『ROMEO IS A DEAD MAN』もうひとりのディレクター・山﨑廉氏のクリエイティブとは。発売後だからこそ語れるネタバレあり2万字超えインタビュー! | Game*Spark - 国内・海外ゲーム情報サイト

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『ROMEO IS A DEAD MAN』もうひとりのディレクター・山﨑廉氏のクリエイティブとは。発売後だからこそ語れるネタバレあり2万字超えインタビュー!

山﨑廉氏の経歴や『ROMEO IS A DEAD MAN』について掘り下げました。

連載・特集 インタビュー
『ROMEO IS A DEAD MAN』もうひとりのディレクター・山﨑廉氏のクリエイティブとは。発売後だからこそ語れるネタバレあり2万字超えインタビュー!
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2月11日に発売されたグラスホッパー・マニファクチュア(以下、GhM)の完全新作アクション・アドベンチャーゲーム『ROMEO IS A DEAD MAN』では、須田剛一氏と共に山﨑廉氏がディレクターを務めています。山﨑廉氏は『ROMEO IS A DEAD MAN』以外にも『Travis Strikes Again: No More Heroes』や『ノーモア★ヒーローズ3』でも同様に須田剛一氏と共同でディレクターを務めており、GhMにとって欠かせないゲームクリエイターの一人です。

ですが、今まで山﨑廉氏にフォーカスがあたった事はあまりなく、GhMファンの方でも氏についてよく知らない方も多いのではないでしょうか。前回こちらの記事で“須田剛一らしさ”を分析しましたが、今回は山﨑廉氏本人に経歴や“山﨑廉らしさ”、そして『ROMEO IS A DEAD MAN』について聞きました。

GhMに入ったのは“偶然”だった。山﨑廉氏の血肉となったカルチャーとは

——山﨑さんのこれまでの経歴を教えてください。

山﨑廉氏(以下、山﨑):業界に入ったのはグラスホッパー・マニファクチュアが最初です。2002年に入社して当初は2Dイラストを描いていました。ですが「やりたがっていたよね」と声をかけられて企画に移ります。ところが企画として最初に関わったタイトルはキャンセルとなったんです。その後、須田が『killer7』を作っている間に並行して動いていた『michigan』というタイトルを手伝う事になり、僕はディレクター補佐みたいな感じで企画の細々としたところを色々とやっていました。

『michigan』が終わった後、プランナーとして『サムライチャンプルー』『BLOOD+ ONE NIGHT KISS』『ノーモア★ヒーローズ』に携わりました。テクモ(現・コーエーテクモゲームス)さんと一緒に開発した『零 ~月蝕の仮面~』も、メインのプランナーとして参加しました。

その後、会社としてはメインラインとして『シャドウ・オブ・ザ・ダムド』が走っていたんですが、会社の規模も大きくなってきたので別の小さいラインも開発が進むことになり、『BLACK KNIGHT SWORD』で初めてディレクションを担当しました。

ただ、その辺りで体調を崩したりと色々あって、一旦GhMから離れることになるんです。それが2011年ぐらいですかね。

復調してからしばらくはフリーランスで色々な所で企画やスマホの案件をやっていたんですが、しばらく経ったら急に関わっていた仕事がなくなってしまって。困ったな……と思ってたら、たまたま須田から連絡があって、「今ちょっとやってるプロジェクトを手伝ってほしい」と声がかかったんです。

当時GhMはガンホーのグループにいたので、丸の内の大きなビルに呼ばれて「なんか色々言われるんじゃないか」とドキドキしてました。するとどうやら『Travis Strikes Again: No More Heroes(以下、TSA)』のプロジェクトが進んでいたんですけど、チームの規模が小さくてディレクションできる人がいないのでやってくれないか、と須田から言われて。ちょうど仕事もなかったので、「これは良かった」と。

それでまたGhMに復帰して『TSA』のチームに須田と一緒にディレクションという形で入り、そのまま流れで『ノーモア★ヒーローズ3』も須田と共同で、今回の『ROMEO IS A DEAD MAN』も一緒に……っていう感じですかね。

——GhMを離れてたところからいきなりディレクションしに来たわけですね。

山﨑:そうですね。須田に忘れられてるんじゃないかなと思ったら声をかけていただいて、ありがたかったです。

——ゲーム業界の前は何をされていたんですか?

山﨑:ゲーム業界の前は美術を勉強してて、東京藝術大学に通ってたんですけど、同時にゲームも好きでした。ゲームは常に絵を描く傍らでやってました。それで、このままアーティストになるのもいいかなとは思ったんですけど、なかなか食べていけないっていうのもありますし。自分の目指す表現を考えると、美術的なものももちろん興味はありましたけど、ゲームという表現媒体に昔から興味があったので、そこを志しましたね。
また、タイミングよく大学の先輩にあたる人が『巨人のドシン』や『アクアノートの休日』を作ったゲームデザイナーの飯田和敏さんの高校時代の同級生で。「ファンなので会わせてください」と言ったら会わせてくれて、その流れでイラストを描く仕事とかをいただいてました。これがきっかけで、ゲーム業界に入ることになりました。

——その中でGhMを選んだ理由はありますか?

山﨑:これは本当に偶然で、実はGhMのことは知らなかったんです。当時は『シルバー事件』が出た頃くらいでしたが、存在は知らなくて。飯田さんの知り合いだったライターさんにGhMとの付き合いがあって、その繋がりでGhMのお仕事を少し回していただけるようになりました。個人的にはゲーム業界に入れるのでラッキーぐらいの位置付けでした。

——今もニッチな感じはありますが、当時のGhMもあまり有名なわけではなかったんですかね。

山﨑:僕が最初に関わったのは『花と太陽と雨と』のガイドブックのイラストだったので、完全に『シルバー事件』オンリーの時ですね。だから『シルバー事件』が世に出て、知る人ぞ知る存在みたいな時じゃないかと思います。ちょうど僕が入った時は、『killer7』を立ち上げたタイミングだったと思います。

——以前クレジットサイトを拝見したのですが、『killer7』にも何かしら関わっていましたよね?

山﨑:『killer7』の当時は別のプロジェクトの方にいました。唯一関わったのは、口笛を吹いてるくらいです。

——口笛ですか?

