Game*Sparkレビュー:『Cloudpunk』【年末年始特集】 | Game*Spark - 国内・海外ゲーム情報サイト

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Game*Sparkレビュー:『Cloudpunk』【年末年始特集】

展開は全体的にいまいち盛り上がりに欠けるが、サイバーパンク溢れる圧巻の街並みをドライブする楽しさは最高クラス。

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Game*Sparkレビュー特別企画として、2020年にリリースされた作品でレビューできなかったタイトルを厳選してお届けします。ぜひ正月休みのゲームプレイの参考にしてください。

※注意!この記事にはゲームのネタバレを含みます。

インディデベロッパーION LANDSが手掛ける『Cloudpunk』は、サイバーパンクアドベンチャーゲームとして、2020年4月24日SteamにてPC(Windows)向けにリリースされました。その後、PS4/Xbox One/ニンテンドースイッチでも配信されています。

本作はAIによって管理されている街ニヴァリスが舞台で、主人公はその街で違法配達ドライバーとして生計を立てています。灰色の空が重く広がって降り止まない雨、夜だというのに街はネオンの灯りに溢れており、ザ・サイバーパンクな世界観にこれでもかと浸ることができます。

筆者は一人のプレイヤーとして、このむせ返るような作品世界に肩までどっぷりつかり、そこで生きる個性豊かなキャラクターたちとの会話を楽しみながらクリアしました。しかし評価という物差しをあてるのであれば、どうしても指摘しなければならない箇所がいくつかあるのもまた事実。そこで今回のレビューでは「世界観」「作り込み」を中心に記事を書いていきたいと思います。さっそくやってまいりましょう。

世界観

メインミッション

本作の主人公ラニアは、相棒オートマタAIのカミュと一緒に、クラウドパンク社で働く違法配達ドライバー。ゲーム開始時点では勤務初日の新人ではありますが、精神的に自立した性格で、会社のオペレーターから回される仕事を次々とこなして信用を得ていきます。もともとは街の外の生まれで、債権会社の取り立てから辛くも逃げて、ニヴァリスに転がり込んできた女性。故郷ではフルートを演奏する音楽家だったりもします。

ゲームはメインミッションのストーリーに沿って進行します。マップは広く、複数エリアにわかれた箱庭系ゲームの側面もありますが、マップのどこかでストーリーミッションを受注して進行……という形ではなく、オペレーターから依頼される配達を遂行することで進んでいきます。

配達が終わるごとに報酬が支払われるため、一応そこがミッションの区切りという認識。ただそこから数分もしないうちにすぐ次のミッションが始まるので、筆者はそこまで気になりませんでしたが、自分のペースでゲームを進めたいプレイヤーにはややストレスかもしれません。

サイドミッション

その代わりサイドミッションは、マップに点在するNPC達との会話で発生するため、受注選択をある程度コントロールできます。ある程度と書いたのは、会話が始まると強制受注なので……。

ミッションの内容は、その場の会話で終了するもの(実績も解除されます)から、街中に散らばる収集アイテムをコンプリートするなど様々です。これらは世界観を楽しむフレーバーテキスト程度の内容で、クリア必須ではありません。とはいえクリア時には報酬が支払われるため、メインミッションだけでは金策ができない、という時は積極的に利用すると良いかもしれませんね。

ミッションによって浮かぶストーリーの輪郭

オペレーターをはじめ、キャラクター達は皆何かしらの事情を抱えており、ストーリーが進むにつれ内面が掘り下げられていくため、プレイしているうちに愛着が沸いてきますね。また一部のメインミッションでは、そんな彼らに対する「行動の選択」を迫られるものもあり、ラニアが選んだ行動の結果は、少し後にわかるようになっています。

ゲームシステムの話になりますが、本作はいつでもセーブ中断してゲームを終了できるという親切な設計がされています。ところがセーブデータはひとつのみなので、場面ごとにセーブデータを分けて、それぞれの結末を見届けることができないようになっています。1周クリアには最低でも7時間は必要なので、別の選択肢も確認したいからもう1度最初からプレイ!……とは言いづらい。

個人的に一番好きな選択の結果

そのため、上記「行動の選択」は、後戻りができないという点で悩ましく、責任の重さを感じさせるようになっており、ここは実に素晴らしい演出だと思います。

とはいえストーリーの内容は、1周目だけでは少々わかりづらい展開でした。一応、配達しながら目の前のイベントを解決していくことで、自分が何か大きな物事の流れに巻き込まれているとは感じます。それぞれのイベントはぐっと来る良い話もあるのですが、しかし具体的な像として結ばれるには至らず、ラストは突然出てきた新キャラ(と、思われる)に少々困惑してしまいました。この盛り上がりそうで、あと一歩突き抜けきれない展開は、ストーリーの結末に直接関わる重要キャラクター“CORA”との絡みが弱いからだと思われます。

また、最後に仲間との別れがありましたが、たしかに寂しい気持ちにはなるものの、それは数時間プレイした故に生まれるプレイヤーの感情であって、ラニアのストーリー的には一晩しか経過しておらず、友よ涙の別れ的な展開には若干無理があるようにも感じました。

