『エースコンバット』30周年記念日の6月30日に合わせて発表された、ハムスターがアーケードアーカイブスとして家庭用に初移植するバンダイナムコエンターテインメント(1995年当時、ナムコ)のアーケード向けフライトシューティングゲーム『エアーコンバット22』。初稼働から30年ほど『エアーコンバット22』のコンソール移植は実現したことが無く、突然の発表だったためシリーズファンを含め大きな話題となりました。
アケアカ版『エアーコンバット22』は、6月に配信されたアケアカ版『リッジレーサー』と同様にアケアカ/アケアカ2版がそれぞれPS4/PS5/Xbox Series S|X/ニンテンドースイッチ/ニンテンドースイッチ2向けに配信されています。PS4版では具体的な機種名は記載されていませんが一部フライトスティックにも対応しているそうです。
今回はニンテンドースイッチ2でのゲームプレイによるプレイレポを含め、本作の歴史や特徴を今一度見つめ直す内容となります。
難しいが面白く奥深い『エアーコンバット22』のゲームプレイ
『エアーコンバット22』は1995年3月に稼働したアーケード向けのフライトシューティングゲーム。筐体は前作『エアーコンバット』のDX版譲りの50インチもある大型プロジェクターのディスプレイとF-16のコックピットを模した巨大なシートを備えたものでした。
本作のアケアカ版ではオリジナルモードに国内版と海外版を収録。ランキングへ登録できるハイスコアモードとキャラバンモード、そしてタイムアタックモードの3種類収録されています。なおアケアカ/アケアカ2版の違いは、6月のAC版『リッジレーサー』と同様にタイムアタックモードの有無だけです。


2コインを投入してゲームを開始すると、初級モード(説明あり)と初級モード(説明なし)、上級、ドッグファイトモードの4モードを選べます。初級モード(説明あり)は実質チュートリアルを兼ねたモードであるために、大画面に大きく説明が表示されるだけでなく、敵機の動きも抑え気味で、操作さえ慣れてしまえば気持ち良く遊べるモードです。


実際にプレイしてみると効果音や場面展開を含めて非常にテンポがよく速攻でゲームの世界に入れます。基本的には各ステージに登場する敵機を制限時間内に倒し切れれば次のステージへ進行し、最終的にラスボス的存在を撃破出来ればクリアです。
操作は、昨今の『エースコンバット』的に表現するとノービス操作のみ。つまり、機体が回転するロール動作が無く左右のバンクのみで旋回を行う挙動です。またスティックを引き続けループをすると180度天地が反転しますが、何も操作しなければ天地が初期位置になるように回転します。特にスティックは傾けると即反応するため、機体を敵機に向けるだけならまだしも機銃のエイミングが難しいことから感度調整は必須です。


また本作のアケアカ版はフライト系ゲームに珍しくジャイロ操作に対応しており、照準の微調整を補助してくれます。しかし、感度が調整できないため、思った以上に動かさなければ照準を合わせられないのがもどかしさを感じてしまいます。ジャイロ操作の相性は非常に良いものだったため、今からでもジャイロ専用の調整機能を付けてくれれば…、と思ってしまうほどです。


前作にあたる初代『エアーコンバット』を2019年にプレイしたうえでの感想となりますが、敵機も複数登場することで、「どの敵機から倒すか?」など戦略性が上がったことや、ミサイルが二発連続で発射できるため敵機が放つチャフのリロード時間を考慮した時間差攻撃、遠距離の敵機に対してミサイルと機銃のタイムエクステンド数の違いを天秤に賭けた行動など…、ゲームそのものの駆け引きも多量に増えました。
駆け引きが増えたこと自体は面白さに繋がっており高く評価できるポイントですが、AC版『リッジレーサー』と同様に時間制限が厳しい印象です。初級モード2種類でも多くを機銃で倒さなければ時間切れになりやすく、連続コンティニュー/連コイン(連コ)を行ってなんとかクリア出来たほどでした。なお敵機はミサイルや機銃などで攻撃してきますが、被弾ペナルティで一定の速度低下などはあるものの自機撃破はありません。



特に上級コースの難しさは段違いです。機銃が一門となり敵機に与えるダメージが減少するため撃破が難しくなるだけでなく、敵機も左右のシザースだけでなく急降下やループなど多彩なマニューバを繰り出し、オーバーシュートも狙うため、追いかけるのが一段と困難になるからです(注視機能も無いため追いかけるのも大変)。
特に最終ステージのボス機との1vs1はコンティニュー不可になるだけでなく、制限時間60秒に加え、ミサイルも残弾2発のみというシビアさです。そのため、何度もボス機へ挑戦しクリア出来たときの嬉しさは格別でした。