山﨑:口笛を吹きながらkiller7の面々を殺していくっていうシーンがあるんですけど、そこです(笑)。社内で口笛吹ける人がいなかったみたいで、僕吹けますよって(笑)。

——珍しい役職ですね(笑)。 『ROMEO IS A DEAD MAN』からは実に多様なカルチャーのリファレンスが見られました。山﨑さんの創作の血肉になっているカルチャーなどはありますか。

山﨑:月並みなところで言えば映画とかゲームなんですけど、僕の中で一番大きいのはやっぱり美術・アートですかね。大学で主に現代アートをやってたので、そこが自分の中では大きいのかなと。

——アートへのこだわりは、山﨑さんの関わったタイトルを遊んでても感じます。現代アートって、例えばどんな感じのものですか?

山﨑:どんな感じのって言われると難しいけど……ちょっとタイムリーな話をすると、今新国立美術館で「YBA(ヤング・ブリティッシュ・アーティスト)」っていう90年代にイギリスで流行ったアートが展示されています。ダミアン・ハーストっていう人が牛を輪切りにしてホルマリン漬けにしたショッキングな作品で有名なんですけど。そのYBAと同時に「ブリットポップ」(1)も流行ってて、「ブラー」(※2)と「オアシス」(※3)とか。それがちょうど僕の大学生時代でした。そこはものすごく影響を受けてて、この間展示を見に行ってきたんですけど、やっぱり懐かしさと共に、この辺りに原点があるんじゃないかなと。

※1 1990年代にイギリスのロンドンやマンチェスターを中心に発生したロックやファッションなどのムーブメント。サッチャー政権などの社会的・政治的背景が強く反映されている。

※2 イギリスのロックバンド。1988年に結成し、2026年現在も活動を続けている。「Girls And Boys」「Parklife」などが代表曲。

※3 イギリスのロックバンド。兄ノエル・ギャラガーと弟のリアム・ギャラガーを中心に1991年に結成し2009年に解散したが、2024年に再結成している。「Wonderwall」「Don't Look Back In Anger」などが代表曲。

——興味深いです。人生を通して影響を受けた映画・音楽・ゲームを挙げるなら何ですか?

山﨑氏:映画は、なんだかんだでやっぱり「スター・ウォーズ」なのかな。子供の頃に見てたし、衝撃的だったんですよね。当時「ガンダム」とかも流行ってたんですけど、イマイチロボにのめり込めないところがあって。なんだけど、「スター・ウォーズ」は実写で本物感というか、現実感があって、メカのかっこよさがあった。今は結構好きなんですけど、当時はロボをなんとなく嘘くさいものとして認識してて。「スター・ウォーズ」のメカも空想のものではあるんですけど、人が乗って動かして飛行機の形をしてたりするのが実際に現実にありそうだなっていうところがハマりましたね。あとは宇宙人とかクリーチャーも面白かった。あと、漫画だとやっぱり鳥山明先生の影響がありますね。

——言われてみると、ロボットとかクリーチャーが出てくる感じは『ROMEO IS A DEAD MAN』もそうだなと思いました。

山﨑:その辺がちょっと須田とは違いますね、須田はガンダム大好きなんで。

——ちなみに「スター・ウォーズ」のエピソードは何が一番好きですか?

山﨑:僕は6ですね。あえて言うと「ジェダイの復讐」。ちょうどリアルタイムで小学6年生ぐらいだったと思うんですけど、僕らの時、最初タイトルは「ジェダイの帰還」じゃなくて「ジェダイの復讐」だったんですよ。なのに、後から「ジェダイに復讐は似合わないよ」とタイトルが変えられてしまったんです。でも僕ら世代からすれば、みんな「ジェダイの復讐」だと思うんですよ。

——直近1年で強く影響を受けた作品はありますか?

山﨑:直近で……なんだろう、なんか最近すぐ忘れちゃう(笑)。すごく直近で言うと、この間YouTubeで昔の白黒の「黄金バット」を見て、面白いなって(笑)。特撮なんだけど、特撮とも違うというか。若い頃の千葉真一が主人公のやつ。アクションとかも洗練されてないのが、すごくほのぼのしてていいなって思いましたね。

——音楽やゲーム方面ではどうですか?

山﨑:そうですね、学生の頃、特に90年代はテクノをよく聴いてました。元々電気グルーヴがすごく好きで、そこから電気グルーヴが聴いている音楽にテクノがあったというか。90年代後半にクラブ文化とかで一時期テクノが流行った時期があって、その時はよく聴いてました。最近は色々聴くようになってますけど。

——最近は何を聴いているんですか?

山﨑:最近は日本のヒップホップとかラップを聴く機会が割と多い気がします。あとは「くるり」とか。

——ゲームはどうですか?

山﨑:全般好きなのでこれっていうのは難しいんですけど、ゲームはずっと好きです。TVゲームが主流になる以前の「ゲーム&ウオッチ」ぐらいから。

——好きなジャンルやシリーズなどはありますか?

山﨑氏:割となんでも遊ぶんですが、どれかって言われると『ゼルダの伝説 時のオカリナ』が一番影響がある気がします。当時大学の頃PS1とセガサターンがあって、NINTENDO 64が遅れて出たタイミングなんですけど、それまではアーケードで『バーチャファイター』ばっかりやってたんですね。すごい流行ってたんで。
ただ64が出たタイミングで、家庭用ゲーム機をまた買おうかなと思って。『ゼルダの伝説 時のオカリナ』をやった時に、なんというか子供の頃のテンションが蘇ってきて、大学生で時間もあったし、ずっとやってたんですよ。めちゃくちゃな遊び方もして、砂漠で正解ルートに行く時に「まことのメガネ」でルートを見ながら行くっていう所を目測だけで全部やるという(笑)。なんとなくこの位置で曲がれば大丈夫って暗記するくらいやり込んでて。そこでゲームって面白いなって再認識しました。ゲームをつくる人になりたいな、って気付きも『時のオカリナ』から得たので、やはり特別かもしれません。

——すごいやり込んでますね。最近遊んだゲームで印象に残っているのはありますか?

