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Game*Sparkレビュー:『ライフ イズ ストレンジ リユニオン』「役作り」で構築した感情のドラマは唯一無二のダイヤモンド

インタラクティブな「参加する演劇」は次のステージへ。

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Game*Sparkレビュー:『ライフ イズ ストレンジ リユニオン』「役作り」で構築した感情のドラマは唯一無二のダイヤモンド
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2013年にアルカディア・ベイを襲った大嵐。そこから続くマックスとクロエの物語は『ライフ イズ ストレンジ リユニオン』で一つの区切りを迎えます。長年音信不通の――あるいは死んだはずの――クロエがマックスの元を訪れ、思いがけない再会と共に、カレドン大学を襲う大火災の謎を追っていきます。

マックスとクロエが関わる『ライフ イズ ストレンジ』『ダブルエクスポージャー』『ビフォアザストーム』の3作品をプレイしていれば、『リユニオン』のドラマを堪能する上で問題はありません。『2』『トゥルーカラーズ』については小ネタとして登場する程度なので、マックス視点からは知らなくても大丈夫です。

青い蝶は再び羽ばたく

前作の『ダブルエクスポージャー』の直接的な続きですが、『キャプテンスピリット』と『2』のような引き継ぎもなく、主要な5つを最初にセットアップする以外に過去の選択の影響は存在しません。前作のリプレイで「準備」をしなくても良いのはありがたいですね。とはいえ重要なのはストーリーの内容なので、うろ覚えになっているならしっかりとおさらいした方が良いでしょう。

以降、『リユニオン』の結末部分に言及します。
クリア後にお読みください。

ゲーム性において今作では新しい要素はほぼありません。マックスの時間の巻き戻し、クロエの説得は過去作の要素をそのまま持ってきたものです。主軸となる火災の犯人捜しもシステム的に特別用意されてはおらず、最終的に影響するのは最後の選択のみです。

そのためシステム面について特筆すべきことは何もありません。ストーリーテリングが『リユニオン』の全てと言っても過言ではないでしょう。

これまでのシリーズは連続ドラマの複数エピソードから構成されていて、インターバルの度に影響がある選択肢の結果が表示されていました。今回はエピソードの区切りがないノンストップ、いわば「映画版」の様な長尺の構成になっていて、思わせぶりな山場とクリフハンガー、マックスの新能力などもありませんでした。最後の最後まで何がどう影響するのか分からないまま一気に進みます。

大嵐が吹き荒れた前作とは対照的に、静かに進行するサスペンスや内省的な対話といった落ち着いたトーン。マックスの能力の見せ場は思っていたよりもずっと少なくなっていました。未来の写真を参照するのは「バックトゥザフューチャー」を彷彿とさせますし、タイムトラベルものとしてオーソドックスな展開で、本作において超能力は物語のドライバーではなかったのです。

では、『リユニオン』のテーマとは何か?それは、2013年にマックスが経験した「究極の選択」を、クロエの視点から構図を変えて再撮影することです。

今回のクライマックスで起きるカレドン大学の大火災は、これまでに起こった「嵐」と異なり、超常とは一切関わりが無い人間同士のしがらみから生じたことです。そのため物語の終着でマックスが抱えるのは、「究極の選択」ではなく「もっと多くの人を救えたかもしれない」という悔いです。アルカディア・ベイのようなトロッコレールのレバーは握らずに済みましたが、今度は「助けの手を伸ばせてしまう」際限の無いサバイバーズギルトに囚われてしまうのです。

2人の世界が全てだったあの青春時代と違って、大学の同僚達や生徒、そしてアマンダ、サフィ――守りたい居場所はとても大きいものになっていました。その全てをすくい上げるには、アルカディア・ベイのような単純な二択では収まらず、諦められないマックスが永遠に近いループに身を投じるのは目に見えています。

「選択」について、心理学では「選択のパラドックス」や「ジャムの法則」というものがあります。選択肢が増えることは一見良いことのように思えますが、対象が増えることでメリットデメリットの比較検討が複雑になり、意思決定の迷いが増えたり、後になってよりよい選択があったかも知れないと悔やむことが増えたりします。結果的に、多すぎる選択は選び取った一つの満足度を下げてしまう傾向にあります。

人の一生においても、多かれ少なかれ未来を決める重大な選択の場面が存在します。そして一度確定してやり直せないからこそ、次に進む覚悟を持って進むしかありません。

ところが、マックスのように無制限にやり直せるとしたらどうでしょう?どこまでやっても、何度繰り返しても、諦めの向こう側に手を伸ばして、永遠に悔いを消し去ることは出来ない。クロエやアマンダからしたら、万能感から来る傲慢と映ることもあったでしょう。

最後のシーンで、クロエはモーゼスから巻き戻しの起点となる写真を託されました。恐らく多くの人は最初で全ての人を救えてはいないと思います。マックスがこれを知ればまたやり直しを行ってしまうでしょうし、メタ的な見方をすればプレイヤーもあらゆる選択肢を試す権限を持っています。

しかし、一度辿り着いた結末が再びの改変でまた消えてしまうかも知れない、目先の結果を変えたとしても将来的にまた大嵐に発展するかも知れない――到底マックス一人ひとりで抱えきれる重荷ではありません。さらに、再会を果たしたクロエもいつ存在ごと消えてしまうかも分からない。

