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同意の上で恋人を殺す百合ADVから、詩を探す15分RPGまで―音楽で選ぶ異色のアングラインディーゲーム音楽5選【音楽からゲームをはじめてもいいんだよ #3】

ゲームのサウンドトラックはごちゃごちゃしてると嬉しい

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同意の上で恋人を殺す百合ADVから、詩を探す15分RPGまで―音楽で選ぶ異色のアングラインディーゲーム音楽5選【音楽からゲームをはじめてもいいんだよ #3】
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ゲームをプレイしていなくても、サウンドトラックだけを聴いていい」。この連載は、そう言い切るところから始まりました。

ゲームの音楽を作るコンポーザーにも、ゲーム開発者と同じように確固たる作家性が存在します。そして、彼ら/彼女らが生み出す特有のサウンドが、ゲームのトーンやシステムそのものを大きく左右することも決して珍しくありません。

お気に入りの開発者やスタジオを追うのと同じように、「コンポーザー」を一つの選択基準に据えてみる。その面白さを今回もたっぷりとお届けします。

第3回(2026年6月分)でお届けするのは、いつにも増して深い場所から掘り出してきた作品たちです。ゲームジャムに投稿された15分の掌編、itch.ioで公開された強烈な個人制作のビジュアルノベルなどなど……。

どれも自由な発想と音楽ジャンルの組み合わせで面白い一枚を完成させており、規模が小さいからこそ生み出すことができる、エッジの利いた作り込みが並びました。

こうしたアンダーグラウンドな作品にこそ、コンポーザーという評価軸は威力を発揮します。名前を辿れば、あのカルト的名作を手がけた人物が、ゲームジャム発の小品に伴走していた。そんな発見が、今月は特に豊作でした。

誰もが知るヒット作から、多くの人が取りこぼしてしまった作品まで、「ゲーム音楽」という評価軸で紹介していきます。Steamではなく、Bandcampからゲームを探す面白さを是非ご堪能下さい。

(※もし、さらに深くゲーム音楽のディグに勤しみたいという方がいらっしゃいましたら、筆者の著書『海外ゲーム音楽ガイドブック ビデオゲームからたどる古今東西の音楽』もぜひお手に取っていただけると幸いです。)

『Truth Scrapper』(6月7日デモ配信)

Truth Scrapper』を語るうえで外せないのが、開発者であるinsertdisc5(Adrienne Bazir)の存在です。insertdisc5は口コミで熱狂的に広がったタイムループRPG『In Stars and Time』(2023)を、開発・執筆・作画・プログラミングまでほぼ一人で作り上げた、フランス出身・トロント拠点の作家です。

『In Stars and Time』は、2018年に発表されたウェブコミックを原型に、プロローグ『Start Again』を経て結実したモノクロのRPGです。時間のループに囚われた主人公を軸に据えた物語は高く評価され、RPGSiteの2023年ベストライティング賞にも輝きました。

そんなinsertdisc5の最新作である『Truth Scrapper』は、モノクロの実写を背景に使いつつも、随所に色が散りばめられた独特なアートスタイルを特徴とするミステリー/ロマンスのビジュアルノベル。

「記憶と芸術とレズビアンについての話」を謳った本作の舞台は、「The Dwell」と呼ばれる巨大な陥没穴。その奥で、意志を失った仲間たちの身に何が起きたのかを調査していきます。

主人公Sosotteは一日の終わりごとに記憶がリセットされてしまいますが、特別な魔法の本によって、毎日いくつかの物事だけを選んで記憶に残せる──そんな制約を抱えた物語が描かれます。

『In Stars and Time』のサウンドを手がけたのはStudio Thumpy Puppy(Lindar K. Greenwood)でしたが、『Truth Scrapper』ではカナダ・トロントのコンポーザーであるCastle If(Jess Forrest)が新たに起用されています。

Castle Ifは、Moog Voyagerをはじめとするアナログシンセとヴィンテージな制作手法を駆使して、レトロフューチャーな電子音楽を紡ぐコンポーザー。過去にはSilver Apples、Faust、Grimesといった錚々たるアーティストとともにライブ演奏をこなしてきた経歴も持ちます。

デモ配信に合わせて公開された「Truth Scrapper Demo Tape」では、本編に先駆けてその一端を確かめられます。

マイナーコードを多用した哀愁漂うローファイなジャズやボサノヴァ。クラシックなフランス映画を彷彿とさせるミュゼット(=アコーディオンを主役に据えた三拍子のパリの大衆舞踏音楽)風の楽曲。そしてアナログシンセならではの、音の一つ一つが響き渡る伸びやかさ。