山﨑:最近だと『キングダムカム・デリバランス』が良かったです。ファンタジーっぽいけどファンタジーじゃないっていうか、中世の歴史物で、リアルな昔の生活が垣間見えるところが好きで。博物館とか行って昔の暮らしを再現したCGを見るのが好きなんですけど、大概しょぼいんです。なんでもっとお金をかけないんだろうって思います(笑)。ですからゲームでそれをやってくれると嬉しいというか、昔の人ってこうだったんだとか、道がぬかるんでて汚い生活感というか、自分が知らない昔の生活をリアルに見せてくれるのが良かったですね。お話も面白かったし、ゲーム性も良かった。すごく好きなゲームです。

——分かります。私も『アサシン クリード』でそういう部分が好きだったりするので。

山﨑:『アサクリ』もね、ギリシャの風景とか丁寧に作られてる。ゲーム性とは関係なく「お~昔はこうなってたのか」っていうのがあると喜んじゃいます。

——いいですよね。では、X(旧Twitter)のbioに“漫画家”とありますが、漫画は創作の原点なのでしょうか。ゲーム制作とは違う衝動がありますか。

山﨑:漫画家って書いてるんですけど、実際はあんまりちゃんと仕事にはなってないので…。

昔、「アフタヌーン」で賞をもらって。結局それが仕事にはなってないんで、プロフィールには書くだけ書いとけみたいなところもあるんですけど、でも漫画は原体験として一番古いアートというか、表現ではありますね。子供の頃、ゲームが好きでゲームを作る人になりたいなって思って『ファミリーベーシック』を買ったんですけど、全く分かんなかったんですよ。これ無理だなって諦めて、漫画家になろうみたいな(笑)。よくある小学生がみんな一度夢見る職業みたいな、絵を描くのが好きだったんで、なるなら漫画家かなみたいな感じでした。
だんだんそこから離れて、美術の世界に行っちゃうんですけど、でも美術の世界に行きつつも作品の中には常に漫画があって、大学の時も美術の絵を描きつつ傍らでどこかに投稿するとかなく趣味で描いてたりはしましたね。やっぱり漫画はずっといつも自分の周辺にあるものとしてあるのかなと。

漫画って1人で全部完結するので、すごくやりやすいなと。ゲームは集団で作業して意思疎通が大変だったりして、それはそれで良さがあるんですけど、漫画は自分の世界で完結できるのがいいなって。

今回のロミオの中でも相当絵を描いてるのと、あと2Dのコミックカットシーンは全部自分がネームを切ってます。ディレクター作業をやりながらずっと漫画を描いてましたね。

——すごいですね。

山﨑:でも全然趣が違うので、そこにあんまり苦はなかったですね。

——絵の面で影響を受けた作家とか作品はありますか?

山﨑:影響はやっぱり鳥山明先生と大友克洋先生ですね。2人からはものすごく影響を受けてます。『ノーモア3』のテレビの鳥山風イラストも僕が勝手に入れました。トラヴィスの出で立ちが鳥山明先生の絵と親和性がありそうだなと思って、それっぽくしました。何回も模写はしてたので。

——あのイラストすごく可愛かったです。須田さんメインだとあまり鳥山明先生のネタとか入ってないなと思ってたので、山﨑さんの担当だと知って納得しました。

山﨑廉氏から見る須田剛一らしさとは。ゲームを作る上で大事にしていること

——では次に、GhM作品はしばしば「須田ゲー」と形容されますが、『ノーモア★ヒーローズ3』や『TSA』、『ROMEO IS A DEAD MAN』の3作品は、山﨑さんもディレクターとして大きくクリエイティブに関わっていると思います。自身から見て、山﨑さんのクリエイティブはどういったところに現れていますか。

山﨑:ちょっと難しいんですけど、ある意味意図的に隠してる部分もあって。『ノーモア』とかはナンバリングタイトルっていうのもあるんですけど、メインは須田がいて成り立つ部分もあると思ってるので、自分としてはあんまり、僕が表に出過ぎないような立ち振舞をしているところもあります。とはいえ、抑えられない衝動みたいなのもあるので、そういうところはちょっと出たりとかはしてるんですけども。

——私は『TSA』からはけっこうアート方面で変わったなと思いましたね。例えば色んなイラストレーターの人が担当する所とか。

山﨑:そういうところはあるかもしれません。基本的に外部の方とのセッションは須田の方からこういう人とやりたい、っていう要望があるんですけど、そこでどういう方向性でまとめるかという部分は任せて頂いてる部分があるので、そういう意味では僕の中のアート性とか基準があるかもしれないですね。

——近年のGhM作品と言えば、グロテスク&バイオレンスな描写です。山﨑さんにとって“暴力”はどのような表現の手段なのでしょうか。そこに込めている思想や情熱があれば教えてください。

山﨑:僕自身は暴力が好きで暴力的なゲーム作ってるわけじゃないというか、基本的には暴力は嫌だなと思ってます(笑)。とはいえ、色んな意味での暴力って避けられない所はあるかなと思ってて。どうしても、暴力的な行為ってのはあるし。ものすごくフラットな見方をしたら、アクションゲームで敵を攻撃すること自体が暴力なので。でも、気をつけてるところとしては、そこをちゃんと真摯に考えていけたらなっていうか。暴力をどう扱うっていうところは適当にないことにしたくはないな、と思ってます。

——ありがとうございます。次に『TSA』では「ラーメン」、『ノーモア★ヒーローズ3』では「スシ」、『ROMEO IS A DEAD MAN』では「カツカレー」など食べ物が印象的な要素として据えられていますが、なぜ食べ物にフォーカスしているのでしょうか? 『TSA』以前のGhM作品にはあまりみられなかったように思います。

山﨑:これは明確に『TSA』の時からだと思うんですけど、須田から海外のプレイヤーに向けて日本の料理を紹介したいっていう話があって。『TSA』では本当はラーメン以外にも居酒屋メニューを用意して、海外の人がプレイした時に「この食べ物はなんだろう」って調べて日本に来て食べるとか、自分で作るみたいなのをやりたいという構想がありました。その流れで、『TSA』では「ラーメン」、『ノーモア★ヒーローズ3』では「スシ」、『ROMEO IS A DEAD MAN』では「カツカレー」となっています。

——「カツカレー」も日本食ですからね。

山﨑:イギリスでは流行ってるみたいです。ただ全然違うものらしくて、カツカレーっていう言葉だけがひとり歩きしているみたいですね。

——GhMのキャラクターはみんな名前がカッコよく、今回もロミオ・スターゲイザーなどいい名前が多かったのですが、名前はどのように決めていますか。

山﨑:須田の思いつきが多いかな。基本的に主人公とかは大体須田なので。多分、思いつきだと思います。

——なるほど。では、山﨑さんの思うカッコいい、またはカッコつけの美学などはありますか?ビジュアルのデザインや、ゲーム全体含めて。どういうものをカッコいいと思うのですか。

