中華ゲーム見聞録:誰からも愛されたことがない開発者の恋愛ADV『Tiny Snow』をプレイ!レビューには同情コメントも…【UPDATE】 | Game*Spark - 国内・海外ゲーム情報サイト

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中華ゲーム見聞録:誰からも愛されたことがない開発者の恋愛ADV『Tiny Snow』をプレイ!レビューには同情コメントも…【UPDATE】

「中華ゲーム見聞録」第34回目は、「愛されたことのない開発者による恋愛ADV」として中国のみならず海外で紹介されて話題になり、中国語の読めない多くの人たちが好評レビューを寄せている『Tiny Snow(茸雪)』をお届けします。

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「中華ゲーム見聞録」第34回目は、「愛されたことのない開発者による恋愛ADV」として中国のみならず海外で紹介されて話題になり、中国語の読めない多くの人たちが好評レビューを寄せている『Tiny Snow(茸雪)』をお届けします。

本作は#workshopが開発を行い、2月28日にNVLMakerによってSteamで配信されました。NVLMakerは、中国の高考(中国の全国大学統一試験)をテーマにした恋愛ゲーム『高考恋愛100天』など、中国産恋愛ゲームを配信してきたパブリッシャーとして知られています。それで本作なのですが、言語が「中国語のみ」にもかかわらず、なぜかSteamには中国語の読めないユーザーによる好評レビュー(英語)が多数寄せられています。


事の発端は、3月5日にSteamで「最後までクリアしたけど、普通のギャルゲーより面白かった。ただ愛情の部分がちょっと弱いと思った。2人の愛情は改造後と本来とで何が違うのか(改造とは人格改造のこと。後述します)。愛情とは何か。まあいいや、これ以上私の頭で考えてもよくわからないし、もう寝よう」とのレビューです。それに対して開発者であるRICE(炒飯)氏が「厳密に言えば、愛情の部分が弱いのは私が……その、無いのです……経験が。けれども失恋したり捨てられたりといったストーリーを書くのはとても得意です。次回はもっと努力します」との返事をしました。

これが受けたようで、別の中国人ユーザーが「開発者のレスはとても草(日本語)」との書き込みが続きます(「草」っていつの間にか日本語として中国で認知されていたのですね)。これを皮切りに、他の中国人ユーザーも次々に「俺は泣いた。お前は?」「俺も泣いた」「もう言うな。本当にもう言うな(泣)」「(本作を)買ってやった(泣)」「感動中国2019ノミネート人物」「感動中国炒飯君」「あまりにもむごい。俺は開発者を支持するよ」と同情(?)の書き込みを始めます。


中国のゲーム系ニュースサイトにも取り上げられたことから、書き込み量がさらに増えていきます。50人以上のレスがあったところで開発者のRICE氏が再登場。「お前ら、もういいだろ……俺のキャラ設定はすでに崩壊している」とレスを書きますが、書き込みは収まる様子を見せず、この記事を書いている間にも「泣いた」など新たな同情レスが書き込まれていました。

さらにはRedditでも紹介され、中国語を読めないゲーマーの同情まで集めてしまいます。「愛の経験がない」「失恋したり捨てられたりといったストーリーを書くのはとても得意」の文脈から、「愛されたことがなく、振られてばかりの悲惨な開発者」「愛を知らない開発者」ととらえられてしまったのか、Steamに「中国語はわからないけど」の前置きがある英語のレビューが数多く投稿され、「開発者には幸せになってほしい」のようなコメントが寄せられました(もはやレビューでもなんでもありませんが)。日本では「恋愛経験のない開発者」という形で伝わっているようで、日本語のレビュー(というか励ましのコメント)もありました。


RICE氏はこの事態に対し、「あなたたちの心にあるもの、それが愛であることを知っています」とイラスト付きでSteamの更新記録に投稿。もはや「愛されたことのない開発者」「愛を知らない開発者」ではないことをアピールします。さらに「私はそんなに悲惨な状況ではありません。大げさに伝わっているだけです。私への同情よりもゲームを愛してほしいです」とのもっともなメッセージが添えられていました。これに対し、「で、実際のところはどうなの?」のような質問もあり、事態はまだ収束していない様子です。


