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中華ゲーム見聞録:香港発の美少年育成シミュ『心之檻』裁縫師のお姉さんは閉ざされた孤児の心を開くことができるか?

「中華ゲーム見聞録」第11 回目は香港のインディーデベロッパーが放つ美少年育成シミュ『心之檻』のプレイレポートをお届けします。開発者へのインタビューもあります。

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中華ゲーム見聞録:香港発の美少年育成シミュ『心之檻』裁縫師のお姉さんは閉ざされた孤児の心を開くことができるか?
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「中華ゲーム見聞録」第11回目は美少年育成シミュ『心之檻』のプレイレポートをお届けします。

以前レポートした『七人殺陣』は美少女ものでしたが、今回は美少年もの。本作は第一點心(DimSumOneStudio)によって、Steamで11月10日に配信されました。ちなみに「DimSum(ディムサム。點心)」は広東語で点心やおやつ、飲茶を意味します。

おそらく、本作を開発したのは香港のデベロッパーかなと思ったのですが、会社に関する情報が見つかりません。ということで、開発者のFacebookから直接チャットで質問したところ、返信をいただけました(しかも日本語で!)。聞くところによると、香港のインディーデベロッパーで、メンバーは4人。開発には5ヶ月ほど掛かったとのことです。せっかくなので日本語版の配信なども含め、インタビューしてみました。こちらは、本記事の最後に掲載します。

『心之檻』のトレイラー

本作の内容ですが、プレイヤーは裁縫を生業とする女性です。幼馴染の男が連れてきた孤児の少年を預かり、育てていくのが目的。『プリンセスメーカー』という少女育成ゲームがありましたが、これはその逆バージョンといったところでしょうか。さっそくプレイしていきましょう。

幼馴染が子供を連れてきた



ゲームスタートすると、まずはプレイヤーの名前を入力。いつもは「遊戯閃光」という名前を使っていますが、今回は女性なので「遊戯閃子」にしました。


遊戯閃子は独り暮らしの裁縫師。夜も更けたころ、突然玄関からノックが響きます。こんな時間にいったい誰が……。ドアを開けるとそこには、医者になるため黙って首都へ行った幼馴染、アンディがいました。何年ぶりかの再会です。


アンディのそばには見知らぬ少年の姿が。首都の孤児院の子で「ヤク」といいます(中国語で「雅克」。便宜上、ロシア戦闘機Yak(雅克)の日本語読みを使用。日本語版で別の読み方になる可能性もあり。開発者とのチャットでは「アヤ(阿雅)」との表現も)。

「孤児院が経営困難になって、院長が俺にこの子を預けたんだ。俺って天才なだけじゃなくて、心暖かいお兄さんだろ?だから可哀そうなこの子を見て、引き受けちまったんだ」。そういう性格なんですね、アンディ。「けど、いま医者の仕事が忙しくて、自分の世話もろくにできやしない。代わりに預かってほしい」。この男、幼馴染を何だと……。

ここで選択肢、「引き受ける」「断る」。ヤクは悲しそうな顔だし、この空気だと引き受けるしかないでしょう。しかし強引な幼馴染です。

ヤクを育てる遊戯閃子



「あくまで一時的」との条件でヤクを預かることになった遊戯閃子。アンディはその間に、ヤクを養ってくれる家庭や孤児院を探しておくとのことです。

アンディは用事があるそうで、去っていきました。残されたヤクは怯えています。沈黙が流れ、気まずい雰囲気に。話しかけると、「ごめんなさい……」とぼそりとしゃべりました。上手くやっていけるのでしょうか。今日はもう遅いので、寝かせることにします。

会話パートとコマンド選択の動画。スケジュールは逐一決める形

翌日から本格的な育成が始まります。この時点で行えるのは「部屋の片づけ」「叱責」の2つだけ。コマンドを実行すると、画面上にある行動点が1減ります。まずは部屋の片づけからいきましょう。残りの行動点2は「片付け」と「叱責」に使用。『プリンセスメーカー』はスケジュールをまとめて決めるので、プレイ感覚は違いますね。