山﨑:やりきってるかどうかじゃないですかね。中途半端にしない。絵でもなんでもそうだけど、上手い下手だけじゃなくて、下手でもすごくやり切って突き抜けていくと、それが下手じゃなくて味というか、表現になっていくような。そういうものを見ると、やっぱりカッコいいなって思います。

——すごくいい言葉ですね。山﨑さんからデザイナーさんにお願いしたり、直したりする際、その際にカッコよくなるようにお願いすると思うのですが、どのように指示していますか。

山﨑:具体的に指示を出そうとはしてます。曖昧になっちゃうと、作る方も結局何を作ったらいいのかよくわからなくなっちゃう所があると思うので、そこは心がけてますね。なるべく具体的に指示を出して、ちょっとずつ高めていくというか。

——そうですよね。ふわっと「可愛くしてください」って言われても何をどうすればって思いますよね。

山﨑:なので、合ってるか間違ってるかはさておき、とりあえず具体的にこういう感じでお願いします。と言うようには意識してます。

——次に、山﨑さんがゲームを作るうえで、ゲームそのものだけでなくチームとして大事にしているところはどこにありますか。

山﨑:なるべく具体的な指示をすることと、なるべく早く判断することです。上手くいかない時もあるんですけど。瞬間瞬間でちゃんと結論を出して、曖昧なまま引き伸ばさないようにできれば。その場で判断して、ダメだったらやり直せばいいみたいな感覚が僕はあるんですけど。具体的なことを言うと、判断を引き延ばすとスケジュールを圧迫して、いろいろ決まらないことでモヤモヤした気持ちがスタッフに溜まってしまうとマズイだろうなっていう感じです。あとは、仲良くやりたいですね。

——そうですよね。

山﨑:賛否あると思うんですけども。もっとバチバチやり合って高めあったらいいんじゃないか、みたいな。でも理想はみんな楽しくやれればいいなって。あくまでも理想ですけど。

——次は、須田さんとの関係性について聞かせてください。近年のGhM作品では須田さんと同じくディレクター等を務めていますが、須田さんとのコンビはいつごろから始まりましたか。

山﨑:今の体制になったのは『TSA』からなので、そこからでしょうか。それまでは僕はメインのプランナーとしてやってましたけど、須田の横にいて作るって感じではなく、たくさんいるプランナーの1人でした。GhMから離れていた空白期間で僕自身も成長できてたのかもしれませんね。

——山﨑さんから見た須田氏は、どういった人物で、どういったクリエイターで、どういったところに須田剛一“らしさ”を感じますか。

山﨑:天才肌の人だなって感じますね。ノリの瞬発力がすごい。思いつきというか、理論的に積み上げていくタイプとはまた違うかなとその場のノリで物事を言うんですけど、ただそれがあまり外れてないって所が凄い。「それどうなの」と思うことが少ないっていうか。突拍子もないことを言うんですけど、よくよく聞いてみると納得できる部分が結構多いんですよ。

——それは遊んでても感じます(笑)。

山﨑:何でこんな事を思いつくのかなって。前後の脈略とかあんまり関係なかったりして、でもここにはこれが必要なんだよって言われてみると、確かにここにはフックがあった方がいいな、ってことが結構あります。

——山﨑さんご自身の作家性と、須田さんの作家性がぶつかることはありますか?そのとき、最終的な判断はどのように決まるのでしょうか。

山﨑:ぶつかる事はあるんですけど、やっぱり僕の中では須田のやりたい事をやろうみたいな意識はあるので、そちらを優先しようとなります。僕自身でやりたい事はあるんですけど、でも一緒にやってる以上はどちらかというと須田のゲームになるかなっていう認識があるので、できるだけ須田の要望を実現できるように考えています。

——GhMの作品として世に出す以上、「これだけは裏切らない」という約束のようなものはありますか?逆に、“やらないと決めていること”はありますか。

山﨑:ありますね。中途半端なことはしない、やるならやりきろうと意識しています。あとは、どんな形であれ、やっぱりプレイしてくれる人が楽しんでもらえるものを目指すというところは常に忘れないようにやってます。

——今回も遊んでて楽しかったです。

山﨑:戒めじゃないんですけど、尖ったゲームにしていくと、どんどん独りよがりになりがちなんですけど、誰もついてこれないものを作ってもしょうがないので、どこかで一歩引かなければなりません。そこのせめぎ合いみたいなのがあると思うんですけど、みんなが楽しめつつも尖ったものを出すというところは気をつけています。

『ROMEO IS A DEAD MAN』の“あの”キャラクター達やテキスト、遊び心とは

——次は『ROMEO IS A DEAD MAN』の質問になります。今回2人ディレクター体制ですが、どのように分担が行われたのですか。

山﨑:須田が全体を統括して、僕の方では現場監督的な感じで各セクションとの折衝をしてました。

——2人体制といっても、クレジットを見ると関わった人数や他社さんとの協業を見るとまとめ上げるのも大変だったのではないかと。

山﨑:大変でしたが、スタッフがそれぞれきちんと動いてくれたので、なんとかなりました。各セクションにも責任者がいるので、全体を通して見ることが少なかったというか。外注のスタッフさんも個々には把握していましたが、改めてリスト化されるとこれだけの人が関わったのかと実感して驚きました

——他誌インタビューでも触れられていたように、トラヴィス・タッチダウンとロミオ・スターゲイザーは大きく印象が異なるキャラです。今回全く新しい主人公を描くにあたって、どのような意識で描きましたか。

山﨑:やっぱりトラヴィスとは違う新しいキャラクターを作ろうって意識がありましたね。『TSA』『ノーモア★ヒーローズ3』で2作トラヴィスの物語を続けてきて、会社も新しい体制になったし、新しいキャラクターを作ろうって。
最終的にはちょっと共通するとこも出てきたりはしたんですけども、ロミオは基本的にはトラヴィスとは違う、性格もまっすぐで、正義感が強いキャラになりました。今回は須田もプロレス技を封印してましたからね。……若干プロレス味のある技を出したりはしてたんですが。

——私も遊んでて、ロミオは今のトラヴィスとは違う若さゆえの違った主人公らしさというか、正義の心はあるけどちょっとワルっぽいとこもあるのを感じました。トラヴィスは今結構大人になってるんですけど、ロミオはジュリエットにどぎまぎしたり、ベンジャミンと友達みたいに喋ったりしてすごく可愛らしいなと思いました。

山﨑:ロミオの性格付けもね、なかなか苦労したというか。

——どの辺りを苦労した感じなんですか?

