中華ゲーム見聞録:10分で決着のMOBA『王者英雄 The Great Hero』をプレイ!ポテンシャルを潰す「コピーキャラ」問題… | Game*Spark - 国内・海外ゲーム情報サイト

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中華ゲーム見聞録:10分で決着のMOBA『王者英雄 The Great Hero』をプレイ!ポテンシャルを潰す「コピーキャラ」問題…

「中華ゲーム見聞録」もとうとう第10回目。今回は3vs3のMOBA『王者英雄 The Great Hero』のプレイレポートをお届けします。

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中華ゲーム見聞録:10分で決着のMOBA『王者英雄 The Great Hero』をプレイ!ポテンシャルを潰す「コピーキャラ」問題…
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「中華ゲーム見聞録」も今回でとうとう第10回目。今回は3vs3のMOBA『王者英雄 The Great Hero』のプレイレポートをお届けします。

本作はChina Sky Carving Gameによって、Steamで10月3日に早期アクセスタイトルとして配信されました。上のシンプルな画像は、本作のタイトル画面。以前ここには「著作権的にまずいイラスト」が並んでいたらしいのですが、きれいさっぱり削除したことで現在の形になったそうです。

『王者英雄』の試合画面

本作はSteamの評価で、「パクリだらけ」「ゴミゲーム」「ネット工作員を使って評価を上げている」と中華ユーザーから非難轟轟でした。そんなゲームをなぜ筆者が取り上げようと思ったかと言えば、「10分間で決着が付くMOBA」という点が気になったためです(MOBAについては「中華ゲーム見聞録」第2回『eSports Legend / 電競伝奇』参照)。

『王者英雄』のメニュー画面

『リーグ・オブ・レジェンド(LoL)』や『Dota 2』などの本格的なMOBAは、1試合のプレイ時間は平均30~40分ほど。その間に宅配業者が来たり、電話が鳴ったりするかもしれませんし、場合によってはプレイに集中できないこともあるでしょう。他のプレイヤーに迷惑をかけたくないがゆえに、MOBAから離れた人もいるかと思われます。

筆者も似たようなものなので、「10分でMOBAの試合が終わるなんて夢のようじゃないか」と思いました。『LoL』にも少人数・短期決戦のモードがあるのですが、本編のおまけという感じで筆者的にはいまひとつでした(あくまで個人の感想です)。『Heroes of the Storm』などの後発作品も比較的短時間で決着がつくタイプではありますが、それでも平均20分はかかります。果たして本作は、本当に10分で試合が終わるのでしょうか?さっそくプレイしていきましょう。

お出迎えのお姉さん



シンプルすぎるタイトル画面の「開始遊戯」をクリックすると、ケモノ耳を生やした美人のお姉さんに名前を聞かれます。ここは「遊戯閃光」で。ところでこのお姉さん、まさかと思って画像検索を掛けてみたらヒットしました。『妖姫三国(妖姫OnLine)』というゲームのキャラクターです。

パクリというか、そのまんまコピー。左右反転を加工というのなら加工かもしれませんが。Steam的に大丈夫なのかちょっと心配です。『王者英雄』というタイトルも中国の人気MOBA『王者栄耀』から来たものと思われますが、似たタイトルのゲームは珍しくないのでこれは置いておきましょう。

チュートリアル開始


ナビゲートをするお姉さん


とりあえずチュートリアルをスタート。他のMOBAと同じく、地面をクリックすればそこに向かってヒーローが移動します。アップデート前はWASDで移動、クリックで攻撃でした。ユーザーの批判を受けて直したようです。

ジャングルのモンスターから霊魂を吸って自分の力にできる


ジャングル内のモンスターから霊魂を吸い取り、自分の力にできます。また自陣の像の前で霊魂を放出すると、強力なミニオン(敵陣へ向かう兵士)が登場。このシステムは悪くないです。

