1940年代の台湾を舞台にした3DホラーADV『夕生 Halflight』【中華ゲーム見聞録】 | Game*Spark - 国内・海外ゲーム情報サイト

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1940年代の台湾を舞台にした3DホラーADV『夕生 Halflight』【中華ゲーム見聞録】

「中華ゲーム見聞録」第69回目は、日本統治時代が終わりを迎えた1940年代半ばの台湾が舞台の、ホラーテイストの3Dアドベンチャーゲーム『夕生 Halflight』をお届します。

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1940年代の台湾を舞台にした3DホラーADV『夕生 Halflight』【中華ゲーム見聞録】
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中華ゲーム見聞録」第69回目は、日本統治時代が終わりを迎えた1940年代半ばの台湾が舞台の、ホラーテイストの3Dアドベンチャーゲーム『夕生 Halflight』をお届します。

本作はMATCHBが開発し、BarkingDogによって2020年4月1日にSteamで早期アクセス版が配信されました。MATCHBは台湾雲林テクノロジー大学の卒業生4人によって設立された、台湾のインディーデベロッパーです。

本作の前身となるのは、その4人が大学時代に開発した卒業制作の作品です。Epic Gamesが主催したUnreal Engineの公式コンテスト「Taiwan College Student Unreal Competition」で1位を受賞したことをきっかけに、さらに作り込んで完全版にすることを決めました。優秀なクリエイターに開発支援金を提供するEpic Games主催の「Unreal Dev Grants」でも受賞しています(この賞は付加条件なしの資金提供で、Epic Gamesに対する義務や制限は一切発生しない性質のものです)。

開発においては、MATCHBとしての最初の作品にもなることから、台湾の文化と特色を前面に押し出し、ゲーマーたちを楽しまることのできる作品に仕上げることを目標にしました。とくに台湾で暮らしている人たちには懐かしさを感じさせる世界観になっているとのことです。

『夕生 Halflight』のトレイラー

本作の内容ですが、三人称視点の3Dアドベンチャーゲームです。主人公はタイトルにもなっている「夕生」という男の子。1940年代半ばに日本の統治時代が終わりを告げ、中華民国に返還された台湾が舞台となります。台湾の文化や民間伝承をふんだんに入れ、現実と幻想が入り混じった独特でノスタルジックな世界観を作り上げたとのこと。さっそくプレイしていきましょう。

懐かしさとこだわりが感じられる世界観



本作は日本語をサポートしています。ゲーム開始時に日本語以外の言語だった場合は、設定の「言語」から日本語を選んでください。それと操作はキーボード+マウスのみでなく、パッドでのプレイにも対応しています。


ゲームが始まると、謎の少年が主人公の夕生を起こしに来ます。しかし夕生は意識が朦朧としていて、なぜか起きることができません。夕生を起こしに来た少年がどこかへ行ってしまった後に、夕生はベッドで目を覚まします。


だいぶ遅くまで眠っていたようですね。母が台所で食事を作っているので、手伝いに行きましょう。ちなみに登場人物たちはフルボイスで、中国語ではなく台湾語で話をしています。台湾デベロッパーにとってのメイン市場は人口の多い中国なので、一般的には中国語(普通語)音声を使います。そのため、台湾語音声のゲームというのは珍しいですね。臨場感があって雰囲気が良いです。


夕生を動かせるようになりました。調べることのできるオブジェクトは、近づくと手や目のマークが表示されます。とりあえず室内を探索してみました。粘土人形っぽさのあるグラフィックが独特の味を出していますね。家は台湾の田舎の民家といった様子です。


台所へ行くと、母親が料理を作っていました。台所のごちゃごちゃとした様子もよく作り込まれていて、ノスタルジックな雰囲気を醸し出しています。


母親に話しかけると、手伝いを頼まれます。言われたアイテムを集めてこなくてはならないようですね。それと台湾語ですが、「カーサン(母さん)」「トーサン(父さん)」と日本語の名詞が会話の中で使われています。日本統治時代、台湾では日本語教育が行われていたため、台湾語で会話をするときも普通に日本語名詞が出てきますね。現代でもこれは続いていて、「オバサン」「アニキ」なども使われています。


インベントリ画面。ここで持ち物やストーリーの流れ、現在やらなければならないタスクなどを見ることができます。インベントリ画面もなかなか味があり、ゲームの雰囲気作りに対する開発者のこだわりや愛情が感じられます。

弟を探しに出掛けよう!



台所を出て、母親に頼まれた物を探しに行きます。家の中は結構広いですね。通路の奥の方にある鉢には金柑が植えられています。台湾では、金柑はソースにして料理に使われたりしています。ちなみに夕生は金柑が嫌いなようで、「まずい果実、なんか洗剤の味がする」とのこと。


壁に貼ってあった家族の写真。母親に抱かれているのは夕生の弟でしょうか。そして父親の顔が、削られているか塗りつぶされているかされてしまっています。この家庭に何かあったのでしょうか。ちょっと普通じゃなくなってきました。


アイテムをすべて集め終え、母親の元へ戻りました。弟の事を母親に聞かれ、夕生は「起きてから見ていない」と答えます。もうすぐご飯なので探してくるよう言われました。弟の名前は「暮生」というようです。


家の外に出られるようになりました。外には農村の風景が広がっていますね。なんだか台湾版『ぼくのなつやすみ』といった雰囲気です。ちなみにチェックポイントに到達すると自動的にセーブが行われます。ゲーム中に敵に捕まるなどした場合は、チェックポイントからやり直しになります。


小川の方へ行くと、明らかに人間ではないような生物がいました。頭がカタツムリになっていますね。夕生ですが、特に驚く様子もありません。害は無さそうなので、とりあえず話しかけてみましょう。