山﨑:やっぱりトラヴィスの影響は強いと思うんですよ。なんだかんだGhMの中で重要な位置を占めるキャラクターっていうのがあって、そことの差別化を図りたいと思いつつも須田がシナリオ書いてくると知らず知らずのうちにトラヴィスに寄った口調になったりとか、行動がトラヴィスっぽいところがあって。そこをみんなで見ながら「ちょっとトラヴィスっぽくないですか」みたいな指摘はしましたね。

——チェックが行われたんですね。では『ROMEO IS A DEAD MAN』の中でお気に入りのキャラクターはいますか?

山﨑:そうですね、ジェニーっていうカルトの所に出てくるゾンビ化した女の子がいて。ジェニーがお気に入りです。

色々な時代のゾンビ映画の世界を捜査するモチーフがあった時に、「ナイト・オブ・ザ・リビングデッド」や「バタリアン」の名前が挙がっていて、なんでこの子はこんなになったのかを考えていったら、あんな雰囲気になりました。

ただ、ゾンビなのに普通に喋るちょっと変わったキャラクターになりましたね。これはいい化学反応でした。最初はキャラクターだけあって、声はなかったんですけど、音声収録でジェニーはこの声だよって聞いた時予想以上に可愛らしい声で。格好はゾンビなんで「こんな可愛らしい声の人が合うかな」って合わせたら異様に相性が良くて。ゾンビのキャラクターなのに、ものすごい可愛く見えて……。声も合わせてちょっとお気に入りのキャラです。

——わかります。ジェニーかなり可愛かったです。今まで関わった他の作品でお気に入りのキャラクターはいますか。

山﨑:『ノーモア』のビショップでしょうか。大して別になにかするってわけでもないし、プレイヤーキャラでもないし、単なる脇役なんですけど。友達として、なんか好きです。

——友達キャラクターが好きなんですかね。

山﨑:割とそうかもしれないです。

——『ROMEO IS A DEAD MAN』には過去作キャラクターも登場しますよね。シロヤブやミドリカワ、スミオ(シルバーソックス)などの選出基準はありますか。

山﨑氏:どうなんですかね。須田の中ではあるかもしれないけど、今回は意図的に須田はスターシステム的、バース的なものを入れてるような気がします。『ノーモア3』の時に海外のネットで須田バースみたいなのをすごく言われてて、その時はそこまで意識してなかったと思うんですけど、今回はそれを意識しているんじゃないかな。

——次はゲームプレイについてです。GhM作品で銃を使えるのは、やや久しぶりですよね。今回は弱点を突くために使うというデザインですが、なぜこのような仕組みに至ったのですか。

山﨑:これもさっきお話したように、『ノーモア』の次の作品ということで、『ノーモア』と同じになっちゃうのは避けようと。とはいえ、今まで培ってきたアクションがあるし、新しいことをしようみたいなところでアクションもありつつ銃も取り入れたら違う遊びが作れるんじゃないかなって。

——プレイしてても違うなと感じました。『ノーモア★ヒーローズ3』にもあったホラーゲーム的な要素がロミオにもありました。それがゲームプレイの緩急にもなりましたが、お遊び的にホラー要素入れる理由は?

山﨑:僕も若干あるんですけど、須田の方にもホラー作りたいっていう欲があるんです。ホラー映画好きですし、ホラーの要素を入れたくなっちゃう。ホラーゲームを作りたいという気持ちが漏れてる(笑)

——須田さんは初期の頃にホラーを作ってましたもんね。「タイム・ショッキング ラビリンス」は『シルバー事件』の百問組手と『シルバー事件25区』でのチャットを思い出したんですが、あれはどういう経緯で生まれたんですか。

山﨑:これは企画の秋山というスタッフからのアイデアです。百問組手は踏まえていたようですが、ただ、恋愛アドベンチャーゲームみたいな体裁を取りたいという案で。特に本編に関わってないし、影響もないだろうから「いいよ」って軽く始まりました

『シルバー事件』(1999、リメイク版2018年)

——(笑)。秋山さん一人で組み上げたんですか?

山﨑:ほぼひとりで組み上げていましたね。本人はちょっとやりすぎたかなって反省をしているんですけど。でも、お遊びとしてはこのぐらいやった方がいいだろうと思います。30問ごとにセーブすべきだったと言っていましたが、あれはセーブが無いからパンクでいいのかなって。

——クリアに関係ないですもんね。今回のボスはノーモアのように人型がメインでなく大きいものがほとんどでしたが、こうしたのは差別化のためでしょうか。

山﨑:差別化もあるし、あとはプラットフォームの変化もあると思います。前作はスイッチだったけど、今回はPC中心でPS5とXbox Series X|Sでハイエンドになってグラフィックも色々強化してやろうってことで、クリーチャー然としたものが出て、みんなの思いが爆発したという感じです。

——『ノーモア★ヒーローズ 3』では牛木匡憲さんのギラギラとしたデザインでしたけど、今回は肉々しいしい感じでしたもんね。

山﨑:根底にはゾンビが出てくるゲームっていうところで、『ノーモア』とは違う肉肉しいキャラクターのイメージやコンセプトがありました。そこに合わせてボスもゾンビの派生でクリーチャーになるのかなって。

——次はテキストとシナリオについてです。今回は須田さんと山﨑さんのお二人でシナリオを書かれていますが、どのように分担して作りましたか?