ハードロックな音楽に合わせて戦闘機を駆り敵機を倒す面白いシューティングゲームであるのは確かですが、1995年のアーケードゲームとしても操作を含めて極めて難しいタイトルの1つであるのは間違いありません。制限時間の厳しさから息を吸うようにコインが吸い込まれます。
一方で腕を磨いて敵機のマニューバに追いつけるようになると結果的に連コが減るという上手くなる歓びは大きいものでした。道は険しいものの『エアーコンバット22』は最終的に1クレジットクリア(1CC)を目指す喜びが存在する、3Dでありつつも往年のシューティングゲームであると思えました。
『エースコンバット』シリーズに色濃く影響を残している『エアーコンバット22』
今回配信された『エアーコンバット22』をプレイしていて気付いたことは、『エースコンバット』シリーズには本作をモチーフにしたスキンやマップなどが非常に多いということでした。始祖である初代『エアーコンバット』の要素は勿論あるのですが、それ以上に存在する印象です。順を追って説明しましょう。
初代『エースコンバット』は、青い空や眼下に広がる海などどちらかと言えば初代『エアーコンバット』的なモチーフが表れていると言えるものの、ミッション15「要塞奪還!」の敵目標があるスコーピオン島の地上施設の構図などは『エアーコンバット22』的なものを薄らと感じます。


一方で次回作となる『エースコンバット2』では『エアーコンバット22』要素がかなり多く登場していました。オープニングにおいて多数のMiG-21が登場するシーンはアトラクトデモを彷彿とさせますし、F-22とSu-35が発艦するシーンはカメラワークやシチュエーションも含め、『エアーコンバット22』の引用と解釈すると不可解な描写が綺麗に繋がります。
最後のMiG-21がF-22を追い回すシーンは『エアーコンバット22』ゲーム中で良く目にする光景でもあるために、引用元の再現となると納得してしまう表現です。
本編にはこれだけでなく、格納庫に収められたXB-10の存在や、F-16やF-14の敵機体カラーなどなど、照らし合わせてみれば『エアーコンバット22』からのものと思えるものが数多く存在します。












2004年発売の『エースコンバット5』ではキャンペーンの他にアーケードモードが搭載されています。制限時間内に規定の敵機を撃破するというシステムを筆頭に、空中給油やルート分岐など『エアーコンバット22』的な要素が強いものの、敵機の挙動や時間制限はシビアでなく比較的遊びやすいものでした。


また2010年発売の『エースコンバットX2』のSPミッション2「Ace of Aces」では、『エアーコンバット22』のドッグファイトモードを彷彿とさせるような100機撃墜ミッションが導入されています。3DS向けに2011年末に発売した『エースコンバット3D クロスランブル』では、『エアーコンバット22』の曲であるSurrender MeとIf the Sky is Burnin' Out!のアレンジ楽曲を収録しています。
『エアーコンバット22』の系譜に繋がるタイトルとしてアーケード向けのフライトシューティングゲーム『マッハストーム』の存在も忘れてはなりません。直接的な関係は『エースコンバット アサルトホライゾン』にありますが、2013年に登場した『マッハストーム』は、『エアーコンバット22』の問題点である全くの初心者だと飛ばすのさえ難しいことを、DFMを導入することで解決したタイトルであった事がわかります。
ゲームプレイの目的自体は、敵機に撃墜されずにボスを撃破するという点で似ていますが、敵機が続々とプレイヤーの前に登場し、『アサルトホライゾン』譲りのDFMによって操縦桿はエイミングに集中するだけで良いこと、とにかくミサイルと機銃を使って敵機を倒しまくれることなど、難しい操縦を上手く省略しアーケードゲームとしての手軽さを獲得していました。
ミッション中に流れるBGMには『エースコンバット3D』版のIf the Sky is Burnin' Out!も収録しているなど、ある意味で『エアーコンバット22』のリバイバルさえ果たしたと思えてきます。惜しむらくは大型筐体で場所を取るためか、現時点でゲームセンターにおいてなかなかお目にかかれないこと。この写真の筐体も残念ながら2022年前後には無くなっていました。

そして2019年の『エースコンバット7 スカイズ・アンノウン』では、DLC第4弾「Unexpected Visitor」において、トーレス艦長率いる潜水艦アリコーンの艦載機のラファールのカラーが黒ベースであることや、ミミック隊のスキンがダズル迷彩であることも『エアーコンバット22』の引用のように思えます。
なぜなら、ゲーム中に敵機としてダズル迷彩の機体Bが登場するだけでなく、『エースコンバット7』DLCディレクターが『エアーコンバット22』の開発にも参加した夛湖久治氏ということでも無関係でないように思えるからです。




