今回は、JayOが開発し2026年3月24日PC(Steam)よりリリースされた、 『No Vacation for an Executioner』のプレイレポートをお届けします。
◆『No Vacation for an Executioner』とは

本作は、17世紀後半を舞台にしたPS2スタイルのサバイバルホラーARPGです。
主人公は不満を抱えた「死刑執行人」で、彼は絞首台から逃げ出したことで、モンスターの大暴動を引き起こしてしまいます。プレイヤーは、この皮肉な惨事を収拾するため、狂気に満ちた世界の真実を突き止めていくことが目的です。

本作最大の特徴は、2000年代初頭のPS2世代のゲームシステムやビジュアル、雰囲気を徹底再現していることです。
たとえば、ひとつは当時の解像度やポリゴン数を意識したレトロなグラフィックで、バロック様式の退廃的な世界を構築するため、画家のズジスワフ・ベクシンスキー、小説家のクロード・クエニなどに影響を受けた、「終末的で幻想的」なイメージが、本作のモンスターデザインや背景美術の核となっています。

また本作は、PS2時代の「不自由さ」をあえて再現したアクションや操作性が特徴的。もっさりとした挙動の操作感と、シビアなタイミングが要求される「パリィ」を軸にした近接戦闘など、容赦ない死にゲー・高難易度寄りの作品です。
『バイオハザード4』『サイレントヒル』にインスパイアされたとのことですが、実際にプレイしてみると、むしろ雰囲気は『ブラボ』、手触りは『ダクソ』に近い印象でした。

ちなみに、本作は日本語未対応ですが、プレイそのものに問題はありません。17世紀を舞台にしているため、専門的な用語が出てくるのでストーリーを完璧に理解するには、それなりの英語力は必要になりますが…。
操作方法は、キーボード&マウスおよびパッドコントローラーに対応。筆者はXboxコントローラーを使用しました。オプションは、画面の明るさやグラフィックスタイル(PS2風・PS1風・フィルターなし)などを設定可能で、そのほかに、コントローラー感度やサウンドといった項目をカスタマイズできます。
◆17世紀後半の処刑人となって、退廃世界で生き残れ

それでは本編開始。スタート画面は、こんな感じでニューゲーム、コンティニューなど基本的なメニューにアクセスできます。


物語は、「仕事に嫌気が差して逃げ出した処刑人」という皮肉な設定から始まります。プレイヤー扮する主人公は、絞首台から逃げ出したことをきっかけに、世界は怪物が跋扈(ばっこ)する狂った場所へと変貌してしまいます。
自分が引き起こした混乱を片付けるため、主人公は再び武器を取り、この狂った世界の根源にある謎の物質「不気味な油(Gloomy Oil)」の真実を追うことになるのです。

本作は、その独特としか言えないアートワークも特徴的で、半分がイラスト風のスケッチ(素描)と半分がリアルなレンダリングを融合した独自の世界観をもっています。
見ての通り、全体的に暗く視認性も悪く合わない人にはとことん合わないかもしれませんが、この奇妙で尖った作風こそ古き良きPS2ゲームっぽさがあるため、好きなプレイヤーにはとことん刺さるんじゃないでしょうか。

さて、次は操作方法を見ていきます。本作はPS2時代の「不自由な操作感」をあえて再現しているため、現代の洗練されたゲームとは少し異なり、とにかくクセが強く快適性が一切無いとはっきり言っておきましょう。慣れないうちは、ボタン入力後に少し遅れてくるような、もっさりとした感覚にイライラしてしまうかもしれません。
操作はゲームパッドがおすすめ。基本的な操作一覧はこんな感じです。
移動:左スティック
カメラ操作::右スティック
近接攻撃/銃撃:RBボタン
パリィ/スタブ:Yボタン
インタラクト(拾う・調べる): Bボタン
走る: LBボタン
エイム(銃装備時):LTボタン
しゃがむ/キャンセル:Aボタン
ショートカットスロット:RTボタン長押し+それぞれの十字キー


上記の操作を頭に叩き込み進んでいくと、敵と初遭遇し戦闘に入ります。道端には不気味なカラスがおり、アイテムをショートカットスロットに装備する方法や、戦闘のやりかたなどさまざまなチュートリアルを教えてくれます。

