『This War of Mine』は、実際に1992年に発生したボスニア・ヘルツェゴビナ紛争から着眼点を得て制作されたサバイバルゲームです。プレイヤーは戦闘に慣れた兵士としてではなく、戦争において最も非力な存在である民間人として紛争を生き残ることを目指します。
本記事では、一連のプレイを通じてプレイヤーが操作する民間人の生活や選択、心理状態にフォーカスを当てながら、プレイレポをお届けします。
悪党から命からがら逃げて、シェルターに避難してきた男女

戦時下という治安が極限まで悪化した状況では、民間人にとって危険をもたらすのは敵国の軍人だけではありません。治安の乱れに便乗し窃盗や強盗を行うならず者や、自国の軍人崩れのチンピラも警戒の対象です。ロマンとカティナの2人は、そういった輩から間一髪逃れてこのシェルターにやってきました。
こういった情勢でなければ、2人は出会うことすらなかったかもしれません。今回、筆者はこの2人を操作してゲームを進行していきます。
急いで資材の収集を

さて、過去の砲撃により今にも陥落しそうな建物ですが、紛争終結までこのシェルターで生きていかなくてはなりません。直近の懸念は、寒さと空腹、そして寝床の確保についてです。まずはシェルター内に散らばっているガラクタを急いでかき集め、設備を揃えていきましょう。

大きく道を塞いだ瓦礫の山は、シャベルを作成することで効率良く除去できますが、シャベルやバールといった道具には耐久度が設定されており、壊れればまた作り直さなくてはいけません。また、いざという時には武器として振り回すことが可能です。そのタイミングが来ないことを願うばかりですね。

このシェルターに着いた際、ロマンは怪我を負っていたため、ガラクタで作ったベッドにロマンをすぐに寝かせ、休養させます。包帯による保護も治療を促進させるでしょう。言うまでもなく、包帯や飲み薬といった医薬品は戦時下では非常に貴重な物資です。

ラジオは重要な情報収集ツールです。シェルターにいながらにして外の情報を逐一取得できます。嗜好品であるコーヒー豆の需要が高騰しており、入手が難しくなっていることが伺えます。ちなみに、カティナはコーヒー愛飲家であるため、コーヒーを長期間摂取しない生活が続くと体調を崩すかもしれません。対してロマンは愛煙家で、1日数本のタバコを吸います。コーヒー豆とタバコは今後余裕があれば確保したいところ。
昼の拠点整備、夜のスカベンジ
本作は昼間と夜間でフェーズが分かれており、昼は飲食や休憩、拠点補強をする時間で、夜は危険な市街地に出かけ物資の収集をする時間となります。

ロマンは怪我をしているため、夜間はシェルターの見張りをしてもらい、カティナにスカベンジに出てもらいます。廃墟化したおもちゃ屋にやってきました。スカベンジ先にも瓦礫の山や鍵のかかったクローゼットが置かれていることがあり、シェルターからシャベルやロックピックを持ち込むことによりスムーズに物資漁りが出来ます。また、他の中立的な市民や敵対的なごろつきと遭遇する可能性もあり、初めて訪れるロケーションでは細心の注意を払う必要があります。

物資漁りの途中、ガラクタの山の中に「壊れたおもちゃ」を見つけました。本記事の冒頭で、「民間人は戦争において最も非力な存在である」といったことを書きましたが、子供はその存在の中でもとりわけ無力で、最大の被害者と言えるでしょう。「壊れたおもちゃ」の持ち主であろう子供が、今は安全な場所に逃げおおせていることを願います。

夜が明けたころカティナが帰還すると、留守中にシェルターが強盗に遭ったことが判明しました。強盗は夜間に不定期にやってきてはシェルター内の物資を盗んだり、住人を傷付けたりします。今回は、見張っていたロマンがバールを持って追い払ってくれたお陰で事無きを得ました。ただ、怪我がまだ完治していないロマンにあまり無理をさせたくはありません。
スカベンジでカティナが集めてきたスクラップを利用し、キッチンやストーブ等の必須設備を作成します。ストーブで木材を燃やし一定以上の室温を保っていない場合、キャラクターは病気にかかりやすくなります。

3日目の昼、中立的なトレーダーが訪問に来ました。本作には通貨の概念は存在せず、物々交換が基本となります。スカベンジで手に入れたアルコールを、数本のタバコと交換しました。喫煙家のロマンのためです。
更なる治安の悪化

4日目の昼、ラジオを聴いていると、街の近辺で犯罪事件が増加しているとの情報を得ました。この頃から夜間の強盗の襲撃が頻繁になり、非道さも増してきます。バール1本で強盗を追い払うには力不足かもしれません。

