
任天堂を代表するアバターシステムである「Mii」。パーツを組み合わせて誰でも手軽にキャラメイクができる“似顔絵キャラクター”であり、誕生以降、任天堂作品にはたびたび登場してきました。
Miiが初登場したのは2006年に発売されたハード「Wii」の内蔵ソフト『似顔絵チャンネル』ですが、もともとこのシステムは開発中の初代『トモダチコレクション』(当時は「大人のオンナの占い手帳」という名の企画)用に作られたものでした。その発売よりも先に、Wiiの目玉コンテンツの1つとしてお披露目されたのです。
つまるところ、Miiとはもともとは『トモダチコレクション』のために生まれたキャラクターということ。そんなMiiも、近年活躍の場が少なくなってきていましたが、今回満を持して発売したシリーズ最新作『トモダチコレクション わくわく生活』を遊ぶと、あらためてそのキャラクターの特異な魅力に気付かされます。
デジタルで贅沢な“お人形遊び”

『トモダチコレクション わくわく生活』は、さまざまな種類の目、鼻、口や髪型を組み合わせて自由な顔が作れる似顔絵キャラクター「Mii」の生活を観察するゲームです。自分自身はもちろん、家族や友達、有名人やオリジナルキャラクターまで、あらゆる存在をMiiで生み出すことができます。
本作では、Miiの顔や体型だけでなく、一人称や声、性格や性的指向まで、細かく設定が可能。満足のいくMiiが出来上がったら、舞台となる島に住まわせます。


過去作では、基本的に大きなマンションの各部屋にMiiたちが暮らしている形でMiiたちの生活が描かれていましたが、今回はMiiが島の中を自由に歩き回るようになりました。「島づくり」でプレイヤーが置いたオブジェクトを使ったり、Mii同士で交流を行ったり、海に向かってなにやら叫んでいる様子を上から見下ろすように眺めることができます。
もちろん、ただ眺めるだけの体験ではありません。「このMii同士で交流をしてほしい」と思ったら、Miiをつまんで持ち上げて、ほかのMiiのところへ持っていきます。すると、お互いに挨拶をしたり、何やら話題を作って交流をはじめるのです。


Mii同士の関係性が発達すると、「顔見知り」から「友達」になったり、「恋人」になったりします。恋人同士になるため、Miiが「告白」をする時、やたら手の込んださまざまなパターンのイベントが用意されているのも『トモダチコレクション』シリーズならではです。
友達や恋人同士になったMiiは、お互いの呼び方(二人称)も自由に設定できます。そのうえで、なんと相手のことを別のMiiに話す時の呼び方(三人称)まで設定可能。思い描くとおりのロールプレイをMiiたちにさせることに一切の抜かりがありません。

Miiは時折、頭の上にモヤモヤしたフキダシを出していることがあります。「おなかがすきました」と食べ物を要求してくるMiiに「ボルシチ」を与えたり、「ちょいワルな服がほしいです」といってくるMiiに「ヒップホップコーデ」を着せたり、お願い事を叶えてあげます。
このように、Miiをお世話してあげると、時折「レベルアップ」をすることがあります。レベルアップをした際、Miiにはさまざまな贈り物をすることができるのですが、中でも特筆すべきは「プチ個性」という新たな要素。


プチ個性とは、Miiの歩き方や立ち方、ご飯の食べ方や、怒り方、はては寝相の悪さまで、さまざまな個性を与えることができる要素です。たとえば「めんどくさそうに挨拶」というプチ個性をあげると、話しかけた際、そっぽを向きながら手を軽く振るような素振りを見せるようになります。テキストも「ども…」と、なんだかそっけない感じに。
筆者の島には『メトロイド』の主人公サムス・アランを再現したMiiが住んでいるのですが、この「めんどくさそうに挨拶」がなんともマッチしています。
Miiを掴んで動かしたり、ご飯をあげたり、着せ替えたりと、本作はまるでおままごとやお人形遊びのよう。しかし、上述したような細かな設定項目、個性を指定できるシステムによって、より生きた挙動をするMiiたちでのお人形遊びはなんとも贅沢な体験を作り出しています。