話しかけてみると、「もっと多くを捕まえて売れば、お菓子が買える」とのこと。この奇妙な生物は子どもなのでしょうか。それよりも、今は弟を見つけることの方が大切です。先に進みましょう。


進んでいくと、またもやカタツムリ人間(勝手に命名)がいました。「思い出せなくてもいい、忘れられることも幸せだな」と謎のセリフを言うだけです。そもそもここは現実の世界なのでしょうか。謎は深まるばかりです。


崩れた亭を見つけました。夕生は弟の名前を呼びますが、返事はありません。何か床に落ちているようです。近づいて見てみましょう。


絵が落ちていました。弟が描いたのでしょうか。女性が泣いていますね。この後に短い回想シーンのようなものが入り、泣いている母親を慰める少年が登場します。夕生にはその場面が何なのか理解できません。


突然入ってきた謎の記憶に困惑する夕生。記憶の混乱が起こっているようで、夕生は母親に頼まれるまでもなく、すでに弟を探しに外へ出ていたということに気付きます。逆に、先ほどなぜ家にいたのかが分からなくなっていました。あれは現実だったのでしょうか。

敵に見つからないように進め!



とにかく今重要なのは弟を探すことです。マップを進んでいき、立ち入り禁止区域に足を踏み入れることになりました。ここから「しゃがみ」のアクションを使うことになります。遠くの方で話し声がしますね。


しゃがみ状態で見つからないように草の茂みを進んでいきます。軍服を来た2人の兵士らしき男たちが、会話をしながら奥へ歩いていくのが見えます。クチバシのようなものがあり、腕も長く、人には見えませんね。

2人の会話では、台湾語でなく中国語が使われています。となると、大陸から来た中華民国軍の兵士を表しているということでしょうか。台湾語を使っていたのは、台湾の作品だからというだけではなく、内容ともリンクしているようです。


2人を追って進むと、大きな怪物がいました。軍服を着ているところを見ると、2人の上官か何かでしょうか。もう少し近づいてみましょう。


近づきすぎたのか、見つかってしまいました。「逃げるな!」と中国語で叫びながら追ってきます。慌てて逃げるも、捕まってしまいました。ゲームオーバーになり、チェックポイントまで戻されてしまいます。


今度は先ほどの上官のような化け物たちの方へは向かわず、逆の方向に進みました。しかしそれでも気付かれて、敵が追いかけてきます。しゃがみ状態を解除し、走って奥にある小部屋へと駆け込みました。すると扉が閉まり、床が下がっていきました。どうやらエレベータのようです。


到着した先にあったのは、雑貨屋か何かのようです。奥の方に誰かがいます。行ってみましょう。


途中に奇妙な男(?)がいました。夕生のことを知っているようです。話を聞いて見ると、夕生の家のそばに住んでいるアーウェおじさんとのこと。「ネズミを見つけてくれたらお小遣いをあげる」と言われました。


奥のカウンターにいたニワトリ頭の店員。お金をもってきたら「箱破りゲーム」を遊ばせてくれるそうです。箱破りゲームというのは画像の左側に見えるような、マス目の紙を破って中の景品がもらえるというもの。駄菓子屋などでよくありますね。先ほどのアーウェおじさんからお金をもらえば、遊ぶことができそうです。


箱破りゲームの謎を解き、弟を探してさらに奥へ。ここからは敵に見つからないように進まなければならなくなります。辺りが暗いので、提灯を使って視界を確保しましょう。果たして夕生は弟に出会うことができるのか。そもそもこの世界は何なのか。この先の展開は自身の目で確かめてみてください。

独特なグラフィックと世界観のADV


本作はノスタルジックな台湾の風景や文化がよく表現されている作品です。グラフィックも独特で温かみのあるものになっています。特に台湾語音声による会話があるのがいいですね。BGMも雰囲気に合ったものになっています。歌が流れたりすることもあります。


ゲーム自体は、敵に発見されないように行動するステルスアクションと、謎解きをするアドベンチャーの2つの軸によって構成されています。謎解き自体はそれほど難しくはないかと思います。

ホラー要素ですが、「怖さ」と言うよりも「奇妙さ」を推し出したものになっています。雰囲気としては『クーロンズゲート』のようですね。『クーロンズゲート』が好きだった方や、台湾の文化に興味のある方は、ぜひとも本作をプレイしてみてください。日本語もサポートされています。

製品情報



※本記事で用いているゲームタイトルや固有名詞の一部は、技術的な制限により、繁体字を日本の漢字に置き換えています。

■筆者紹介:渡辺仙州 主に中国ものを書いている作家。人生の理念は「知られていない面白いもの」を発掘・提供すること。歴史・シミュレーションゲーム・ボードゲーム好きで、「マイナーゲーム.com」(旧「マイナーな戦略ゲーム研究所」)を運営中。著書に「三国志」「封神演義」「封魔鬼譚」(偕成社)、「文学少年と運命の書」(ポプラ社)、「三国志博奕伝」(文春文庫)など。新刊「天邪鬼な皇子と唐の黒猫」(ポプラ社)。著者Twitter「マイナーゲーム.com」Twitter
《渡辺仙州》

歴史・シミュ・ボドゲ好き 渡辺仙州

主に中国ものを書いている作家。人生の理念は「知られていない面白いもの」を発掘・提供すること。歴史・シミュレーションゲーム・ボードゲーム好きで、「マイナーゲーム.com」「マイナーゲームTV」を運営中。著書に「三国志」「封神演義」「西遊記」「封魔鬼譚」(偕成社)、「文学少年と運命の書」「天邪鬼な皇子と唐の黒猫」(ポプラ社)、「三国志博奕伝」(文春文庫)など。

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