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Game*Sparkレビュー:『Returnal』

『Returnal』がやりたーなるGame*Sparkレビュー。とにかく手に入らないPS5が一番の問題で、ゲームとしては“傑作”と表して差し支えない仕上がりになっています。

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まず、レビューの掲載時期について、発売からかなりの時間が経ってしまった件について釈明させてください。本作『Returnal』はかなり難しいゲームです。発売当初は攻略情報も少なかったため、心を折られるプレイヤーも(ネットを見る限り)数多くいました。そもそもゲームがあまり上手いほうではない筆者も、そんな「心を折られた」プレイヤーの一人だったのです。本作は全6ステージで構成されており、そのうち3面が本当に難しくて、詰まってしまいました。「えーこれ無理なのでは?」とかグチグチ言いながらプレイしているうちに一ヶ月ほど時が過ぎてしまった、というわけです(無論一ヶ月ずっとやっていたわけではないのですが)。

しかし、なんとか一応のエンディングを見ることができた今、体は心地よい達成感に包まれています。結論として、『Returnal』は遊んでよかった、買ってよかったと思える作品になりました。結論から言って本作は傑作といって差し支えない出来だと思います。PlayStation 5本体の入手難度が(このゲーム以上に)高いため、まだまだ本作を遊んだことがあるプレイヤーはそう多くないでしょうから、そういう方々がいつかマトモな値段でPS5を買えたときのために、ここからは『Returnal』がやりたーなるレビューをしたためていこうと思います。ストーリーのネタバレはできる限りしませんが、スクリーンショットには後半ステージのものが含まれるためご注意ください。

アドレナリンが出まくるハイスピードな弾幕バトル

本作のジャンルを筆者なりに設定するならば「弾幕ローグライクTPS」というところでしょうか。毎回変化する環境で敵を倒しまくり、アイテムを集めたり武器を強化したりすることで主人公を強化していき、各面のボスを撃破していくことが目的です。また、ローグライクというだけあって、死んでしまうと強化も武器も降り出しに戻されます。(無用なツッコミを避けるために説明しておくと、周回を跨いで有効な要素が存在するので「ローグライク」ではなく「ローグライト」と呼ぶ人もいる、そういうゲームシステムだと思ってください。)

最大の特徴は敵が放つ弾の多さで、雑魚敵ですら見惚れるほどの大量の光弾を放ってきます。主人公の初期体力はなかなか少なく、また、被弾しないことによって主人公にバフが付与されるため、無敵時間の存在するダッシュを駆使して可能な限り弾を避けなければなりません。そのため敵に囲まれた場合はかなりハイスピードにダッシュと攻撃を繰り返すことになるわけで、戦闘はかなりの忙しさ。『Enter The Gungeon』などに代表される見下ろし型ローグライクアクションゲームのTPS版、と考えておおよそ間違いないと思います(無敵時間で弾を縄跳びする感覚も似ていますね)。筆者は未プレイですが、動画を見る限りスタジオの過去作であるNex Machina』とはかなり近そうです。

本作について事前知識があるなら“近そう”という表現はしっくりくるはずです。

各面の最後に登場するボス戦もかなり過酷で、序盤のボスには殺されまくりました。死ぬと振り出しという緊張感も相まってボス撃破時の快感はすさまじく、「ソウルライク」作品が好きな人もおそらく楽しめると思います……が、少し勝手が違う部分もあります。本作は前述の通りローグライクなため、ボスだけをリトライしつづけてパターンを覚える、というようなことがし辛いのです。道中での強化がうまくいっていた場合はボスギミックを無視してゴリ押しで倒せることもけっこうありましたし、特に後半のボスはほぼ苦戦することもなく乗り切れました。

(特に序盤であれば)ザコ敵を無視して道中を駆け抜けることもできますが、その場合ボス戦はかなりのしんどさになってしまいます。逆に、しっかりとした強化をしてボス戦に臨もうとすると、1周につき1時間以上かかることもしばしば。そのため、巻き戻しになったときの「心折り力」はかなり高く、「もう一回ボス戦やろ!」となりづらい場合がある、というのは「好みの分かれる点」でしょう。そういうデザインだからこその達成感の高さ、という側面ももちろんあるので一概に問題点であるとは思いませんが、筆者が本作を「万人受けしない」と見做すのはその一周が長い仕様のためです。

しかし、その仕様を理解し、受け入れることができるプレイヤーにとっては、本作はプレイしている間ずっと「しんど楽しい」ごちそうのようなゲームです。ギリギリで敵の攻撃を躱しまくるハイテンションな弾幕バトルは本当に楽しく、素晴らしいです。根幹となるアクションの出来が良く、主人公を動かしているだけで気持ちいいですし、PS5の新型コントローラーであるDualSenseによる多彩な表現(効果音やアダプティブトリガーなど)も爽快感を増しています。特にトリガーの押し込み具合でエイムとセカンダリファイアを切り替える操作感が新鮮だったのですが、ちょっと文章で説明しづらいため、機会があったら皆さん試してみてください。既存の見下ろし型ローグライクアクションゲームは特にインディーゲームでおなじみのジャンルだったわけですが、それをPS5で作るとこうなるのかという新鮮な驚きが味わえました。