それらが落ち着いた雰囲気を醸し出しながら、独特な空気を放つアートスタイルにしっかりとなじみます。デモ段階ながら、本編への期待が高まる一作です。

『タヴァントーク 2:ドリームウォーカー』(6月9日発売)

ドラゴンや神話に彩られた世界で、海辺の和気あいあいとしたコージーな酒場「Drowsy Dragon」を切り盛りする、『ダンジョンズ&ドラゴンズ』の世界にインスパイアされた『VA-11 Hall-A』『コーヒートーク』ライクなビジュアルノベル『タヴァントーク 2:ドリームウォーカー』。

ドイツ・バイエルンを拠点とするGentle Troll Entertainmentが開発した本作は、前作『タヴァントーク(Tavern Talk)』の前日譚にあたります。

ナレーター兼酒場の主人の声を、名作ローグライト『Hades』シリーズでアレス/テセウス/ディオニュソスを演じたCyrus Nematiが担当している点も見逃せません。

サウンドトラックを手がけるのは、前作『タヴァントーク』でも音楽を担当したドイツ・ミュンヘン拠点のFilippo Beck Peccoz

『Shadow Tactics: Blades of the Shogun』『Desperados III』といったMimimi Gamesのリアルタイムタクティクス作品でスコアを担当してきた作家ですが、2010年にはXbox 360用の『Bomberman Live: Battlefest』(日本未発売)のOSTも手がけています。

しかもこの作品、『FEZ』『Hyper Light Drifter』で知られるDisasterpeace(Rich Vreeland)との共作だったんです。竹間淳の音楽が代名詞である『ボンバーマン』シリーズにおいて外部の作曲家が起用された珍しい一作であり、ハドソンがコナミに吸収される前、最後の据置機タイトルでもありました。

今作のサウンドトラックに盛り込まれたのは、海辺の酒場という舞台にちなんだシーシャンティ(船乗りたちが作業のリズムを合わせるために歌った労働歌)の要素。

とはいえ労働歌そのものを再現するのではなく、そのエッセンスを溶かし込んだエモーショナルな歌モノとして仕上げられています。ギター、マンドリン、リュート、ハーディガーディ、ハープといった生楽器に、シンセ・ウェーブを織り交ぜた前作『Tavern Talk』を踏襲するスタイルとなっています。

サウンドトラックの一曲目「All It Takes」でボーカルをつとめるのは、TikTokでバイラルヒットしたシーシャンティ系グループ・The Wellermenの楽曲にもゲスト参加してきた歌い手のVinny Marchi。シャンティの香りを漂わせる本作にとって、これ以上ないほど筋の通った人選と言えるでしょう。

ガラスのジョッキが触れ合う音や、酒場のさざめくような笑い声が随所に差し込まれ、聴いているだけで「Drowsy Dragon」のカウンター席に座っているかのような気分にさせてくれます。

『Invisible Opus』(6月17日公開)

イタリアの小説家であるイタロ・カルヴィーノが1972年に発表した幻想文学の名作「見えない都市(Le città invisibili)」にインスパイアされた、詩を探す騎士となって世界を巡る短編アドベンチャー『Invisible Opus』。

プレイ時間は約15分と短いものの、トップダウン視点のRPGツクール製という枠組みのなかで、部屋の境界を用いて遠近感を伸縮させるなど、空間そのものを詩的に扱う実験精神が光ります。

パッと見の印象として、カルト的名作インディーゲーム『Hylics』を彷彿とさせるという声も上がっています。そして、その「Hylics感」は決して偶然ではありません。サウンドトラックを担当するChuck Salamoneは、まさにその『Hylics 2』のリードコンポーザーその人なのです。

プログレッシブ・ロックを下敷きに、掴みどころなく変容していく『Hylics』シリーズのサウンドトラック。

Chuck Salamoneはほかにも『Flips¿de』『Eulogy of an Insect』といったインディー作品を手がけ、バンド活動(Amigos Amigos、Redtail Hawkなど)や、ニュージャージーでの音楽教室His & Hers Musicの共同経営・音楽教育まで幅広く活動する人物です。

「見えない都市」を下敷きに、RPGツクールで組まれた15分の詩的な小品──その掴みどころのなさに、Hylics的サウンドの担い手が、しかも40曲ものトラックで伴走しています。

『Hylics 2』らしいプログレッシブ・ロックの複雑な展開、ジャズロックの軽やかでノリのいい要素はもちろんのこと、アラビックなサウンド、ドローン、アンビエント、そしてけたたましいシンセサイザーの音まで。雑多な音楽ジャンルが目まぐるしく、不安定に展開していく難解な楽曲群は、まさにビデオゲーム音楽ならではの魅力に満ちています。

