東京ゲームショウ2019を目前に控えた9月11日に、東京・赤坂にて「PLAYISM New Game 2019 TGS 新作発表会」がメディア向けに開催されました。PLAYISMは、ローカライズ事業を中心とするPCゲームプラットフォームで、アクティブゲーミングメディアが運営しています。
イベントでは積極的に日本語化を手がけるPLAYISMによる、東京ゲームショウ2019出展タイトルと、開発者のコメントが紹介。今後の発売予定や東京ゲームショウ2019での試遊情報などが案内されました。
既にこちらの記事で新作や出展作品はお伝えしている通りですが、本稿ではイベントレポートとして、開発者コメント等に注目してお届けします。
イバイ社長「事業開始時からは隔世の感」
アクティブゲーミングメディア代表取締役社長のイバイ・アメストイ氏の挨拶からイベントが開始されました。
2011年にスタートしたPLAYISMは、アメストイ氏が『LIMBO』に惚れ込み、「このようなゲームを日本でも配信したい!」と強く考えたことがきっかけ立ち上がったと振り返ります。当初は事業を行う上で「インディーとは何か?」「インディーと同人は何が違うのか?」といった説明からひとつひとつしていかねばならなかったと、当時の苦労にも触れていました。
そんな苦労を経て、現在のようにインディータイトルが受け入れられた理由として、SteamやUnityの成長があったことなどを指摘します。しかしながら、まだまだ万人受けするジャンルには届かない現状があるとし、PLAYISMは少数で苦労して作り上げているクリエイターを発掘し広めていくことを強く願っていると締めくくりました。
展示タイトルの紹介の前に……
続いて、PLAYISMエグゼクティブ・プロデューサーの水谷俊次氏による出展タイトルの紹介へと移ります。前段として、『アクションゲームツクールMV』の紹介がプロデューサーであるKADOKAWAの最上昇氏より行われました。
Steamでアーリーアクセスを実施中の同作は、アクションゲームに限らず様々なジャンルの制作にも活用可能であることをアピール。2019年9月19日にSteamでの正式リリースが決定し、その後もマップの自動生成機能など各種アップデートが重ねられていくとのことです。
また、『アクションゲームツクールMV』で制作したゲームをニンテンドースイッチで販売可能とするツールを開発中ということで、今後の展開に期待が高まります。
『DEEEER Simulator』
出展タイトル一作目は「ごく普通のシカのゲーム」『DEEEER Simulator』。既にSteamで発表されていますが、今回はイベントに向けて開発者コメントが寄せられました。
コメントの中でアーリーアクセス日程に触れられ、今冬に開始されることが明らかになりました。また、日本での展示は東京ゲームショウ2019が初となります。
『MINISTRY OF BROADCAST』
『MINISTRY OF BROADCAST』はチェコ発のインディータイトルで、PLAYISMによるローカライズ対応が決定しました。更に、チェコから来日した開発者によるコメントが続きます。
本作はジョージ・オーウェルの古典SF「1984」に強く影響を受けたタイトルとされ、近未来が舞台となっています。政府が築き上げた「壁」により分断された世界で、ひとりの男性が家族と再会する為に「ある番組」へ挑むというストーリーだということです。「1984」を題材としてBROADCASTの名を冠するということは、やはり何らかの監視といった要素があるのだろうかと想像せずにはいられませんね。
アクションの要素はあるものの、基本はパズルゲームとして構成され、頭を使ってステージを切り拓いていくゲームプレイが中心となるようです。いわゆる体力ゲージのような直接的なHUDではない「環境HUD」を採用しているとし、一筋縄ではいかない攻略を予感させます。
東京ゲームショウ2019では、日本語版の試遊が可能です。
『幻想郷萃夜祭』
東方Project二次創作となる『幻想郷萃夜祭』は、同じく二次創作である『東方萃夢想』で初登場となった伊吹萃香が主人公の2Dアクションゲームです。なお、『東方萃夢想』は公式であるZUN氏が参画していることもあり、一般的な二次創作とは異なる立場の作品と言われることもあります。
『幻想郷萃夜祭』の紹介として、バカーの代表取締役社長である斉藤大地氏が登壇しました。本作は、鬼の力を持つ伊吹萃香がお祭りを開催する為にお酒を集めようとするストーリーとなっています。斉藤氏はドット絵によるハイクオリティなアクションアートワークに自信を覗かせました。