こうして俯瞰してみると、『エアーコンバット22』モチーフがシリーズのナンバリング/非ナンバリングと共に多く仕込まれていたことに驚きを隠せません。
今振り返る『エアーコンバット22』の開発
『エアーコンバット22』は、AC版『リッジレーサー』と同様にインターネット上の記事だけでなく当時の雑誌記事等でも語られていないタイトルです。今一度2019年に筆者が大村純氏と夛湖久治氏へ訊いたインタビューの内容を簡単にまとめてみましょう。
『エアーコンバット22』より前作となる初代『エアーコンバット』は、男の子の憧れの職業という意味での「戦闘機パイロット」をゲームにしたものでした。DX筐体のデザインも初期案では戦闘機の機首を模したものが計画されていたものの、最終的には外装を外し、計器を中心としたインテリアのみにまとまりました。
『エアーコンバット』ではラダーペダルの搭載を計画していたものの、難しくなりすぎることからペダルを外したことや、筐体2台を使った通信対戦機能もチェックしたものの諸事情あって頓挫しています。加えて、対戦は他人数対戦なら可能性があったものの、通信する基板の能力や価格など懸念点もあったのです。


今回の『エアーコンバット22』配信に関連したハムスターによる番組の第544回 「アーケードアーカイバー エアーコンバット22スペシャル!」では『エアーコンバット22』の大村氏や夛湖氏などを筆頭とした開発陣が登壇。
そこで語られたことによると、本作が開発された切っ掛けは前作『エアーコンバット』(1993年稼働)より、パワーアップしたSYSTEM22基板が登場したことで、より発展させたタイトルを開発し、敵機を多く登場させて爽快感を増そうというのが発端だったそう。『エアーコンバット22』の開発期間は約1年で、本作開発の為に技術研究も4ヶ月ほど行われたそうです。
『エアーコンバット22』は1995年2月開催の「AOU95アミューズメント・エキスポ」において、同基板を採用した『アルペンレーサー』と『サイバーサイクルズ』と共に出展。こうしてSYSTEM SUPER 22の第1弾として『エアーコンバット22』が誕生し、稼働したのは1995年3月でした。
なお『エースコンバット』と『エアーコンバット22』の関係については、『エアーコンバット22』の開発が始まっている時にCS開発部から「ドッグファイトをテーマにした家庭用ゲームをPS向けに作ることからお互い協力しましょう」ということで、ゲームの監修や仕様書を渡したりなどを行っていました(そのためエンディングに名前が載っている)。

両タイトルの関係の補足になりますが、HYPERプレイステーション1995年6月号に掲載されたナムコの吉積信氏のミニインタビューによれば、『エースコンバット』と『エアーコンバット』は基本的に別物で、『エースコンバット』の企画コンセプトは「リアルな空中戦」であるとのこと。
アーケードの『エアーコンバット』自体は一定の敵を倒して次へ進むステージクリア型のゲームですが、『エースコンバット』は家庭用ならではの要素として自由に空を飛び回り好きな時にドッグファイトができることである…、と語られていました。

他にも『エアーコンバット22』は過去にPC移植も発表されたことがありました。これは、1995年11月に当時のナムコがNECと提携し、NECとVideoLogic(現Imagination Technologies)が共同開発したPowerVRというPC用3Dアクセレーター向けのタイトルとしてのもので、『レイブレーサー』と『鉄拳』、そして『エアーコンバット22』がラインナップされていました。
しかしながら、PC版『レイブレーサー』は海外のゲーム雑誌EDGE Magazine 1996年5月号にてデモ版のレポートが掲載される段階まで開発されていたものの、結局『エアーコンバット22』を含めた3作品は今日に至るまで発売されていません。そのため、アケアカ版が配信されるまで『エアーコンバット22』はゲームセンターから消え去っても家庭用/PCに移植されなかった幻の作品でもあったのです。

30年の時を経てようやく始祖の1作品をプレイ出来る喜び
『エアーコンバット22』は1995年のアーケードゲームとしても難しさが目立ちますが、敵機を追いかけて機銃かミサイルで撃墜する面白さは2025年になっても変わらないと思いました。
こうして移植された『エアーコンバット22』をプレイしてから、2019年のインタビューを読み直してみると、大村氏と夛湖氏が語っていた内容が実体験と結びつくため理解がより深まります。公開当時に読まれた方も今再び読み直してみるとより楽しめるはずです。

『エースコンバット』シリーズへ繋がる、ドッグファイトのエキサイティングな面白さの原液が詰まったのが『エアーコンバット22』です。『エースコンバット』の系譜としては30年の時を経てやっと移植されたタイトルですし、シリーズファンだけでなく新たに興味を持ったユーザーもプレイしてはいかがでしょうか?
アーケードアーカイブス版はPS4/ニンテンドースイッチ向けに1,500円(税込み)、アーケードアーカイブス2版はPS5/Xbox Series S|X/ニンテンドースイッチ2向けに1,800円(税込み)です。なお、アケアカ版を所有しているユーザーはアケアカ2版を330円(税込み)で購入可能です。

¥5,309
(価格・在庫状況は記事公開時点のものです)
¥2,682
(価格・在庫状況は記事公開時点のものです)














