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e-Sportsはどう教育に活かせるか―人間力を養い、頭を活性化させよう【年始企画】

いち元プレイヤー、そしてチーム代表という視点から、e-Sportsをどのように教育に活かし、向き合っていくかといった内容をお届け。

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「ゲームは教育に良くない」「e-Sportsって言ってもたかがゲームでしょ?」――こういった話が常につきまとうゲーム文化。そんな中でもゲームの有用性を広めようとしている人は大勢います。筆者もゲーミングチームを運営し、教育機関と連携しつつ、パートナー企業とともに現在のe-Sportsシーンで活動しています。代表としての動き方に専念してからは、講演なども行うようになりました。本稿ではひとりの「元プレイヤー」、そして「チーム代表」という視点から、e-Sportsを教育に活かす方法をお届けしたいと思います。

プレイヤーも気付いたら代表になっている


以前、Game*Sparkでリリースを掲載したり、大会協賛をしてもらったということで名前をご存知の方もいらっしゃるかもしれませんが、筆者はLily Stars Gamingというチームを運営しています。元々『Counter-Strike: Source』のトップチームでプレイヤーをしていましたが、何を思ったか30歳を過ぎた段階で『PUBG』で再びプレイヤーになることとなりました。

15年前と現在では、グラフィックやシステム面などタイトルを問わず大きな変化がある一方、チーム間でのコミュニケーションや、勝利に必要な要素はほとんど変わっていません。いわば、e-Sportsの本質は全く変わっていないのです。ただ、よりゲーム外からの多角的な視点が求められるようになったり、得やすくなったというのは変化としては大きいかもしれません。

イベントや講演を経て得られたこと


2019年11月に、北海道情報大学、北海道eスポーツ連合、北海道eスポーツ協会、道北eスポーツ協会、道南eスポーツ協会、そしてLily Stars Gamingがお手伝いという形で、新千歳空港にて「北海道eスポーツホライゾン」というイベントを開催しました。その中のひとつのコンテンツとして、各代表がテーマを決めたプレゼンテーションやディスカッションを行うというものがあり、筆者はその中で、本稿のテーマでもある「e-Sportsはどう教育に活かせるか」という内容でお話をさせていただきました。

また、提携する北海道情報大学では2019年12月に一般公開という形で「eスポーツ講習会」を実施し、チームの運営やSNS運用の注意点をはじめ、チーム間でのフィードバックや、自身のロールの設定の必要性など、幅広くニーズに沿った内容で講習を行いました。実際、若年層が多いe-Sports業界では、SNSでの炎上が珍しくありません。それを管理できていないチームも多数存在しており、チーム運営上の大きな問題のひとつとなっています。

筆者としては、「対戦ゲームは勝てなければ面白くない」と常々思っていますし、ゲームを「悪」だとか「教育に悪い」という風に考え方を極力減らしていきたいと思っています。しかし、そういった声はなかなか届きにくいですし、理解を得るのが非常に難しいということは重々承知の上で、様々な方の協力を得ながらいくつかの機会をいただいてきました。結論から言ってしまうと、自分ひとりがそういった声を挙げてもほとんど何も変わらないというのが現状で、Game*Sparkの編集にお願いし、年末年始企画のひとつとして、本稿の執筆に至りました。

e-Sportsはゲームでいいじゃない



個人的には「e-Sportsはゲーム」という言い方に何も問題はないと思っています。ただ、そのゲームがどの程度競技性が高く、他のスポーツと同様にファンとチームやプレイヤーの関係があって、興奮を生み出し、どういった影響を与え、どういった効果があるのか、という認知を広めていきたいと思っているだけです。

e-Sportsと他のスポーツの相違点は、利益を求めた特定のデベロッパーが開発していて、そのデベロッパーの意向でルールが変更されることがあり、性能や機能、運営が永続的ではないことが挙げられます。とは言うものの、いわゆるフィジカルスポーツでもルール変更はありますし、「開発チームがいなくなった時点で競技として終了してしまうこと」が主な違いと思っておおむね問題ないでしょう。

e-Sportsという言葉を広める必要性



e-Sportsというものは「ゲームのうち、競技性があるもの」と筆者は考えていて、話をする際にあえてe-Sportsと呼ばなくても良いと思っています。また一般層に対して認知を広めるにあたっても、わざわざe-Sportsという言葉を持ち出さず「ゲームで大会に出ている人たちがいる」という認識が得られれば、それで十分だと考えています。

現段階のシーンでは、e-Sportsというものがどういったものかを知ってもらうことが重要です。しかしTVなどの影響もあり、e-Sportsという言葉が思った以上に広まっていることを、前述したイベントなどを通して実感できました。また、e-Sportsというものに興味を示す人も、想定以上に多かったという現状は抑えておきたいところです。

ゲームは老若男女問わず楽しめるもので、能力も向上させられる



タイトルによって対象年齢は異なりますが、ゲームはそもそも老若男女を問わず楽しめるもの。筆者も幼少期は塾や習い事漬けで、一週間のうち休みはほぼなかったも同然でしたが、毎日欠かさずゲームをプレイし続けてきました。

母から「あなたはゲームで文字も数字も覚えたし、東西南北もそこで正しく覚えていた」と言われる程度には、『ドラクエ』や『FF』をプレイしていた記憶があります。もちろん、そういったタイトルに競技性を見出すのは非常に難しいですが、教育のひとつとしては十分に利用できます。また、パズルゲームなどは年齢も問わず、競技性を持ったタイトルとして適切です。

