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20周年を迎えた『シェンムー 一章 横須賀』を振り返る―あらゆるジャンルが融合した21世紀を見据える作品【年末特集】

1999年12月29日の20世紀末にセガがドリームキャスト向けに発売したアクションアドベンチャーゲーム『シェンムー 一章 横須賀』。20周年を迎えた本作が持つ本作の魅力を再発見していきます。

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20周年を迎えた『シェンムー 一章 横須賀』を振り返る―あらゆるジャンルが融合した21世紀を見据える作品【年末特集】
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1999年12月29日の20世紀末にセガがドリームキャスト向けに発売したアクションアドベンチャーゲーム『シェンムー 一章 横須賀』。本稿では、20周年を迎えた本作が持つ本作の魅力に迫っていきます。

筆者は残念ながら初代『シェンムー』をリアルタイムで体験していません。70億円もの開発費をかけた大作であることをアピールするCMや雑誌記事などから存在を感じていたものの、当時ドリームキャストを所有していなく、まだ小学生でもあったことから発売されるのをただ眺めているだけであったことに、ちょっとした心苦しさを感じます。


2019年、Humble MonthlyでPC版『シェンムー I&II』をプレイする機会を得て、初めて遊んでみたところ、前世紀に発売されたとは思えないほど細かいインタラクティブ要素などが盛り込まれていることに驚きました。今から遊んでも遜色ない部分はどこに現れているのでしょうか? ここで初代『シェンムー』にぎっしり詰め込まれた要素を分解し、解説しながら先進性を振り返ってみましょう。

『シェンムー』とは?『バーチャファイター』のRPG化企画から生まれた独特のゲームプレイ


シリーズ第1作めである『シェンムー』は、元々1996年に発案された『バーチャファイター』のRPG化作品から発展したアクションアドベンチャーゲームです。当初はセガサターン向けに開発されていたものの、最終的にドリームキャスト向けにリリースされることになりました。開発時の細かな流れについてはGDC 2014のセッションで鈴木裕氏が詳細を語っています。またオリジナルのドリームキャスト版はディスク3枚で構成され、さらにインターネットに接続することで街の住民や攻略情報やランキングにアクセス出来る「シェンムーパスポート」が1枚付属していました。

筆者が2015年の『シェンムー3』発表から少し経った後に購入したDC版『シェンムー』

本作の物語は、80年代の神奈川県横須賀市を舞台に、主人公の芭月涼が、彼の父を殺して鳳凰鏡を奪った中国人「藍帝」に復讐を果たす旅に出る……というものです。初代『シェンムー』では、主にアドベンチャーゲーム的に街を探索し、会話を重ねてストーリーを進めるフリークエストやQTE、フリーバトルをこなし、「藍帝」とそれを取り巻く悪党の足取りを追います。


時間的なタイムリミットは1986年12月3日から1987年4月15日までと決まっていますが、期日までのストーリー進行はプレイヤーに委ねられ、街の探索だけでなくガチャガチャをお小遣いが尽きるまで回したり、ゲームセンターへ寄り道したりもできます。またドブ板商店街の人達がもつバックボーンを知る会話や、芭月涼の同級生との会話における将来についての相談やヒロイン・原崎望との恋など、青春群像劇的な側面も描写されます。


“2019年”に遊んでも分かる初代『シェンムー』の先進性―リアリティを軸にアドベンチャーやアクションなどが融合


1999年という時代は、プレイステーション2が当時のソニー・コンピュータエンタテインメントから発表され大きな注目を浴びると共に、スクウェア(現: スクウェア・エニックス)からは『ファイナルファンタジーVIII』や『パラサイト・イヴ2』、エニックスからは『ヴァルキリープロファイル』が発売されるなど、RPGの表現方法がシステム的にもビジュアル的にも変化し始めてきた時期です。


セガサターンや初代プレイステーション世代では、完全な3D描写で語られるゲームはそう多くなく、「キャラクターが3Dで背景が2D」というハイブリッドな構成で表現されることもあった時代でした。一方で初代『メタルギア ソリッド』や『エースコンバット3』など、ローポリであるものの3D描写や演出を主に据えた作品も登場していて、フル3D表現へと変化する過渡期でもあります。

その中でも初代『シェンムー』は、当時で言えば次世代機のドリームキャストで発売されていました。主人公の芭月涼を中心に全てが前世代機よりリッチなグラフィックで構成され、現在の視点からでもギリギリ耐えられるほどのクオリティで描かれていることには、驚きがありました。


また登場人物全てに行動パターンが設定されていることに加え、該当する人物に話しかけることやアイテムを入手することで物語が進展するアドベンチャー要素も目玉要素となっています。人物だけでなく、タンスや押し入れを実際に開いて調べることや、コンビニや自販機でジュースを買うことなど、目についたものにアクションを起こせるところが本作の特徴です。

『シェンムー』は発表当時、新ジャンルとして「FREE(Full Reactive Eyes Entertainment)」と呼称しており、主人公が目についたものにインタラクト出来ることを特徴としていました(そのため主観視点キーがある)。


芭月邸にあるものはほぼ全てインタラクト可能で、隠し扉を開くために父の部屋や道場でオブジェクトを探す謎解きパートでも活かされています。また芭月涼が持つメモ帳も、現時点のクエスト進捗を表しつつゲーム的なUIを極力排除したデザインであるため、リアリティを重視したゲームであることもこのシステムから読み取れます。


その一方で格闘ゲーム的なフリーバトルやQTE、リアルタイムに変化する天候・時間、フルボイスとリアルタイムレンダリングによるカットシーンなど、前世代機より高解像度な3D表現だけでない前述のシステムをゲームとしてひとつにまとめ上げたことに、本作の先進性が見えてきます。

