『クロノ・クロス』人間は「Killer」から「Killed」になる―能動態の『トリガー』と受動態の『クロス』の対比【ゲームで英語漬け#98】 | Game*Spark - 国内・海外ゲーム情報サイト

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『クロノ・クロス』人間は「Killer」から「Killed」になる―能動態の『トリガー』と受動態の『クロス』の対比【ゲームで英語漬け#98】

「される側」になったとき、人間はその報いを受け止められるのでしょうか。

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『クロノ・クロス』人間は「Killer」から「Killed」になる―能動態の『トリガー』と受動態の『クロス』の対比【ゲームで英語漬け#98】
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クロノ・クロス』は初期段階でNPC全員が仲間になるという水滸伝並みの無謀な案が出されていたそうで、会話に汎用性を持たせるための「セリフ自動生成プログラム」が用意されていました。各キャラクターに一人称や語尾などの口調を設定し、ベースとなる台詞に付け加えることで、メインイベントの会話に全員を参加させる仕組みです。ストラテジーゲームの状況報告文と似たようなものですね。

日本語では機能していたこのプログラムですが、英語になると全く使えません。アクセントや文全体の書き方によって口調を特徴付けるので、一部だけ書き換えても中途半端になってしまいます。ローカライズをする際には、セルジュを除く44人分の会話を新たに書き起こす必要があったと推察されます。パーティー加入の文も一部変化があり、こういったプログラムで記述された文章は翻訳の時に大幅な書き換えをしないと不自然になる場合が多いので、有志翻訳をやってみようという人は自動生成文の記述にも注目しましょう。

今回は一気にラストまで。核心部分に触れていますので、まだ星の未来を救っていない人は「時を戻そう」と唱えた後に口笛を吹いてみましょう。

“Fate.” Our lives are governed by fate.
Fate knows all and controls all. No one can run from fate...
Even your presence here was predestined...long, long ago.

「運命」だ。我々の生は運命に支配されている。
運命は全てを知り、全てをコントロールする。何人も運命からは逃れられない…
君が今ここにいることですら予定されていた…遥か遠い昔からね。

Maybe...just maybe...you and your friends have the power to defeat FATE and build a new future for humanity.

ひょっとしたら…「運命」(フェイト)を倒し人間の新たな未来を築く力が君たちにはあるのかもしれない。

時空の歪みから、「存在を殺された未来」が出現したホームワールドの死海。そこに取り残されたレナの父ミゲルは人間に課せられた「運命」について語ります。

…と見せかけて、実はエルニド諸島の人間を管理する未来のAI「フェイト(FATE)」の役割について話しているダブルミーニングになっています。日本語版では全てルビ無しの「運命」で書いてあり多少ぼかしてあるものの、英語ではストレートに「FATE」を倒せと読めます。とはいえ、この時点でセルジュはフェイトの存在を知らないので伝わったかは分かりません。

When the whole world hath come to live in heavenly harmony...
Upon that day shall I bring thee back to this idyllic isle.
Then...Then and only then... Will both our worlds have peace between nature and humanfolk...
And resonate in chorus with our anthem dear.
Together, let us build that new world...

この世にあまねく天来の調和がもたらされし時…
かの日にはそなたをこの長閑けし島に連れ帰ろう。
その時…その時きっと… 我らの世界には自然と人間の平和が結ばれ…
この我らが賛歌が共に響き合うことだろう。
さあ、共に新しき世界を築こう…

マブーレ復興のステージは全編古語調の厳かな雰囲気になりました。現代語の日本版とはかなり印象が違います。龍神も同様に古語を使っているので、「Thee」に伴う動詞の変化に気を付けて読みましょう。「Then and only then~」は「Then」の強調として使い、その時までは~しないだろうという達成の難しさや否定の意思のニュアンスも含みます。

I feared it would come t zis...
I didn’t want to have to fight wit’ you if it could have been avoided!
Adieu, Serge! Adieu!

こうなるのがずっと怖かった…
避けられるもんならあんた達とは戦いたくなかったよ!
さよなら、セルジュ! …さよなら!

過去を振り返るときの表現で抑えておきたいのが“If it could have been ~”のフレーズ。「~していたかもしれない」と、“would have been”と異なり「自分の行動で結果が変わっていた」という後悔の意味合いが多分に含まれます。彼女もまた星の未来を巡る「神々のゲーム」の駒にしかなれなかった、その悲しみが垣間見られるシーンです。

In order to survive, all living things in this world...
fight desperately, and devour those they defeat...
Must one kill other living things in order to survive?
Must one destroy another world in order to allow one’s own world to continue?
The wounded in turn wound and torment those weaker than themselves...
There are only the killers and the killed... The sinners, who are judged and the victims that do the judging...
What meaning is there to such a world?
I shall cleanse this blue planet of you filthy humans once and for all!!

生き残るため、この世に生きる者達は死に物狂いで戦い、弱き者を喰らう…
己が生き延びるために別の者を殺さねばならぬのか?
己の世界の存続のために別の世界を滅ぼさねばならぬのか?
傷つきし者はより弱き者を傷つけ苦しめる…
在るのは殺す者と殺される者…裁かれし罪人と裁きを下す犠牲者…
このような世界に何の意味があるというのだ?
汚らわしい人間共をこの青き星より永遠に消し去ってやろう!

『トリガー』でラヴォスを倒し、一度世界は救われたかのように見えましたが、ラヴォスの代わりに人間が星の生命を滅ぼし続け、自然の側から見れば人間がラヴォスと同じ立場になっていました。これまでの戦いは正義ではなく人類のエゴでしかないと「Killer」「Killed」、「Judging」「Judged」と受動態との対比で表しています。

The Chrono Cross...
It alone can combine the sound of the planet that the six types of Elements produce!
The melody and harmony that brim within all life-forms...
Use the “song of life”to heal her enmity and suffering...
We entreat you, Serge! Please save Schala...

「クロノ・クロス」…
6つのエレメントが生み出す星の音色を1つに合わせることができるの!
全ての生命のうちに溢れる旋律と共鳴…
彼女の憎しみと苦しみを癒やすため、「生命の唄」を使って…
お願い、セルジュ! サラを助けて…

“I(we) entreat you”は「Please」と同じように相手に頼むときに使う表現です。かなり下手に出る、無理を承知でのニュアンスが強く、切羽詰まった状況での頼みであることが多いです。これを言われたときには、断ったら何か大変な事態になるかもしれないと思った方が良さそうです。

「Harmony」は音楽的な響きの他に、関係性の調和の意味も含みます。人間と自然、フェイトと龍神、ラヴォスと星、それぞれの憎しみを解放して「Harmony」をもたらす、それが調停者たるセルジュに課せられた使命なのです。



《Skollfang》

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