山﨑:分担は章立てで、この章は誰々担当といった感じで決めています。最初とラストは須田が書いたほうがいいだろうと自然に決まって、じゃあ間の章は僕が書きますみたいな感じだったんです。開発当初は須田が監修の立場でそこまで関わらない想定だったのですが、シナリオもけっこう紆余曲折することがあったり、ゲーム自体の方向転換があったりと、色々な事情も込みで最終的に僕と須田で書きました。

——具体的にどこを担当したのですか。

山﨑:僕はチャプター5のアサイラムと、チャプター6のカルトの所ですね。それ以外は基本須田が書いてます。

——キャラクターなども分担して作りましたか。

山﨑:章固有のキャラクターは担当した人が作る感じで、メインキャラクターの時空捜査官たちはある程度須田が決めてます。章ごとは書いた人の匙加減ですね。もちろん須田が監修して、もうちょっとこういう感じにしてくれと調整は入りました。

——山﨑さんが話を書く上で大事にしていることや意識している事を教えてください。

山﨑:意識してる事はあるけど、言葉にしようとすると何ていうんだろう……。台詞をなるべくナチュラルな感じにするみたいな、細かいとこしか浮かばない(笑)。

——思い返してみると、ジェニーとヒル博士はキャッチーなキャラだとは思いました。

山﨑:なんて言うんですかね、「演技させすぎない」というか。要は女性だったら「〇〇ですわ」みたいな語尾がありがちですが、そんなこと言う人実際いないじゃないですか。そういうのはなるべく、気持ち的に使いたくないなと。なるべくそのキャラクターが言いそうな台詞回しに気を付けてはいます。そう気をつけて書く一方で、須田が乱暴に「〇〇じゃ!」って書いてくるんですよ。

——(笑)

山﨑:「わしは〇〇なんじゃ」とか、わしとか言う人いるかな?みたいな(笑)

そこは須田とズレが生じるところかもしれません。でも須田の場合は、そういうこと以上に、もっと変なんですよね。この台詞はよくわからないけど、須田っぽさを残すために残したほうがいい、みたいな判断をすることもあります。

——バランスを取ってるんですね。タイトルが出た後に船をバックに流れる格言がありましたが、どのような意図で入れたのでしょうか。

山﨑:あれも須田が入れたいっていうんです。届いたシナリオには格言が書かれていて、各シーンに入れてという指示はあるんですけど、最初の方の章にしか書いてなくて……で、その後はよろしく。みたいな(笑)。あれオスカー・ワイルド(※4)っていう方の格言が書かれてるんですけど、最初は色んな人の格言を使うつもりだったんですが、色々調べたけどあまりいいものが出てこなくて。最終的にじゃあ全部オスカー・ワイルドで統一しようと。

※4 アイルランド出身の詩人、作家、劇作家。外科医の父と作家である母との間に次男として生まれる。耽美主義的、退廃的な作品が特徴。同性愛の罪で収監され、出獄後から3年後の1990年にパリにて客死。「ドリアン・グレイの肖像」「幸福な王子」「サロメ」などが代表作。

——無茶振りですね(笑)。では次に、タイトル発表時のトレーラーと漫画の中ではロミオがデッドマン化する場所が家の外なのですが、ムービーだとパトカーから出た後の森の中でなりますよね。どういった意図があるのでしょうか。

山﨑:パトカーはロミオが見ている悪夢なので、実際問題起こったこととは違うんです。ジュリエットと出会った時はパトカーに乗ってて、倒れてるジュリエットと出会うんですけど、そこと実際に家の前で食べられた時の惨劇みたいなのがごっちゃになってて悪夢として出てる。

——なるほど。今回は時空がテーマな事もあって、時間の経過が挟まれていましたね。途中でマスクが変わって、皮膚が治っている所も時間経過の演出のひとつだと思います。

山﨑:そうですね。元々の想定ではマスクは1種類しかなくて、最初のマスクだけだったんです。けどNetEaseから「マスクはもうちょっとシンプルなほうがいい」という指摘があったので、じゃあちょっとシンプルなデザインも追加しようってことでマスクが2種類出ることになりました。

——他誌さんで言われてた唯一NetEaseからのコメントがあったところですね。

山﨑:そうです。デザインをもっとスッキリさせたほうがウケると。

——亜空間に通じるテレビから話しかけてくる謎の男のテキストは、どなたが担当していたんでしょうか。

山﨑:あれは小山という企画スタッフです。基本的に読まなくても差し支えないテキストなので文字含め好きにさせていましたが、濁穢門(じょくえもん)くらいはふりがなふってあげてもよかったかな。

——濁穢門、読めなかったです(笑)。

山﨑:ですので公式Xでツイートしたんですよ(笑)。 あれはもう、まやかしみたいなもので、ただ意味のありそうでないことを喋ってるので、読めなくてもまあいいやぐらいの感じでいます。

——ロミオが若いのもあって、諭す感じでもありながらこの先を示唆するような内容で、私は読んでてすごく楽しかったですし、テキストがカッコよかったです。

山﨑:一応ゲームの構造と繋がってたりしますしね。

——ちなみに、取材メモを書いたのは『シルバー事件』から登場する「モリシマトキオ」でしたが、やはりテキストを書いているのも大岡まさひさんなのでしょうか。

山﨑:そうですね。元々はもっと深いところで参加してもらう予定だったんですけど、紆余曲折あって、今の形になりました。とはいえ、やっぱりお願いしたいなと。

——トキオが書いてると分かった時、やっぱり嬉しかったです。次は設定に関しての質問です。時空警察という設定は『シルバー事件25区』で出てきますが、その25区で時空警察だったアカマとアオヤマは出てきませんよね。別の部署なんでしょうか?

『シルバー事件25区』(2005、リメイク版2018年) 手前右がアオヤマ、その後ろがアカマ

山﨑:これ実は登場してて

——えっ!

山﨑:世界というかバースが変わったので見た目が変わってるんですけど「ブルーマウンテン」が英語に直して「アオヤマ」。で、「レッドブラウン」っていう猫のキャラクターがいるんですけど、あれがレッドブラウンっていう赤、というところで「アカマ」に相当するキャラクターではあります。

——気付かなかったです。

山﨑:最初はもうちょっと分かりやすく考えてて、アカマとアオヤマでバースが違うので、アカマは女性になってて……みたいな話だったんですけど、色々話が進むにつれて、その部分が薄くなっていきました。ただ、一応想定するキャラクターとしては『ROMEO IS A DEAD MAN』世界におけるアカマとアオヤマです。

——またこういう風に他のゲームでも時空捜査官をゲストとして登場させたいとか思いますか。

山﨑:まあ、あるんじゃないかなと思います。

——それはお楽しみにって感じですかね。公式X(旧Twitter)でも触れられていましたが、濁穢門(じょくえもん)が羈絆門(きはんもん)と対になるというのをもう少し細かく聞かせてください。

山﨑:ある日突然須田から来たテキストに、濁穢門って書いてあって。読めないんですよ僕らも(笑)。なんだろうって調べてると、寺田寅彦の随筆の中に、人が火口に身投げする時に「覊絆(きはん)と濁穢(じょくえ)を脱ぎ捨てる」って書いてあって、対になってるんです。その中では世の中の汚れとかしがらみみたいな意味になってて。20年越しに対になる単語を出してきた。
これはボス前に入るゲートにつける名前として、同じような役割を果たしてるよってことで、今回それを使ってます。

——そうだったんですね。ボスを倒した後に手に入るスターオメガの数字には何か意味があるのでしょうか?