ヤクのステータスを見てみます。年齢は13歳。身長152cm、体重38kg。好きなものは「甘いもの、猫、読書、絵を描くこと」です。パラメータは「体力、智慧、知性、信用」の4種類。まだ始まったばかりなので全部0です。


行動点を使い終わると翌日に。「部屋を片付ける」は無くなり、新コマンド「頭を撫でる」が追加されました。使ってみたら「ヤクの髪は柔らかい」とのこと。ちなみに遊戯閃子の仕事により、毎日お金が100入ります。

ヤクがいなくなった!



何日か過ぎたのち、ヤクが突然いなくなりました。家から逃げてしまったようです。原因は「叱責」を行ったこと。どうなるか知りたかったので試してみたのですが、見事ゲームオーバーになりました。ヤクは怯えまくっていたので、とにかく甘やかすべきでした。


もう一度やり直しです。今度はひたすら甘やかす毎日。するとある日、ほとんどしゃべらないヤクが、「家事を手伝いたい」と言い出しました。とても恥ずかしがっていますが、心を開いてきたようです。選択肢の「手伝ってもらう」を選ぶと、ヤクは喜んで台所の片づけを始めました。初めて笑顔を見せましたね。


翌日から一気にコマンドが増加。ステータスを見ると、信用が5上がっていました。またコマンドによってパラメータが上下するようになったので、体力の上がる「家事」、智慧の上がる「読書」、知性の上がる「手工芸」を重点的に実行していきます。

初めての買い物



家にずっといるのもどうかと思い、ヤクを連れて散歩へ出掛けます。店に入ると、店員のお姉さんが笑顔でお出迎え。遊戯閃子とは幼馴染のようです。アンディがヤクを連れて戻ってきたことは、すでに街の噂になっていました。


お店でのイベントが終わったのち、スケジュールコマンドから「店へ行く」が選べるようになりました。アイテムの購入が可能です。思ったよりもいろいろなもにが売っていたので、せっかくですし、ヤクのためにハンカチを買ってあげましょう。


翌日お店へ行くと、昨日の店員と顔がそっくりな別の店員が登場。どうやら彼女たちは三つ子の姉妹で、先日会ったのは次女、今回は三女のよう。月末の1月30日にクイズ大会があると言い、練習のためになぞなぞ本をヤクにくれました。せっかくなので優勝目指して訓練しましょう。


次の日になると、三つ子の最後の一人、レストランで働く長女とも遭遇。遊戯閃子にクイズを仕掛けてきます。遊戯閃子は2問答えられたものの、最後の問題を外します。するとヤクが代わりに答えました。これまで正解者がいなかったので、長女も驚いています。これはクイズ大会、いけるんじゃないでしょうか。

ヤクと街を探索



クイズ大会に向けての訓練だけでは息が詰まってしまうので、ヤクを連れて散歩へ。すると浮浪者っぽい老人が現れて「呪いの子だ」と言い始め、ヤクをつかまえようとします。ここでヤクを守るかどうかの選択肢が出るので、もちろん守りましょう。老人は「不吉だ!不吉だ!」と叫びながらどこかへ行ってしまいました。いったいなんだったんでしょうか?


続いては、ヤクが興味を持った書店に行ってみました。店主のソニアはしゃべれないので、筆談で意思疎通を行います。なんだかミステリアスな女性です。猫は「男爵」という名前でした。ソニアはヤクに高そうな絵本を贈ってくれます。


最初に比べれば街の生活にもだいぶ慣れてきたヤク。三つ子の店へ行ったとき、チョコレートを見せてもらいました。この世界でチョコレートは高価な食べ物で、ヤクどころか遊戯閃子も目にしたことがありません。特別に食べさせてもらったところ、ヤクは気に入ったようです。


最初こそ強引だったアンディですが、何度か様子を見に来てくれています。一応は心配してくれているみたいです。「ヤクに変わったことはないか?」との質問を受けたので、道で会った老人といい、もしかしてヤクにはなにか秘密があるのかもしれません。


