バグった世界を脱出せよ!主人公と“Player”の協力メタACT『Break the Game』プレイレポート【特集】 | Game*Spark - 国内・海外ゲーム情報サイト

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バグった世界を脱出せよ!主人公と“Player”の協力メタACT『Break the Game』プレイレポート【特集】

Steamで不思議なプロモーションが続いていた『Break the Game』プレイレポート。メタ表現、グリッチなステージなど、特徴的なアクションの裏には作品を超えたテーマが隠れていました。

連載・特集 プレイレポート
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画面のこちら側にいる視聴者へ、画面の中のキャラクターが語りかけるという手法は古くから「第四の壁」などと呼ばれています。アメコミではマーベル・コミックのデッドプールが特にその面で有名ですね。

ビデオゲームでもそうした手法は時々見られ、プレイヤーの存在や、ハード・ソフトが重層的な関係にあることなどから、従来では体感できなかった新たな表現が生まれることになりました。

2019年7月16日にSteamで配信されたアクションゲーム『Break the Game』は、その中でも少し変わった立ち位置にあると感じます。それは、「Steam」という土台を含めて一連の作品になっているためです。

本作はしばらく前からSteam上に登録されていましたが、どのようなゲームなのか詳しく掴めない状態となっていました。それどころか、Steam内のコミュニティ機能に意味深な告知が出されたり、唐突になぞなぞが出題されたりと、捻りを加えたプロモーションが重ねられていたのです。

ちなみに、『Escape the Game』という無料のタイトルで、本作の体験版的な作品が存在しています。ゲームプレイのアクション要素については、こちらがよく似ているので参考にしてみても良いかもしれません。

『Break the Game』にはKevinという登場人物が現れます。Twitterで時々不思議な発言をしては、自身でも何がなんだか分かっていない様子。このKevinこそが、本作の主人公となるのです。

本稿ではプレイレポートとして、本作のアクション部分を中心に紹介します。いわゆる「メタな作品」は、プレイヤーがどんな体験を求めているかが購入前に合わせにくいという側面を持ちますので、ネタバレにならない範囲で、その比率などをお伝えします。



基本はよくあるプラットフォーマー



ゲームを開始すると突然バグのような表示が!

『Break the Game』は全編このような調子でグリッチな表現が続きます。昔々、ファミコンのカセットを半挿しにしてワザとバグらせて遊んだ方には懐かしい表現なのではないでしょうか……。

これらの表現は段々と強烈になっていくので、筆者には少し目が痛い(物理的に)部分が多かったのですが、これはあくまでも表現であり、アクションのシステムとしては安定しているようです。


操作は一般的なWASDとマウスによるもの。チュートリアルもそこそこに物語は素早くはじまります。中央に写っている、目の付いた四角い生き物を操作します。


彼こそがKevin君です。

なにか不都合があってこの場に産み落とされたのか、すぐプレイヤー(画面のこちら側)に対して協力を願い出てきます。Kevinの導きによって、彼のコントロール権限を握ったプレイヤーは、このバグだらけの世界を脱出すべく進行していくのです。


ジャンプと左右の移動で攻略できるシンプルなエリアを進むと、壊れたスタート画面に行き当たります。基本的には、ステージの終点にあるテレポーターへ到達することで次のシナリオへ繋がっていくという構成です。



プラットフォーマーのお約束「ダブルジャンプ」や飛び道具も所々で入手できます。レベル構成としては、ギリギリの距離感を跳び渡るようなテクニカルなものにはなっていないようです。

行ける所・行けない所は分かりやすいですし、Kevinの操作感もスムーズ。時々あらわれる敵キャラや邪魔ブロックを壊すためのシューティング要素も、シンプルで分かりやすくありながら、それなりに爽快感があります。

インディータイトルを含めて、昨今のプラットフォーマーは良質なタイトルが多く、話題作が毎年リリースされているように感じます。そんなプラットフォーマージャンルにおいて、死亡・進行不能になったあとのリスタートの速度は注目度の高い要素ではないでしょうか。『Celeste』が高い評価を獲得したのも、それが大きな理由のひとつでした。


しかし、本作は趣向が少し異なります。プラットフォーマーとして基本的な土台は出来上がっているものの、難易度は高くありません。恐らく全編を通して「がんばったけどやられてしまった!」という場面は、どのプレイヤーも数回しか体験しないだろうと思われます。