その日の夜、やはり強盗が来て、シェルター内に備蓄していた食料を奪われてしまいました。ロマンが怪我をしなかったことは不幸中の幸いですが、もはや銃器無しにはシェルターを守り切れない事実は明白でした。武力に対抗するための武力が必要です。その日の晩、スカベンジでどうにかして銃を確保することを決意しました。

5日目の晩、シャベルを片手に、武装したチンピラが占拠しているという噂の建物に忍び込みました。敵は飛び道具を持っているため、気付かれずに背後を取る必要があります。

1人をシャベルで撲殺し、奪った拳銃で残党を処理します。最後の1人が死に際に命乞いをしてきましたが、情けをかけると隙をついて反撃されると思ったので、断腸の思いでとどめを刺します。
制圧後、建物全体を探索すると、必要な銃器だけでなく大量の食料や酒を入手することができました。思わぬ収穫にこの時、「自分たちが生き残るためには他人から直接奪ったほうが手っ取り早く確実なのでは?」という考えが筆者をよぎりました。
奪われる側から奪う側に

後日、ロマンは護身用のはずだった銃を持ち、ある老夫婦が住んでいる家に向かいました。逃げる隙も与えず2人を射殺し、家を物色します。やはり老夫婦は食料品や医療品、価値ある宝石等をたんまりと備蓄しており、それらの物資を大喜びで持ち帰ることに。去り際に、部屋の片隅で一枚の手紙を見つけました。

おそらく戦火を逃れて避難した孫に宛てて、老人が書いた手紙でしょう。そう、今しがた殺した老夫婦も自分達と同じただの民間人で、この戦争の被害者だったはずです。子供も孫もいるはずでした。生き残るためとはいえ、目先の利益のために罪のない彼らを殺してしまいました。「自分はとんでもない事をしてしまったのでは」と悔恨の念が筆者を襲い始めます。

プレイヤーが操作するキャラクターにもメンタルの概念があります。殺人後、帰宅したロマンは自己叱責の念に苛まれることに。いてもたってもいられず、調達した酒を飲んだりひたすらタバコを吸って気持ちを落ち着かせます。

しかし、どちらかと言えば、老夫婦を射殺したことでメンタルをより落ち込ませているのは、射殺したロマン本人ではなく、留守番をしていたカティナでした。このように、キャラクターの選んだ行動は本人だけでなく、その仲間にも影響を及ぼします。老夫婦を殺した挙句物資を盗んでしまったことで、カティナは「うつ状態」に。メンタルに著しい悪化がみられるキャラクターは、歩行速度やクラフト速度が遅くなったり、夜間に仲間と口論をするリスクが上がったりします。
冬将軍の訪れ

紆余曲折ありながらも生き抜いているといつのまにか冬が訪れました。冬の間は気温が下がることによりストーブの燃料の消費が激しくなり、キャラクターは病気にかかりやすくなります。カティナ達はメンタルの悪化を引きずったまま酷寒に耐えることを強いられ、二重苦の状態に。

そんな中、2人のシェルターに突然子供が訪れ、母のために薬を分けてくれと頼んできました。老夫婦を殺してしまったことへの贖罪になるとは思えませんが、なけなしの薬を子供に与えることに。すると、人助けをしたことによりカティナ達のメンタルが改善しました。悪事を行うとメンタルが落ち込むのと同様に、善行を為すと精神状態の向上に繋がります。

厳しい寒さの日々の中、少しずつ、しかし確実に減っていく燃料や食料を心配していると、突如「平和維持軍」が街に到着し、紛争が終結しました。戦争を生き残りホッと胸を撫で下ろした筆者ですが、同時に、他人を犠牲にした上に成り立った生存から、「本当にこれでよかったのか?」という気持ちがゲームクリア後も残りました。
反戦ゲームとして作られた側面も
本作は、11 bit studiosの手によって反戦ゲームとして作られた作品であり、モノクロに描かれたグラフィックからもその思いは窺えます。ゲーム内でどのような行動を選択するかはプレイヤーに委ねられていますが、重い選択にはそれ相応の代償が常に付きまとうことになります。
ゲーム内では紛争の勃発によって治安が悪化し、強盗やチンピラに加えて、ロケーションによっては市民を無差別に狙撃するスナイパーも登場します。個人的には、そういった加害者側の集団も、戦争さえ起きなければ犯罪に手を染めることなく、ごく普通の民間人だったのではないかと思います。戦争はそこまで人を変えてしまう、強大な力を有していることを表しているのかもしれません。
『This War of Mine』は2014年にリリースされた作品ですが、現在フルリメイクが進行中と発表されています。











