気になる新作インディーゲームの開発者にインタビューする本企画。今回は、GrimTalinとDarkania Works開発、PC/PS5/Xbox Series X|S向けに7月14日にリリースされたロマンス&殺人ミステリーアドベンチャー『The Crimson Maid』開発者へのミニインタビューをお届けします。
本作は、美人メイドとのロマンス&殺人ミステリーアドベンチャーゲーム。プレイヤーは父の危篤の知らせにより実家へと戻った見習い司祭の「マリウス」として、家で雇われている若く魅力的なメイド「イリーナ」に心奪われるも、試練の時を迎えることになります。ヌード表現が苦手なプレイヤー向けのオプションもあり。記事執筆時点では日本語未対応です。
『The Crimson Maid』は、1,700円で配信中。


――まずは自己紹介をお願いします。一番好きなゲームは何ですか?
CatalinCatalin Marcuです。ゲーム開発者として約19年活動しています。8年半前にGrimTalinを設立して以来、個人または親友でありDarkania Worksと一緒に作業をしているGeorge Remus Poianaをはじめとする他のインディー開発者たちと協力しながら、インディーゲームを作り続けてきました。
私たちは強いストーリー性を持つゲームを作るのが大好きで、その点で最も大きな影響を受けたのは『シベリア』や『Broken Sword』といったゲームシリーズです。
――本作の特徴を教えてください。また、そのアイデアはどのように思いついたのでしょうか?
Catalin『The Crimson Maid』は、ロマンスと殺人ミステリーが融合した人を惹きつけるような物語を描いています。登場人物たちにはしっかりとした動機と豊かな設定を用意し、ストーリーを通して成長していく複雑なキャラクターたちを表現しています。面白いどんでん返しもいくつか用意していますが、私が最も誇りに思っているのはキャラクターたちの成長物語ですね。
私自身、日頃からたくさんのゲームをプレイしますが、主にストーリーの部分に着目してプレイしています。ほぼ毎日映画も観ていますし、本も読みます。これらすべてが組み合わさることで、アイデアの膨大な引き出しとなり、それが本作にも反映されているのです。もちろん、どんな書き手であっても自分が書く物語には自分自身の一部が多少は反映されるものだと思っています。
ストーリー面以外で本作の大きな見どころは、そのビジュアル、設定、そして雰囲気です。探索して数々の謎を解き明かしたくなるような、美しく魅力的な世界を作り上げることができたと自負しています。
――本作の開発にあたって影響を受けた作品はありますか?
Catalin本作のストーリーの核となる要素にインスピレーションを与えてくれた有名なルーマニアの詩がひとつありますが、それ以外はすべて私たちの頭の中に浮かんだアイデアです。普段触れているあらゆるメディアから影響を受けてはいますが、何か特定のものから直接影響を受けたというわけではありません。
ただ、目指すべき目標として、自分のライティングに影響を与えたゲームを挙げるとするなら、それは『ファタモルガーナの館』ですね。

