2015年のWii Uで発売された『ヨッシー ウールワールド』以降、『ヨッシー』のアクションゲームを手掛けてきたグッド・フィールによる最新作『ヨッシーとフカシギの図鑑』が発売されました。
そんな本作のテーマは、「生き物調査」。『ヨッシー』シリーズにはこれまでも不思議な敵キャラたちが多数登場してきましたが、今回はそんな彼らにフォーカスが当たった作品です。
これまでのステージクリア型のアクションゲームとは少し違う、さまざまな生き物の特徴を試行錯誤しながら発見していく『ヨッシー』最新作をレビューしていきます。
毎ステージ新たなアイデアが押し寄せる贅沢な体験

ヨッシーたちの暮らす島に、ある日現れた不思議な図鑑「フカシギ」。フカシギの中にはさまざまな生き物が書き記されており、ルーペを介してその世界へと入ることができます。本作の目的は、その生き物たちの「特徴」を調査することです。
このゲームでは、基本的に1ステージにつき1種類、主役となる新たな生き物が登場します。その生き物の特徴、生態がどういったものになっているのかを発見していくのがステージの主な目的です。

ステージの中でできることは、とにかくヨッシーのアクションを駆使していろいろ試してみること。舌を伸ばしてモノを食べたり、食べたものをタマゴにして投げたり、空中から素早く着地するヒップドロップをしてみたり、ステージ中を駆けまわって、その世界に住む生き物に対していろいろとアクションをしていきます。
そうしたアクションに対して、生き物はさまざまなリアクションを返します。たとえば「花に顔のついたような生き物」にヒップドロップをすると、地面に植わって芽が出たり、「モノに寄生する綿毛のような生き物」に水を吸わせると膨らんだり、もしくはある生物は食べたら甘かったり。「これをしたらどうなる?」という好奇心が裏切られることはほとんどないといえるほどに、リアクションの数は膨大です。

本作から新たに追加された、生き物を「おんぶ」するアクションも、この試行錯誤の体験に貢献しています。生き物たちは、水に反応したり、果物に反応したりとステージのさまざまなギミックに対してもリアクションをするため、生き物を持ち運んでそれらとインタラクションをさせるという体験はサンドボックス的で楽しいものになっています。
単に背負って運べるだけでなく、その状態で投げると杭のように木に刺さる生き物や、背負った状態で移動することで口からシャボン玉を飛ばすカエルのような生き物など、おんぶした状態でできるギミックもさまざまです。

その生き物に関する特定の大きな発見を終えると、そのステージの出口が目の前に出現します。出口に触れることで調査終了でき、次のステージが解放されるのですが、ここで調査終了を選ばずに引き続きその生き物の調査を続行することもできます。調査が終わったら、その生き物に「名前」をつけて、次のステージへ。こうして少しづつ図鑑を完成させていくのです。
このコンセプトであるため、本作は毎ステージ必ず新たなギミックが用意されています。新たなステージに赴くたびに新たな生き物が登場し、その生き物が新たな遊びを見せてくれる。どんどんとアイデアとギミックとアセットが使い捨てられていく非常に贅沢なアクションゲームになっていました。

本の中の世界を探索するというテーマであるため、アートも手描き風のシェーディングに統一されています。背景には手書き風のアウトライン、影はハッチングで表現され、生き物たちは意図的にフレームレートが落とされアニメチックに。
ダッシュする時に「レレレのおじさん」のように脚が分裂してタタタッと翔けるなど、アニメーションもコミカル。新たな“特徴”の発見があるたびに、「サササッ」という筆の音とともにその内容が画面にイラストで書き込まれていくといった、絵本の世界であることを感じさせる随所の演出も楽しい部分です。

そんなアートから連想される可愛らしい雰囲気とは対照的に、自然や生き物の残酷さを感じさせるブラックなネタが多数登場するのも本作の魅力。『ヨッシー』シリーズがときおり見せる不気味な雰囲気の魅力は健在です。
導線のない“特徴”の条件と、手厚いヒント機能の矛盾
『マリオ』シリーズなどと比較して、ステージ中の収集要素が多めに用意されていることも『ヨッシー』シリーズの特徴の一つです。そのうえで、マップも単純なリニアというわけではなく、開けた場所や分岐が多くでてきます。そのため、シリーズを通してステージの収集要素をコンプリートする難易度は高めです。

上述のとおり、本作は「生き物調査」をコンセプトにしており、膨大な数の“特徴”が図鑑に記録されていきます。これらの“特徴”のコンプリートを目指そうと思ったら、今回も相当なやりこみが必要です。
しかし、無数のアクションや条件に反応する生き物たちの“特徴”をノーヒントでコンプリートするのは正直不可能に近い部分があります。そのことに本作は自覚的であり、一度ステージをクリアすると、そのステージでまだ見つけていない“特徴”に対するヒントが表示されるようになっています。しかし、当然ながらこれは、さまざまな試行錯誤の中で自ら新たな“特徴”を発見する感動を奪ってしまう仕様でもあります。

