
――スタジアム発表時から現在までに寄せられたフィードバックを受けて、変更や調整を行った点があれば教えてください。
Dylan Snyder氏(以下、Dylan):最も多くのフィードバックがあり調整を重ねたのは三人称視点カメラです。これはスタジアムの大きな要素の一つであり、オーバーウォッチにとっては新しい試みでした。スポットライトイベントや一部プレイヤーと実施したクローズドアルファテストで多くのフィードバックをいただきました。それらを受けて、プレイヤーが期待するであろう、強力で、かつ自然なプレイフィールを実現するために、何度も調整を行いました。
Ryan Smith氏(以下、Ryan):ええ、三人称視点は本当に大きな調整点でしたね。
Dylan:あとはゲームバランスに関しても、アルファテスト中に多くのフィードバックをいただき、それらを反映させてローンチに向けた調整を行いました。
――個人的にはコアモードに匹敵するほど楽しい新モードだと感じました。スタジアムでは三人称視点が基本で一人称視点はオプションとのことですが、この視点切り替えを導入した理由と、それぞれの視点のメリット・デメリットについて教えてください。
Dylan:まず、オーバーウォッチには元々、ラインハルトが盾を構えた時やジャンクラットがタイヤを使った時など、三人称視点になる要素は存在していました。これらのケースでは、三人称視点にすることでプレイヤーをアクションの中心に据えつつ、より広い周辺情報を提供できるという利点がありました。
スタジアムでは、ヒーローたちが通常よりも遥かに強力で派手な能力を使うことになるため、この広い視野による状況把握のしやすさが非常に重要だと考えました。
Ryan:特にタンクヒーローの中には、三人称視点になることで非常にプレイしやすくなるものがあります。スタジアムは、私たち開発チームにとって新しいこと、今までとは違うことを試す絶好の機会でもありました。プレイヤーに自身のプレイスタイルをより深く追求し、より自由にプレイしてもらう上で、三人称視点が提供する操作感とできることが増える感覚は大きなメリットだと判断しました。スタジアムは、私たちが色々な新しいアイデアを試せる場所なのです。

――スタジアムではプッシュやコントロールといった既存モードのマップも使用されるとのことですが、スタジアム用にマップの調整はされていますか?
Ryan:はい、スタジアムで使用される既存モードのマップは、スタジアム用に調整された「ミニバージョン」になっています。変更を加えた主な理由は、スタジアムのより速いゲームテンポに合わせて、リスポーン地点から目標までの移動時間を短縮する必要があったためです。
コントロールはポイント制圧時間が短縮され1地点のみのプレイです。リスポーン地点も近くなっています。 プッシュはチェックポイントは5つですが、マップ全体のスケールが通常モードのほぼ半分になっています。 クラッシュは3ポイント制に変更され、2ポイント先取で勝利となります。

――次にスタジアムに追加されるヒーローは誰で、いつ頃になりますか?また、逆にスタジアムに実装するのが難しいヒーローがいれば教えてください。
Dylan:次に追加されるヒーローについては、現時点ではまだ具体的な名前を明かすことはできません。ですが、なるべく早く皆さんにお知らせできるように準備を進めています。
スタジアムというモードを常に新鮮で魅力的なものに保つためには、継続的なアップデートが不可欠だと考えています。そのため、コンテンツの追加は定期的に行っていく予定です。目標としては、シーズンごとに最低でも3体のヒーローをスタジアムに追加していきたいと考えており、その計画は順調に進んでいます。
実装が難しいヒーローについてですが、技術的な問題というよりはデザイン上の挑戦が必要なケースがあります。例えば、マーシーです。彼女は非常に明確なヒーラー/サポーターとしての役割とファンタジーを持っています。その彼女に、スタジアムのアップグレードシステムでどうやって新しい、あるいは異なる方向性のビルドを提供するかというのは、非常に興味深く、同時に難しい挑戦でした。しかし、これは「問題」というよりは、ゲームデザイナーとしての「楽しい挑戦」と捉えています。
―― 一人称視点と三人称視点で、ヒットボックスやエイムアシストの挙動は同じですか?また、ボタン一つで視点を切り替えられる機能の実装予定はありますか?
Dylan:ヒットボックスの大きさや位置は、一人称視点でも三人称視点でも全く同じです。これはスタジアムに限らず、コアゲームでも常にクライアントとサーバー間で正確に同期されています。武器から弾が発射される起点も、両視点で同じ位置から発射されるように設計しています。これは、三人称視点の特性を利用して一方的に攻撃できてしまう状況を防ぐためです。三人称視点では射線が通っていても実際には障害物がある場合、レティクルに赤いバツ印が表示され弾が当たらないことを示します。