探索の途中で「もしかしたらこっちにエリアがあるのではないか?」と高い所から落下してみるなど、命を張ったアクションを起こさなければ、Kevinはほとんどミスになりません。ですが、グリッチなステージ表現から「この先ちょっと落ちておくか」と考えてしまう部分はちらほら存在するので、一応、プラットフォーマーとしてのゲームオーバーは重ねることになります。


そこで登場するのが「メモリリーク領域(上記画像)」です。Kevinが落下ミスなどをすると、次の瞬間この空間に飛ばされてしまいます。ここにいるSatan(左)とKaren(右)はどうやらこの場所の管理者のようです。


毎回ここへ落ちる度、二人の漫才に付き合わされます。最後まで聞く必要もないので、飽きたらさっさと復旧してしまいましょう。ちなみにSatanさんはシリがお好きなようです。

プラットフォーマーとしてはむしろミスの頻度がかなり少ないゲームなために、この演出は上手です。後述するストーリーテリングの内容から考えても、ミスによって話が途切れた感じが薄れているのではないでしょうか。


また、ステージによってはパズル要素もあります。こちらも規模や難しさにそこまでインパクトはなく、手軽に楽しめるでしょう。上記は「COPY CAT」というNPCで、プレイヤーの動きに連動することでギミックを攻略できるというものです。

テキスト量は多め、英単語の知識は必要か



ステージの道中は、アクションの途中であろうと遠慮なくテキストが登場します。Kevinは独り言を呟いたりプレイヤーへ語りかけることが多く、ステージの合間では長めのカットシーンが挟まります。

会話の内容として長大なものはないので、高校レベルの英語が理解できれば問題はないでしょう。しかしながら、一瞬の単語などで雰囲気をちらつかせる表現がなされることもあり、基本的な英単語に自信のない方には残念ながらオススメできません。

ただジョークなどもかなり多く、ややしつこい演出も目立ちますので、そんな時はオプションから「Enable Fast Forward」を有効にしましょう。設定したキーを押せば、演出が早送りになります。

記事冒頭で紹介した不思議で意味深なプロモーションから深読みしてしまいがちですが、本作のテーマはそれほど複雑ではないように感じます。キャラクターも多く、その見た目に反して感情表現は豊かなので、何が起こったのかはそれでもなんとなく把握できるのではないでしょうか。

特徴的なのは、キャラクター毎にフォントが異なるという表現です。誰が話をしているのか一目瞭然なので、これは分かりやすかったと思います。




安心して遊べるタイトル


「第四の壁」を利用したメタ的な表現物は、良くも悪くもプレイヤーに大きな衝撃を残すタイトルが目立ちます。それはもちろん、その作品が名作と呼ばれるに相応しいクオリティーであることが前提ではありますが、同時に、これらの作品を別の人へ素直に勧めがたいという問題もあります。

レーシングを体験したいという人に、レーシングゲームを紹介する。そういったことがなかなかできません。よく「いいからやってみろ!」という感想を聞く事になるのは、こうした事情があるからではないでしょうか。

結論として言うと、本作は「安心して遊べるタイトル」です。ゲームプレイの操作としての中心はアクションになりますが、作品の主要な部分はストーリーテリングにあります。アクションやパズルは易しく、全体のプレイ時間は4~5時間程度になるでしょう。

Kevinが何者なのか、このグリッチだらけの世界は一体なんなのか。それらの疑問も、実際のところ物語の中盤から明らかとなるので、衝撃的などんでん返しを警戒する必要もないでしょう。

それでもあえて筆者からお伝えするならば、ぜひ最後まで遊んでみて欲しいということです。主人公Kevinが最後の最後に発するその一言こそ、不思議な形のプロモーションも含めて、この作品が訴えたいテーマの為に必要なものだったのだと分かるからです。

『Break the Game』は、画面の中のキャラクターを動かすことに歓びを感じ続けた全ての愛すべきゲーマーへ向ける、小柄で儚いアクションゲームでした。




『Break the Game』製品情報


発売日: 2019年7月16日
価格: 1,010円(Steam
《Trasque》

一般会社員 Trasque

会社員兼業ライターだけどもうすぐ無職になりそう

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