戦闘に勝るとも劣らぬ堅実な面白さを備えた探索・強化要素

本作のメインコンテンツは間違いなく「激しい戦闘」ですが、強化要素や探索要素もしっかりと備わっていて、どちらもなかなか堅実かつ面白いです。謎の惑星に不時着するところからストーリーが始まるところといい、ドアのデザインや全体の雰囲気といい、ちょっと『メトロイド』シリーズを彷彿とさせられる部分もありました。全くの余談ですが、メトロイドも「メトロイド、おもろいど」というアイコニックなダジャレを備えたシリーズですね。

強化には劇的な効果のある「アーティファクト」やメリット/デメリットの双方をもたらすパラサイトなどの種類があり、また武器ドロップや熟練度による武器強化という仕組みも存在します。周回を跨いで貯まる通貨のような存在「エーテル」も面白い要素で、たとえば「エーテルを貯める周回」「贅沢にエーテルを使って強化しまくり、ボスを絶対倒したい周回」というようにメリハリをつけて攻略することも可能です。

また特徴的なのが「悪性」というシステムです。回復アイテムや鍵、コンテナ(宝箱)、拾える通貨などには普通のもの(拾ったり触ったりして問題ないもの)と「悪性」のものが存在し、悪性のアイテムを拾う/悪性のコンテナを開くと「故障」というマイナス効果がついてしまう場合があるのです。面白いジレンマ要素……のはずなのですが、故障の効果が強烈だとそれだけでその周回が詰んでしまうため、結局「可能な限り悪性アイテムを避ける」立ち回りがド安定なのでは?と感じました。もうちょっとリスクをとるメリットが高いと自由度が高くなって面白かったのではないかと思います。

また、ちょっとしたアスレチック的な要素もあり、3Dゲームの奥ジャンプが苦手な人は距離感の把握に苦労する可能性があります。とはいえ、どうせ死にまくるゲームなのですぐ慣れるとは思いますが……。「メトロイド」よろしく、ボスを倒したことで得られる恒久的な移動の強化によって行ける場所がどんどん増えていくという要素もあります。後半ステージで手に入る移動アイテムでしか行けない場所が前半ステージに存在するケースもあるので(そしてそういう場所にはアイテムが落ちているので)、進行度が高いほど強化しやすい仕組みにもなっています。

重厚かつ難解なストーリーとホラーっぽい味付けも印象的なパート

なんとなく見覚えがある……

トリガーハッピーでハイテンションなゲームパートとは裏腹に、本作のストーリーは重厚、かつ難解です。ぶっちゃけ筆者もよく理解できていないのですが、「なんとなくこういう話なのかナ……?」ぐらいの、雰囲気で理解する感じのストーリーだと思います。途中『P.T』を彷彿とさせる「家」のパートがあり、かなりホラーゲーム感溢れる演出もありました。主人公のセレーネはなにやら過去にいろいろあったっぽい雰囲気で、しかもその過去が惑星にも反映されているっぽい……なんでやろか……?という「惑星ソラリス」的なストーリーが要所要所で繰り広げられます。

物語の理解を助けるためのゲーム内テキストも数多く用意されています……が、納得いく「答え」が提示される、という類いのものでもないので、プレイヤー各々が解釈する必要があります。例によって、ネット上には数多くの「考察記事」みたいなものもあがっていますので、理解の一助にそういったものを読みながら物語の理解を深めるのも楽しいでしょう。

ゲームが進行するにつれてセレーネの言動もどんどん抽象的でポエティックなものになっていきます。ちょっと難解さが鼻につく気もしなくはないのですが、格調が高い感じが良い塩梅で醸し出されているのでいいんじゃないスかね……。冒頭で「ストーリーのネタバレをしない」というようなことを書きましたが、「ネタバレできるほどよく理解できていない」というのが正直なところです。しかし、ちょっとびっくりするようなことが何度か起こるので、「難しくてわけわかんね~どうでもいい~」とはならず、引き込まれるような魅力があることは確か。それはグラフィックスやゲーム全体の雰囲気が良いということも多分に作用しているといえるでしょう。

コアゲーマーにはオススメの一作…惜しむらくはPS5が手に入らないこと

本作は非常によくできた、手に汗握るTPSシューターです。ローグライクのジャンルファンのみならず、高難度ゲームが好きなプレイヤーであれば楽しめる余地があります。しかし一周が長いなど人を選ぶ要素も多くあり、気軽に誰もにおすすめできるというタイプの作品ではありません。筆者が途中で詰んでいたのは有り体にいって「ゲームシステムの無理解」が大きな理由で、ちゃんとシステムの把握につとめ、丁寧にプレイすればそこまで高難度というわけでもありません。後半ステージは(ゲームに慣れているということもあり)前半よりはるかに簡単に感じられました。特にラスボスはびっくりするほど弱く、ゲーム中最弱のボスなのでは……?とはいえ、これは主人公の強化度などにも依存する感覚なので、実際にそうなのかは判断しかねますが。

さて、冒頭の繰り返しになりますが、本作を遊ぶ上で最大の問題点は、PS5の入手難度の高さでしょう。インディーゲーム好きなPCゲーマーなどコアな層に刺さりそうなゲームなだけに、この状況は残念でなりません。このレビューを読んで『Returnal』がやりたーなったゲーマーの方は、頭の片隅に本作のことを覚えておいて、いつか必ずプレイしてみてください。あなたの想像通りのゲームで、きっと気に入ると思いますよ!

総評:★★★
良い点
・ハイテンションな弾幕バトル

・DualSense演出のおもしろさ

・グラフィックや雰囲気が重厚

悪い点

・一周が長く「心折り力」が高い

・悪性アイテムなど、一部要素が自由度を阻害している

・ストーリーが難解


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