの遮蔽物を活かした奇襲や、相手との高低差・距離を考慮したワザの選択といった戦略性も生まれました。

本編におけるバトル中心のオフラインコンテンツ「ZAロワイヤル」では、夜間にランダムで選出される区画「バトルゾーン」でトレーナーたちを倒したり、戦闘時に「○○タイプの技を~回使う」といったタスクを達成したりして一定のポイントを貯め、ランカーたちへの挑戦権を獲得(ポイントは一度に貯めきれずとも持ち越し可能)していきます。
ランカーたちに勝てば、メインストーリー中であれば話が進み、クリア後なら報酬としてアイテムがもらえる仕様です。


また、形式の変わったバトルとしては「暴走メガシンカ」戦があります。
こちらは隔離された空間で専用の技モーションを備えた大型のNPCポケモンを相手にする、いわばボス戦でした。

一方、他シリーズ同様に「ポケモン図鑑」を主軸としたポケモン収集要素も備えており、特定エリア「ワイルドゾーン」で野生ポケモンを捕まえたり、進化させたりすることで図鑑を埋められます。
なおポケモンたちには性別やサイズに加え、低確率でスポーンする色違いなどの個体差があり、プレイヤー側が自己満足で揃えて楽しむことも可能です。

そして本題のDLCでは、前項のストーリーに絡んだ「異次元ミアレ」を舞台にしたコンテンツが新たに実装。マップにはミアレシティの各所を再編したものが採用されています。
ここでは制限時間内にタスクを達成して一定のポイントを貯めストーリーを進めたり、クリア後はレアな道具やポケモンを手に入れられる「スペシャルサーチ」を実行したりできます。

ポイントは「ZAロワイヤル」と同じで一度に貯めきれずとも持ち越せるものの、課されたタスクを制限時間内に全て達成すると道具を大量に手に入れられる「ボーナスボール」がマップ内に発生するため、効率的なプレイを促してくる仕組みです。

また、異次元ミアレにも種類があります。
トレーナーとバトルを行う「バトル異次元」に加え、特定タイプの野生ポケモンを捕まえられる「ワイルド異次元」や、本編&DLCストーリー中のボス戦を再体験する「暴走メガ再戦」もあるほか、サイドミッションが展開されるものも存在。異次元突入の前準備として、「きのみ」を使って制限時間の延長や様々なバフを得られる「ドーナツ」を作る要素も導入されています。

DLCにおけるメインストーリーとエンドコンテンツの両方を担う異次元ミアレですが、筆者としては新要素としての楽しさより、“プレイフィールの代わり映え無さ”や“作り込みの粗さ”が気になってしまいました。

まず挙げられるのは、“提供された新要素が本編からそこまで逸脱していなかった”という点。
DLCストーリーは“ポイントを貯めて次の展開へ”という本編と同じ進行形式を採っていますが、バトル異次元はZAロワイヤルの焼き回しで、野生ポケモンの捕獲に焦点を当てたワイルド異次元も課されるタスクは単調でバリエーションが少ないです。
さらに、マップである異次元ミアレがミアレシティの使い回しということもあって、本編から続く繰り返しの作業感は拭えません。

エンドコンテンツを担うストーリークリア後のスペシャルサーチでも、前述のポイント貯め作業が必要になりますが、“スペシャルサーチ自体の仕様”も難点です。
スペシャルサーチはレアな道具が貰えるかもしれないバトル異次元、レアな野生ポケモンが登場するワイルド異次元からランダムでひとつ選出される仕様となっており、サーチを再度実施するには一定までポイントの貯め直しが必要です。

具体的なケースとして、ポケモン図鑑のコンプリートを目指す場合、スペシャルサーチでワイルド異次元かつ、望んだレアポケモンが出る種類のものが選ばれるのを祈る必要があるため、運次第では前述のポイント貯め作業を何度も繰り返すことになり、徒労感が大きくなります。

さらに、ポイントのために異次元ミアレへ何度も挑む関係上、その入口である“ひずみ”へのアクセスが悪いのも気になります。
“ひずみ”は通常マップであるミアレシティに発生しますが、マップ上では建物の屋上にあるのか、側面にあるのか、はたまた下の方にあるのかがわかりにくく、筆者のプレイ時には「わかったとしても、どうやってそこまで行くのかわからない」パターンもありました。
もし繰り返し遊ぶことを想定しているのであれば、利便性にもう少し配慮してほしかったところです。

なお、マップに関してはイベント戦で過去作オマージュのマップが登場する機会もあります。異次元設定を活かして、ワイルド異次元やバトル異次元の舞台がミアレシティの外や他地方を再現した場所になれば、少なくとも飽きにくい作りになったのではと思います。

また、ゲームバランス面ではワイルド異次元に対して、バトル異次元のメリットが少ない点も気になりました。例えば両者ともタスクを課される点は同じですが、片や“野生ポケモンの捕獲”、片や“トレーナーとのバトル”とアクティビティ内容に差異があります。
ここで問題となるのが制限時間の存在で、これら異次元ではタスク達成によるポイント獲得とボーナスボールの発生を目指したくなるものの、バトル異次元はプレイヤーの足止めになる要素が多めなのです。

本編から続く仕様として、ワイルド異次元の野生ポケモンは“バトル前でもボールを投げて捕獲可能”、“バトル時は一度に複数相手にできる”、“見つかっても走り抜けて素通りできる”といった、時間効率的に切り詰められるシステムとなっています。

一方、バトル異次元では“相手が複数のポケモンを持っていても1匹ずつ戦わなければいけない”、“メガシンカを使用するトレーナーの場合、戦闘が長引く”、“発見されると一定確率でこちらが少しのあいだ動けなくなる”、“一定距離を離れればバトルから離脱できるが、バトル中は走れないので素通りし難い”など、仕様上どうしても時間がかかるシステムが多めです。
これに拍車をかけるように、ボーナスボール自体の発生地点がランダムという仕様が存在しており、タスク完了後、制限時間内にボーナスボール探しに奔走しようにも前述の仕様の数々が悩みのタネとなります。

一応、バトル異次元だとポケモンの能力向上に必要な道具を手に入れやすいというメリットもありますが、必要分を手に入れた後はあまり旨味がありません(※レアなボールを手に入れることもできますが、ドーナツのバフ次第ではワイルド異次元でも入手可能に)。

このバトル異次元も前述のスペシャルサーチで選出される可能性があるため、ワイルド異次元と比較するとハズレ枠のイメージも否めず、せめて“あえて挑戦するメリット”がもう少しほしかったところです。
おわりに

本記事はこれにて以上となります。総じて筆者個人としては、“『ポケモン』シリーズの新たな挑戦作”のDLCと考えると、「もう少し楽しいものを期待していた」というのが本音。
これが仮に無料アップデートか、低価格のDLCなら受け入れやすいのですが、本編の初代ニンテンドースイッチ版の定価が7,100円(税込/DL版)であったことを考慮すると、その半額に近い3,000円(税込)のDLCとしては、もっと作り込まれているものを遊びたかった気持ちがあります。

ただし、主役とも言えるポケモンたちの観点で見ると、本編の半分以上もの種類や新メガシンカが追加され、ワザのバリエーションも増加しました。
本編から引き続きPvPとして実装されている対戦モード「ランクバトル」を最重視している人や、ポケモンというキャラクターを中心に考えている人であれば、評価が変わってくるかもしれません。
¥900
(価格・在庫状況は記事公開時点のものです)