さて、そんなこんなでゲーム内では、とうとう1月30日、クイズ大会の日がやってきました。参加人数もこれまでで最多とのこと。果たしてヤクは優勝できるのでしょうか?続きはあなたの目で確かめてみてください。

開発者へのインタビュー


本作は非常に遊びやすい育成アドベンチャーゲームです。育成中にもさまざまなエピソードが挿入されるので飽きさせず、アイテムの有無やプレイヤーの選択によってストーリーが変化していきます。謎も多く、ストーリーに重点が置かれた作品です。

以下は開発者Anakinさんへのインタビューです。「注目インディーミニ問答」形式でお送りします。


――まずは自己紹介をお願いします。

Anakin氏:『心之檻』開発チームのAnakinです。私たちは香港のインディーデベロッパーで、メンバーは4人。本作はチームの第1作目になります。今は4人だけのチームですが、いずれ機会がありましたらもっと人材を集め、より良いゲームを開発することを日々目指しています。

――本作の開発はいつどのようにして始まったのでしょう?

Anakin氏:本作は開発に5カ月ほど掛かりました。人びとの心に残るようなシナリオをただ書きたいと思っていました。本来は4月から開発を始める予定でしたが、各スタッフは自分の仕事があって、正式に始めたのは5月からです。 作ったきっかけですが、人に「あ、このストーリー面白い」「ヤクかわいいね」というのを表現をできたらいいな、そういう気軽な気持ちで始めた作品です。

――本作の特徴を教えてください。

Anakin氏:本作の一番の特徴は育成です。プレイヤーはヤクを育てていくにつれ、だんだんとその心の中の世界に引きこまれていきます。ヤクのことを知れば知るほど、よりストーリーを楽しむことができるようになります。

――本作が影響を受けた作品はありますか?

Anakin氏:あまり複雑なことを考えず、いろいろな名作を参考にして一所懸命開発しました。一番参考にしたのは『ときめきメモリアル』です。

――本作の日本語対応予定はありますか?

Anakin氏:本作は現在、中国語(簡体字、繁体字)のみに対応しています。日本語と英語への対応も予定していて、現在開発中です。

――最後に日本の読者にメッセージをお願いします。

Anakin氏:『心之檻』は私たちの作った初めての作品です。まだまだ未熟なところがありますが、これからもっと努力して、作品の改善をしていきたいと思います。日本語版をリリースできたときに、日本のプレイヤーの皆さんがヤクのことを気に入ってくれたら嬉しいです。どうぞこれからもよろしくお願いします。

――ありがとうございました。

香港の同人作品交流会「第5回創天綜合同人祭(Creative Paradise05)」での出展模様

ヤクのスタンド。いずれフィギュアも作製したいとのこと

日本語や英語対応も予定されているとのことで、今後の展開が楽しみな本作。日本語対応されたときにはぜひともプレイして、ヤクの心に触れてみてください。

製品情報


    『心之檻』

    開発・販売:第一點心(DimSumOneStudio)
    対象OS:Windows、Mac
    通常価格:820円
    サポート言語:中国語(簡体字、繁体字)のみ
    Steamストアページ:https://store.steampowered.com/app/951130/_/

※本記事で用いている固有名詞の一部は、技術的な制限により、簡体字・繁体字を日本の漢字に置き換えています。
《渡辺仙州》

歴史・シミュ・ボドゲ好き 渡辺仙州

主に中国ものを書いている作家。人生の理念は「知られていない面白いもの」を発掘・提供すること。歴史・シミュレーションゲーム・ボードゲーム好きで、「マイナーゲーム.com」「マイナーゲームTV」を運営中。著書に「三国志」「封神演義」「西遊記」「封魔鬼譚」(偕成社)、「文学少年と運命の書」「天邪鬼な皇子と唐の黒猫」(ポプラ社)、「三国志博奕伝」(文春文庫)など。

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