筆者の心に、妙に残って忘れられないゲームがあります。
世界には楽しいゲームが溢れていますが、そのすべてが心に深く刻まれるわけではありません。
ストーリーの細かい部分などは忘れていても、絶対に忘れられないシーンがあったり、唯一のプレイ体験を提供してくれたりする、そんなゲームは誰の心にも存在しているのではないでしょうか。
筆者にとって『レッド・デッド・リデンプション2』(以下、『RDR2』)は、まさに忘れられない、忘れようがないほど心に刺さったゲームでした。
「Rockstar Games」が開発を手がけた本作は、同社の最新タイトル『グランド・セフト・オートVI』の発売が迫っていることもあり、再び注目を集めている作品でもあります。
本稿では、『RDR2』の世界は何がすごいのか、なぜ主人公は世界中のプレイヤーから愛され、どうして100時間遊んでも銃撃戦に飽きないのか、といった疑問に筆者なりの言葉を交えて回答しながら、本作の魅力をお伝えします。特に『RDR2』で楽しめるライフスタイルや、銃撃戦のディティールなど、本作の魅力を構成する一要素について、深く掘り下げてご紹介します。
まず、本題へ入る前に皆さんに伝えておきたいことがあります。
『RDR2』は前作未プレイでも全く問題なくプレイできる作品である、ということです。本作は、前作『レッド・デッド・リデンプション』の前日譚なので、ストーリーの時系列的に前作を知らなくても問題ありません。筆者の周りにも「『RDR2』から遊んで大丈夫?」という方がいたので、ここは声を大にしてお伝えしておきたいです。つまり、本稿で興味を持ってもらえたら、すぐにその世界へ飛び込める、ということです。
中毒性のある狩猟生活

主人公のアーサー・モーガンが所属するダッチギャングのメンバーが、ある“大仕事“に失敗してしまい、法執行官から逃走している場面から物語は幕を開けます。
人里離れた雪山に避難してはみたものの、お金もなければ食料もない。ゲームの冒頭、ギャングの資金難と食糧難を同時に解決する方法として提示されるのが「狩猟」です。
ゲームスタート時点では大した武器を所持しておらず、弓矢などを用いて良質な獲物を狩らねばなりません。
『RDR2』における狩りの要素は非常にリアルで、狩りの対象となる動物に適した武器や弾薬を用いる必要があります。例えば、オグロジャックウサギなどの小動物に強力なライフル弾を叩き込んでしまえば、肉や毛皮の損傷が激しくなり、価値が大幅に下落します。肉質は三つ星で評価され、状態が良いお肉ほど高値で売ることができます。
本作の狩りが面白いのは、同じ種族の動物でも個体によってランクが異なる点にあります。元々星1つの獲物をどれだけ丁寧に狩ったとしても、大した利益にはなりません。
なので、肉質の良い獲物を探す必要があるのですが、そこで活躍するのが「双眼鏡」です。遠くから獲物に焦点を当てて「調べる」ボタンを長押しすると、獲物の詳細やランクが画面右下に表示されるのです。もしも状態の良い獲物をみつけて「星三つです!」と脳内で高らかに声を上げたとしても、慌ててはいけません。騎乗状態では、こちらが接近する気配を察知して、獲物の群れが逃げてしまうからです。
獲物を怯えさせないよう、馬から降りて、中腰になりながらゆっくりと接近しましょう。
アーサーは五感が優れており、獲物の匂いなどから痕跡を見つけ出す能力を持っています。獲物の足跡はハイライトされるため、見失った時には大きな手掛かりとなるでしょう。所持金に少し余裕があれば、街の小売店で「臭い消しローション」を買っておくのもおすすめです。
獲物に適した武器と弾薬を馬の積み荷から下ろし、仕留められる範囲まで迫れたとしても、やはり慌ててはいけません。下手に攻撃を当て続けると、皮や肉の品質が落ちてしまうため、急所を確実に捉えたいところです。
獲物をロックした状態で「呼ぶ」を選択すると、アーサーが口笛を吹いて注意を引きます。獲物が音につられて面を上げた瞬間にズドン。最小限のダメージで狩りに成功すると、名状しがたい満足感が得られます。見事に一撃で仕留められた時の達成感や、撃ち損ねてしまった時の悔しさも含めて、そのプロセス自体が大きな中毒性をもたらすことでしょう。
そして、『RDR2』の凄さは獲物を仕留めた直後に分かります。
何と恐ろしいことに、全ての動物に対して、皮を剥ぐモーションがごまかし一切なしで用意されているのです。横たわる獲物の腹から足の付け根に向けてナイフを捌き入れ、ベリベリと皮をはぎ、くるくるとまとめる一連の動作が狩りのリアリティをより一層高めてくれるのです。

