
2023年に発売予定のRPG『異夢迷都(イム メイト) 果てなき螺旋』は、現在Steamにてデモ版が公開されています。
このデモ版は序章までのプレイに留まっていますが、今回はそれよりもプレイ可能範囲が拡大されたプレビュー版を体験する機会に恵まれました。複数のゲームシステムで構成された独特な世界観のRPGとのことですが、此度はデモ版と合わせて遊んでみました。
二面性を持つ「新都」が舞台

『異夢迷都』の舞台である「新都」は、伝統的な様式と近未来的な構造物が融合する大都市。まるで戦前の上海のような雰囲気で、顎を傾けて少し上を見渡すと煌びやかなネオン広告がキラキラと輝いています。

各地の富が、この新都に流れているということが一目で分かります。しかし下を見れば、その日暮らしの庶民が愚痴を言いながらとぼとぼと歩いています。どうやらこの町には絶大な貧富の格差があるようです。
貧富の格差が存在するということは、腐敗も存在するということ。様々な陰謀渦巻く新都を駆けるのは、私立探偵の「何某」。そして彼の相棒はエクソシストの「鐘馗」です。

この世界は二面で構成されていて、まるでコインのような「表」と「裏」が存在します。表世界では何某が、裏世界では鐘馗が躍動し、水面下に広がる悪と陰謀を解明していく、というストーリーです。
この試遊を開始して数分で感じたことは、目の眩むような新都の光景です。
戦前の上海は「魔都」とも呼ばれるほどの異様な大都市で、資本と繁栄の裏側には各国列強の思惑と裏社会の影響が常にありました。少しでも油断したら、誰かに消されてしまうかもしれない緊張感。そして一度足を踏み入れたらそのまま飲み込まれてしまうような退廃した空気。『異夢迷都』の新都には、そのような雰囲気に近未来感が加わっています。
トレカゲーム要素も

『異夢迷都』の戦闘シーンやそのシステム、テンポに関してはごく一般的なRPGと大きな違いはないという印象を筆者は感じました。このあたりの操作性は至ってシンプルで、それ故にストレスと化してしまうような小難しさもありません。

ただし、何某が尋問相手の心理に侵入する際に行われるTCG風のカードゲームに関しては、いささか戸惑ってしまったのも事実。というのも、筆者はTCGというものをやった経験が皆無です。従って、ルールもイマイチ把握できずにやられてしまう……ということが起きてしまいました。

TCG慣れした人にとっては面白い展開かもしれませんが、そうでない人や純粋なコマンドバトルRPGだけを求めている人は要注意。このパートのプレイ中に大胆なギミックや演出が発生するというわけでもないため、TCGジャンルに興味が一切なかった筆者にとっては正直、通常のパートで高まった気分をやや削がれてしまった部分も……。
というわけで、筆者が『異夢迷都』に期待するのは2つ。ストーリーテリングと世界観です。
古典的RPGの「アンチテーゼ」か

何某と鐘馗、そして彼らを囲む人々は、はっきり言って「寄せ集め」のパーティーです。
故に、誰が何を企んでいるのか、本当に信用できる者は一体誰なのかという緊張感が常に漂います。
これはもしかしたら、「友情」と「団結」が前提の古典的RPGのアンチテーゼかもしれません。鐘馗の言動を見れば分かりますが、彼は何某と友情で結ばれているというわけでは全くありません。表世界では何某が、裏世界では自分が活動したほうが都合がいいし、現実問題そうするしかないという理由で手を組んでいるに過ぎません。そこにあるのは「利用」と「利害」です。

しかし、それすらも実は上辺だけのものかもしれません。退廃的かつドライな環境の下、個々の登場人物は強い信念を胸の奥底に抱いています。そして、そのような状況で紡がれる信頼関係こそが本当の意味での「友情」です。
妖しい光に隠された謎を解明するため、不思議な絆で結ばれた何某と鐘馗は新都を駆け巡ります。
『異夢迷都 果てなき螺旋』は、2023年にPS4/PS5/Xbox One/Xbox Series X|S/ニンテンドースイッチ/PC向けに発売予定です。