『Wo Long: Fallen Dynasty』丹薬の服用は絶対ダメ!唐皇帝を死に追いやった水銀入りの煉丹術【ゲームで世界を観る#39】 | Game*Spark - 国内・海外ゲーム情報サイト

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『Wo Long: Fallen Dynasty』丹薬の服用は絶対ダメ!唐皇帝を死に追いやった水銀入りの煉丹術【ゲームで世界を観る#39】

「丹」を作るには健康第一。

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『Wo Long: Fallen Dynasty』丹薬の服用は絶対ダメ!唐皇帝を死に追いやった水銀入りの煉丹術【ゲームで世界を観る#39】
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「コーエーテクモ史上最もダークな三国志」と銘打った、『仁王』の要素を三国志に引き継ぐ『Wo Long: Fallen Dynasty』。他シリーズでは目立たなかった左慈や于吉といった道士を中心に、道教や神仙が歴史と折り重なる物語が展開します。

 

本作の物語の鍵となる「丹薬」とは、服用すれば不老不死になり超常の力を手にできる、神仙に近づいた存在になるという丸薬です。西洋錬金術の賢者の石のようなもので、この丹薬を作るための体系を「煉丹術」と呼びます。陰陽五行説に則り、「気」の力を高めることで仙人を目指す「神仙思想」の一環として、東洋医学の基礎となる考え方を形作りました。

全ての事象に宿る五行、則ち木、火、土、金、水、5種類のエレメントを人体に取り込み、宇宙の法則である「道(タオ)」を操る術を身につけることを目標にします。

『Wo Long』にも登場する左慈は方術を使って曹操や劉表を翻弄し、「房中術」で世を惑わせたとして、「後漢書」や曹丕の記した「典論」にも記載があります。孫弟子を名乗る葛洪の「神仙伝」では、左慈は天柱山の修行中に神から3種類の丹薬の製法、「太清丹経」「九鼎丹経」「金液丹経」を授かったとされ、煉丹術の重要人物として言い伝えられました。

葛洪は煉丹術の書「抱朴子」で具体的な製法について言及しており、錫の板に赤塩と灰汁を混ぜて塗り、馬糞で30日間熱すると黄金が出来上がり、これが丹薬になるとしています。当たり前ですが、普通の人間が口にして良いものではありません。絶対に真似をしないでください。

他にも様々な製法が残されている中で、葛洪は五行の中で性質が変わりにくい金行を重視しており、不老長寿を目指すのであれば金属鉱物を積極的に取るよう記しました。その中で重要な素材として記されているのが辰砂、つまり水銀です。

金属でありながら常温で液体となる水銀は霊的な力が宿ると信じられ、水銀そのものも「丹」と呼びます。過剰摂取は毒と認識されていても、ほどほどに使えば薬効があると考えられ、ゲーム中の「丹薬」の説明にもそれが反映されています。

日本に於いても水銀の産出場所には「丹(に)」の地名が付くことが多く、辰砂の塗料である朱色は貴重な魔除け効果が期待されました。金メッキの材料としてもよく使い、奈良時代には大仏建築に携わった人たちが水銀中毒で倒れたそうです。現在では公害事件のひとつ「水俣病」によって水銀の毒性は広く認知され、金行の術で毒が主になっているのも、水銀を初めとする鉱毒のイメージでしょうか。

作られた丹薬は皇帝級の人々が使用したのですが、材料には水銀が使われているために中毒死は避けられず、唐の時代では4人の皇帝が早死にしたと記録されています。長寿の目的は果たしていないように思えますが、丹薬を飲んで死んだ後に仙人になれるという「尸解仙」の考え方があり、蝉の脱け殻はその象徴です。

立て続けに早死にが出ると流石に危険だとわかり、唐より後の時代では丹薬の研究は衰退していきました。その代わりに、丹薬を人工的に作って外から取り込む「外丹」ではなく、人体に元々備わっている気の力で体内に宿そうとする「内丹」の方向性にシフトします。

人体には気の流れる通り道「経絡」が張り巡らされていて、その中心であるへその下には「丹田」(臍下丹田)があります。ゲーム中のエフェクトで体内の脈が現れることがありますが、この「経絡」を表したもので、その節々にあるツボを突くことで心身を整えたりひでぶしたりたわばしたりできるわけです。

丹田は気を練り上げる「竈」であり、呼吸による鞴で気の力を送り込み、体内で煉丹術と同等の効果を得ようとするのです。そのためには陰陽五行の力が整っていることが重要で、健康な身体を保たなければなりません。腹式呼吸法などを重視し、これを道教では「養生術」と呼んでいました。その健康法が一般に広まったことで、休んで回復することを「養生する」と言うようになりました。

気や丹田の概念は現代にも残る武術でベースとなる考え方で、解剖学的に特定の場所を指せるものではないものの、身体の中心部、あるいは重心をコントロールし、呼吸で気を蓄えて「練る」という感覚を重視します。この映像でも丹田を中心に操作すると説明していますね。

『Wo Long』では龍の力を持つ丹田が「真の丹薬」に至る「器」だと説明しています。以上のことを踏まえると、戦争によって生じた莫大な気を取り込み、煉り上げる「内丹」のことを指していると思われます。「外丹」で作った丹薬でさえも人間を妖魔化させてしまうのですから、「真の丹薬」となれば何が起こるか分かりません。龍を従えた道士に果たして勝てるのか?主人公たる義勇兵の強い「気」をしっかり鍛錬して挑みましょう。


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