本作のバトルは、斧や剣などの武器を使った近接攻撃主体の戦闘システムです。操作感の重さもあり、スタミナ管理や敵との距離感など、「立ち回り」が重要となってきます。
RBボタンで武器を構えて斬りつけていきますが、一振りごとに大きな隙ができるため(途中キャンセル不可)、敵の攻撃を誘って、後出しで確実に当てる「差し返し」を意識しながら、ヒット&ランで確実に倒すことがコツです。
また、雑魚敵でもHPがそこそこ高いので、通常攻撃「のみ」で敵をやっつけるのは中々難しい状況下にあります。

そこで役立つのが「パリィ」です。本作でのパリィ(弾き)も、いわゆるソウルライクゲームと同じ性能ですが、独特なのはパリィ可能な瞬間に「サイン」が表示される仕組みになっており、そのタイミングを見逃さないようにYボタンを押す必要があります。
また、本作のパリィは受付時間が非常に短く、その上判定も非常にシビアで、習得するにはかなり練習が必要になるでしょう。パリィによる戦闘のメリットは、敵の体制を崩して隙を作れること、無駄な弾薬や回復アイテムを消費する機会が減ること、などです。
ただし、『ソウル』シリーズや『SEKIRO』のように、(派手なエフェクトやSEによる)パリィが成功した瞬間の、なんとも言えない爽快感は一切なく、慣れてくれば作業化してしまうのが残念でしたね……。

パリィが成功した直後に、さらに攻撃を続けると「処刑」という致命の一撃が発動します。攻撃モーションがスローになり、カメラ視点も変化する演出が挿入されるため、このシーンはかなりカッコよかったです。ただし、たまに発動しない場合もあり、バグなのかこちらのミスなのかは不明。
敵の攻撃を空振りさせる→通常攻撃→距離を一旦取る→パリィ→処刑、といった流れを繰り返していき、とくにパリィと処刑の一撃をコンボでつなげることが重要です。

敵をなんとか全員骸にし、あやしげな館に入ると、そこは「Herb Workshop」というセーフルームでした。
セーフルームは、さまざまな施設や機能が備わり重要なNPCキャラが配置された、いわば「楔の神殿」(デモンズソウル)や「祭祀場」(ダクソ)のようなプレイヤーの拠点的な場所です。


たとえば、クラフト台を使えば、回復薬や銃弾用のオイルなどさまざまな効果を持つアイテムを合成できます。よくあるシステムですが、素材アイテムの数が少ないため、クラフトするのがそもそも難しい。中程度の回復薬すら満足に作れません。
本作は、こうした厳しいリソース管理が必須になるサバイバル要素も醍醐味で、「アイテムを今使うのか、後回しにするのか」の判断が生死を分けます。けれども、この緊張感がハードコアだったPS2時代のゲーム体験を再現していて心地よかったりもするんですよね。

他にも、ミラーを調べると頭、体、脚の各防具アイテムを変更することが可能です。中世をモチーフにしているので、ハイソな貴族風の装飾品に変え、オシャレな見た目にしてみるのも良いかもしれません。

とはいえ、ただ見た目だけではなく、装飾品は「Defence(防御)」「Knock Resist(耐久力)」など、ステータス値に関係してくるため、より良い防具を装備したいところです。

現代のゲームでは考えられませんが、本作はインベントリから直接武器の変更が出来ないため、いちいちNPCに話しかけて変えてもらう必要があります。
仕方ないとは言え、これがすっごい不便で不自由。せっかく探索中におニューの新武器を入手したとしても、セーフルームまで戻らないといけません。なので新武器を試す機会もないまま、道中死ぬことも…。


さて、セーフルームを出て、いざ悪夢の世界へ。Aボタンでスニークして背後からスタブ攻撃を発動、一撃で倒します。血がとんでもなく吹き出しますね。

広場に辿り着くと、わらわらとモンスターが湧いてきました。基本的に、タイマンであればそこまで苦労せずとも倒せますが、本作には「回避」アクションがないので、同時に何体も相手にするのはかなりキツいです。
ちなみに、画面左下にある上2本のバーが、それぞれ「体力」「スタミナ」を表しています。