「愛されたことのない、振られてばかりの惨めな男の開発したゲーム」という部分だけがクローズアップされて盛り上がり、肝心のゲームがどんなものかがかなり置き去りにされている本作。実際のところ、ゲームの内容はどうなのか。「失恋したり捨てられたりといったストーリーを書くのはとても得意」というスキルは生かされているのか。さっそくプレイしていきましょう(泣)。

雪山を行く主人公



ゲームを開始すると、主人公が雪山の道を登るシーンから始まります。主人公が何者なのか、どこへ向かっているのかはまだ明かされていません。風景描写などなかなかいいですね。

ちなみにストアページでのストーリー説明だと、遺伝子操作と薬物技術の進歩で「一人しか愛せない技術」が誕生。主人公とヒロインがこの技術の受益者で、お互い離れられない関係になってしまったとのことです。「愛とは何か」がテーマになっているようですね。


道を進み、山小屋にたどり着きました。誰も使っていない小屋のようで、主人公は人里離れて引き籠りたいときにここを利用しているようです。今回も何か嫌なことがあって、ここに逃げてきたみたいですね。


小屋の中に入りました。置かれている道具などは前回来た時と配置がまったく同じ。主人公以外利用していないようですね。ちなみに主人公は料理が下手で、町にいたときは外食ばかり利用していました。ここでの食料はビスケットや缶詰などです。


しばらくすると、ケータイに電話がかかってきました。しかし電話を受けたくないので無視。嫌なことからここへ逃げてきたので、外界の情報は入れたくありません。


夜、眠ろうとしたときに、外から足音が聞こえました。こんな山の中にいったい誰が……?聞き覚えのあるドアのノックの仕方。これは……。


ドアを開けると、現れたのは小茸という少女。主人公の知り合いのようです。ボイス付きですね。「中華ゲーム見聞録」第13回で紹介したイケメン僧侶との恋愛ADV『塵沙惑』のインタビューにもあるように、ひと昔前までは中国産でボイス付きのADVは珍しかったのですが、最近は当たり前になってきています。中国の声優のレベルもどんどん上がっていますね。

ヒロイン登場



小茸はガタガタ震えて寒がっているので、小屋に入れてやりました。そして火を焚いて部屋を暖め、温かい飲み物をあたえると落ち着いたようです。「それで、何しに来たんだ?」と主人公が質問します。


「お兄ちゃんに捨てられた。どうして私を無視するの」と泣き出しました。先ほどの電話も彼女がかけたもののようです。主人公を「お兄ちゃん」と呼んでいるので、主人公はこの子の兄なのでしょうか。


「別に無視なんてしてない。ただ重要な用事があったのでここに来ただけだ」と言う主人公。「それって家でできないの?」と食い下がってくる小茸。「家ではできないことなんだ。長い論文を書くには静かなところが必要だから」と誤魔化します。主人公は研究員のようです。


「私が一緒じゃ駄目なの?」「論文を書くのは一人のほうがいい」「私が嫌いになったの?」と主人公を困らせるような発言をしてきます。家を出るときに「何日か出掛けるので、かまわないでほしい」との書き置きをしておいたのですが、小茸はそれに不満のようです。


どうやってここに来たのかを聞けば、「ずっと後ろを付けてきていた」と言いました。朝5時に家を出たはずなのに、その時から付けられていたようです。主人公の歩く速度が速いため山の途中で見失ったらしく、それからは足跡を追ってきたとのこと。ちょっと怖くなってきました

ひたすら甘えてくるヒロイン



主人公は明日小茸を家に送ると言いますが、小茸はどうしても離れたくないと言います。仕方ないので小屋に住ませることにしました。ここで説明が入り、小茸とは幼いころからずっと一緒に暮らしてきたものの、本当の妹ではないということがわかります。


