
先日、『アーマード・コア』シリーズへの独自の視点からの言及をきっかけに、多くの日本人から「ロボゲー・ロボアニメ詳しすぎな外国人」として知られるようになったオリー・バーダー氏。実は、氏はゲームやアニメを中心として日本サブカルを海外に長年伝えてきた記者であり、様々なタイトルにかかわってきたゲームクリエイターでした。
弊誌の取材に対して、そんな氏がこぼした最近の悩みと言えば「ロボゲーを作らせてくれるスタジオが見つからない!」ということなのだそう。そこで、本稿では、氏の文章を通じて、氏のもつ「ロボゲー・ロボアニメ」への視点や美学の一端をお伝えしていきたいと思います。
私がこれまであまり楽しめなかった数少ないメカゲームシリーズの一つが、『ゾーン・オブ・エンダーズ』シリーズです。決して悪いゲームではありませんし、嫌いというわけでもありませんが、ゲームデザインの観点から見ると、機能的に問題があると感じています。そこで、その理由を説明させていただきます。
メカゲームを数多くプレイしてきた方であれば、『電脳戦機バーチャロン』のような作品が、このジャンルの多くのゲームに影響を与えていることは明らかでしょう。複雑なベクター式ダッシュ攻撃を近接戦闘へと見事に連携させるその手法は、ゲームデザインの観点から見ても非常によく練られていると今でも感じています。
その後、『Another Century’s Episode』シリーズのように、『電脳戦機バーチャロン』から着想を得て、より開放的で、いわば弾道的とも言えるダッシュ攻撃を取り入れた作品も登場しました。これらはその機能的な流れを受け継ぎつつ、新たな試みも実現していました。
しかしながら、『ゾーン・オブ・エンダーズ』の主に2作品に関して言えば(後ほど触れる『2173 テスタメント』も忘れてはいませんが)、機能面から見ると、メインとなるゲームプレイがあまりうまく噛み合っていないように感じられます。
レンジの連携が適切にできていない
『電脳戦機バーチャロン』と同様に、『ゾーン・オブ・エンダーズ』シリーズも、遠距離戦闘と近接戦闘という二つの明確なレンジで構成されています。そして、それぞれのレンジには独自の操作やアクションが割り当てられています。
しかし問題は、『ゾーン・オブ・エンダーズ』シリーズの大半において、この二つのレンジが適切に結びついていない点にあります。
『電脳戦機バーチャロン』では、近接戦闘に持ち込むためには、ベクター式のダッシュ攻撃を組み合わせながら距離を詰め、最終的に近接攻撃が可能な位置まで到達する必要があります。その過程では、敵を特定の位置へ追い込み、遠距離攻撃で誘導しながら隙を作り、近接戦闘で決定打を与えるといった戦術性が求められます。
一方、『ゾーン・オブ・エンダーズ』では、主にアナログダッシュによって移動しますが、このダッシュには実質的な制約がほとんどなく、相手が逃げないことを祈りながら、ただふわりと近づいていくような形になっています。
その結果、二つのレンジは有機的に結びついておらず、相手を不利な状況に追い込むこともできません。プレイヤーは曖昧で決定力に欠ける形で距離を管理するしかなくなってしまいます。
また、『ゾーン・オブ・エンダーズ』第2作である『アヌビス ゾーン・オブ・エンダーズ』では、自機ジェフティに「ゼロシフト」という能力が追加されます。これはほぼ瞬間移動のように敵の目前へ移動できるもので、二つのレンジの問題を一気に飛び越える仕組みになっています。
確かにこれはレンジ間の連携不足を補う一種の解決策ではありますが、ゲームデザインとしてはやや強引で単純化しすぎている印象を受けます。というのも、「正しく」ゼロシフトを使うことによる達成感がほとんどなく、単にボタンを押せば即座に近接距離へ移動できてしまい、そこに思考や戦略性がほぼ介在しないためです。
とはいえ、『アヌビス』のスペシャルエディションで導入された「コマンダー」タイプの敵ユニットについては評価しています。これはアナログダッシュの仕組みに意味を持たせようとする優れた試みだったと思います。敵集団を“崩して”、コマンダーに狙いを定めるための隙を作る必要があり、そのためにアナログダッシュを使って敵を誘い出すといった駆け引きが生まれていました。
ゼロシフトはレンジ連携の問題に対するやや不器用な対処だったと感じていますが、コマンダーの導入は確実に正しい方向への一歩だったと思います。ただし、スペシャルエディションの段階での導入は、やや手遅れだったという印象は否めません。
しかし、それらはそもそもシネマティックなゲームなのではないか?
