1978年に公開され、後のスラッシャー映画へ大きな影響を与えた映画「ハロウィン」。白いマスクを被った殺人鬼「マイケル・マイヤーズ」が、今度はゲーム『Halloween: The Game』の世界で住民たちを恐怖へ陥れます。
本作では、映画本編の出来事をマイケル視点で描くシングルプレイと、殺人鬼側のマイケル1人とプレイヤー側4人に分かれて戦うマルチプレイを収録。開発は『Friday the 13th: The Game』『Predator: Hunting Grounds』などを手掛けたIllFonicが担当しています。
本稿では、そんな本作のプレイレポをお届けします。なお、本稿の執筆にあたり、IllFonicよりゲームキーの提供を受けています。
マイケル視点で映画の惨劇を追体験
本作のシングルプレイでは、精神病院から脱走したマイケルがハドンフィールドへ戻り、ローリー・ストロードと対峙するまでの出来事を追体験できます。
物語の始まりは、マイケルが収監されていたスミス・グローブ精神病院。プレイヤーはマイケルを操作し、職員を襲いながら脱走を図ります。その後も作業着や白いマスク、包丁を手に入れるまでの過程が描かれたりと、映画だけでは分からなかったマイケルの足取りが補完されていきます。


全6チャプターで構成されていますが、物語をじっくり楽しむキャンペーンというより、マイケルの能力を順番に覚えるチュートリアルとしての側面が強め。各ステージを進めながら、標的の探し方やストーキング、特殊な移動能力などを学べる仕組みです。
ただ、全体的なボリュームは控えめ。シングルプレイだけを目当てに購入すると物足りなく感じるかもしれません。
一応、ステージごとに任意目標やカセットテープといった収集物、複数の難易度が設けられており、条件を達成するとマルチプレイでも使用できる衣装などを獲得できます。なかには原作映画を知っていれば思わず反応してしまうコスチュームもあり、映画ファン視点ではうれしい報酬でした。

暗闇から獲物を見つめるマイケルの不気味さを再現
マルチプレイの基本的な手触りは、同じくIllFonicが開発した『Friday the 13th: The Game』に非常に近い印象です。
さまざまな能力を持つ殺人鬼を1人のプレイヤーが操作し、残る4人はマップ内を探索しながら脱出を目指す。建物の中で道具を集め、仲間と協力しながら逃げ道を作る流れにも、同作を思わせる部分があります。
その一方で、マイケルをただの強力な鬼役にせず、映画で見せた神出鬼没さや遠くから見つめてくるあの不気味さまで能力として再現している点は、本作ならではの魅力です。

代表的な能力が、一人称視点で標的を観察する「キラーセンス」。少し離れた場所や物陰から住民を見つめ続けることでストーキングの段階が上昇し、対象の位置を追跡しやすくなるほか、より残酷な処刑も狙えるようになります。

もうひとつの重要な能力が、暗闇の中を高速で移動する「シェイプジャンプ」です。高速移動中はプレイヤー側の目には映らないようになります。獲物を見つけたら、明かりの消えた場所や住民の視界外で能力を解除。目を離した隙に姿を消し、いつの間にか近くへ迫っているという、原作映画さながらの神出鬼没な動きを再現できます。

映画におけるマイケルは、走って相手を追い回すタイプの殺人鬼ではありません。窓の外や部屋の隅から無言で獲物を見つめ、住民が目を離した隙に距離を詰めてきます。
本作でも、暗い部屋へ潜み、生存者がこちらに背中を向ける瞬間を待つというマイケルらしい立ち回りが可能。相手の死角へ回り込み、振り返った先に突然姿を現せたときは、映画の殺人鬼になりきれたような感覚を味わえました。
街中のNPCを次々と襲う殺人鬼生活
マイケル側の目的は、生存者プレイヤーを倒すだけではありません。
ハドンフィールドでは、家の中でテレビを見ている住民や、玄関先で煙草を吸っている人物など、多数のNPCが普段通りの生活を送っています。マイケルは生存者を追跡する一方、こうしたNPCも標的にしていきます。
少数のプレイヤーだけを追い回す非対称ホラーとは異なり、街の各所で次々と殺人を重ねられるため、マイケルの手によってハドンフィールド全体が惨劇の舞台へ変わっていくのが特徴です。

包丁や斧といった武器で襲えるほか、周囲の環境を利用した処刑も豊富。ベンチプレスをさせて圧死、電話のコードで絞殺、マイケルの象徴的な包丁で突き刺して壁にはりつけなど、その内容は容赦がありません。
ただ敵プレイヤーを倒すだけでなく、街を歩きながら獲物を探し、目についた住民をひとりずつ始末していく。スラッシャー映画の殺人鬼らしい振る舞いを、ここまで自由に楽しめる作品は珍しい印象です。