――最近実装されたパークシステムとは異なり、スタジアムでは試合フェーズと強化フェーズが明確に分かれています。これによりプレイヤーが選択により時間をかけられる設計になっていますが、プレイヤーの選択肢を広げるという観点で、パークシステムとスタジアムではアプローチやコンセプトに違いがあるのでしょうか?
Dylan:パークシステムでは、オーバーウォッチのコアとなるゲームプレイの流れを中断させないことが非常に重要でした。プレイヤーに新しい選択肢や多様性を提供しつつも、試合から試合へのスムーズな移行を妨げたくなかったのです。
一方、スタジアムは全く異なる目的で作られています。コアゲームのペースとは違う、戦略と深みに重点を置いたモードを目指しました。試合の合間に「強化フェーズ」という時間を設けることで、プレイヤーが腰を据えて、何が起こったのかを分析し、次にどうすべきかを考え、チームメイトとコミュニケーションを取り、そしてアーマリーでじっくりとアップグレードを選択するという時間を提供したかったのです。
オーバーウォッチのゲームプレイは非常にペースが速いため、少し立ち止まって考える時間、つまり「山と谷」のような緩急を作り出すことが重要だと考えました。強化フェーズが「谷」にあたり、プレイヤーが情報を処理し、次の「山」となる戦闘に備える時間となります。
Ryan:これはスタジアムがプレイヤーに幅広い選択肢と実験の機会を提供するための意図的な設計です。強化フェーズがあることで、プレイヤーはより多くの情報を得て、より多くの戦略的な判断を下すことができます。
――スタジアムの各ラウンドで入手する専用通貨と、それを使ったアビリティ強化システムの設計意図、また開発で苦労された点について教えてください。
Dylan:この通貨システムとアップグレードの仕組みも、開発中に多くの試行錯誤を重ねた部分です。設計の意図としては、まずプレイヤー個々のパフォーマンスが適切に通貨に反映されるようにし、活躍したプレイヤーがさらに強力になれる「キャリー」の瞬間を作り出したかったのです。
一方で、チーム内で通貨獲得量に大きな差がつきすぎないよう、あまり活躍できなかったプレイヤーでも意味のあるアップグレードを購入できるようにし、常に逆転の目があるようにバランスを取ることが重要でした。そのための仕組みとして、活躍している敵に追加の通貨ボーナスがある“バウンティ”、劣勢チームの通貨獲得量を一時的に増加するブーストシステム、通貨に関係なく入手できる強力なアビリティの“パワー”を導入しました。
スタジアムの経済システムは、パフォーマンスに応じて報酬を得られる側面と、全てのプレイヤーが活躍できる機会がある側面を両立するように設計されています。
Ryan:通貨獲得には与ダメージ、ヒール量、目標への貢献などが影響します。ラウンドMVPにはボーナス通貨(1000点)もあります。
Dylan:ダメージ軽減は直接的な通貨獲得にはなりませんが、相手の通貨獲得を阻害します。
――最後に、日本のオーバーウォッチファンへメッセージをお願いします。
Dylan:本当に、スタジアムを皆さんにようやくお届けできることを心から楽しみにしています。このモードには非常に長い時間をかけて取り組んできました。開発チーム全員、プレイヤーの皆さんが実際に手にとって遊んでくれるのを待ちきれない気持ちでいっぱいです。日本のプレイヤーの皆さんにも、ぜひこの新しいモードに飛び込んできてほしいです。
私自身、OWCS(オーバーウォッチ・チャンピオンズ・シリーズ)の日本の試合を観戦していますが、日本のコミュニティが非常に盛り上がっていて、素晴らしいと感じています。そのリストにスタジアムが加わることを楽しみにしています。
Ryan:私はオーバーウォッチというゲームを心から愛していますし、このゲームの開発に携われることを誇りに思っています。ファンの皆さん、そして世界中のコミュニティを愛しています。日本のプレイヤーベースは私たちにとって非常に大切です。
スタジアムのために素晴らしい計画をたくさん用意していますので、皆さんにプレイしてもらえるのを楽しみにしています。そして、今日こうしてインタビューに参加してくださった日本のメディアの皆さん、本当にありがとうございました。とても素晴らしい時間でした。
『オーバーウォッチ 2』の新モード「スタジアム」は、これまでのゲーム体験に新たな彩りを加える大胆なチャレンジです。プレイヤーごとの個性を引き出すビルド構築、戦況に応じた柔軟な戦略、そして継続的なアップデートを通じた進化が約束されたこのモードは、新規・復帰勢にとっても既存プレイヤーにとっても魅力的な舞台となることでしょう。
開発陣が語る背景や思いには、ゲームに対する真摯な姿勢と挑戦への情熱が込められていました。シーズン16でスタジアムがどのような旋風を巻き起こすのか、今後の展開にも期待が高まります。
『オーバーウォッチ 2』シーズン16は、4月23日より開始予定です。