前作はナイフを入れる瞬間に主人公のアップになり、獲物の様子は映らないカメラアングルで表現されていました。ものすごい進化です。ただ、獲物の皮を剥ぐ様子はある程度簡略化されているものの、スキップできないため「テンポが悪い」と評される要因でもあります。
その意見にも共感できる一方、ゆったりとしたテンポ感は、後述する「魅力」を生むために必要なプロセスでもあります。
ギャングの生活と街での暮らし
手に入れた食料は街の肉屋に買い取ってもらうこともできますが、せっかくなのでダッチギャングのキャンプへ持ち帰るとしましょう。腹を空かせた仲間が待っています。調理担当のピアソンという大柄な男性にお肉をドカンと渡すと、美味しいシチューを作ってもらえます。
筆者の「ここたまらん」ポイントは、キャンプでシチューを食べながら迎える朝です。
シチューを食べながら焚き火に向かい、朝日を浴びながら淹れたてのコーヒーが飲めるのです。筆者は過去に何度か泊まりがけのキャンプをした経験があるのですが、山の中で朝日を浴びながら目玉焼きとコーヒーを楽しんだ「あの最高の朝」が、ゲームの中で擬似体験できてしまうのです。
霧がかった朝焼けの光がまさに“それ“で、この感覚が蘇るゲームは後にも先にも本作しか知りません。「ドパガキ」というフレーズが流行する昨今ですが、落ち着きホルモンみなぎる「セロおじ(セロトニンおじさん)」になれる唯一無二のゲーム体験です。

朝を栄養満点のシチューとコーヒーで迎え、また狩りへと出かけたら、夜はバレンタインの町へ。町民の憩いの場である酒場へ行けば、必ず何かが起こります。
突然、泥酔した客から決闘を申し込まれたり、NPC同士が喧嘩した勢いで窓をつき破って人が飛び出してくることも。バーカウンターで「昔は凄かった!それに比べて今の若いモンは」と管を巻くおじさんと酒を飲むもよし。アルコールに人が集えば、そこはテーマパークなのです。