プレイヤーが再び分岐をやり直すことももちろん可能です。ですが、最初の1回でマックスとクロエとシンクロして体験した気持ちはその1回切りでしか存在できません。繰り返せば繰り返すほど、タイムラインの壁を越えて――私はあのときクロエを見殺しにした――再会を果たしたときの感情は薄れていくでしょう。

『ライフ イズ ストレンジ』シリーズにはタイムラインの無数の分岐があり、前作の『ダブルエクスポージャー』では平行世界の壁を壊してしまいました。それはマックスがタイムラインの「確定」を受け止めきれなかった悔いと繋がり、クロエを再び時空の渦に巻き込みました。

マックスにとってクロエが「あのとき」生きていたにしろ死んでいたにしろ、『リユニオン』に現れたクロエには、自分が今生きている世界が唯一の現実です。火災の調査で探索するにしても、口八丁の説得は巻き戻し無しの一発勝負。失敗して相手に口を閉ざされても、それを覆すことは出来ず、ただ時間の正方向へと進んでいくだけ。無論普通の人間ならこれが当たり前なのですが、マックスの巻き戻し前提の会話と並べるとコントラストがより際立つのです。

写真を焼き捨てるか、取っておくか。その選択は火事で犠牲になった人々の死を確定することに他なりません。必死に辿り着いた「今」のタイムラインを守るのか、マックスが背負おうとする重荷を下ろさせるのか、「今」とクロエ自身が上書きされる危険を承知で写真を残すのか。

それまでの過程は3作品を経てプレイヤーごとに千差万別あり、マルチバースに数多存在するプレイヤーそれぞれのクロエがどのような逡巡をするのか、私に分かるのは「私のクロエ」の感情だけですし、正解も間違いも無い以上別の選択からやり直して確かめるのも野暮というものです。

肝心なのは、そこに至るまでにプレイヤーが演者としてしっかり気持ちを作り上げることが出来ているか。感情移入を強く持って決断したか否か。本作の体験が素晴らしいものになるかは全てそこにかかっています。

『リユニオン』ではその没入を高めるための仕組みとして、マックスとクロエの対話を作りました。プレイヤーが一人二役で選択肢を選んでいくという少々複雑な場面です。もちろん火事についての情報交換でもありますが、ここで重要なのが、二人が抱いている感情をプレイヤーと共に構築していくプロセスです。一般的なADV作品であれば、脚本で定められた一つのストーリーに沿って感情の流れがドラマ的に構築されています。本作ではそれをプレイヤーの手に委ねることで、プレイヤーが演者としてマックスとクロエの役に入る機会を設けました。

思いがけない再会に何を思うか、未来への不安は何か。要所で感情の流れを作り、最後のクロエの選択に向かって「役作り」していきます。超能力の活躍を控えめにして内省の対話を重視したからこそ、マックスを想うクロエとして長い物語の結末に立ち会える。『リユニオン』における方針転換によって、プレイヤーそれぞれが抱く一回切りの感情移入が忘れられないものになったのではないでしょうか。

他の連作ADVがやるように安易な「正史」を決定せず、これまでの作品を踏まえた膨大な分岐ダイアログを備えているのは賞賛に値します。一度ではほとんど触れられないのでプレイ中意識はしませんでしたが、それをやってのけた演者の皆さんには頭が下がりますね。

『ライフ イズ ストレンジ』シリーズはジュブナイルSFドラマとして素晴らしい作品で、待望の実写ドラマもいよいよ始動しました。その上で、本作はゲームならではの「参加する演劇体験」において、プレイヤーが感情の役作りに携わるストーリーテリングの手法を大成させました。同ジャンルの『デトロイト:ビカムヒューマン』では、モーションコントロールによって「役作り」を行っていましたが、行動の選択とその結果を重視しています。それとは異なる方向性を見出したことで、『リユニオン』はより強く感情を動かすドラマに昇華しました。

現代のグラフィックとパフォーマンスキャプチャの技術であれば、実写に匹敵する人物の表情もコンソールで実現でき、演劇の新しいフィールドとしてゲームの可能性が『リユニオン』で示されたと言って良いでしょう。ゲームのストーリーテリングがこれからどのように進歩していくのか楽しみになる作品でした。


Game*Spark レビュー 『ライフ イズ ストレンジ リユニオン』 PlayStation®5/Xbox Series X|S/Windows/Steam® 発売日:2026年3月27日

10年歩んだタイムラインのあらゆる可能性を「箱」に詰め込んだ理想的な連作

GOOD

  • 前作の主要な分岐を切り捨てず、自然な感情移入を阻害しない
  • フェイシャルアニメーションの進化で洋ドラの雰囲気を違和感なく実現
  • 構成の変化で最後まで影響が読めない

BAD

  • グラフィックの読み込みの遅れが没入を削ぐ

ライフ イズ ストレンジ リユニオン -PS5
¥5,667
(価格・在庫状況は記事公開時点のものです)

ライフ イズ ストレンジ ダブルエクスポージャー -PS5
¥4,650
(価格・在庫状況は記事公開時点のものです)
ライター:Skollfang,編集:みお

ライター/好奇心と探究心 Skollfang

ゲームの世界をもっと好きになる「おいしい一粒」をお届けします。

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編集/Game*Spark共同編集長 みお

ゲーム文化と70年代の日本語の音楽大好き。人生ベストは『街 ~運命の交差点~』。2025年ベストは『Earthion』。 2021年3月からフリーライターを始め、2025年4月にGame*Spark編集部入り。2026年1月に共同編集長になりました。

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