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インドの“ホテル王”の事業とホテル改装シム『Hotel Renovator』に意外な共通点。ゲームから学ぶ現代の宿泊ビジネス事情

世界には様々なビジネスが存在し、実際にそのビジネスでひと山当ててしまう人もいます。

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インドの“ホテル王”の事業とホテル改装シム『Hotel Renovator』に意外な共通点。ゲームから学ぶ現代の宿泊ビジネス事情
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世界には様々なビジネスが存在し、実際にそのビジネスでひと山当ててしまう人もいます。

試しに、「ホテル王」という言葉の中身を想像してください。どのような人が脳内に登場するでしょうか? 単純な貧乏人に過ぎない筆者は、高そうな服を着て黒塗りの高級車に乗っている大富豪を連想してしまいます。そしてそのホテル王は、具体的にどのような方法でビジネスを実行しているのでしょうか?

お客さんの来そうな土地に立派なホテルを次々に建てているのがホテル王……というのは、正直に言って古いイメージです。現代のホテル王は、既にあるホテル(しかもオンボロ安宿)をリノベーションすることで提供部屋数を増やしていきます。

今回はSteamで配信されている『Hotel Renovator』というゲームをプレイしながら、現代のホテルビジネス事情について解説したいと思います。

「貧乏旅行の体験」からビジネスを思い立つ

「ゲストハウス」という形態の宿泊施設があります。これは一般に言われる「ホテル」よりも格安で、費用に余裕のないバックパッカーがよく泊まる宿でもあります。

このゲストハウスを渡り歩く旅行を経験したインド人、リテシュ・アガルワルは頭を抱えていました。値段の安い宿は、部屋がボロボロだったり水回りに問題があったりゴキブリが出たりスタッフがつっけんどんだったり……という問題がありがち。もちろん、中には心優しい家族が経営する素晴らしい宿もありますが、どのみち「宿毎にサービス格差がある」ということは否めません。

あるとき、「それを解消するビジネスを立ち上げられないか」とアガルワルさんは考えたわけです。筆者自身、バックパッカーだった時期があったためそのあたりの事情はよく理解できます。共用トイレが詰まって便器から汚物が溢れているにもかかわらず、スタッフは昼寝をしていて動こうとしない……などということもありました。

このような「貧乏旅行の体験」から独自のビジネスを思い立つ、ということはよくある現象です。

実は70年代のアメリカで、アガルワルさんとまったく同じ経験をしたティモシー・レザーマンという方がいました。この人もオンボロ宿のどうしようもなさに辟易してしまい、試行錯誤の末に「自分で蛇口を修理できる多目的折り畳みナイフ」を開発しました。アウトドアグッズの「レザーマン」の始まりです。

しかしアガルワルさんはレザーマンさんとは違い、ホテルそのものを改善しようという手段を思いつきました。

26歳にしてビリオネアに

アガルワルさんが創業したホテルネットワーク「OYO」は、既存のホテルをフランチャイズ化することで提供客室数を伸ばす仕組みを導入しました。

ここで注意すべきは、ホテルを買収するわけではないという点。フランチャイズ料は事前に大金を払うのではなく、収益をホテルとOYOとで分配する形を取ります。そしてOYOに加盟したホテルやゲストハウスは、サービスや衛生面や安全に関わる30の項目をパスしなければなりません。これを怠ると、フランチャイズから追放されてしまいます。

こうして一律の基準を導入して、安いながらも安全な宿泊施設を実現させたOYO。インドはおろかアジア各国にネットワークが広がり、アガルワルさんは若干26歳にして保有資産10億ドル以上のビリオネアになりました。

そしてOYOの台頭をきっかけに、ホテル業界は「新しい施設を建てる」から「既存の施設と連携する」という方向性に舵を切ります。

現代のホテル事情を反映したゲーム

『Hotel Renovator』は、誰も泊まらないようなオンボロホテルの内装を文字通りリノベして綺麗な宿泊施設に再生するという内容のゲームです。それはまさに現代のホテル事情そのものと言ってもいいでしょう。

パンデミックが終わりを迎え、旅行者も徐々にではありますが増えています。いずれはパンデミック前の水準に戻るはずですが、それを想定した「初期投資」は既に行われています。

今現在は「古いホテルの内装を破壊する時」と表現するべきかもしれません。まさしく『Hotel Renovator』のように、バールで古びたタイルや天井を粉々に破壊する頃合いです。

そこから新しいタイルを敷いたり家具を設置してお客さんを迎え入れる、という段階はまだもう少し先のこと。しかし、それは決して遠い未来の話というわけでもなく、「思い立ったらいつでも旅行できる環境」は着実に整備されつつあります。

『Hotel Renovator』をプレイしてみると、予約受付も宿泊料の決済も徹頭徹尾オンラインで管理していることが分かります。この仕組みがあるからこそ、ホテルのスタッフは接客よりリノベに集中できるようになった……とも言えます。

現代テクノロジーは、ホテルスタッフの仕事の内容まで変えてしまったということでもあります。そして、そのような現象を十二分に再現している『Hotel Renovator』は、世界のビジネスの潮流を知る上でも大いに役立つゲームではないでしょうか。


『Hitek Renovator』はPC(Steam/Epic Gamesストア)向けに配信中。Game*Sparkではプレイレポートもお届けしているので、あわせてチェックしてみてください。


※ UPDATE(2023/03/21 23:38):記事中の誤字を修正しました。コメント欄でのご指摘ありがとうございました。


《澤田 真一》

ゲーム×社会情勢研究家です。 澤田 真一

「ゲームから見る現代」をテーマに記事を執筆します。

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