泥酔してキャンプまで戻る気力を無くしたら、通りを挟んで向かいに建つホテルを利用するのも良いですね。
受付のオーナーらしき男性に話しかけて浴室を借り、泥と動物の血でよごれた体を洗い清めましょう。ちなみに、アーサーが長いこと入浴せずにいると顔が垢で黒ずみ、ギャングメンバーから「臭いから何とかしろ(要約)」と苦言を呈されたりもします。エチケットは大事。
ざぶんと浴槽に浸かった後、「頭を洗う」「左脚を洗う」など細かく動作を指定すると、アーサーが自分の身体をごしごしと洗いはじめます。体を洗っているとコンコンとノックされ、女性から特別なサービスを受けられます。とはいえ、雑談しながら身体を洗ってくれる程度なので過度な期待は禁物ですが(若干、アヤしい動きはあるものの)。
借りた部屋のベッドに腰掛けたら、バーボンを飲み、一服してから夢の世界へ――。
スローテンポが生み出す愛着と没入感
もう、お気づきでしょうか。
このゲーム、そこそこ、いや結構「めんどくさい」のです。
狩りのプロセス、皮剥ぎの妙に時間のかかるアニメーション、入浴のコマンド指定など、本作における「ややめんどくさい要素」は枚挙にいとまがありません。
サクサク快適なゲームな増えている中で、時代を逆行するかのような仕様です。「テンポが悪い」と感じてやめてしまったプレイヤーも少なくないようですが、そう受け止めてしまう人がいても無理はないでしょう。
まさに本作は、キャンプのようなスタンスで楽しめるかどうか、にかかっていると言っても過言ではありません。たとえば、美味しいご飯を食べるだけなら、自宅で冷凍チャーハンをチンするだけでも十分だったりします。キャンプでわざわざ寝るためのテント立て、火を起こし、肉を焼いて「美味い」と感じる時、人は「結果以上にプロセスを楽しんでいる」といえます。
そう、『RDR2』はプロセスを愛でるゲームなのです。
筆者は、アーサーを風呂に入れながら、ニンテンドーDSでワンちゃんを育てる『nintendogs』を思い出しました。餌を買って出してあげたり、お風呂でブラッシングしたりと、面倒くさいプロセスにこそキャラクターへの愛着を育てる効果があり、『RDR2』もそういった心理を狙ったゲームデザインになっているのではないかと推測します。
アーサーが十分なパフォーマンスを発揮するには、プレイヤーが手を焼く必要がある。だからこそ、世界中のプレイヤーから愛される主人公になった、と言える側面もあるのではないでしょうか。
わざわざボタンを押してアーサーを動かすことの繰り返しがプレイヤーとの一体感を強め、一体化したアーサーの視点で世界を歩くことが没入感に繋がっている。そう考えると、めんどくさい操作もなんだかんだ楽しくなってくる――はずです!
親しみやすいガンファイトとスタントマンたち

『RDR2』の魅力の根幹である銃撃戦に関しては「実は初心者でも遊びやすいシステムである」点を推したいと考えています。
本作は、前作と同様かつ、近年の『グランド・セフト・オート』シリーズのように、付近の敵にロックオンしてから部位を狙うシステムが採用されています。常に細かくエイムする必要がなく、ある程度自動的に狙いを定めてくれるため、シューターが苦手な人でもガンマン気分を満喫できます。
「それだと簡単すぎてつまらないのでは?」と思われるかもしれませんが、答えはNOです。その理由として、本作には銃の照準を絞る動作、つまりは一定時間狙いを定め続ける(ロックオンし続ける)と命中率が上昇するシステムの存在が挙げられます。
当然、敵の前で棒立ちしていれば蜂の巣にされてしまうわけで、そこに物陰へ隠れるカバー動作と、リロードなどのタイミングでスキを突く駆け引きが生まれます。親切なロックオンだけに頼るのではなく、銃撃戦のリズムを掴むことが生存率を高めます。何より、本作の敵たちはのび太くらい命中率が高いので……。
そんな『RDR2』の銃撃戦は、端的に言えばめちゃくちゃ楽しいです。
メインストーリーを主軸にプレイしてもクリアまでに80~100時間ほどかかるゲーム構成の中心は、銃撃戦が占めているもかかわらず、なぜだか飽きさせない。中毒性のあるガンファイトには様々な要因が挙げられますが、私が個人的に推したいのは「敵のリアクションの豊富さとランダム性」です。
筆者は昔から香港のアクション映画が好きなのですが、主人公の動き以上に、スタントマンの派手で、痛そうなリアクションに注目してしまいます。たとえヒーロー役のパンチが平凡でも、スタントマンがクルクルと回転しながら派手に倒れると、それだけで主人公が強く見える。アクション映画の迫力はスタントマンの存在にかかっており、『RDR2』の物理エンジンは、敵対するNPCを実力派のスタントマンに仕立て上げているのです。

