気になる新作インディーゲームの開発者にインタビューする本企画。今回は、SIGONO開発、PC/Mac向けに9月1日にリリースされたSFアドベンチャー『OPUS:星歌の響き』開発者へのミニインタビューをお届けします。
本作は、SFアドベンチャーゲームシリーズ第3弾。プレイヤーは、青年・リバクの視点から、膨大なエネルギー「龍脈」を見つけることができる少女・エイダと共に広い宇宙を旅します。全5章構成で日本語にも対応済みです。詳しいゲーム内容についてはプレイレポをご覧ください。
『OPUS:星歌の響き』は、1,840円で配信中。
(回答をすべて日本語でいただきましたので、必要最小限の編集で掲載させていただきます)
――まずは自己紹介をお願いします。一番好きなゲームは何ですか?
ブライアン初めまして、ブライアンです。SIGONOの創設者であり、脚本、プロデューサー、美術監督も兼務しています。
SIGONOを立ち上げてからは慌ただしく、あまりゲームを遊べていません。今までで本当に「好き」と言えるゲームは『クロノ・トリガー』『ファイナルファンタジー』シリーズ(タクティクス含む)、『風ノ旅ビト』でしょうか。私は子供の頃から日本のゲームが大好きで、日本のゲームと一緒に成長してきたクチなので、今回Game*Sparkさんのインタビューを受けられたことが本当に嬉しいんですよ。
――本作の開発はなぜ始まったのですか?
ブライアン広大な宇宙の中にある、小さな人々の物語を見せたいと思ったからです。しかし、一人一人が持つ物語は失いたくありませんでした。一つ一つの物語の集合体が宇宙を形成しているからです。
どうやったらこれらを両立させ、感情の広がりを受け入れられる世界観を作れるのか……その結果として誕生したのが本作の「龍脈」と「宇宙神話」なのです。
今回の舞台は広大で、惑星間の冒険物語に見えますが、根底にある主題は「愛情」です。しかし単なる愛情の物語ではなく、注意深く見てみると、それが天地を切り開く神話を叙述したものであることがわかってきます。
このようにして、とても小さなものから神話というスケールを通して、宇宙全体を見ることができるのです。そしてそれは人間の感情、つまり「心」から来るものです。このコントラストが私には驚きであり、そして美しいものだと思えました。
――本作の特徴を教えてください。
ブライアン自分の作品ですから、本作のすべてが面白いですよ!(笑)
本作では、ある少女が歌声で龍脈を探して行きます。簡単に紹介するなら、「歌声」で世界に幾重にも張られた謎を解き、悲しくも暖かい「物語」に触れ、宇宙船を操り世界の真相を「探査」する。この3つのキーワード、「歌声」「物語」「探査」によって、本作は構成されています。
これ以外に個人的によくできたと思っているのは、脚本に散りばめた各種の「暗号」です。色々なアイテムを収集し、そこに隠された暗号の謎を解いていくと、主人公たちに隠された様々な関係が浮かび上がります。この仕組みには様々な工夫が施されていますので、ぜひ探してみてください。
――本作はどんな人にプレイしてもらいたいですか?
ブライアンやはり以前から『OPUS』シリーズをプレイしてくださっている方々でしょう。最近、Steamのあるレビュワーさんが、私たちの作品にぴったりな言葉を残してくれました。
“「君の名は」のように幻想的で、『To the Moon』のように涙が止まらない。自分を見つめ、自分の魂を、愛そう。”
これは、『OPUS』のファン層を的確に表していると思います。SFや宇宙が好きな人には、きっと気に入ってもらえる作品に仕上がったと思っています。
――本作が影響を受けた作品はありますか?
ブライアン物凄く色々なものから影響を受けています。それこそ、新海誠さんのアニメーションもそうですし、日本のSF小説である「星界の紋章」もそうです。日本以外で言えば「エクスパンス-巨獣めざめる-」とか、映画「インターステラー」なんかもそうですね。
ゲームだと、『FTL:Faster Than Light』の航海の感じですね。宇宙船でどこへでも行ける、あの旅のような感覚が大好きです。
どうしても言っておかなければならないのは、私は「ほしのこえ」の時から新海誠さん……先生の作品を拝見しているので、私の作品の中でも無意識にその影響が出てきてしまうということです。『OPUS』のストーリーでは、毎回「出会い」と「別れ」が物語の重要な軸になっていますが、これこそ正に影響を受けた部分でしょうね。
ここ最近では『十三機兵防衛圏』が最も長い歴史を誇るSF賞である星雲賞を獲りましたよね(編注:正確にはノミネート)。同じSF作品を作る身として大いに刺激されました。
――新型コロナウイルスによる開発への影響はありましたか?
ブライアン本作の発売前の3ヶ月間は台湾でも新型コロナの感染者が増え、社会的に非常に不安定になっていた時期でした。前作『魂の架け橋』をプレイした人なら誰もが頭に浮かんだと思いますが、今回のコロナ禍はあのゲームの世界観にそっくりなんです。ですから、きっとこのゲームが完成する前に銀河に還る時が来るのかな……なんて思ったりしていました(笑)
結果的に新型コロナは徐々に落ち着き、街は平穏を取り戻し、私たちもラストスパートに集中することができたのです。
――本作の配信や収益化はしても大丈夫ですか?
ブライアンこれ、ダメって言う人いるんですか?もちろんOKです。どんどんやって、私たちのゲームを皆さんに薦めてください!(笑)
実は私たち開発チームもこっそりYouTubeなどの生配信を見させてもらってます。皆さんそれぞれの解釈で各キャラクターに声をあてたりしていて、とても面白いですね。
――最後に日本の読者にメッセージをお願いします。
ブライアン改めまして、台湾から参りましたインディーズゲームスタジオのSIGONOと申します。本作はオリエンタルな要素を組み込んだ新しいタイプのスペース・オペラです。少年少女がその身に降りかかる困難を勇気で克服し、その悲劇の運命に立ち向かっていく……この物語を通してプレイヤーの皆様に涙と笑い、そして明日へ進む活力を得ていただけたら最高だと思います。
これからも日本の皆さんに喜んでもらえる作品を作り続けますので、どうぞ宜しくお願いします!
――ありがとうございました。
本連載は、リリース直後のインディーデベロッパーにメールで作品についてインタビューする連載企画です。定期的な連載にするため質問はフォーマット化し、なるべく多くのデベロッパーの声を届けることを目標としています。既に500を超える他のインタビュー記事もあわせてお楽しみください。