作り込み

未来の乗り物HOVA

主人公ラニアは、配達ドライバーなので、基本的にHOVAと呼ばれる浮遊車両による「移動」でミッションをクリアしていきます(徒歩移動も有り)。この「移動」はまさに本作における楽しさの要で、サイバーパンクたっぷりなマップを文字通り縦横無尽に動き回ります。

筆者はPS4コントローラを接続してプレイ。トリガーでアクセルブレーキ(リバース)とスティックで旋回と上下移動。他にも左右移動やブースターや一人称視点切り替えなどがあります。

一人称視点は作り込まれたコクピット内部からの視界で運転します。上下の感覚は掴みづらいですが、没入感が高まり面白い。しかしながら唯一の難点はバック走行で、後退+左右旋回の動きをとるため、現実の車と異なり少々戸惑います。

HOVAには耐久度と残燃料のシステムが搭載されており、どちらも一定の数値を下回ると修理ステーション(ガレージ)やガソリンスタンドに立ち寄る必要が出てきます。他の車両やオブジェクトにぶつからず、適切な経路を移動することで経済的な配達を目指しましょう。これらの施設には頻繁に立ち寄る必要が特に無いためストレスはありません。むしろ耐久値MAXだと報酬増額とか、残燃料によってHOVA移動速度が増加とかそういう要素を盛り込んでくれたら、もっと積極的に使用できるのに、とは思います。

ちなみにガレージにはメカニックがおり、彼に話しかけると車両の修理以外に装備や装飾品の購入ができます。装備は耐久度の上昇やブースターの搭載などがあり移動に便利。装飾品は車両後方にたなびくライトの色変更やアンテナなどの収集要素ですね。

街の作り込み

本作の移動が楽しいのは、上記の通りHOVA自体が楽しいからですが、それ以上に街全体が細部に至るまで作り込まれているからとも言えます。

ご覧ください、このネオンの光と影の深い街並みの情報量。ドットライクな表現が画面の密度をより高めており、サイバーパンク世界ではお馴染みの「謎めいた日本語看板」にも趣がありますね。

マップの範囲は広く、街自体が階層に分かれた立体的な作りをしているため、HOVAによる上下を含めた移動が街の様々な表情を見せてくれるので面白い。また街中に張り巡らされた道は、他のHOVA車両も通行する幹線で、上下左右に交通量が多くても(現実ではご法度ですが)車両の間をすり抜けるスリリングな走りを楽しめます。

道については、別にしっかり順路を守って走る必要はなく、やろうと思えば道を一切無視して空中を走り抜けることも可能です。しかしその分HOVAの速度が低下したり、いちいち建物を避けたりしなければならないため、道を使ったほうが便利。もちろんのんびり街を散策して流したい時はその限りではありません。

惜しい点

さてここからは本作における惜しい点について触れていきましょう。

まずはストーリー。本作はムービーがほぼ存在せず、基本的にはキャラクターの会話を聞きながらストーリーを体験していきます。ただこれは前述の通り、大まかな物語の輪郭は伝わるものの、締めのジェイ・Kまわりとオチが唐突で少々浮いてしまい、全体的にぼんやりした印象でした。個人的にはハクスリー関連のメリハリ利いたミッションが、わかりやすいカタルシスで良かったと思います。

次はシステム、特に一部のスキップできない会話について。ゲームの都合上致し方ない部分であることも重々理解していますが、それでもストレスでした。特に辛かったのは、目標の人物に話しかけるなど次の行動に移りたいにもかかわらず、長々と続く会話のせいで、移動と一部買い物以外ほとんど何もできないまま数分間待たされている時。なかには新しい目的地が最後に表示されるため、待ち時間で移動できたのに……と、もどかしさを感じることも。もちろんスキップできるものもありますが、もし可能であれば、一回の会話時間を短くするか、切り上げコマンドを導入して欲しいところです。

あとは細かい部分では、以下の通り。

・全体マップ確認画面で他エリアに切り替えできない。
・マップ上にマーカーによるルート設定ができない。

・会話送りと決定ボタンが同じなので、店頭で誤反応によって先頭アイテムを購入してしまう。
・UI非表示ボタンの干渉で、アイテム選択の際カーソルを使用するとしばしば画面ごと消えてしまう。

まとめ

ストーリーは、ひとつひとつのミッションは面白いイベントですが、全体としてみると掘り下げが足りず、輪郭はうっすら出ているものの霞んでしまっている本作。さらに細々とした部分での惜しい点があるため、素晴らしい要素がいかに多くても、全体としてひとつの調子にまとまりきれておらず、さらに上のクラスの完成度にあと一歩届かずという印象。

とはいえ、ビジュアルの作り込みはまさに圧巻の一言で、箱庭系のドライブ要素を組み合わせたのは大正解。これぞサイバーパンク!という世界に浸るには最高のゲームであることは間違いありません。

総評:★★

良い点
・細部に至るまで作り込まれた圧巻のグラフィック
・個性豊かなキャラクターとの会話
・HOVAによる楽しい移動

悪い点
・キレが弱いストーリー
・一部スキップのできない会話
・細かい部分で作りの荒いUI


《麦秋》

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