「家畜に神はいないッ!!」『ファイナルファンタジー』約40年の歴史においても、未だにこれを超える暴言は現れていないと言っても過言ではありません。そんな業の深い言葉の数々を放ったアルガスも、混迷の今の世の中を見ると、案外世の中にたくさんいるようにも思えます。あなたのすぐ隣にも、もしかしたらあなたの中にもアルガスはいるのかも知れません。
Dialogue/Algath and Mileuda
本作では出身階級に応じたアクセント違いを採用しており、文面上は同じでも会話音声で口調の違いが明確に出て来ます。ここではそれに準じてミルウーダの口調をやや粗野な調子で訳してみました。

Mileuda:How can you noble live as you do an yet hold
your heads so high?
We are not chattel! We are humans, no less than you!
What flaw do you hold there to be in us?
That we were born between a different set of walls?
Do you know what it means to hunger?
To sup for month on naught but broth of bean?
While you wage your wars that you might grow fat,
we are made to starve!
You call us thieves, but it is you who steal from us the right to live!
Argath:You, no less human than we? Haha!
Now there's a beastly thought.
You've been less than we from the moment your baseborn father
fell upon your mother in whatever gutter saw you sired!
You've been chattel since you came into the world
drenched in common blood!
Mileuda:By whose decree!? Who decides such foul and absurd things?
Argath:'Tis heavens's will!
Mileuda:Heaven's will? You would pin your bigotry on the gods?
No god would fain forgive such sin, much less embrace it!
All men are equal in the eyes of the gods!
Argath:Men, yes. But the gods have no eyes for chattel.
Mileuda:Ungh...

Chattel:家畜
Flaw:欠点、不備
Sup:啜る
Naught:何もない(Nothing)
Wage:実施する(主に戦争)
Starve:飢える
Baseborn:下賤
Decree:定める
Foul:腐敗した、卑劣な
Absurd:不条理な
Fain:喜んで、快く
Embrace:教義を取り入れる(宗教)

ミルウーダ:てめぇら貴族はのうのうと暮らしながら偉そうにしやがって!
うちらは家畜じゃねえ!あんたらと変わらない人間だ!
うちらに何の咎があるってんだ?ただ違う壁に囲われて生まれたってだけだろうが!
空腹がどういうもんか分かるか?豆だけのスープを啜って何ヶ月も過ごす意味を?
あんたらがやってる戦でそっちが肥えてく間、うちらは飢えさせられてんだよ!
うちらを盗賊と言うけどよ、生きる権利を盗んでるのはあんたらだ!
アルガス:おまえが、オレたちと変わらない人間?はッ、所詮畜生の考えだな
お前の下賤な父親がどこぞのドブで母親を孕ませたその瞬間から、
お前はオレたちより劣った存在なんだよ!
平民の血に濡れて産み落とされたときから、おまえはずーっと家畜なのさ!
ミルウーダ:誰の定めだ!?そんなくだらねぇ理不尽を誰が決めた?
アルガス:それが天の意思だ!
ミルウーダ:天の意思?てめぇの屁理屈を神のせいにしようってのか?
どんな神もそんな罪を喜んでお赦しになるもんか、まして思し召しなど!
全ての人は神の目の前で平等だ!
アルガス:人間ならな。だが神には家畜に向ける目は無いんだよ
ミルウーダ:っ…!

今回のポイントは「神の前では何人たりとも平等のはず」の箇所に出てくる「Eyes of the gods」です。階層社会の厳しさが描かれるこの時代のイヴァリースにおいて、ミルウーダ達の問いかける人権論は歴史上の啓蒙思想に通じるものがあります。啓蒙思想が導いたフランス革命で既得権益的な封建社会を解体し、後に普遍的な基本的人権に発展する「フランス人権宣言」で全ての人間の自由と平等を宣言しました。「神の目」はそこに重要なモチーフとして描かれています。

一般的にフリーメイソンのイメージがあるこの図像は、本来は神の三位一体と全てを見通す全能の目を表わす「プロビデンスの目」というものです。フリーメイソン以前の中世からキリスト教絵画に用いられていて、文字通り神の意志を意味しています。その前のアメリカ独立宣言にも「all men are created equal, that they are endowed by their Creator with certain unalienable Rights」とあり、人権と神の意志は密接に関係があるのです。

アルガスはこれに対し、嫌みっぽく「the gods have no eyes for chattel」と返しました。「「God(s)」たる創造主は全ての存在を作ったので家畜だろうとそこら辺の草だろうと神はいるのでしょうが、その神にさえ「家畜」は見放されている、神の意志は注がれていないと詰っている訳です。「神はいないッ!」と比べればまだマシではあるものの、暴言であることには変わりありません。くれぐれも、こんなことを平気で口にする人間にならないように。











