8年ぶりとなる『マリオテニス』シリーズの最新作『マリオテニス フィーバー』が発売となりました。『マリオテニス64』から続く、開発元キャメロットの長寿シリーズであり、『マリオゴルフ』シリーズと交互にリリースされるのが定番となっています。
前作『マリオテニス エース』はニンテンドースイッチの盛り上がりもあり、シリーズ最多である450万本以上の売れ行きを見せました。「ねらいうち」と「かそく」による攻守の駆け引きが熱いタイトルとなっていましたが、対照的に『マリオテニス フィーバー』は、はちゃめちゃな効果を持つ「フィーバーラケット」でパーティゲーム的に楽しめる側面が強くなっています。はたしてその変化はどう作用したのか、本作の魅力と問題点の両面をレビューしていきます。
「フィーバーラケット」と充実したゲームモードでよりパーティゲーム的に楽しめる

『マリオテニス フィーバー』の最大のフィーチャーといえば、やはりさまざまな効果を引き起こす「フィーバーラケット」です。フィーバーラケットの種類は豊富で、それぞれ大きく効果のことなる「フィーバーショット」を打つことができます。
相手陣地に炎を撒き散らす「ファイアラケット」や、一定時間使用者と弾が透明になる「おばけラケット」、自身の分身を出現させて強制的に人数有利にしてしまう「シャドウラケット」など、およそテニスとは思えない反則のような技が試合中に飛び交います。

そのうえで、キャラクターもシリーズで最多の参戦。それぞれ性能のことなるキャラクターとラケットの組み合わせでさまざまな戦術が狙えるようになっています。
たとえば、相手をコート奥に押し出すショットを一定時間放てるようになる「オシダシーラケット」と、コース手前に弾を落とすドロップショットをすばやくチャージできる「ノコノコ」の組み合わせはわかりやすくシナジーを感じられました。そのほかにも、ショットが速いものの移動が遅い「パワータイプ」のキャラクターに、弾を拾いやすくする「ダッシュラケット」を合わせるなども相性が良さそうです。


フィーバーラケットという新しいフィーチャーが、ゲーム全体をパーティゲーム的な方向性で統一させることに一役買っているという側面もあります。新たなフィーチャーのほとんどがストイックな駆け引きの方向に向いていた前作『マリオテニス エース』とくらべて、ゲームモードの面でもパーティゲーム的な充実が見られます。
さまざまな効果を持つフィーバーラケットの特性を活かしたミッション形式の「ミッションタワー」モードや、テニスの駆け引きを初心者でもわかりやすく学べる「ストーリーモード」。そして、「スペシャル対戦」モードにあるさまざまな特殊なコートもよりハプニングを呼ぶ楽しい要素となっています。
また、2vs2で戦う「ダブルス」では、試合中に当然フィーバーショットが撃たれる頻度も1vs1の「シングルス」と比べて純粋に2倍になるため、よりはちゃめちゃな対戦が楽しめます。アート面でも、前作のクールな印象から一転、明るく楽しげなコース、UI、エフェクトが採用されている印象です。
新要素は対戦の駆け引きにはあまり貢献していない
一方で、前作『マリオテニスエース』が持っていた高い競技性を思うと、本作のフィーチャーには少し物足りなさを感じることも否めません。「エナジー」というリソースを強力な「ねらいうち」のショットに使うか、敵のねらいうちをブロックする「かそく」に使うかという熱い攻守の駆け引きが前作にはありました。

本作の「フィーバーショット」も、自陣コートに落ちる前に返す「ボレー」をすることで相手に効果を返せるなど、考えなしに撃てばいいわけではないような駆け引きはある程度担保されています。特に、相手陣地に設置攻撃をするようなフィーバーショットは効果をまるごと相手に返すことができるため、ピンチをチャンスに変えた感覚を味わえます。
しかし、逆にいうと、こういった設置タイプのフィーバーショットは“撃つ側”のリスクが大きいということでもあります。十分に本作の仕様を理解しているプレイヤー同士で対戦する場合、純粋に自身の能力を強化するリターンのみが得られる「ダッシュラケット」や「スターラケット」などとくらべて採用する理由がどうしても薄くなってしまうのです。


結果的に、ベースとなるテニス部分の上手さでの勝負となる場面が多くなっており、本作“ならでは”といえる面白さが出にくくなっています。しかし、ベースとなるテニスの駆け引きは『マリオテニス64』の頃からほとんど変わっていない部分であり、『マリオテニス エース』ならではのシステムが駆け引きの面白さに貢献していた前作と比べて、『マリオテニス フィーバー』ならではのシステムが駆け引きの面白さに繋がっていないのは純粋に対戦ゲームとしては退化していると思えます。

任天堂は、2017年から2018年にかけて、『ARMS』や『スプラトゥーン2』、『大乱闘スマッシュブラザーズ SPECIAL』など、“競技”を意識したタイトルを続けてリリースしていました。前作『マリオテニス エース』もそのうちの一つであり、それらのタイトルは公式による大会なども積極的に開催されています。
しかし次第に任天堂による競技重視の動きは落ち着きを見せます。その一方で、パーティゲーム的な需要を満たす『マリオカート8 デラックス』や『スーパーマリオパーティ』などが驚異的な売れ行きを見せ続けていました。
そのため、『マリオテニス フィーバー』がこのようにパーティゲーム的な側面を意識したタイトルになったのは必然かもしれません。間違いなく前作よりも友達と一緒に遊んで盛り上がれるタイトルとして作られており、そのうえでテニスゲームらしい駆け引きもベースの部分では維持されています。
「ストーリーモード」は冗長で薄味なチュートリアル