敵拠点のコアを破壊すれば勝利

チュートリアルのダイジェスト動画

ミニオンとともにタワーを壊しながら敵陣へ進み、最後に敵拠点のコアを破壊すれば勝利。ルールは他のMOBAと一緒です。チュートリアルでは、タワーやコアはすぐ壊れるようになっています。

3vs3の試合開始



チュートリアル終了後、ヒーロー購入のレクチャー開始。ゲーム内通貨、もしくは課金でヒーローを買うことができます。画面のヒーローは、三国志に登場する貂蝉(ちょうせん)という女性です。

「このキャラクターも、もしや……」と思って調べたみたところ、『亜瑟神剣』という中華ネットゲームのキャラでした。元は髪や服が緑色なので、どうやら加工されているご様子。よく見ると目元もちょっと違います。


試合を開始しましょう。3vs3で、購入済みのヒーローが使えます。現在のところヒーローは21名。今後増えていくそうです。

遊戯閃光は、先ほど購入した貂蝉を選択。他のヒーローもどこかで見た気がしますが、いちいち言及するとキリがなさそうです。『eSports Legend / 電競伝奇』でも『LoL』と似たキャラが出てきますが、あれはパロディであることを明確にしているので、そもそも趣旨が違います。


試合が始まりました。画面右下に見えるコアを破壊されたら敗北、敵側のコアを破壊したら勝利。アイテムはショップを開かなくても、画面左におすすめが表示されます。移動速度の速くなる靴が買えるので、ゲットしておきましょう。


左上のミニマップを見ると、敵の本拠地につながるレーン(通路)が2本、中央がジャングルという構造です。敵のコアへ到着するまでに破壊しなければならないタワーは2本。これなら10分間で決着が付きそうです。

勝手がわからないので、仲間たちとともにジャングルモンスターを狩っていきます。ヒーローのスキルは3種類で、キーボードのUIOキーに対応。モンスターから霊魂を吸おうとしたら、「レベル3以上でなければ吸えない」とのこと。まずはレベルを上げましょう。


相手プレイヤーが出現しました。しかし3対1なのであっさり撃破。「第一滴血(ファーストブラッド)」です。ジャングルでの狩りで体力が減ったので、いったんリコール(本拠地へテレポートすること)します。


ショップを覗いてみます。アイテムのジャンルは攻撃、魔法、防御、靴の4種類。この時点ではまだ分からないことが多いので、推薦されたものをどんどん買っていく方針でいきます。

敵拠点のコアを撃破

試合のダイジェスト動画

敵のコアを破壊して勝利。10分どころか、4分30秒で決着です。ゲーム自体の感想ですが、正直普通に楽しめました。「あれ?悪くないかも」と思った次第です。

レーンが2つとジャングルがその間にあることで、相手の裏をかくプレイも可能。MOBAのエッセンスを短時間に詰めこんだ感じで、このまま突き詰めて作っていけばいいゲームになりそうです。なぜこれだけの技術を持っているのに……。

ゲーム内課金について


青い宝石と引き換えにルーンを購入


試合が終わると、ルーンを買うように促されます。装備するとヒーローの能力が上がります。購入には青い宝石が必要。条件をクリアすることによって入手できます。


赤い宝石は課金通貨。60個6元(100円弱)で販売されています。まとめ買いしても安くならないのが気になりますが。ヒーローはゲーム内通貨13888、もしくは赤い宝石588個で購入できます。赤い宝石を現金換算すると58.8元なので、ヒーロー1体1,000円弱。結構いいお値段です。


毎日のログインボーナス、ミッション達成ボーナスなど、ユーザーのログイン回数を増やして少額課金につなげる「課金型ネットゲームの基本」はしっかり押さえています(画面の「甲虫之王」もどこかで見たような……)。少額課金自体が悪いわけではないのですが、本作購入ですでに990円を払っているのでどうなのかという気もします。