初めて「死亡」した直後、なぜか「Darkside」という謎空間に転送されていました。ここは現実世界とはまた違う次元らしく、Lundyという奇妙なピエロが戦闘訓練に付き合ってくれます。
どうしてもパリィが上手くいかないときは、この場所でじっくり練習してみるのも良いと思います。

死亡すると、最後にセーブした拠点からリスタート。アイテムなどはロストしませんが、敵がすべて復活しています。
再び広場に戻ってきて周りの雑魚を1匹ずつ丁寧に狩っていき、中ボスとの戦闘へ。それにしても、敵の造形が怖すぎます。

本作はベクシンスキーや、バロック様式の美学から強い影響を受けており、単なるゾンビのような敵ではなく、歴史的な衣服を纏いつつも肉体がねじ曲がったような、シュールでグロテスクな敵が多数出てくるのも魅力的です。



また、探索要素も充実していて面白かったです。親切すぎるガイド(目的地マーカーなど)が一切ないため、自分の目と耳を頼りに、自力でマップの構造を理解していく必要があります。
だからこそ、隠された通路を見つけた時や、ショートカットが見つかった時の安堵感や嬉しさなど「発見する喜び」は大きく、PS2時代のレトロスタイルならではの醍醐味を感じられました。

マップは平坦ではなく、上下の移動が頻繁に発生する立体的な構造をしており、グラフィックの制限を逆手に取った、ライティングによるレベルデザインが巧みです。
たとえば、霧が立ち込める暗闇の中で、わずかに灯る松明や不気味な光が「次に進むべき道」を示唆していたり、あえてカメラの死角になる場所に敵を配置していたり…レベルデザイン全体として、「プレイヤーを突き放すような冷たさ」と「注意深く観察すれば道が開ける達成感」のバランスが、PS2時代のゲームらしい手応えを生んでいました。

何十回と死にながらもなんとか進めていくと、序盤の最難関であるエリアボスとの戦闘に。ボスの名前は「Angel of Clag」、直訳すると「泥の天使」。ヒマワリのような顔に、いびつな巨体、そして鋭利で攻撃力の高そうな武器を持っています。めちゃくちゃ強そうです。


ボスは体力も非常に高く、攻撃パターンも多彩。噛みつきによる致命攻撃や、振り下ろし、そして一発死の「薙ぎ払い」攻撃を繰り出していきます。
パリィも合わせやすいものから、タイミングをズラしてくる嫌らしい攻撃まであるため、無傷でいるのはなかなか辛く、何度もゲームオーバーに…。基本的にボスに弱点などはなく、パターンを覚えるしかありません。

加えて、操作性がもっさり仕様なこともあって、距離を取ったり回避することが中々上手くいかず、死を重ねていきます。
「うあああ」と苛つきながらも、なぜかまた挑戦してしまっている謎の中毒性があります。おそらく、この制限された中での「不自由さ」が、逆にシンプルなゲームデザインに繋がっているため、「今度こそ倒せるかも」というモチベーションになっていたのかもしれません。

艱難辛苦を超え、ようやく撃破することに成功。40回以上は死んだでしょうか。しかし、この達成感を味わえるのがたまらなく気持ちいい。これも謎の中毒性の原因のひとつだったのかもしれませんね。
本作の総評をまとめると、「万人向けではないが、刺さる人には狂おしいほど刺さる作品」と言えます。
ポジティブな評価としては、ベクシンスキー風の退廃美と、PS2風のローポリゴンが融合した独自の世界観を味わえること、サクサク動かない操作性や不自由さこそが、戦闘における「一撃の重み」を感じる緊張感につながっていました。

ネガティブな評価としては、現代の快適なアクション操作ができないことや、意図的な制限が「ストレス」になるでしょう。また、インディー作品ゆえのバグや、判定のシビアすぎる(理不尽に近い)パリィなど、洗練されていない部分も目立っていました。
まずは、デモ版を試してみて購入するかどうか決めてみるのが良いと思います。
タイトル:『No Vacation for an Executioner』
対応機種:Windows PC(Steam)
記事におけるプレイ機種:Windows PC(Steam)
著者プレイ時間:7時間