山﨑:あれは数字を音に置き換えて並べると、有名な映画のとあるフレーズになっているらしいです。

——謎が解けました。

山﨑:気になる人は試してみてください(笑)。

——このインタビューが出たら試す人が出てくるかもしれないですね。次に、シルバーソックスに連れて行かれた「試験場」は名前の印象とは違ってお洒落な家でしたね。キューブリックのような長い廊下が存在したりと何か特殊な空間だったと思うのですが。

山﨑:特殊な空間ではあると思いますね。外観は須田の好きな建築家の「フランク・ロイド・ライト」(※5)風ですが。ユーソニアンハウスっていう建築群があって、それがモチーフになってます。

※5 アメリカの建築家。ル・コルビュジエ、ミース・ファン・デル・ローエと並んで「近代建築の三大巨匠」と呼ばれる。日本でも「ヨドコウ迎賓館」「帝国ホテル中央玄関」などを手掛けている。

——『killer7』にも似たような家が出てきた気がします。

山﨑:『killer7』は落水荘じゃないかな。同じフランク・ロイド・ライト建築の。須田が好きなんですね。

偶然から生まれていった『ROMEO IS A DEAD MAN』の表現。そして衝撃のラストの真意は…?

——次はアートや音楽、コラボなどについてです。本作には、ドット絵、サイバーな空間、コミック調、グロテスクなクリーチャーなど実に多様なアートが込められています。この“ごった煮”は、目指してつくられたものですか?それとも自然と発想を重ねる中でこのようになったのですか。

山﨑:そうですね。今回は作っていくうちに色々変更を余儀なくされる部分があって、そこでじゃあどうしようって色々アイデアを出しましたね。例えば時空シップとかも、元々は3Dで作って船内を移動しようとしてたんですけど、やっぱり残りの期間やコストじゃ難しいよねってなった時に、じゃあ2Dでって。けっこう無茶振りだったんですけど、服部グラフィクスさんに全部お願いしました。元々はローディング画面に表示される小さいドット絵アニメーションだけをお願いするつもりだったんですけど、3D作るのが難しいから2Dにするぞという話になった時に、じゃあ誰が作るのってなって、急なお願いだけど服部グラフィクスさんに聞いてみたら快く引き受けていただけました。

あとはコミック調のカットシーンとかも、想定としては全部3Dでやろうとしてたんだけど、それもやっぱり膨大な量になってしまって。ボスが変身するとか、エフェクトとかの表現もすごく大変だし、それをやろうとすると時間もコストもそこまで割けないぞみたいな話になって、じゃあ絵でやったらできるんじゃないかと。でも単に紙芝居的に絵が出てくるだけだと、面白みも薄いだろうと考えたところで、コミックが動く表現だったらできるんじゃないかと思いついたアイデアですね。
だから元々想定してたものも勿論あるんですけど、想定外の事態に対応していく中で、表現が生まれていったところはあります。

——コミックのムービー格好良かったです。

山﨑:思いの外上手くいきましたね。最初はどうかなと思ってたというか、3Dのカットシーンには及ばないんじゃないかと僕の中では若干感じてた。でも実際できてみると、全然3Dのカットシーンに負けてないクオリティのものができてよかったです。

——ガンダムやロンドン・コーリング、PONGやハドソンの『野球拳』など、パロディネタは古めな物が多いですが、どのように選び、できあがっていったのですか。

山﨑:これはね、申し訳ないかなと思うんですけど、みんなおじさんなんですよ(笑)。考える人がもうおじさんなんで、ネタがどうしても古くなりがちというか。おじさんが知恵を絞ってこういうのがいいんじゃないかな、って言うと大概古いものが出てきちゃう。

——「GQuuuuuuX(ジークアクス)」は新しいじゃないですか。

山﨑:まあそうだけど、「ジークアクス」も本当に新しいかって言われると……。

——(笑)。そうですね、元は……。

山﨑:元は古いじゃないですか。根っこの部分は。なんかもうちょっと、若い子を入れてやった方がいいんじゃないかな(笑)。

——『野球拳』とかはビックリしましたね。

山﨑:あれは広岡毅さんというデザイナーさんが昔のゲームから拾ってきています。昔のPCゲームみたいな画面構成がいい、みたいな話のあとで出てきました。

——音楽面についてですが、ラップソングが多かったのも印象的でした。ラップにフィーチャーした理由はありますか。『TSA』や『ノーモア3』からあったと思うのですが。

山﨑:明確に意識はしてないとは思うんですけど、サウンドを色々お願いする外部の方の周辺にそういう人が多かったからかなと。『TSA』のAboさんとかもそうですし。

――スチャダラパーさんも。

山﨑:スチャダラパーさんはまた経緯が特殊で、もともと須田が最後の亜空間ヒルズに行く途中の長い所で「サマージャム’95」を流したいみたいな話をして。じゃあ確認してみましょうかって連絡したら「どうせ使うならオリジナルで新曲作りますよ」って言ってくれて、じゃあぜひお願いします。ってことで実現しました。

——あの曲は偶然生まれたというところもあるんですね。

山﨑:そうですね。結果新しい曲を書き下ろしていただいて。すごくいい曲だったので、良かったです

——ローンチトレイラーも面白かったですね。『ノーモア★ヒーローズ3』で新しい街に来た時に町の名前が大きく表示されるように、今回も新しい時空に来た際に年代が大きく表示されるのが格好良かったです。ゲーム全体を通して、画面のデザインやUIにこだわっているのを感じていますが、その辺りの話を掘り下げて聞かせて下さい。

山﨑:そうですね、画面全体というか見えるところはなるべくこだわってます。粗がないって言い方は変ですけど、見える所は全部気を使って、丁寧に作っていきたいなってのは常にあります。