本作のもう一つのフィーチャーに、「ストーリーモード」があります。ストーリーモード自体は前作『マリオテニス エース』にもあった要素ですが、ステージ選択制で順々にミッションをこなしていく形式でした。
今回は、魔物によって子供の姿にさせられてしまったマリオが「キノコテニスアカデミー」と呼ばれる施設で一からテニスを学び直して魔物を討伐するといったストーリーになっており、フィールドでの自由移動を含め、『マリオテニスGB』のRPG要素を彷彿とさせる内容となっています。
アカデミーのパートは非常に丁寧に『マリオテニス』の遊びを教えてくれるものとなっており、クリアするころにはしっかりと本作の仕様が理解できるはずです。「トップスピン」、「スライス」、「ロブ」などの球種の打ち分け方や、相手の弾が着弾する前に打ち返す「ボレー」、そのほかさまざまなテクニックが『マリオテニス』には存在しており、それらを一つ一つ学んでいきます。

それらを学んで、マリオのステータスを上げていくなかで頻繁に挟まる「ミニゲーム」もあり、『マリオテニス』の操作をベースにさまざまな遊びが盛り込まれています。種類はかなり豊富で、ちょっと『マリオパーティ』とゲームを間違えたかなと思うほどです。こういったチャレンジをこなしていく中で、時折アカデミーの他の生徒との対戦も行うことになります。


アカデミーのパートが終わると、いよいよ魔物討伐へと出発することになります。このパートはミニゲームやボス戦が中心となっており、さまざまなギミックを持つステージや敵を、アカデミーで学んだことを活かして攻略していきます。
しかし、これらのほとんどの遊びは正直にいってきわめて薄味です。特に序盤のアカデミーパートは、敵があまりに弱すぎるために、何も考えずにショットを返すだけの時間が続きます。コート前に出たプレイヤーの動きを読んでロブを撃ってくるといった、強いCPUの動きもこの段階ではほとんどしてこないため、コート前に出てひたすらボレーで弾を打ち返すだけ。

こういった対戦を終え、今度は「7回ドロップショットを撃ってみよう」といったミッションが始まったかと思えば、今度はまた低難度のミニゲームをやらされるという形です。数時間に渡って続くこの虚無の時間を終え、ようやく冒険に出てから登場するボス戦たちはギミックに富むものになっているものの、それでも難易度はきわめて低く、目に楽しいというぐらいしか感慨はありません。
テンポに関しても、フィールドの自由移動があるせいで前作『マリオテニス エース』のストーリーモードよりも悪くなっているくらいであり、特に収集要素があるわけでもないフィールドを移動しては無味なミッションが始まるということの繰り返しが続きます。

また、序盤から存在しているステータスのシステムについても活かされる場面はまったくありません。アカデミー卒業後のボス戦などにおいても、重要なのは敵のギミックに対処できるかどうかしかないため、多少ショットが速くなったりコントロールが良くなったりしても関係がなく、ベビィマリオの学び直しを表すための完全な飾りとなっています。
「ストーリーモード」の無味乾燥さや、駆け引きにあまり貢献していない新システム、動きの硬いキャラクターアニメーションなど、『マリオテニス』シリーズの最新作としてフルプライスで提供するものとしてはこだわりに欠ける部分の多い作品です。
しかし、それでも『マリオテニス』らしいベースとなるテニスの駆け引きについては高い品質で落とし込まれており、同じ腕前同士で緊張感のある試合を楽しめるのは間違いありません。その駆け引きの面白さをだれでもわかりやすく学べる機会も充実しています。そのうえでゲームモードも豊富であり、友達や家族と遊ぶゲームとしては本作は十分に選択肢に入るものになるはずです。

余談ですが、このゲームには他の多くのゲームよりも優れているといえる最大のポイントがあります。それは、「ゲームの起動があまりにも爆速」なこと。ニンテンドースイッチ2のホームメニューからゲーム起動までAボタンを連打している時、メインメニュー表示までのスピードは1秒以下(ニンテンドースイッチ2のロゴが表示されるよりも速い)です。もともとゲームの起動が速いことに定評のあるキャメロット作品ですが、過去最速を更新しています。
Game*Spark レビュー 『マリオテニス フィーバー』 プラットフォーム 2026年2月12日
「フィーバー」だから面白いわけではないが、「テニス」だから面白い
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GOOD
- 充実したゲームモードとルールで誰とでもパーティゲーム的に楽しめる
- フィーバーラケットでよりはちゃめちゃな対戦になる「ダブルス」
- ベースの「テニス」の駆け引きが優れており、同じ腕前同士での対戦が白熱する
BAD
- チュートリアルの域を出ない無味乾燥なストーリーモード
- 前作と比べ、新要素が駆け引きの面白さにあまり貢献していない