わからないものを、わからないものとして受け入れる。ゲームジャム発の小さな作品にこの名前がクレジットされていること自体が、掘る価値のある発見なのです。

『nophenia』(6月26日発売)

崩壊したブルータリズム建築のような、それでいて夢のなかのような空間をひたすら歩き回る『nophenia』。放浪しつつもどこか見覚えのある記憶の断片を巡る、アトモスフェリックな一人称探索のウォーキングシミュレーターです。

興味深いのは、英語圏産(恐らくアメリカ)と思われる本作が、日本語に加えてロシア語とドイツ語へローカライズされている点。個人制作のミニマルな探索ゲームがこのラインナップの言語を備えているというだけで、作品が呼び込もうとしている客層がうっすらと見えてきます。

こうした「一人の作家が、ミニマルな音と私的な感覚で内面のような空間を描く」手触りは、ロシア産インディーの系譜──とりわけNikita Kryukovの『Milk inside a bag of milk inside a bag of milk』にはじまるMilkシリーズが切り開いた領域を、否応なく思い起こさせます。

作画・文章・プログラミング・音楽までを一人で背負い、黒とピンクだけのミニマルな画面とループするアンビエントで、人間の内面と心の傷を描いたあの一連の作品と、『nophenia』が漂わせる質感は、確かに地続きのものを感じさせます。

サウンドトラックを手がけるのは、アメリカ・カリフォルニアを拠点に活動するseraph_engine

「小さな夢の探索者のための歌たち」と銘打たれた全25曲は、瞑想に浸れるようなアンビエントと、ガラケーが登場するビジュアルコンセプトにバッチリと合った90年代後半のIDMを基調としています。

実験的でありながらどこか懐かしくメランコリックな音の質感が、ブルータリズムと夢が溶け合う本作の空間にそのまま寄り添う一枚です。

『Bianca Must Die』(6月配信)

「Consensual girlfriend murder simulator(同意の上のガールフレンド殺害シミュレーター)」という強烈な惹句を掲げる百合ビジュアルノベル『Bianca Must Die』。

都会から辺鄙な町へ越してきたWhitleyが、一年がかりの計画の末に恋人Biancaの殺害を試みるが、当のBiancaは『どうぞ』とあっさり応じてしまう。その言葉に乗るのか、それとも彼女の話を聞くのか……という、ドラマとホラーにロマンスとブラックコメディを混ぜ込んだ短編作品です。

本作は「メンヘラ」をテーマに掲げたゲームジャム「Menhera Jam」への投稿作。審査基準に「どれだけ精神的に不安定で、混沌としていて、呪われていて、メンタルに来る体験か?」が設けられているという、その趣旨を体現したような一作でもあります。

トークスプライトを排してCGのみで構成される画面は、明るくポップな色彩でありながら不気味さを漂わせ、6つのエンディングと約15~20分の読了時間にぎゅっと凝縮されています。

音楽とSFXを手がけるのはイギリス出身のYunoxa(Xを覗くと、強烈な『ゆるゆり』のオタクであることが確認できます)。普段はシンセウェーブやヴェイパーウェーブといったジャンルの音楽を制作している作家です。

しかし本作では一転してそれらのジャンルを封印。おどろおどろしいアンビエント、ノイズ、インダストリアルを基調とする楽曲たちが、殺害シーンや各エンディングにまとわりつく独特の不穏な空気を強調します。

ポップな見た目の裏側で静かに軋むようなホラーサウンドが、この歪んだ二人の関係性へとプレイヤーを引きずり込んでいくのです。

ライター:タナカハルカ,編集:みお

ライター/気さく タナカハルカ

インディーゲームデベロッパー・よんとんトマチンのメンバー(ヤムニャン学園)として『ふりかけ☆スペイシー』を開発。著書『海外ゲーム音楽ガイドブック ビデオゲームからたどる古今東西の音楽』『楽曲派アイドル・ガイドブック ももクロ以降のアイドルソング再考』。寄稿『ユリイカ2025年12月臨時増刊号 総特集=大貫妙子』『DAWN N°2』など。毎週新高円寺で会える。

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編集/Game*Spark共同編集長 みお

ゲーム文化と70年代の日本語の音楽大好き。人生ベストは『街 ~運命の交差点~』。2025年ベストは『Earthion』。 2021年3月からフリーライターを始め、2025年4月にGame*Spark編集部入り。2026年1月に共同編集長になりました。

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