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「プレアルファ版」は“ゲーム”か否か? 馬術シム『Astride』の内容の薄さに賛否両論【特集】

クラウドファンディング。この方法を活用すれば、小規模の開発者が何かしらの製品を世に送り出そうとする際、必要な資金を短時間で調達することもできます。

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「プレアルファ版」は“ゲーム”か否か? 馬術シム『Astride』の内容の薄さに賛否両論【特集】
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クラウドファンディング。この方法を活用すれば、小規模の開発者が何かしらの製品を世に送り出そうとする際、必要な資金を短時間で調達することもできます。

それはゲーム開発においても例外ではありません。今回筆者がプレイした『Astride』もKickstarterで資金を調達し、開発されたゲームです。

しかし、この『Astride』を実際にプレイしてみると、クラウドファンディングの「光と闇」というものが垣間見えてきます。

ゲームで馬術を体験できる!?

『Astride』は馬術を題材にしたゲームで、「馬術シミュレーター」と言えるジャンルです。筆者は乗馬の経験はあまりないのですが、馬術競技を観るのは大好きです。人と馬が一体となり、華麗なパフォーマンスを披露する馬術。それを体験できるゲームということで、筆者は胸を躍らせていました。

ところが……。

馬の移動って、結構難しい!

まずはこの『Astride』が早期アクセスとしての配信の段階で、なおかつ開発者も「プレアルファの段階」と発表している点を明記しておきます。

価格は日本円で2,800円。インディーゲームのプレアルファ版にしてはちょっと割高のような気もしますが、このあたりで値を下げてしまうとKiskstarterの出資者への特典に影響してくるのかもしれません。

メニュー画面にあるのは「プレイ」と「馬の作成」と「オプション」。おおっ、馬のクリエイト機能があるのか!? しかも嬉しいことに、最初にしては馬の毛色や斑点、顔の流星等のバリエーションがそこそこ揃ってるんですよね。

もちろん、名前も付けられます。ここは日本プロレス史に燦然と輝くレスラー、「一本足原爆頭突き」の大木金太郎にあやかって「大木金太郎」と名付けちまいましょう(そのまんまだな)!

というわけで、早速競技場を駆け回ってみます。厩舎からゆっくり歩き出した大木金太郎、障害物がいくつも設置された競技場へ姿を現します。その背には鞍を乗せ、鞭を手にした騎手が……と言いたいところですが、なんと鞍はあるけど騎手は未実装。つまり大木金太郎は、人が乗っていない状態で勝手に走り出しているというわけです。おいおい、なんとかしろよ厩務員!

移動はWASD、加速はシフトキーで行います。常歩、速歩からキャンター、ギャロップへ移行する様子は確かによく再現されています。ただ、馬の方向転換がかなり難しい! 馬というものは走っている状態からいきなり足を止めてそのまま真横へ移動するということができない動物で、その動きは二輪車より船に近い感覚です。

従って、目指す障害物へ走りながら頭を向けようとしても、微調整が難しいせいで障害物の真横を駆け抜けてしまった……ということが頻発しました。これは熟練度の問題と言われればそうなのですが、ちょっと初心者には優しくないかも。

「競技」ができない馬術競技シム

次に行くべき障害物の手前は白い丸で表示され、これを正しい角度で踏めば馬は勝手にジャンプします。スペースキーを押さなくて済む、という点は筆者は高く評価したいと思います。

しかも、単にこの白い丸を踏めば障害物を飛び越えてくれるというわけではなく、ちゃんと踏み切りのタイミングを合わせないと馬と障害物がゴッツンコしてしまいます。このあたりはまだ再現が不完全ではありますが、ところどころで馬の速度を調節しなければならないという実際の馬術に近づけようとしている努力は見受けられます。

当たり前の話ですが、馬だって歩幅のタイミングを合わせないと上手くジャンプできません!

馬の跳躍のムーブも、結構よく表現されています! 操作が難しいためカッコいいスクショを撮ることは非常に難しいのですが、足の揃え方や跳躍の角度がかなり成功に再現されています。うん、カッコいい!

ただ、現時点で実装されている競技場が2ヶ所しかなく、そもそも「競技」自体がまだできないというのは残念なところです。今の段階でできるのは、競技場に設置された障害物を飛び越えることと、障害物のない室内競技場をただ走り回るだけ。BGMやSE音もナシ。はっきり言って、プレアルファ段階とは言え有料のゲームソフトウェアとしては問題があります。

案の定、Steamレビューでは酷評が目立ちます。この記事を執筆している2023年6月3日午後9時の時点で、レビュー総数は50件。そのうちの44%が「好評」ですが、全体としては「賛否両論」。ゲームを評価する内容と酷評する内容の落差が激しい、というのが現在の状況です。

「騎手の乗ってない馬が走り回るだけのゲームにこれだけカネを取るのか!?」

正直、そう怒る気持ちは筆者にも理解できます。前置きとして“プレアルファ段階”とは記しましたが、「2,800円のゲーム」と考えるとボリュームが本当に少ない!

ここで筆者が思い出したのは「赤サブレ騒動」です。

「赤サブレ」の黒歴史を振り返る

『Takedown: Red Sabre』は、「現実的なFPS」を標榜してKickstarterで開発資金を捻出したゲームでした。

「どうして銃撃戦の最中に体力が自動回復するんだ!? 物音を立てたら、普通は敵に居場所がバレちまうだろうが!」……そんな勢いで、あまりにフィクション的なFPSに反旗を翻した『Takedown: Red Sabre』でしたが、蓋を開けてみれば理不尽な要素ばかりが目立つ低クオリティーのゲームになってしまいました。出資者からリファンドを要求する声が相次ぎ、今では非常に悪い意味で「伝説的タイトル」と見なされています。

もしかしたら『Astride』も、赤サブレへの道を進んでいるのか……? いや、今の段階でそこまでネガティブになることはない! と筆者は主張したいと思います。

『Astride』の開発者は2027年までにフルリリースを完了すると公言していて、それがどのような内容になるのか(馬の性格の実装、繁殖、クエスト等)をSteamのページ内で説明しています。2027年とはまたかなり時間をかけてしまうように思えますが、明らかに実行不可能なタイトスケジュールを場当たり的に発表するよりも、姿勢としては健全なはず。

また、今の時点で既にマルチプレイ機能が実装されている点は非常に大きい! 故に筆者は、このゲームは多少の将来性が見込めるのではと考えています。「数ヶ月以内に大化けする」という展開はないにしても、数年単位のスパンで気長に観察していけば素晴らしい良作になれるかもしれない一本です。


『Astride』はSteamにて早期アクセスタイトルとして配信中。通常販売価格は2,800円で、対象OSはWindowsのみ。現時点では英語のみをサポートしています。


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(価格・在庫状況は記事公開時点のものです)
《澤田 真一》

ゲーム×社会情勢研究家です。 澤田 真一

「ゲームから見る現代」をテーマに記事を執筆します。

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