
ゲーミングヘッドセット選びで決め手になるのは、よくある「スペックシートの数値」や「キャッチコピー」だけでなく、ゲームプレイや日常的な使用にどこまで自然に馴染むかだと考える方も多いのではないでしょうか。PC周辺機器を一通り試してきたハードコアゲーマーであれば、様々なモデルを見比べたり実際に体感した上で「しっくり来る感覚」を重視することも多いでしょう。
2025年8月8日より発売されるゲーミングヘッドセット「Razer BlackShark V3 Pro」は、公式サイトで強く謳われている「最も先進的なワイヤレス ANC eスポーツヘッドセット」「勝利は約束されたも同然」といったキャッチコピーをいったん脇に置いたとしても、最終的に“長く付き合いたくなる道具”としての魅力がじわじわと感じられる新製品です。
快適さと遮音性を両立した装着感

「BlackShark V3 Pro」についてまず特筆したいのは、ゲーミングヘッドセットとしての装着感です。気温40度の大台に乗ったこの酷暑にゲーミングPCなどの精密機器を何台もブン回していると、どうしても「通気性と着け心地が良いヘッドセット」を選びたくなります。
「Razer BlackShark V3 Pro」の側圧やイヤークッションの密着具合は絶妙で、数時間にわたって連続で装着していても耳や頭部への違和感が少なく、夏場の長時間プレイや作業でも快適に過ごせました。
本機に新搭載されたハイブリッドノイズキャンセリング機能は「静まり返ったような完全無音」レベルではなく、時と場合によってゲーミングPCのファンの音を拾うことがありました。また、ノイズキャンセリングのオンオフに加えて外部音取り込みモードもあるので、どのようなユーザーにもマッチするでしょう。
提灯記事のつもりはないが「音」には本当にビビった

音の定位や分離感にこだわる「Razer BlackShark V3 Pro」は、ゲームプレイ時にそれぞれの音が乱雑に混ざり合ったりせず、必要な情報が自然に耳に届きやすくなっています。例えば『Apex Legends』であれば敵の足音や発砲音が、環境SEや仲間のボイスチャットと混線し過ぎることなく、それぞれ明確に聴き分けられます。

今回は『Apex Legends』に加えて、人気の脱出タクティカルFPSのPC版『Arena Breakout: Infinite』をプレイしてみました。こちらでは他のプレイヤーやNPCの銃声、足音を始めとした様々な音声が重なるシーンでも、全体的にクリアに認識できました。

筆者はPvPvEのタイトルで遊ぶときになんとなく油断しがちになるので“NPCやbotではない、ナマのプレイヤーから聞こえる音”が認識しやすくなると、プレイにも良い具合に活かせます。
また、音楽や動画の視聴用途でも非常に驚かされました。新しいオーディオ機器を試すときは「自分が人生の中で最も繰り返し聞いた音楽」を選ぶようにしているのですが、そういった曲を「BlackShark V3 Pro」で再生してみたところ、音楽制作用のモニターヘッドフォン(とは言え4~5,000円)やAirPods Proで聞き取れなかった音を“見つけてしまった”のです。
各社・各モデルそれぞれの「特性」があることは理解しつつも「BlackShark V3 Pro」の中音域~高音域の聞こえ方には光るモノがあります。ちなみに「見つけてしまった音」というのはちょっとしたレコードノイズ(レコード針が埃などに当たる、プチプチした音)で、確かにこの帯域の音はシューター系で特に大事だものな、と納得させられました。
低音域もなかなかキレイな聞こえ方で、低音~中低音域の分離が気持ち良く感じられます。シューターであれば、同じ“低音”でも「発砲音か、マップギミックの音か、誰かの足音か」などを判別するのが大切です。ゲームプレイで感じたクリアな聞こえ方の「答え合わせ」のような感覚で、音楽やYouTubeなどの視聴を楽しめました。
マイク性能と配信・多目的運用

12mm着脱式のマイクはノイズの抑え具合と音の明瞭さが両立していて、VCや配信でも「きちんと伝わる安心感」があります。特に指示や会話がクリアに届くため、チーム制のゲームや仕事上での会議・打ち合わせなどでも使いやすい品質でした。
本記事を執筆した日にも複数の打ち合わせがあったので、試しに「BlackShark V3 Pro」を使って参加したところ、同じGame*Spark編集部メンバーから「“非常にクリア”というほどではないが、ヘッドセットについているマイクとしては結構良い感じ」という反応を得られました。

また、無線(HyperSpeed 2.4GHz)、Bluetooth、有線(USB・3.5mm)の4接続および同時対応が可能です。さらにEQプリセットを本体側に保存できるので、出先やイベントなどでも自分好みの音質をすぐ再現できる柔軟性があります。

ただし、通常のBluetooth接続(PC)では、筆者の環境だと音声が途切れることがありました。とは言えここまでの製品を選ぶ方ならRazerの専用ソフトウェア「Razer Synapse」とUSB Type-A/Type-C接続のドングルを使用しているでしょうし、大きな問題にはならないでしょう。スマホ/タブレット(いずれもiOS)では不具合を確認できなかったので、筆者のPC環境のせいかもしれません。
実際に「誰に向くのか」

本モデルの価格は約4万円と、ゲーミングヘッドセットの中では高水準です。エントリーユーザーや、とにかく「ゲームらしい迫力のサウンドさえ聞ければ満足」という方には最適解になりにくいかもしれません。しかし、日常的にゲームや配信を長時間行い、音から得られる情報や没入感を大切にしたいゲーマー、様々な使い方を選べる対応力やゲーミングアクセサリー自体の信頼性を大切にするゲーマーにとっては、納得感が高い選択肢となるでしょう。
「Razer BlackShark V3 Pro」はカタログスペックやキャッチコピーのみに頼らず、“使い心地”を追求した質実剛健なモデルです。自宅用にはもちろんのこと、このヘッドセットを使うことで逆に「オフラインイベントに参加してみたい」「外出先でもPvPゲームを楽しみたい」と思うこともあるかもしれません。いずれにせよ、長きにわたる相棒になりうるだけの価値は持っています。
「BlackShark V3 Pro」は2025年8月8日より発売予定。公式サイトおよびAmazon.co.jpでは予約注文を受け付けており、販売価格は40,780円(税込)です。