そんなお人形遊びに没入できるよう、丁寧に作られたUIも魅力です。たとえば、Miiに服をプレゼントしようとしている時、手持ちに服がなくてもワンボタンで直接服を買いに行けるようになっていたり、Miiを掴んで別のMiiのもとに連れて行く時Mii一覧のメニューを出して瞬時にワープできたりと、さまざまな面で快適に操作可能。
UIの外観も、お店で買った商品の一覧がレシートのように表示されたり、レベルアップ時の報酬選択で画面外からMiiがひょこっと覗き込んできたりと、可愛らしくデザインされています。
「Mii」だからこそ成立するシュールな世界
Miiの初登場から20年。今ではアバターシステムが盛り込まれたゲームというのは珍しいものではありません。任天堂自身、『スプラトゥーン』シリーズや『どうぶつの森』シリーズ、『Nintendo Switch Sports』などで独自のアバターシステムを導入しており、次第にMiiの活躍の機会は少なくなっていきました。


久々の新作である『トモダチコレクション』を触ってみて、あらためて感じるのは、Miiというキャラクターの持つ“とぼけた雰囲気”の特異性です。もともとシュールギャグがコンテンツの中心にあるシリーズですが、これはMiiでなければ成立し得ないものであるとあらためて実感させられます。
『トモダチコレクション わくわく生活』の重要な遊びのひとつに、「Miiに単語を覚えさせる」という要素があります。たとえば、Mii同士が友達になろうとしている時、何の話題を話せばいいかと聞かれたり、「管理人さんが尊敬する人はだれですか?」と質問されたりする中で、さまざまな単語を登録していくのです。

ある時、『スーパーマリオ』のピーチ姫を再現したMiiが、『ゼルダの伝説』のゼルダ姫のMiiと友達になりがたっていました。お互いに一国を治める地位であるため、「帝王学」の話をしたら面白いことになりそうだと単語を登録。ピーチは「私、帝王学をしているときが一番楽しいんです。」と熱弁しますが、ゼルダは「帝王学よりも二度寝の方が楽しいですよ?」とあまり関心を示さず、友達になれませんでした(“二度寝”も別の場面で登録した単語です)。
単語は、「人物」、「モノ」、「何かをすること」、「その他」の4つのジャンルに振り分けることができますが、Miiはそれ以上のことは知りません。そのため、上述したようになんとなく会話の内容が噛み合っていると面白いし、逆にぜんぜん噛み合っていなくてもそれはそれで面白いというなんともズルいシステムです。


これ以外にも、トゥーン調なMiiのアートスタイルと対照的に、ゲーム内の多くのオブジェクトが実写のビルボードになっていたり、支離滅裂なMiiの夢を見させられたり、本作のアイデンティティはシュールギャグこそあるということに自覚的です。
決まったフォーマットのテキストに、ユーザーが登録した任意の単語を当てはめるだけで面白いコンテンツが生成される器の広さ。島で流れるニュース番組「Miiニュース」で、実写の写真の中に無理やりMiiの顔部分だけコラ画像のように当てはめられる、といった自覚的な安っぽさ。こういうギャグセンスはやはりMiiだからこそ成立するもので、『スプラトゥーン』の主人公でも、『どうぶつの森』の主人公でも、この空気には耐えられないように思えます。
『ザ・シムズ』など類似の生活シミュレーションジャンルのゲームと比較しても、最大の相違点はまさしくこのシュールギャグ主体のコンテンツだと思っています。


公式の開発者インタビューである「開発者に訊きました」でも述べられているとおり、これらのギャグがツッコミ不在で行われるということも重要です。どんなMiiを作るにせよ、どんな単語を登録するにせよ、Miiたちはもれなく全員ボケ側に徹しており、この世界にはツッコミ役が現れることはありません。Miiたちのボケにツッコんであげられるのはプレイヤーだけ。手元に「相席食堂」の「ちょっと待てぃ!」ボタンがあったら、はたして何回押していただろうか……。
とはいえ、50時間ほどプレイを続けていると、流石に既視感のあるフォーマットのイベントが増えてきてしまい、イベントスキップを多用する場面も多くなってきました。どのような単語やMiiであってもギャグへと昇華させてしまう上質なテキストとシチュエーションが揃っている反面、イベントの種類はちょっと少なめな印象です。
ペイントツールが優秀な反面、「島づくり」には物足りなさも