――本作の開発中に一番印象深かったエピソードを一つ教えてください。
Catalinこれといったひとつの出来事を挙げるのは難しいですね。私たちにとっては、山あり谷ありの開発の旅路すべてが深く記憶に残っています。主要キャラクターのデザインがようやく完成した時や、各ロケーションの仕上げ、パズルの調整を行っていた時などは、本当にワクワクしました。
そういえば、(共同開発者の)Georgeはイリーナの部屋にあるような「鍵のかかった箱」のギミックを操作するのをとても気に入っていたのを覚えています。箱をくるくると回しながら次に押すべきボタンを探し、最終的に解錠へと近づいていくプロセスは本当に気持ちがいいんです。
それ以外に素晴らしい思い出といえば、クロアチアのドゥブロヴニクで開催された「Reboot Develop」というイベントで、後に私たちのパブリッシャーとなってくれたWales InteractiveのDavidと出会えたことですね。
――リリース後のユーザーのフィードバックはどのようなものがありましたか?特に印象深いものを教えてください。
Catalinプレイヤーの皆さんからの反響は全体的にとてもポジティブです。ストーリーやキャラクター、作中の謎解きに多くの方が共感してくれました。ビジュアル面に関しても、ほぼすべての方々に高い評価をいただいています。もちろん、ストーリーがまったく刺さらなかったという人も少しはいますが、全体としては温かいレビューや称賛の声を多くいただき、心から感謝しています。
個人的には、プレイしていただいた方がキャラクター描写の良さについて言及してくれるのが一番嬉しいですね。今作において私が最も力を注いだ部分ですから。本作では私がセリフやストーリー、プログラミング、カットシーン、デザインに至るまで膨大な作業をこなしましたが、一番心を込めたのはキャラクターたちでした。だからこそ、プレイヤーの方々が本作のキャラクターたちを現実味のある共感できる存在だと感じてくれた時は感無量だったのです。
Twitchでの配信中にも、コミュニティや配信者の方々がローゼンタール家の面々の動機を絶えず予想しようとしてくれていました。イリーナに関しては言うまでもありません。彼女は愛と憎しみ両方の対象となり、物語の展開とともにその評価が二転三転していく様子を見るのは非常に興味深かったですね。
――ユーザーからのフィードバックも踏まえて、今後のアップデートの方針について教えてください。
Catalinありがたいことに、リリース時点でバグはほとんどなく、修正パッチを当てる必要もありませんでした。また、本作のストーリーは単体で綺麗に完結しているため、ただコンテンツを増やすためだけのDLCを追加するつもりもありません。
とは言え、続編の可能性を排除しているわけではなく、アイデア自体はいくつか頭の中に浮かんでいます。しかし、私たちはこの3年間、『The Crimson Maid』のことで頭がいっぱいでしたので、まずはしっかりと十分な休息を取るつもりです。新作の発表もそう遠くないうちに行う予定ですし、もしあらゆる条件が整い、続編を作ることができるようでしたら、いつかイリーナやマリウスの物語にまた戻ってきたいとも思っています。
――本作の日本語対応状況について教えてください。有志翻訳は可能ですか?
Catalinローカライズに関する判断は、パブリッシャー側が行なっています。私たちのゲームは日本のプレイヤーの皆さんにもきっと気に入っていただけると信じていますし、もし抵抗がなければ英語でプレイしてみていただけると嬉しいです。購入前にゲームの雰囲気をつかんでいただけるよう、無料のデモ版も用意しています。
本作中のテキスト量が約7万5,000語と非常に膨大であるため、どの言語へ対応するにも多大な労力がかかります。そのため、残念ながら私たちが希望していたすべての言語にローカライズすることはできませんでした。
――本作では、なぜ、そして具体的にどのように生成AIの生成物を使用しましたか?また、生成AIについてはどのような感情を抱いていますか?
Catalin本作に登場する一部の画像(絵画、日誌のスケッチ、いくつかのテクスチャやUIなど)に生成AIを使用しました。Georgeは素晴らしいアーティストですが、自分の専門分野ではない部分や、重要度に対して膨大な時間がかかってしまう作業に関しては、助けを得るのを拒みません。わずか2人のチームでゲームを開発するということはそれ自体が非常に大きな挑戦であり、現実的な期間内にゴールへ到達するための手段を模索する必要がありました。
本作は自分たちの貯金を切り崩して開発したため、破産することなく完成まで漕ぎ着けられるよう、できる限りの工夫を取り入れています。私たちは巨大な収益を生むわけではないニッチなゲームを作っていますので、得られた収益はすべて、次のゲームの開発資金へと投資しているのです。
生成AIは、その出力結果が洗練され、全体のスタイルと調和する形で取り入れられている限り、ゲーム開発において人間の開発者をサポートする「ひとつのツール」であると私たちは考えています。
――本作の配信や収益化はしても大丈夫ですか?
Catalinもちろんです。すでにたくさんの配信者の方々が本作をプレイしてくださっており、いつも感謝の気持ちでいっぱいです。特に、配信者の方が各キャラクターのセリフを演じ分けながら朗読してくれるのを見るのが大好きですね。
作中には数多くの秘密や隠し要素、そして4つのエンディングが用意されています。そのため、たとえプレイ前に実況動画を見ていたとしても、プレイヤー自身で発見できる要素は十分に残されていますよ。
――最後に日本の読者にメッセージをお願いします。
Catalinローカライズはされていませんが、ぜひ『The Crimson Maid』を楽しんでいただけたら幸いです。私は日本の文化や物語の描き方が大好きなので、自分のライティングもきっとポジティブな影響を受けていると思っています。そして将来的には、日本のプレイヤーの皆さんにより良い形でお応えできるようになることを願っています。皆様のサポートに心から感謝いたします!
――ありがとうございました。


◆「注目インディーミニ問答」について
本連載は、リリース直後のインディーデベロッパーにメールで作品についてインタビューする連載企画です。定期的な連載にするため質問はフォーマット化し、なるべく多くのデベロッパーの声を届けることを目標としています。既に1,000を超える他のインタビュー記事もあわせてお楽しみください。








