
「TGS2026」のホール9・インディーゲームコーナー。その一角、H9-E32に、一癖も二癖もあるタイトルが5本並ぶブースがありました。
インディーゲーム開発者コミュニティ「路地裏デベロッパーズ・クラウド」と、株式会社ブラストエッジゲームズによる合同ブースです。
並んでいるのは、空手でダンジョンに挑むローグライク、ケモノ化していく少女を育てるADV、敵を敵にぶつけるシューター、90年代風のシミュレーションRPG、そして寿司の会計で殴り合う将棋。見事にバラバラで、どれも尖っています。
そしてこのブース、そもそもの成り立ちが面白い。まずはそこから紹介させてください。
「TGS、5日間になったけど個人開発者には大変じゃない?」から始まった
「路地裏デベロッパーズ・クラウド」は、合同会社輝井堂が主宰するコミュニティです。
誕生のきっかけは、2026年からTGSが史上初の5日間開催となったこと。会期が延びるということは、それだけブースに人を立たせ続けなければならないということでもあります。長期間の出展は、個人や小規模の開発者にとって人的にも金銭的にも大きな負担です。
そこで輝井堂がSNS上で「TGS、5日間になったけど個人開発者には大変じゃない?」と声をかけ、参加者を募ったところ——Discordサーバーの参加者は100名を突破。今では開発者だけでなく、翻訳者やストリーマー、メディア関係者まで参加するコミュニティへと成長したといいます。
そこから有志5組が作品を持ち寄ったのが、今回のブースというわけです。制度の変更というやや無機質な出来事が、開発者同士の共助を生んだ。この経緯だけでも十分にドラマがあります。
では、実際に並んでいた5本を順に見ていきましょう。
KARATE ROGUE -カラテローグ-



まずは『KARATE ROGUE -カラテローグ-』(terry-do GAMES)。「ダンジョン刑」により身ひとつで深淵へ落とされた空手家が、拳ひとつで這い上がっていくローグライク・格闘ダンジョンクローラーRPGです。
遊んでみて分かったのは、どんな「構え」を取ったうえで、どんな攻撃を繰り出すかが本作のポイントだということ。構えは攻防一体で、敵の攻撃ターンをチャンスに変えてくれます。攻撃を捌いて、そこから逆襲の一撃を叩き込む。この流れが決まったときの気持ちよさがしっかりある。
そしてボスなどを倒すと技が増えていくため、手持ちのカードが増えるほど組み立ての幅も広がっていきます。「この技でノックバックさせて、そこに後ろ廻し蹴りを合わせる」といったシナジーを探りながら、様々な敵を倒していくのが楽しそうな一本でした。2026年内発売予定で、体験版も配信中です。
神殺しの蒼銀


『神殺しの蒼銀』(Sword_Guild)は、5本の中で唯一すでにリリース済み(2026年7月21日配信)のタイトル。仲間との絆が運命を分かつ地域制圧型シミュレーションRPGです。
こちらは直球のシミュレーションRPG。奇をてらわず、正面からSRPGをやっている手触りで、弱点を突くと再行動できる「連撃システム」や、小隊長を撃破すると一気に崩せる「小隊システム」など、テンポよく決着させる工夫も入っています。
90年代後半風のドットアニメーションも含め、昔ながらのシミュレーションRPGが好きな人なら間違いなく楽しめる作り。戦略フェーズのマップモードで領地を広げ、攻略ルートによってシナリオが変化していくという構造も、その手の作品を遊んできた人にはたまらないでしょう。
XenoTechArena


『XenoTechArena』(DSPSE)のコンセプトは「敵を倒すな――敵をぶつけろ!!」。見下ろし型のローグライク・アリーナシューターです。
実際に触ってみると、説明通り通常攻撃はそこまで強くありません。ではどうするか。敵に突進してノックバックさせ、他の敵にぶつけて連鎖ダメージで倒せるか。ここが完全に勝負どころでした。単体を撃ち続けても埒が明かず、群れの配置を読んで「どこに向かって突っ込むか」を考える。このスイッチの切り替えが面白い。
全編ドット絵とチップチューンBGMで彩られた、サイバーパンク×「海外から見たネオジャパン」な世界観も込みで、さくっと遊べる2D見下ろしアクションとして楽しい一本でした。「ニンジャヘッド」「ゲイシャガール」「スモウライダー」などのクラスを組み合わせる「クラスフュージョン」も用意されています。こちらも2026年内発売予定・体験版配信中。
寿司将棋