イラストコストを節約する一方、課金システムは「時間限定セール」、「VIPパス」、「課金額に応じて毎月利子(赤い宝石)入手」、「毎日課金でボーナス入手」などバリエーションも豊富で、やたらと充実しています。


そしてプレイヤーアイコンですが、「趙子龍」「曹操」「孫権」と、コーエーテクモゲームスの『三國志12』のイラストをそのまま使っていました(その他にも劉備、張飛、黄忠。あと「孫権」と書かれたものは、オリジナルでは「陸遜」)。ちなみに『三國志12』はSteamでも配信されています。

ゲームのコンセプト自体は悪くないけど……


本作のフォーラムを見てみたら、なんと開発者とユーザーの問答がありました。「林黛玉のイラストは『真・三國無双4』の小喬とおなじですが、版権を取ったのでしょうか」との質問に対し、「早期アクセスのため、開発用に臨時のイラストを使用しただけです。今後アップデートを重ね、内容やイラストなどを変更し、完成を目指します」とのことです。

つまり、「コピーイラストはあくまで一時的なもの。今後、徐々にイラストを置き換えていき、最終的にはすべてオリジナルにする」との方針のようです。「とりあえず始めて、あとから調整」というのは中国企業の基本スタイルですが、Steamガイドラインに限らず、権利的な問題は解決していくべきでしょう。


もう一つ、こちらの画像は本作のストアページです。悪魔と勇者が戦うイラストですが、画像検索したところ「マジック:ザ・ギャザリング」のカードボックスイラストそのままでした。審査が通った上に一ヶ月以上も掲載されているあたり、Steamの管理体制にも疑問を感じます。

本作はゲームのコンセプト自体は悪くないのですが、それ以外の問題があるようです。徹底したコストカット、充実した課金システムなど、あくまでゲームを金儲けの道具としてしか見ていない印象があります。これは「中華ゲーム見聞録」第4回『天命奇御』の開発者が批判していたことです。

『天命奇御』の新DLC「伏虎迷蹤」トレイラー

『天命奇御』では、買ってくれたユーザーのために無料の新DLCを開発し、11月12日に配信しました。トレイラーを見てもらえばわかりますが、かなり気合いが入っています。頑張っている開発者がいる一方で、本作のような方針で中華ゲーム全体の評判を落としてしまうのは(しかもSteamという全世界に配信されるプラットフォームで)、長期的な目で見ても中華圏の開発者にとって良いこととは言えません。

Steamは2017年より、ユーザー投票形式の「Steam Greenlight」を終了し、100ドルを払って簡単な審査を受ければ配信可能な「Steam Direct」に変更しました(売上1,000ドル以上なら100ドルは返金)。多くのインディーゲーム会社が参入しやすくなった反面、小銭稼ぎのための手抜きゲームや著作権の怪しいゲームが増えたことも否めません。

最近の例で言えば、性的表現の緩和により、パズルゲームにエロイラストを埋めこんだだけの「Hentai」ゲームが乱発されているのが散見されます。なかには、「ネットで拾ったイラストを利用しただけ」というのもある模様。通報システムを充実させるなどしないと、Steamそのものがまずいことになるのではないか、と思ったりもします。『王者英雄』のゲーム自体は楽しめただけあって、いろいろ考えさせられたプレイレポートでした。

製品情報



※本記事で用いているゲームタイトルや固有名詞の一部は、技術的な制限により、簡体字を日本の漢字に置き換えています。
《渡辺仙州》

歴史・シミュ・ボドゲ好き 渡辺仙州

主に中国ものを書いている作家。人生の理念は「知られていない面白いもの」を発掘・提供すること。歴史・シミュレーションゲーム・ボードゲーム好きで、「マイナーゲーム.com」「マイナーゲームTV」を運営中。著書に「三国志」「封神演義」「西遊記」「封魔鬼譚」(偕成社)、「文学少年と運命の書」「天邪鬼な皇子と唐の黒猫」(ポプラ社)、「三国志博奕伝」(文春文庫)など。

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