コンソール&パッケージゲームの展示会であるE3において、かなり異質な存在であるIndieCade。インディゲーム開発者のためのデモイベントで、当然ながらPCとモバイル向けゲームが中心です。その中でもさらに異質だったのが本作『Earth Primer』。微生物から宇宙探索まで生物の進化をシミュレートする『SPORE』の制作にもかかわったプログラマー、Chain Gingold氏の個人作品で、iPad向けに配信されています。
本作は地球の成り立ちから、気温・降水量・地形などが植物分布などにどのような影響を与えるかをインタラクティブに学べる「デジタル図鑑」です。端末の画面をタッチするだけで、山脈や海ができたり、ニョキニョキと木が生えたり、かと思えば砂漠になったり、子どもから大人まで直感的に高度な概念を理解できます。App Storeのカテゴリでは「教育」に属していますが、Gingold氏は「これは玩具(トイ)なんだ」と説明していました。実際、時間を忘れて夢中になります。
本作のキモは強力な自然環境エンジンをベースとしたサンドボックスです。変更できる項目は「気温」「日照」「風」「雨」「海水レベル」「地形」などで、画面をタップするだけで簡単に気温や日照を操作したり、山脈や窪地を作ったりできます。地形は砂・岩・土から選択可能。これらは互いに関係性を持ち、山脈を作って山の上から雨を降らせたら川や湖がうまれ、海へと流れ込み、地面にしみこんで地下水として蓄えられます。風速と風量を調整して砂をまくと、砂漠に風紋を作ることもできます。
地形・気温・降水量の変化に伴い、植物が自動的に変化するのは言うまでもありません。これらのバランスをとると温帯になり、照葉樹が広がります。そこからパラメータを変化させると、タイガやジャングル、サバンナ、草原、ツンドラなどへと変化します。気温を適切にして海水レベルを上げ下げすると、雲ができて雨が降り、川ができて緑が広がります。タッチするだけで世界がどんどん変わるのです。あえて言うなら台風や竜巻ができないんですが、でもまあ、そこまで望むのは欲深いというものでしょう。
本作をもう一つ特徴づけているのが、サンドボックスのチュートリアルもかねて、詳細なテキストブックが存在することです。地球の成り立ちがコア・マントル・そして火山の噴火や大陸移動などから説明され、そこから山脈、海、川の成り立ち、風、地下水系、そして生物群系までが、わかりやすい説明と美しい写真によって解説され、サンドボックスを操作して実際に確かめられます。こんな教材が地理の時間にあったら、絶対に授業が楽しくなること請け合いでしょう。
なんといっても最大のポイントは、これをゲームクリエイターが作っていること。複雑な事象でもインタラクティブ性を加えることで、ぐっとわかりやすくなる。『シムシティ』などの文脈に連なる作品で、いわゆるコンピュータエンターテインメントです。今後、動物や生態系まで組み込まれると、より内容が充実するに違いありません。残念ながら英語版のみで、しかも定価1200円とちょっとお高いんですが、触っているだけで意味がわかります。ゲームの可能性をぜひ感じてください。
記事提供元: インサイド
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