世界の面積でなく、登場人物の内面を掘り下げる唯一無二の『シェンムー』


『シェンムー』はオープンワールドゲームとも表現されることがありますが、厳密に照らし合わせて見ると『シェンムー』発売当時に比較された『Grand Theft Auto III』や現行の『Fallout 4』などのタイトルと比べてみても、広大なフィールドを設けていないことから完璧には適合していません。


どちらかと言えば、ひとつのマップを軸に芭月涼が手にするアイテムや関係する人物についての掘り下げが中心で、関係する登場人物に話せば話すほど内実が語られることに、本作の魅力が詰まっています。また登場人物が時間ごとに様々な行動パターンで動くことから、時間経過やストーリー進行による会話内容の変化も見所です。


例えば、神社近くで怪我をした猫に世話するイベントは、藍帝の足取りを追うイベントのひとつに見えますが、涼自身の心情を語るシーンやヒロイン・原崎との絡みを見られますし、シナリオが進むごとに語られるミリタリーショップのクリタさんと花屋の優里子さんの恋物語なども、その一部として数えられます。舞台としては横須賀の一部分だけを切り取っていますが、登場人物を掘り下げていくことで「世界の広さ」だけでない人の深さへフォーカスしたことが本作を唯一無二の存在にしているのかもしれません。



初代『シェンムー』の地域性―90年代のゲームにおける実在の都市再現


初代『シェンムー』では、前述の通り神奈川県横須賀市の1部分を切り取ってゲームの舞台としています。その中でも、「ドブ板」はゲームプレイの中心となる商店街です。筆者は横須賀・三浦地区出身。幼少から現在にかけて商業的に発展した横須賀に行く機会は多く、現在のような大規模に改装される前のドブ板の風景を少しだけ見た記憶があります。


しかしながら『シェンムー』のドブ板は、特徴ある地形をそのまま再現していないため、初プレイ時に「ここがよく行くドブ板なのか……」と疑問に思う部分もありましたが(横須賀であまり見ない中国人が多く登場するため、当初は横浜っぽさが強いと感じた)、一部地形には名残があり、どうにかして表現しようとした部分もあるように思えます。


例えば商店街に立ち並ぶ店舗や階段の形などの一部の地形、倉庫街の形などからは、再現への努力が垣間見えました。特に倉庫街の地形は田浦の長浦倉庫のものと良く似ていて、本来なら海上自衛隊の施設が米軍に置き換わっていること以外は、その雰囲気を出しています(しかしながら、2010年以降複数の倉庫が解体されたことに加え、2018年の倉庫火事で『シェンムー』本編で見たような倉庫が建ち並ぶ様はもう見られないかもしれないと思うと時代の変化を感じてしまう……)。



また、陳大人に連絡を取るために使う電話番号の市外局番は「0468」の4桁でした。2003年以降は3桁となるため、ここでもちょっとした懐かしさを覚えます。


登場人物においては、主人公の芭月涼は横須賀高校出身であるため、横須賀・三浦地区としてはかなりの秀才であることや、五郎を筆頭とした横須賀の不良達が多いことなどから、地域の特徴を感じられます。筆者が高校に通っていた2000年代でも、横須賀三浦地区の各ヤンキー高の不良の噂は実際に聞いていました。



一方で、再現を含めて扱いが難しかったのは、やはり米軍や自衛隊関係でしょう。米海軍関係者は船員とぼかされ、自衛隊についてはそもそも言及されていません。21世紀の現在はともかく、20世紀末におけるミリタリーとエンターテインメント作品の距離間の複雑さを感じさせます。

今でこそひとつの街をほぼ現実と近い状態で再現するタイトルの存在は珍しくありませんが、当時は現実の施設や都市を再現すること自体が珍しかったため、『シェンムー』は一歩先の感覚を20世紀末に表現しようとしたようにも思えます。


『シェンムー3』があるからこそ、今初代『シェンムー』を遊ぶことが出来る


筆者が『シェンムー』シリーズをプレイしようとしたきっかけは、『シェンムーIII』の発表(E3 2005)と、そこで見えたファンの熱量でした。『シェンムー』それ自体は、1999年末に初代が発売され、2001年に続編の『シェンムーII』が9月に発売。しかし同年初頭にはドリームキャスト製造の中止もあり、勢いが削がれてしまっていたように思えます。


その後、セガがハード事業から一時撤退し、ソフトウェア関連に力を入れるものの『シェンムー』自体は移植される機会がほぼ無く、新たに触れられる機会に恵まれませんでした(海外向けにはXbox版があったが国内では発売されなかった)。続編の開発が絶望的となり、2004年にはMMORPGとしての『シェンムーオンライン』が発表されるも、正式サービスにこぎつけず、2010年に動き出したソーシャルゲーム『シェンムー街』も約1年の期間で提供を終えていました。


過去に発売されたタイトルをプレイする理由は多種多様ですが、そのなかでも「シリーズ最新作が発売/開発される」という状況は、シリーズを触れてみることに十分な理由です。筆者は、『シェンムー』が21世紀のゲームシーンを先取りしたタイトルであることに間違いはないと考えます。特にオープンワールドゲームや現実の世界を舞台にした作品を好むゲーマーであれば、『シェンムー』に触れてみることをオススメします。そこには当時の最先端を走ろうとした開発者たちの想いが込められていますし、現代のゲームを更に楽しむためのヒントのようなものも見つかるかもしれません。
《G.Suzuki》

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