小茸は主人公に料理を作ってあげたいと言い出しました。持ってきた荷物も食材ばかりのようです。しかしこのような小屋では本格的な料理を作るのは大変です。鍋で水煮にして食べることにしました。


そしてこのクソ寒い中、パジャマに着替える小茸。可愛いパジャマを買ったので、主人公に見せたかったとのこと。添い寝してほしいなどと甘えてきて、主人公は正直面倒くさくなってきています。一緒に寝るわけにもいかないので、寝静まった後、主人公は隣の部屋で寝ることになりました。


一日目が終了し、「愛情とは何か?」についての考察が入ってきます。最初人類は子孫を残すために交配をしてきました。それがいつしか「愛情」というものに変わってきます。しかし結婚には必ず愛情が必要でしょうか。そもそも愛情は必要なのか。もし愛情が人類の発展を阻害するのであれば、愛情を高尚なものと位置づける必要はあるのか。どうやらこれが主人公の論文のテーマのようです。


翌日から共同生活が始まります。山の中なので飲み水やトイレの問題などがあり、いろいろと不便です。それでも小茸は楽しそうに山小屋での主人公との生活を満喫します。


何日か過ぎ、あまりにも甘えてくる小茸に「他の人を好きになったことはないのか?」と聞きます。「仲のいい人はいるけど、好きなのはお兄ちゃんだけ」と答えます。「それをおかしいと思ったことはないのか?そもそもなんで俺が好きなんだ?」と聞くと、小茸は上手く答えられません。ただ「初めて会った時から好きになった」と言います。実は主人公も同じで、小茸以外を好きになったことがありません。しかも、危うく小茸を襲いかけたこともあったのです。


小茸からの猛烈なアタックは続きますが、主人公はそれを受け入れることができません。今の自分の感情に、何か「偽物」のような違和感があるからです。これを解決しないかぎり、小茸の愛情を受け入れるべきではないと主人公は考えています。


小茸が寝静まった後、隣の部屋で考え事をする主人公。互いが互いを理解し、愛し合って、それで家庭を作って、子供を育てて……これらは良いことなのに、なぜか不安に苛まれます。


一方、小茸もベッドの中で不安そうに「お兄ちゃん……」とつぶやいていました。彼らの愛情は本物なのか、それとも作られたものなのか。ストアページの説明には「遺伝子操作で、小茸と主人公はお互い以外を愛せない」と書いていますが、2人の関係はどうなっていくのか。続きは自分の目で確かめてみてください。

「愛情とは何か」をテーマにした恋愛ストーリー


開発者が「愛情に対して経験がない」とのことでしたが、本作品のテーマはまさに「愛情について」でした。互いしか愛せない状態で、「本当にこれでいいのか」と苦悩する主人公。愛情があれば結婚生活も楽しいものになりますが、それが作られたものであったらどうなのか。愛情とは何か。哲学的な問いですね。

なぜか雪山にメイド服を持ってきてる小茸

ちなみに本作は中国語のみです。中国語をわからない人たちが開発者への同情から購入してくれたケースが多いことから、本作を購入したユーザーには同パブリッシャーから配信されている恋愛ADV『Season of 12 Colors』(英語あり)が無料配布されることになりました。こういうサービスはいいですね。将来的には英語や日本語もサポートされればと願っています。

製品情報



※本記事で用いているゲームタイトルや固有名詞の一部は、技術的な制限により、簡体字を日本の漢字に置き換えています。
※UPDATE(2019/03/19 20:21): 販売価格を修正しました。コメント欄でのご指摘ありがとうございます。
《渡辺仙州》

歴史・シミュ・ボドゲ好き 渡辺仙州

主に中国ものを書いている作家。人生の理念は「知られていない面白いもの」を発掘・提供すること。歴史・シミュレーションゲーム・ボードゲーム好きで、「マイナーゲーム.com」「マイナーゲームTV」を運営中。著書に「三国志」「封神演義」「西遊記」「封魔鬼譚」(偕成社)、「文学少年と運命の書」「天邪鬼な皇子と唐の黒猫」(ポプラ社)、「三国志博奕伝」(文春文庫)など。

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