バルコニーから襲ってくる敵を撃てば、わざわざ手すりを乗り越えるようにして回転しながら落下する。馬上から狙う敵を撃ち落とせば、足が馬のあぶみ(乗馬中の足場)に引っかかりズルズルと派手に引きずられる。敵の重心、銃弾の威力や角度から、被弾モーションをリアルタイムに生成しているため、二度同じモーションを見ることがないのです。「胸を撃たれた敵が後ろ向きにヨタヨタと歩き、ガラス窓を突き破る」といった神がかり的なシーンが生まれることも。突然、死のピタゴラスイッチに遭遇する面白さは、映画的で常にワクワクさせられます。
NPCが一流のスタントマンを演じてくれるからこそ、プレイヤーはムービースター気分で銃撃戦に没入できるのです。
飽きさせないバトル演出で本作が描いたもの
さらに本作は、前作と比較して流血やゴア表現も大幅にブラッシュアップ。
一例として、頸動脈などを撃ち抜くと穴の空いたバケツのように流血し、首を押さえて走って逃げながら息絶える、といった凄惨な表現が取り入れられました。正直「ここまで描かなくても」と思うほどリアリティです。
しかし、わざわざ描くからには必ずクリエイターの意図が含まれているはず。前述した物理的な被弾リアクションや流血表現に関しては、「生と死のグラデーション」を描きたかったのではないかと考えています。
ただバタリと倒れるのではなく、緩やかに死へ向かって変化していくこと。メインストーリーにおいても、ダッチギャングの紆余曲折が丁寧に丁寧に描かれており、その点でも共通したものが感じられるのです。
「緩やかに移ろいゆくもの」といえば、スローモーションで狙った箇所を正確に撃ち抜く「デッドアイ」も、銃撃戦の楽しさを底上げし、プレイヤーを凄腕ガンマン気分にさせてくれる優れたシステムです。

決闘でデッドアイを発動して相手の銃だけを見事に撃ち抜き「またつまらぬものを撃ってしまった」な気分に浸るもよし、3人並んだ敵の頭部にとん、とん、とんとマークをつけて神速のヘッドショットをお見舞いするもよし。
デッドアイシステムのおかげで通常の銃撃戦では狙いづらい部分も正確に当てられるため、「この状況でここを撃ったらどんなリアクションをしてくれるのか」と試したくなる面白さがあります。頭のぎりっぎりを狙って帽子だけ撃ち飛ばし、ビビらせてやると言った芸当も可能です。
襲いくるすべての敵を静かにさせたら、PS5でいうL1ボタンを2回タップすると、銃をくるくるっとスピンさせてホルスターにしまいます。これがかっこいい。「西部劇と日本の時代劇は互いに影響を与えている」という話は有名ですが、まさに「日本刀の血振りから納刀」に似た所作の美しさを感じさせます。
まとめると『RDR2』は、私たちが何となくイメージしている「西部劇っぽいこと」がすべて実行できてしまう作品です。
ライフスタイルや銃撃戦を含め、そういったジャンルの映画を観たことがなくても「あるある」と思わせてくれる、象徴的な動作やシチュエーションが、ありったけのロマンといっしょに詰め込まれています。時代劇を観たことがないプレイヤーが『ゴースト・オブ・ツシマ』に熱狂したように、西部劇に馴染みがない方でも、その世界を満喫できる魅力的な舞台が用意されているのです。
本稿で紹介した要素は、Rockstarが生み出した狂気的なまでの作り込みの一部分に過ぎません。ドキュメント映像が撮れるほどのリアルな動物たちの生態系、メインミッション並みの引きと展開をもつミニイベントの数々。たった数分街を歩くだけで、少し森の奥へ分け入るだけで、予想だにしなかった驚きが次々とお披露目されます。
筆者は現在、約8年ぶりに2周目のプレイを楽しんでいますが、遊び尽くした自信がないくらい、もはや畏怖するレベルで壮大なタイトルです。
本作はプレイヤーの善行・凶行によって変動する「名誉システム」があり、1回目は紳士的なギャングを演じ、2回目は卑劣な言動を繰り返すならず者を演じる、といった楽しみ方も可能です。もし、過去にプレイしたことがある方は、その時に選ばなかった「もうひとつのアーサー像」を演じてみるのも面白いかもしれません。
もし良ければ、新規プレイヤーを少しでも増やすため、『RDR2』の世界で起きた印象的なイベントやシチュエーションをコメント欄で教えてください。
最新作『グランド・セフト・オートVI』の発売までには、もう少し時間がかかります。期待をより高める一作として、今こそプレイしてみてはいかがでしょうか。