ここ数か月、日本のファンの方々とオンラインで素晴らしい議論をする機会があり、その中で非常に興味深い指摘を受けましたので、ここで触れておきたいと思います。
『ゾーン・オブ・エンダーズ』シリーズの根底にあるコンセプトは、強いシネマティック性にあり、ゲームというよりも「インタラクティブなアニメ」として楽しむことを意図していた、というものです。同様のコンセプトとみられるタイトルはほかにもあり、なかでも特に『Another Century’s Episode』の、「蒼き流星SPTレイズナー」への明確で愛情に満ちたオマージュなどは私も大いに評価しています。
ただし、このような見方や楽しみ方が成立すること自体は認めつつも、シネマティックなアプローチを成立させるためには、やはりゲームとしての機能的な基盤がしっかりしている必要があると私は考えています。
後年、前述の『Another Century’s Episode』シリーズにおいて、フロム・ソフトウェアはさまざまなメカアニメ作品をゲームとして見事に再現しましたが、それでもなお、操作感やメカの挙動といった要素が、この種のゲームの魅力の大きな部分を占めていることもしっかり理解していました。
であれば、それ以前に同様のコンセプトに挑戦した他の開発会社が、レンジ間の連携という問題を絶対に解決することができなかった、ということもなかったのではないか、と感じています。(もちろん、『Another Century’s Episode』が『ゾーン・オブ・エンダーズ』のゲームデザインにおける課題を強く意識して改善に努めた可能性もあるとは思います)
一方で、このシネマティックな方向性に関連する重要な、本シリーズ独自の魅力にあふれた点がひとつあります。それが、本シリーズにおけるメカデザインであり、これは極めて革新的なものといえるでしょう。
本シリーズのメカは、これまでに生み出された中でも最も独創的なメカデザインの一つである

言うまでもなく、私は新川洋司のメカデザインの大ファンです。『メタルギアソリッド』に登場するメタルギアREXも非常に気に入っていますが、『ゾーン・オブ・エンダーズ』シリーズにおける彼の仕事は、まさに際立ったものだと感じています。
主役となる2機のオービタルフレーム、ジェフティとアヌビスには、エジプト神話からの明確な影響が見て取れます。しかし興味深いのは、その要素がどのようにデザインへと落とし込まれているかという点です。
2000年代初頭に『ゾーン・オブ・エンダーズ』のメカを初めて目にしたとき、これまで見たどのメカとも異なる存在だと感じたことを覚えています。そして数十年が経った今でも、その印象は変わっていません。
その理由は、これらのメカの構造やプロポーションが、意図的に、そしてある意味で美しく“異質”に設計されているからです。いわゆるリアルロボット系のメカデザインは、「形態は機能に従う」という原則に基づくことが多いですが、オービタルフレームのデザインには一貫した思想がありつつも、それは人間の常識とは異なる、まさに異星的なルールに基づいています。
そのため、これらのメカの独自の構造は視覚的に理解できる一方で、どのように動作しているのかまでは把握できません。この“分かりそうで分からない”感覚が神秘性を生み出しており、シリーズにおける物語の重要な要素――たとえばメタトロンのような未知の物質によって構成されている点――とも深く結びついています。
率直に言って、『ゾーン・オブ・エンダーズ』のメカデザインは、私の中でも特にお気に入りの一つです。現在でもジェフティとアヌビスのRIOBOTフィギュアを所有していますが、それらは私にとって非常に大切なコレクションとなっています。
『2173 テスタメント』についてはどうか?
本稿の最初で予告していた通り、ゲームボーイアドバンス向けに発売された『2173 テスタメント』についても触れておくのが公平でしょう。本作は『スーパーロボット大戦』シリーズに近い戦術シミュレーションRPGですが、一人称視点で攻撃を狙ったり回避したりする戦闘モードが特徴的でした。
本作は、私が非常に好きなゲーム開発会社の一つであるウィンキーソフトによって開発されています。同社が手がけた『スーパーロボット大戦』シリーズの作品群もとても楽しめましたし、その中でも『2173 テスタメント』は出来の良い作品の一つだったと思います。
本作はターン制の戦略ゲームであるため、プレイステーション2版で見られた「レンジ間の連携不足」といった問題はまったく気にならず、むしろゲームプレイとストーリーの流れは格段に良くなっていました。
実際、『スーパーロボット大戦J』と並んで、『2173 テスタメント』はゲームボーイアドバンスの中でも特にお気に入りの作品の一つです。それだけに、ウィンキーソフトがすでに存在しないという事実は非常に残念でなりません。
いずれにしても、『ゾーン・オブ・エンダーズ』シリーズについては、最後は前向きな形で締めくくるのが良いでしょう。そして、ウィンキーソフトに所属していた方々の才能を振り返ることは、その締めくくりとしてふさわしいものだと思います。
オリー氏とともに「ロボゲー」を作ることに興味のあるスタジオや団体は、この記事の末尾にある氏のプロフィールから個別に問い合わせていただけますと幸いです。