Miiをお世話してあげると、ゲーム内通貨のほか、「気持ち玉」という気持ちを物象化した謎のアイテムを入手できます。気持ち玉を、島のシンボルである「願いのふんすい」に捧げることで、Miiの自宅の内装の種類を増やしたり、「島づくり」で使える新たなオブジェクトを買えるようにしたり、新たなプチ個性を解禁したりといったことが可能です。
この「島づくり」を中心に、ユーザー作成でコンテンツを作れるようなデザインになっているのも最新作ならではの特徴。島の地形や建物の場所、草木やオブジェなどを自由に配置して、自分だけの島を作ることができます。


各オブジェクトのテクスチャーや、Miiのフェイスペイントなどを、ゲーム内のペイントツールにて手描きで生成できるという要素も新たに追加されました。
しかも、このペイントツールはゲーム内に搭載されているものとしてはなかなかに高機能。3種類のブラシと、複数の設定項目でさまざまなストロークが表現できます。ブラシを「重ね塗り」設定にすれば厚塗り風に描けたり、範囲選択をして描いたものをあとから移動、拡大縮小、反転ができたりと、使い勝手はかなり良好です。このペイントツールだけでも、スーパーファミコンの『マリオペイント』並に遊べそう。

一方で、絵に自信がないという人でも、ゲーム内で収集したアイテムや、Miiの顔などをスタンプとして貼り付けられる機能を使えば容易にアイテム作成ができます。
上述したとおり、本作の食べ物やアイテムは実写のビルボード、つまり一枚絵で表現されています。そのため、ペイントツールで描いたアイテムとMiiが共存している様子にも違和感がありません。
軽い気持ちで描いた落書きのようなペットをMiiが引き連れていてもそれはそれで面白いですし、気合を入れて描いた食べ物をMiiが食べてくれたらそれはそれでうれしい。


フェイスペイント機能があるおかげで、既存のパーツでは再現できなかった部分にもこだわったキャラメイクをすることができます。たとえば、ヒゲや耳を描いてケモノキャラクターを作ったり、漫画やアニメのキャラクターの特徴的な前髪を再現したりといったことも可能です。
フェイスペイントはあくまで顔の前面に浮いた板のようなものをペイントするだけなので、横から見るとペラペラだったりとある程度の不自由さも。しかし、それが逆に、どれだけ描きこんでも結局はMiiらしいコミカルな外見になってしまうという意味で、本作の雰囲気と調和しているようにも思えます。


一方で、島づくりで使えるオブジェクトの種類が少ないことや、地形編集の不自由さは気になる部分です。特に、似た要素を持つ任天堂タイトルとして比較対象に挙がってくる『あつまれ どうぶつの森』とくらべると、どうしてもオブジェクトの種類は極端に少なく感じます。その分、特定のオブジェクト付近にMiiがいる時に見られる専用のイベントシーンや、オブジェクトへのインタラクションがそれぞれ用意されているようです。
地形編集についても、本作には高低差の概念がほとんどなく、平坦な陸地と、一段下の砂浜だけ。地面の質感も「レンガ」や「石畳」、「土」や「砂」など種類がある反面、グリッド上に配置することしか出来ず、角を丸めて馴染ませたりできないために地面を自然な状態にすることも困難です。


また、ペイントツールで作成できるオブジェクトについても、『あつ森』のように、椅子の座面の布地部分だけペイントできるといった、既存家具のリメイクのような機能はありません。立方体や円錐など、プリミティブな形状ばかりで、テクスチャ側でディテールを詰めるしかないため、ゲーム側で用意された細かに造形された建造物と並べて置くとどうしても浮いた見た目になってしまいます。
◆シェア機能の厳しい制限をどう受け止めるべきか