そして今回、個人的に「これはいいアイデアだな」と唸らされたのが『寿司将棋』(Today's Special!)です。
やることはシンプル。値段のついた寿司の駒を動かして戦うターン制ゲーム。寿司のネタによって1ターンで動ける移動距離や移動ルート、そして価格が異なります。そしてルールは相手の寿司を取れば盤上では有利になるが、その代金は取った側が支払います。最終的に相手の所持金が0円になれば勝利です。また相手の陣地まで寿司を運べば相手の所持金を減らせます。大トロを相手の陣地におけば問答無用で勝利できます。
ここが普通の将棋と決定的に違っていて、本作では「駒を取らせたら、相手を負けに近づける」のです。取れば盤面は良くなるが自分の所持金は減る。取らせれば所持金は守れるが盤面は悪くなる。
結果として、王将役である大トロや高級ネタを相手の陣地まで引っ張っていって勝つのか、それとも相手にどんどん駒を取らせる状況を作って代金を0円まで削り切るのかという、二つの勝ち筋を天秤にかける駆け引きが生まれます。「取れるのに取りたくない」という、将棋では絶対に発生しない感覚。これが実に新鮮でした。
しかも寿司を動かしたくない手番は湯呑のお茶でパスできるのですが、そのお茶代も自分持ちで回数制限あり。抜け道にもコストが乗っているのが憎い。2027年3月発売予定で、無料体験版が配信中です。
アニマロイドガール



最後は『アニマロイドガール』(PANDRI-DON)。「ケモミミ×香港×サイバーパンク」を舞台にした、マルチエンディングのケモノ化少女育成ADVです。
まず感心したのが、ゲーム開始時に理想のケモノの姿を自分で決められる一覧画面。ここがもう可愛い。どんな獣になってほしいかを選ぶところから物語が始まるという構造が、そのまま本作のテーマと直結しているわけです。
そして何より、ヒロインが可愛すぎる。儚げで透明感のあるイラストがLive2Dで生き生きと動き、表情や仕草の一つひとつが丁寧。これは時間を溶かされるやつだ、と早々に悟りました。
一方で、九龍城を思わせるサイバーパンクな世界観の空気感が非常に濃厚なのも印象的でした。可愛らしさと、その背後にあるどこか薄暗い街の質感。この二つが同居しているからこそ、少女の「みんなと違う姿」という悩みが重みを持ってくる。時間があればずっと遊んでいたいタイトルでした。
「その場のライブ感が“インディー”って感じでお祭りだった」
試遊を終えたあと、ブースの方にお話を伺うことができました。
実際にこの形で参加できて、非常にいい経験ができたとのこと。そしてその理由として語られた内容が、実にらしくて良かったのです。
曰く——本番前日に設営に来なかったため周りから心配されたり、前日でも当日用のビルドが完成しておらず差し替えが発生したり、より遊びやすい体験用のUIが突然メンバー内から共有されたり、ポスターも直前に作ったり。
普通に考えれば綱渡りです。しかし、その場その場のライブ感こそが“インディーのノリ”であり、お祭りだという気持ちだったそう 。
言われてみれば、これは大手のブースでは絶対に起こらないことです。全員が初めから完璧に揃っているのではなく、5日間という重荷を分担するために集まった人たちが、前日も当日も手を動かし続けて形にしていく。そのプロセスごと楽しんでいる空気が、ブースの雰囲気にも確かに出ていました。
制度が変わったから、負担が増えたから、一人では無理だから集まった。その結果として、カラテと、ケモノと、突進と、ドット絵の戦術と、寿司の会計が一つのブースに並ぶことになった。
路地裏というのは、大通りから一本入らないと辿り着けない場所のことです。そして大抵、面白い店はそういうところにある。今回のブースは、まさにそういう場所でした。
紹介した5タイトルはいずれもSteamでページが公開されており、多くが体験版を配信中です。気になったものがあれば、ぜひ自分の手で確かめてみてください。