本作はSteamにて10月14日よりアーリーアクセスを開始する予定です。正式リリースの日程は定まっていないとするものの、既に海外から高い評価を得ており、東京ゲームショウ2019での試遊も是非体験して欲しいと期待を煽りました。
『Everything』
『Everything』は既にSteamで発売されていますが、PLAYISMによるローカライズが決定し、東京ゲームショウ2019での出展となりました。
イベントでは開発者メッセージが届けられ、生命は「崇高な側面」と「馬鹿げた側面」の両方を兼ね備え、それが自然というプロセスなのだという考えが元になっていると本作の特徴を解説。続けて、本作ではイギリスの哲学者アラン・ワッツの言葉をナレーションとし、むしろ今の生活にこそ彼の言葉が合うのではないかと提起します。
英語版を遊んだ多くの日本人プレイヤーから多数の熱い感想を受け取ったことで、「このゲームの言葉と精神をより伝えられるよう、特別な翻訳に注力したので楽しみにして欲しい」と締めくくりました。
『Everything』は2019年内のリリースを予定しています。BitSummitでの展示よりも、バージョンアップしたものが東京ゲームショウ2019に展示されるとのことです。
『Orangeblood』
『RPG Maker MV』によって制作された『Orangeblood』は、実際の歴史とは異なる過程を辿った1990年代に存在する架空の人工島「ニュー・コザ」を舞台とするRPGです。
作中では「ニュー・コザ」は沖縄近海にある人工島として描かれます。「コザ市」そのものは、実際にかつて沖縄に存在した地域であり、アメリカ軍の占領などを経て合併により消滅したという複雑な歴史が絡む土地です。
開発者であるGrayfax氏はこの歴史をモチーフにし、作中の「ニュー・コザ」は様々な文化圏のプレイヤーにとって「異国情緒」に浸れるものとして制作しているとアピールしました。
『Orangeblood』は2019年11月に発売予定です。PC以外にもコンソールタイトルとして展開予定であるとも発表されました。
『Subnautica』
『Subnautica』は、広大な海洋にただ一人漂着した状況で生き残るために探索を続けていくサバイバル系ゲームの大ヒット作品です。リリースから2年弱、PLAYISMによって日本語PS4版の発売が決定しました。
PS4版『Subnautica』は2020年1月16日に発売予定です。
『OMORI』
『OMORI』はOMOCATによるRPGで、2014年にキックスターターでプロジェクトを開始しました。長い開発期間を経てリリースが現実的なものとなり、PLAYISMによるローカライズが行われることとなったようです。
会場ではOMOCATによる開発チーム紹介映像が上映。レトロなゲーム画面をそのまま活用したインターフェースに、静かで少しもの悲しい雰囲気の電子音BGMにあわせて、メンバーの役割や人となりが紹介されました。
東京ゲームショウ2019では残念ながら試遊はありませんが、PVの上映とグッズが予定されています。
東京ゲームショウでは他にも展示タイトルが
東京ゲームショウ2019の会場では他にも『NECROBARISTA』『Outrider Mako』『N1RV Ann-A』『Bright Memory』などが出展されます。
特に『N1RV Ann-A』については、過去の展示から新たに追加されたキャラクターが登場するとのことです。東京ゲームショウ2019の試遊が楽しみですね。
『Bright Memory: Infinite』の紹介も
個人開発でありながらAAAタイトルを思わせるクオリティで話題になったFPS『Bright Memory』が最後に取り上げられました。PLAYISMの水谷氏が本イベントの最後に紹介するとすれば何かと考え、改めてプッシュしたかったのが本作とのこと。なんでも、惚れ込んだ水谷氏は中国の山奥まで直接交渉に向かったのだとか。
本作は日本語版アーリーアクセスが2019年内に発売予定となっており、まだ予定はされていないものの、フルリリース時には『Bright Memory: Infinite』として発表されるとのことです。
インディータイトルの発掘と、ローカライズ事業へ熱い活動を続けるPLAYISMによる90分間の濃密なタイトル紹介でした。東京ゲームショウ2019では今回取り上げられたほとんどのタイトルが試遊可能となっています。
東京ゲームショウ2019でのPLAYISMブースは8ホール「8-N09」です。個人クリエイターの熱い創作力を受け止めにいきましょう!