試合開始時には、通常より多くの報酬を獲得できる特別なターゲットも指定され、このNPCが勝敗に大きく影響します。本作の勝敗は、両陣営が獲得したポイントによって決まります。マイケル側は生存者プレイヤーやNPCを殺害し、プレイヤー側はNPCを救出したり、自ら脱出したりすることで得点します。
なかでも特別なターゲットは配点が高く、その生死が最終結果を大きく左右します。
マイケル側はプレイヤーを追うのか、逃げ遅れたNPCを狩るのか、特別な標的を優先するのか。単純に目の前の相手だけを追跡するのではなく、街全体を見ながら次の犠牲者を選ぶ必要がありました。
プレイヤー側は自転車でマイケルを轢き、銃を乱射して抵抗
生存者側は、マイケルから逃げながら脱出手段を探すのが主な目的。
一般的な非対称ホラーと異なるのは、自分たちだけが生き残ればよいわけではないこと。ハドンフィールドに暮らすNPCを探し、マイケルが現れたことを伝えなければなりません。
NPCに近づき、会話のミニゲームに成功すると、NPCへ隠れるよう指示したり、警察へ通報させたり、自分について来るよう説得したりできます。住民を助けるほど多くのポイントを得られるため、自分だけ脱出するより、危険を承知で救助を続けたほうが勝ちに繋がります。


もっとも、マイケルを前にして一方的に逃げ続けるだけではありません。生存者は銃や日用品を武器にして反撃することもできます。
また、最強の乗り物「自転車」で走り回り、そのままマイケルへ突っ込んで轢いたり、複数人で囲んで銃を何発も撃ってボコボコにしたりと、ホラー映画らしからぬ光景が生まれることも。そういった協力プレイで逆に殺人鬼側を痛めつけるのは対戦ゲームならではの面白さがありました。
緊張感のある逃走劇から、銃弾が飛び交い、自転車が爆走する大騒ぎへ発展する振れ幅はかなり大きめ。近接ボイスチャットを利用して遊べば、映画のような恐怖だけでなく、仲間と笑える珍事件も次々に生まれそうでした。


死んでも仕事は終わらない。警官やルーミス医師として復活
操作している生存者が殺されても、その時点で試合から完全に脱落するわけではありません。
死亡後は簡単なボタン入力のミニゲームへ挑み、成功すると生存中の仲間を強化するカードを獲得できます。さらに条件を満たせば、保安官やマイケルを追い続けるシリーズ名物キャラクター「ルーミス医師」として街へ復帰することも可能です。
試合の序盤で倒されても観戦するだけにならず、残された仲間を支援できるのはありがたいところ。ただし、ミニゲーム自体は単純な内容なので、復帰までの時間が長引くと作業感も強まります。

また、キャラクターの能力や装備、パークカードなど、カスタマイズ要素も数多く用意されていました。マイケル側も特殊能力や武器、処刑方法などを変更できるため、プレイを重ねて選択肢が増えれば、最初とは異なる戦い方も試せそうです。
現段階では、すべての組み合わせを試すところまでは遊び込めていません。しかし、キャラクターごとの長所やパークを理解し、自分に合った構成を組めるようになれば、対戦部分はさらに面白くなりそうでした。
面白さを妨げるバグの多さは気になる
原作映画の再現、マイケルの能力、NPCを巻き込んだ攻防など、本作ならではの魅力は十分に感じられました。
特に、マイケルとして街中の住民を狩っていく時間は、既存の非対称ホラーとは異なるもの。生存者側でも、自転車で殺人鬼を轢いたり、仲間と銃撃を浴びせたりと、思わず笑ってしまう場面が次々に生まれます。
一方で、NPCの挙動を中心にバグが多い点は気になりました。各種演出でも不自然な動きが見られ、本来なら恐怖を感じるはずの場面で緊張感が途切れることも。こうした技術的な粗さは、発売後のアップデートで優先的に改善してほしい部分です。
また、シングルプレイでマイケル側の基本は学べるものの、生存者側のシステムについては説明が不足しています。脱出に必要な道具やNPCへ出せる指示、パークの効果など、覚えることが多いため、最初の数試合は目的を理解できないまま走り回ることになるかもしれません。
現時点ではバグや説明不足が目立ち、誰にでも勧められる完成度とは言いにくい作品です。それでも、暗闇から獲物を見つめるマイケルの不気味さや、NPCを巻き込んで街全体が惨劇へ変わっていく感覚は、本作でしか味わえません。
『Friday the 13th: The Game』に近い非対称ホラーを求めている人はもちろん、映画「ハロウィン」の殺人鬼「マイケル・マイヤーズ」になりきりたい原作ファンなら、現在の粗さを差し引いても楽しめるでしょう。
友人同士で銃を手に取り、自転車で街を爆走しながら、マイケルへ無謀な反撃を仕掛けるのも面白そうです。
技術面には改善の余地を残していますが、カスタマイズを進めて能力やパークへの理解が深まれば、対戦の幅はさらに広がりそうです。今後のアップデートによって、どこまで完成度を高められるのかにも注目したいところです。
『Halloween: The Game』は、国内ではPC(Steam/EpicGamesStore)およびXBOX Series X|S向けに2026年9月9日発売です。PS5版は海外のみで発売されます。











