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『Spiritfarer』それは断絶か繋がりか、彼岸と此岸を結ぶ世界の大河【ゲームで世界を観る#7】

人類は死後の世界に「河」をイメージする傾向があるようです。

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「人間が死んだ後に魂はどこへ行くのか?」

文明、文化を越えて、これは全世界共通の疑問です。死後の世界は千差万別に想像されてきましたが、その狭間の世界を行く道程の中に「川」が登場することが多いと言います。『Spiritfarer』の舞台はギリシャ神話のスティクス川がベースですが、日本や北欧、北米の地域も登場します。

日本ではスティクス川と同様、転生の旅路では「三途の川」を渡らなければならないとされています。ゲームでも『DEATH STRANDING』では「ビーチ」によって死者の世界と繋がり、それを通じて「BT」が現世へやってきます。今回はそんな世界に伝わる「死後の川」について伝承を集めてみました。

土佐光信「十王図」より

日本:三途の川

日本の仏教においては、死者はまず最初の6日間は「死出の山路」という険しい山道を800里、約500kmまたは約3000km歩いた後、初七日における秦広王の裁判を受けると三途の川を渡ります。(順序は宗派によって異なります)

秦広王は生前の行いを精査し、死者が三途の川を渡る道程も決定します。善人は橋を渡れますが、軽い罪人は「山水瀬」という浅瀬、重罪人は強深瀬という危険な淵を進みます。強深瀬では流れてくる大岩に身体を潰され、水面から頭を出せば監視役の鬼から矢を射かけられ、それでも死ぬことが許されないまま泳ぎ切らなければなりません。三途の川を渡りきると、死者の衣服を剥がす奪衣婆が待ち構えており、脱がされた服は罪によって重さが異なり、一緒にいる懸衣翁が計ります。

時代が下ると三途の川を船で渡れるという話に変化し、その渡し賃がいわゆる「六文銭」です。ギリシャのオボル硬貨と同様、死後に使うお金を持たせる「冥銭」の一種で、残された人がしてやれることを付け加えたのかもしれません。

三途の川を裁きに従って渡っているかは常に監視され、次に待ち構える初江王の審査を通過すると、その後も十王と呼ばれる裁判官の下を巡り、四十九日目にしてようやく転生先が決まります。

北欧:ギョッル川

北欧神話における世界樹ユグドラシルが支える世界の一つ「ニフルヘイム」に、名誉の戦死を遂げずヴァルハラには入れなかった死者が行く冥府「ヘルヘイム」があります。ヘルに入るにはギョッル川に架かる橋「ギャッラルブルー」を渡る必要があり、巨人族の女性モーズグズが番をしています。「エッダ」では、バルドルが命を落としてヘルヘイムに行ってしまい、弟のヘルモーズが助けに向かう時にギャッラルブルーが登場します。

ヒンドゥー教の地獄「ナラカ」の図

古代インド:ヴァイタラニー川

ヒンドゥー教では、罪人は血と膿に満たされたヴァイタラニー川を渡らなければ転生することが出来ません。幅は100ヨジャナ、約1500kmあり、十分な寄付をするか、あるいは導師に帰依すれば渡し船などの手段を得られます。渡った後には正義の神「ヤマ」による裁きがあり、これが仏教の「閻魔大王」に変化したと言われています。

デビッド・ロバーツによるルクソ-ルのスケッチ

古代エジプト:ナイル川

古代エジプトでは太陽の運行が生命の生き死にの象徴と考えられており、ナイル川がその境目だとされていました。古代都市テーベ、現在のルクソールではナイル川の東側が生者の領域、西側が死者の領域として、王家の谷などの埋葬地は西側に集約されています。また、ギザのピラミッドの付近には「太陽の船」が埋葬されており、水面のような天空を渡るクフ王の死出の旅路に使用することを想定したと考えられています。

中国、史君墓に刻まれた文様

ペルシャ:チンワト橋

ゾロアスター教の経典「アヴェスター」によると、死者は少女の姿をした自身の分身「ダエーナー」に導かれて、「深くて暗い河」にかかる「チンワト橋」を渡ります。この橋は生前の行いによって幅が変わるとされ、善人は普通に歩いて天国に行けますが、重罪人になると剣の刃のように細くなり、踏み外せば地獄へ転落してしまいます。

境界が「水」というのは、完全に分かたれているのでは無く、橋や渡し船、その気になれば泳ぐなど、渡るための手段を用意することが出来るという点で絶妙だと思います。生と死の緩やかな繋がりを維持し、狭間に留まることもあり得る。そして、彼岸から現世に戻ってくることもあるかもしれない。現実的には難しくても、神話の伝承では生者が死者の世界に赴くルートが存在していることが、人間が死と向き合う上である種の希望になっているのではないでしょうか。

エジプトの日常的に接するナイル川のように、日本の霊場付近にも三途川と命名された河川がいくつもあります。積み石などの冥途に見立てた風習もあり、実際にその場所に立つことで彼岸に想いを馳せていたのでしょう。誰でも参加する機会がある葬儀も、そんな死出の旅路の無事を祈るためにあります。初七日や四十九日などにどのような意味があるのか、調べてみてはいかがでしょうか。

《Skollfang》

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