一方、競技性の高いゲーム、言い換えればe-Sportsタイトルも、教育や様々なことに活かすことができます。対戦ゲームだけでなくアクションタイトルであれば「どうやれば勝てるのか」といった思考が必要になりますし、反応速度が遅ければ勝てないものも多々。戦略が重視されるタイトルであれば頭を回転させ、勝利の道筋を見つける必要があります。

人間とは不思議なもので、トレーニングを行えば能力がどんどん向上します。筆者も再びプレイヤーとして活動し始めたときには、反応速度が0.02から0.03秒ほど縮み、安定して0.2秒、もしくはそれを切るくらいの速さを記録していました。実際のプレイでは更に速くなっているかもしれませんが。そういった意味でも、これらを如実に表しているのが、少し話題になったような「ゲーマーおばあちゃん」のような方々ではないでしょうか。11月のイベントで聞いた話ですが、高齢者を対象とし、ゲームを通じてより健康と交流を推進するということを目的としている「健康ゲーム健康指導士」というものもあるそうです。

敢えて触れていきますが、若年層がこういった目的でゲームに触れるとしても、保護者のある程度の管理のもとでプレイしていく必要はあります。暴力描写や過激な表現などの未成年に不適切なコンテンツも、適度に管理すれば「悪」にはならないはずです。ただし、学校の宿題も勉強もせず、ただひたすらゲームしかしていないのはダメなので、きっちりと保護者が見守る上で「お約束」を作って運用していくべきと考えます。

ひとりでもチームでも考えることはたくさんある


先にも書いたように、対戦ゲーム全般においてまず必要なものは「反応速度」です。それだけでなく、より強くなるためには自分のプレイを見返しフィードバックしていくという、難しい作業が必要になります。これをきっちりと行うだけでも強くなれますし、行わなければ成長曲線は一気に鈍くなります。

筆者はチームメンバーに対して「なぜ負けたか」「なぜ勝てたか」「ここをこうやったらもっと楽に勝てたのではないか」といった、勝てた理由も含めてフィードバックを行うのが重要と常々伝えています。いくつかのポイントをベースとして、様々な方向から考えることにより、多角的な思考に加え、戦略面を含めた論理的思考力も育成できます。

論理的思考力は無意識に育てるのは難しく、最近では教育カリキュラムにプログラミングが含まれているため、より教育に効果的と言えるのではないでしょうか。また、若年層だけでなく、頭を使ったり、反応速度が上がることで、より若さを保つことにも繋がります。

また、チームであれば意思疎通は必須ですし、ソロプレイヤーでもライバルとのコミュニケーションは必須。言いたいことや情報をちゃんと伝えることで、話す能力も鍛えられますし、チームメイトやスタッフ、他のプレイヤー、さらには自分の所属するコミュニティといった他の人たちとの関係性を保っていくのであれば、社会性も育めるのはないでしょうか。もちろん、横柄な態度ばかり取っていればどうなるかは明らかです。

「高校」は既に動き出している



私立高校を中心に、e-Sports部や同好会を立ち上げ、活動をしている学校も増えてきています。筆者が話を聞いた某高校の部活動では、現在『リーグ・オブ・レジェンド(LoL)』を中心にプレイしていて、かなり濃密な戦略会議や反省会が行われているそう。また、顧問をしている教師からは「この先e-Sportsを広げていくためには、できればさらに下の中学生から部活が欲しい」といった声も聞きます。高校でも、部活動として動き出すのはなかなか苦しい面があるようです。

一方、大学では既に競技としてのe-Sportsだけでなく、脳や体の研究対象としても認識されており、「食事」を絡めた研究も既に始まっています。ゲーム前後の脳や体の違いだけでなく、どういった食べ物や栄養素がプレイ中のパフォーマンス維持に役立つかといった点にも注目して研究されているそうで、e-Sportsに限らず、幅広く応用できることが期待されます。

現時点ではサードウェーブが全国高校eスポーツ選手権を運営しており、『ロケットリーグ』『LoL』の2タイトルで大会を開催しています。こういった未来を担っていく年齢層の今後の盛り上がりも楽しみなところです。

今必要なのは「シーンにいる人がどれだけメッセージを伝えていけるか」



筆者が最も今必要だと感じているのは、実際にシーンにいる人が周りに対してどれだけ正しくe-Sportsというものを伝えられるか、ということです。誤解されてしまっては元も子もありませんし、実際にプレイしている側が話すからこそ伝わるものもあります。言ってしまえば、ゲームを分かってない人にゲームの魅力は伝えられないことと同じです。

理解が進み、ただ一方的に「たかがゲーム、さっさと勉強しなさい」と言うのではなく「勉強をすればゲームもできる」というように考える家庭が増えることで、子ども達も進んで様々な能力を伸ばせますし、遊びながらも学ぶことに繋がると考えています。もちろん、ゲームで両親や祖父母とも遊んで家族仲を深めることもできますし、ただそれだけではない効果が数え切れないほどあると思います。

競技シーンにおいては、プレイヤー達が激戦を繰り広げてファンにも興奮を与えることが最大の目標ですが、e-Sportsシーンの中で楽しくプレイして教育や能力アップに活かしていくという考え方は、ゲーマーにとっても教育関係者やご家庭にとっても悪くない話なのではないでしょうか。
《kuma》

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