任天堂は発売前、本作で一部のシェア機能を制限することを発表しました。実際にゲーム内にはネットワーク経由でコンテンツを共有できる要素は実装されておらず、アルバムからスクリーンショットを「Nintendo Switch App」へ送る機能も制限されています。
本作はMiiを使用し、実在の人物やさまざまな著作物のキャラクターなどを再現して、ある種「おもちゃ」のように扱えてしまうゲームです。そのため、遊び方によっては他人を不快にさせるような内容もシェアできてしまう側面があります。昨今のSNSにおける、倫理観の欠如が常態化した現状を鑑みると、この判断には納得できる部分もあるかもしれません。
筆者自身も、本作で実在の著名人を再現して楽しんでいますが、悪意を持てば、彼らを侮辱できてしまうような自由度もこのゲームは内包しています。そうしたゲーム内の出来事が不特定多数に拡散された際の影響は想像に難くありません。

一方で、画面の直撮りや、キャプチャーボードを使用したスクリーンショット・動画の共有は制限されていません。現にYouTubeやXなどのSNS上には様々な投稿が溢れており、今回の制限にどれほどの意味があったのかと疑問に思う部分もあります。
特に問題だと感じるのは、この制限によって、不特定多数への拡散だけでなく、友人との気軽な共有までもが困難になっている点です。必ずしも皆、家族と同居していたり、友達とすぐに会える状況にあるわけではなく、純粋に体験を親しい人と分かち合うハードルまで上がってしまっています。
今回の制限は、任天堂が企業として不適切な遊び方を支持しないという姿勢を表明し、周知する意図もあったのかもしれません。しかし、そのために純粋に友人や家族との交流を楽しみたいユーザーまでもが割を食っているのは、純粋にこのゲームの価値を損なう要因になっているように思います。


ちなみに、本作にはローカル通信で、作ったアイテムやMiiを送りあえる機能が搭載されています。試しに同じく『トモダチコレクション わくわく生活』をプレイしている友人とこのローカル通信を試してみたのですが、驚くほどに快適な作りとなっており、相互にサクサクとアイテムやMiiを送り合うことができました。
しかし、これはローカル通信なため、当然顔を合わせている時にしかできません。後日、新たに作ったアイテムやMiiを共有したいと思ったら、また次会える機会を待つしかないのです。
身近な人とは体験の共有を楽しんでほしい一方で、不特定多数の人にコンテンツがシェアされることに懸念がある、ということであれば、せめてフレンド同士でのオンライン通信はできてもよかったのではないかと思えます。

シェア機能の厳しい制限により、友人や家族と体験を分かち合うハードルが上がってしまっているのはやはり惜しまれる部分です。島づくりで使えるオブジェクトやイベントの種類の乏しさなど、ボリューム面で物足りなさを感じる場面も少なくありません。
一方で、どんなMiiや単語を登録してもギャグへと昇華できる優れたイベント群が揃っていることも事実です。Miiだからこそ描ける「とぼけた雰囲気」や「シュールギャグ」の魅力がぎゅっと詰まっています。
性的指向から三人称まで、細かに設定できる項目によって、Miiたちに理想のロールプレイをさせることにも余念がありません。Miiが島を自律的に歩き回るようになったことや、優れたデザインを持つUIなども、このデジタルなお人形遊びをより贅沢な体験にしています。ほかに代替のない唯一無二の魅力を持つゲームであることは間違いなく、この世界にもっと留まりたいために、さらなるコンテンツと共有機能の改善があれば……と思ってしまいます。
Game*Spark レビュー 『トモダチコレクション わくわく生活』 ニンテンドースイッチ 2026年4月16日
Miiにしかできない「シュールギャグ×お人形遊び」の体験。代替のない唯一無二のゲーム
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GOOD
- 作り込まれたデジタルな空間だからこその贅沢な“お人形遊び”体験
- 「Mii」でしか表現できない、シュールな空気と優れたギャグセンス
- ロールプレイに余念がない細かな設定項目
- 使いやすく活用の幅の広いペイント機能
BAD
- イベントや「島づくり」で使えるオブジェクトのボリュームには少し物足りない部分がある
- シェア機能の厳しい制限のため、不特定多数だけでなく身近な人との体験の共有も困難