——GhMさんのゲームは全部しっかりハマっててカッコいいなと思うことが多いです。

山﨑:須田も僕も同じだと思うんですけど、画面の切り替えとか出し入れにはすごく気を使ってて、このタイミングでこっちが消えてからじゃないとあっちを出しちゃいけないとか、結構細かに指示は出してます。

——須田さんはテレビの製作現場でデザイナーをやってた時代があったと思うんですけど、山﨑さんもアートを勉強していたので、その辺りが画面全体を見て作っているのかなと感じます。

山﨑:なんか気になっちゃうんですよね。画面の中の位置関係を気にしちゃうっていうか、なんでこれがここにあるの、みたいな(笑)。なんかちょっとこう、真ん中にあるの、もうちょっとこっちにならないのかな。っていうのが気になっちゃう。

——それによって、いいものが生まれていると思います。先程質感の話があったと思うんですけど、今回刺繍で動く爺っちゃんが凄く可愛らしく、親しみが持てました。質感もリアルで、こだわっていますよね。

山﨑:そうですね。そこはけっこうデザイナーさんが頑張ってくれた。より刺繍感を突き詰めてくれたっていうか、こっちの想定以上に手を入れてくれました。

——すごく良かったです。では、ファンとしては凄く嬉しいと感じたのですが、船内の人物イラストに宮本崇さんを起用した理由は何ですか?『ノーモア3』でもヘンリーを担当してましたし、いまも交流があるのでしょうか。

山﨑:交流は常にありますね。そこは須田の指示で、須田バースじゃないですけど、色んな昔のゲームのキャラクターが登場したりっていうか、バースの一環としてチョイスしてるのかなっていう気はします。

——アカマとアオヤマもいますし『シルバー事件』のキャラが揃ってるから宮本さんにしたのでしょうか。

山﨑:そうですね。宮本さんのSNSを見るとけっこう忙しい時期だったみたいで、無茶振りしてしまいました。

——宮本さんのイラストで見れてよかったです。では最後に、ネタバレに関する質問です。
2025年に須田さんのX(旧Twitter)で投稿されていたハッピーニューイヤーのイラストは、エンディング後のロミオの姿のイラストだったんですね。

山﨑:そうです。

——当初の設定や、あのムービー以外に使う予定はあったりしましたか?

山﨑:色々あってオミットになったんですけど、元々は最後あの姿になって、最後に投入したムービーのアニメのロボットに乗ってラスボスと戦うみたいな構想もあったんですけど、そこが色々コストとかスケジュールの問題でオミットになって今の形になりました。

——なるほど。では、トレイラーでも流れたスチャダラパーのMVはかなり印象的でしたが、あの場面で流そうと思った理由を教えてください。

山﨑:そこも須田が決めた部分です。長い旅みたいなものを表現したいところがあって、あそこは普通だったらそんなに長くしないと思うんですけど、フル尺で3分くらい聞かせるっていう。ドライブしてる感じと、長い距離や時間を移動していく旅の終わりの寂しさを表現してるのかなと思います。

——緑色のドットで表示されるクレジットは円環を表すような終わり方だと思いました。あそこに登場していた人物はロミオ自身にも見えますし、長官がロミオのような人であったと示唆するようにも受け取れるのですが、答えて大丈夫な話でしょうか。

山﨑:秘密です。まあ、明確にはあるんですけども。

——野暮な感じの質問かもしれませんね。

山﨑:ある種の円環構造にはなっています、という感じで濁させてください。

——ラストのムービーは一体どういう事なんでしょうか。あのような終わり方にするのは最初から決まってましたか。

山﨑:どういうことなのかは、僕も聞きたい。

——(笑)。

山﨑:どういうことなんでしょうね。円環で起こる可能性のひとつではあるんですが、物語とは関係のないタイミングで作り始めていますし、まあ、あれ自体は須田がやりたかったみたいな部分もある。全体の話の中になんとなく繋がって入るんですけどね、なんですかね、あれ(笑)。

——一応最初に出てきた白い悪魔に倒されるって所は同じ、みたいな。

山﨑:まあ確かにね。

——須田さんのみぞ知るという感じですかね。構造としては、『ノーモア1』のラストにも通ずるものがあったなと思いました。兄弟が出てきて喧嘩するみたいな。
最後に、本作を作り終えて、今後GhMで物作りをするにあたってどういったことを考えてますか。

山﨑:引き続き質の高いものは作っていきたいなと思ってます。物凄く個人的な願望を言うと、日本が舞台のゲームをちょっと作ってみたい。今まで振り返ってみるとアメリカが舞台の話が多くて、『シルバー事件』以降、日本が舞台のものが少ない。

——確かにそうですね。

山﨑:あえて日本が舞台の作品を作っても面白いんじゃないかなって。日本が舞台で、今までやってきた暴力的な感じって意外とないんじゃないかなって気はしていて。ちょっと機会があったらそういうのはやってみたいってのはあります。

——日本舞台のホラーものがいつか見れるかもしれないですね。本日は貴重なお話をありがとうございました!


このインタビューから、意図的に隠している部分があるとはいえ、やはり「アート」が山﨑廉氏の「らしさ」であるということが見えてきました。『TSA』や『ノーモア3』、『ROMEO IS A DEAD MAN』の多様なアートがバラバラになることなくまとまっているのは、幼い頃から漫画や映画に触れて絵を描き続け、アートを学んできた山﨑廉氏によるものが大きいのではないでしょうか。アートだけでない山﨑廉氏の「らしさ」が全開になった作品も、いつか見てみたいですね。

ROMEO IS A DEAD MAN』は、PC(Steam)/PS5/Xbox Series X|S向けに配信中です。

ライター:もぐ水,編集:みお

ライター/カントウ25区 もぐ水

主にアクション・シューター・ADVなどジャンル気にせずいろいろ遊びます。 サウンドがカッコいいゲームやロボットが出てくるゲーム、血みどろなゲームが特に好きです。

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編集/Game*Spark共同編集長 みお

ゲーム文化と70年代の日本語の音楽大好き。人生ベストは『街 ~運命の交差点~』。2025年ベストは『Earthion』。 2021年3月からフリーライターを始め、2025年4月にGame*Spark編集部入り。2026年1月に共同編集長になりました。

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