2026年5月7日にFellow Traveller / BEEP JapanよりSteam/PS5/ニンテンドースイッチ向け日本語版が発売されたRPG『Wander Stars』は、ベネズエラで創設され現在はスペインを拠点に活動するインディースタジオ・Paper Castle Gamesが開発した「スーパーアニメターンベースRPG」です。
公式サイトにはこう書かれています。「超強ぇパワーがフクザツに重なり合ったスーパーな攻撃をぶっかませるぞ!」
初見でこの煽り文句を読んだとき、筆者は「またノリだけで押し切ってくるタイプのゲームか?」と斜に構えていました。ですがプレイを始めて30分もしないうちに、そのキャッチコピーの意味を理解し、コトバの組み合わせで敵の弱点を的確に突いたとき、脳汁が出るのを感じました。
今作は、カルト的な人気を博した前作『Underhero』に続く同スタジオの新作で、今作では90年代の日本アニメから強烈なインスピレーションを受けて作られています。コトバを集めて自分だけの技を編み出し、主人公と相棒が各々の目的のなか、数々の強敵(とも)と出会い別れながら宇宙を旅する物語。
本稿ではその独特すぎる戦闘システムの手触りを中心に、プレイレポートをお届けします。
『Wander Stars』My Nintendo ページ『Wander Stars』PlayStation Storeページ『Wander Stars』Steamページ
コトバを組み合わせて技を作る。しかし「最強技ぶっぱ」では勝てない
まずは物語を簡単に紹介します。主人公は「気合」と呼ばれる武術を修行中の若き武闘家・リンゴ。行方不明の兄を探している彼女は、過去から逃げる謎めいた相棒・ウルフと出会い、伝説の「ワンダースター・マップ」のかけらを探す旅に出ます。
宇宙海賊、謎の悪党、かわいい魔女、不良高校生、喋るカラス、熟練の武闘家たち――登場するキャラクターの並びだけで、もう狙いは明らかでしょう。これは90年代アニメを浴びて育った世代に向けた、直球のオマージュなのです。


さて、本作最大の特徴である戦闘システムの話をしていきます。
リンゴは技を「コトバの組み合わせ」で繰り出します。たとえば「ファイア」と「ヘッドバット」を組み合わせれば「ファイアヘッドバット」。ここに修飾語の「スーパー」を加えれば「スーパーファイアヘッドバット」になります。コトバは本編中に200種類以上集められるそうで、組み合わせ次第で自分だけのオリジナル技が作り放題です。
ここまでは、公式PVを見て誰もが想像する通りの仕組みでしょう。
問題はここからです。「とにかく一番強い単語を組み合わせればいい。」そう思ってプレイを始めた筆者は、早々に痛い目を見ることになりました。


敵には弱点と耐性があり。「倒しすぎない」調整も求められる
まず、敵には弱点と耐性があります。ここは一般的なRPGと同じです。炎に弱い敵には炎属性の技が効きますし、水属性に耐性のある敵に水技を打ち込んでもイマイチ削れません。
ですが本作の戦闘が深いのは、「敵の残りHP」と「自分の技の威力」を天秤にかける局面が頻繁に発生する点にあります。本作では、敵の体力を完全に削りきってKOさせるのではなく、敵の体力を決められた値の範囲に調整して、降伏させるほうが報酬が良い設計になっています。威力の高い技で殴るとオーバーキルになってしまうので、「敵を生かして勝つ」ための火力調整が求められます。

それに加えて、使ったコトバにはクールダウンがかかります。短期決戦に頼ってアグレッシブにコトバを選んでいくと、何もできなくなってしまうこともあります。クールダウンを短くするコトバを挟みながら戦っていくのがコツです。
さらに、本作は基本的に体力の回復手段が限られておりかなりシビアになっています。時々ブロックを挟まないと、HPはゴリゴリ削られていきます。
結果、筆者の脳内は毎ターン以下のような思考でフル回転することになりました。
「この敵は炎弱点だが、残りHPを考えると“スーパーファイアヘッドバット”は過剰火力。ここは"スーパーヘッドバット"単発で削って、次ターンで相手の攻撃をブロック。空いた間に"ファイア"のクールダウンを戻しておこう……」
これはもう、立派な戦術パズルです。

ペップアップ(バフ)と分岐マップ。ローグライトの匂いも漂う
戦闘以外の要素にも触れておきたいと思います。
エピソード内のマップは分岐構造になっており、進む道によってパワーアップイベント、アイテム入手、金銭入手、あるいは体力の増減イベントなどに遭遇します。この分岐選択は、ローグライトの"ルート構築"の楽しさに近いものがあります。体力を犠牲にしてでも敵と戦って単語やアイテムの入手を狙うか、安全に最短距離を選ぶか――毎回の判断でゲームの展開が変化します。

また、名誉ある勝利(降伏させた勝利)を重ねると「ペップアップ」と呼ばれるバフを獲得できます。これを組み合わせることで、プレイスタイルに応じたビルド構築が可能になります。コトバを拾いながら、ペップアップで自分の戦い方を定義していく、この二重の成長軸が、本作の戦闘を飽きさせません。

ビジュアルについても触れないわけにはいきません。
本作のアートスタイルは、90年代の日本アニメのタッチと、アメリカのカートゥーン調のテイストが絶妙にミックスされています。キャラクターの輪郭線の太さ、セル画的な陰影の付け方、戦闘時に入るスピード線や集中線、90年代アニメの表現が随所に仕込まれています。


まとめ:90年代アニメの魂を、今のゲームシステムに翻訳した一本
『Wander Stars』は、見た目のノリの良さに反して、思った以上に頭を使うRPGです。コトバを組み合わせて技を作るという一見シンプルな仕組みの裏に、弱点・耐性・HP管理・クールダウン・バフ構築・ルート選択……多層的な判断が絡み合っています。
ですが、それが重苦しくないのは、作品全体に漂う90年代アニメへの愛と、「スーパーファイアヘッドバット!」と叫んでしまいたくなる開放的なノリのおかげです。
間違いなくオススメできるのは、90年代にテレビの前でアニメを観て育ち、今もRPGの戦闘にワクワクできる人です。そういう人にとって、本作は間違いなく"刺さる"1本になるでしょう。カルト的な人気を博した『Underhero』で確かな手腕を示したPaper Castle Gamesが、今度は別の角度からRPGというジャンルに切り込んできた。その挑戦を、ぜひ自分の手で確かめてみてください。


『Wander Stars』は、PC(Steam)/PS5/ニンテンドースイッチ向け(その他Fellow Travellerから GOG.com, Humble Bundleや、Xbox Series X|S)に配信中です。気合を込めて、自分だけのスーパー技を叫んでみてください。
タイトル:Wander Stars
開発元/発売元:Paper Castle Games / Fellow Traveller / Beep Japan
筆者がプレイした機種:Steam
発売日:2025年9月20日(日本語版:2026年5月7日)
記事執筆時の著者プレイ時間:4.7時間
価格:3,520円