そもそも、ゲームのルールとルールを覚えて、その組み合わせで新たな事象を起こすというのが本作の生き物調査の本質であり、これは謎解きやパズルの体験と同じものです。その生き物と、ステージにあるギミックと、ヨッシーのアクションのうちのどれかの組み合わせが“特徴”を見つける条件になっており、生き物と触れ合って、その生き物のルールを知っていく中で「次はこんなことが起きるのではないか?」と閃きます。
しかし、本作の“特徴”の中には、そういったルールのかけ合わせだけでは発見できないものが無数に存在しています。たとえば、最初に登場する「花の生き物」の「すべてのカラーバリエーションを一箇所に集める」といった条件は、ルールに関連付かない思いつきか、もしくはヒントを見た後でなければ達成するのは難しいものです。

こういう条件は、まぐれで発見できた時には楽しいかもしれませんが、基本的に他の“特徴”のように導線があるわけでもないため、ノーヒントでの発見は難しいです。かといって、ヒントを見た後では、ただ全色を運んで集めるだけの作業になってしまいます。
こういった、ルールに紐づかない条件を持つ“特徴”が無数に存在してしまっているために、本作は手厚いヒント機能を用意せざるを得なかったのです。しかし、ヒントとは本来それを求めている人にのみ与えるべきものであり、ヒントなしで攻略できない要素を作った後に強制的なヒント機能を実装するというのは、チグハグなディレクションだと言わざるをえません。
“ダメージなし”は本当に意図した体験か
近年の『ヨッシー』シリーズには、空を飛べ、受けるダメージが減る「パタパタヨッシーモード」や、回復アイテム量が二倍になる「エンジョイモード」など、初心者救済のためのモードが搭載されているのが一般的です。

しかし、今回の『ヨッシーとフカシギの図鑑』にはそういった要素は存在していません。なぜなら、そもそも本作のヨッシーは「ダメージを受けない」からです。過去作のように体力のようなものはなく、敵の攻撃を受けてもすこし仰け反ったり、ヨッシーが声をあげるだけで何も影響はありません。
この仕様は、調査を目的とするゲームのコンセプトに合わせたもののように思えます。ステージ中を駆け巡っていろいろなことを試すのが目的であるため、HPがなくなってステージがやり直しになったり、ゲームオーバーになったりすると、試したいと思っていたことが中断されてしまいます。あえてダメージがないことで、思う存分調査を楽しむことができるのです。
一方で、ゲームを進めていると、本当にこの体験は意図されているものなのだろうかと疑問に感じる場面もでてきます。上述のとおりヨッシーはダメージを受けないのですが、それにしては「攻撃を行ってくる敵」が結構多いように思えるのです。

しかも、どの攻撃も明確に回避、防御をして対処できるようにデザインされていることが感じられる挙動をしています。しかし、当然ながら攻撃を受けても何も影響はないので、そのような対処をする意味はありません。
これはボス戦においても同様のことが言えます。本作を進めていると、時折「クッパJr.」と「カメック」のコンビによるボス戦的なイベントがはじまります。ボス戦は、そこで出会った生き物を活用して戦うものが基本です。

しかし、結局のところそれらのクッパJr.たちの猛攻に対処をする必要はありません。まるで避けることが必要そうな範囲攻撃や、それぞれ異なる対処を求められるギミックが盛り込まれたボスが目の前にいるのに、結局すべて関係がないのです。
正直なところ、これらを体験した後だと「元々本作にはダメージがあったのではないか?」と思わざるをえません。ダメージがある前提でデザインされたステージやボス戦たちを、ダメージなしで攻略しているようなチグハグさを感じてしまうのです。
緊張感があるべき場面でも緊張感がないために、せっかく多様なアイデアひしめくゲームであっても、全体としては起伏のない体験になってしまっています。

ステージ1つに対して必ず新たなアイデアが盛り込まれている、贅沢なアクションゲームである『ヨッシーとフカシギの図鑑』。毎ステージ異なるギミックを持つ大勢の生き物たちと、それぞれに用意された無数のリアクションが好奇心を刺激してくれる作品でした。
しかし、中にはルールによる導線のないリアクションも多く、ノーヒントでの“特徴”のコンプリートは困難を極めます。そのことに自覚的であるゆえに、強制的にヒントが与えられる作りになってしまっているのは、正直チグハグな作りだと言わざるをえません。こういったディレクションの統一感のなさは、ヨッシーがダメージを食らわない仕様になっているにもかかわらず、回避や対処が可能な攻撃をしてくる敵やボスが多数存在している部分からも感じられます。
せっかくの無数のアイデアの数々があるにもかかわらず、全体として平坦で作業的な体験になってしまっているのは、こういったコンセプト面でのチグハグさが起因しているように思えます。
Game*Spark レビュー 『ヨッシーとフカシギの図鑑』 ニンテンドースイッチ2 2026年5月21日
毎ステージ異なるアイデアが登場する贅沢なアクションゲーム。なのに平坦な体験になってしまうチグハグなコンセプトが惜しい。
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GOOD
- プレイヤーの試行錯誤が発見に変わる「生き物調査」の体験
- 毎ステージ必ず新たなギミックが登場する贅沢さ
- 手描き風のアートとアニメーションが彩る本の中の世界
- ちょっと不気味な『ヨッシー』らしい魅力も健在
BAD
- ヒント無しでは発見できない、ルールによる導線のない“特徴”の数々
- 強制的なヒント機能によって作業になってしまう“特徴”探し
- 回避できるようデザインされているのに、ダメージがないために意味を失った敵・ボス戦













