『魔法少女ノ魔女裁判』は、「かわいそうはかわいい」だけでは終わらない―“圧倒的に好評”も頷ける高品質なデスゲーム系ADV【プレイレポ】 | Game*Spark - 国内・海外ゲーム情報サイト

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『魔法少女ノ魔女裁判』は、「かわいそうはかわいい」だけでは終わらない―“圧倒的に好評”も頷ける高品質なデスゲーム系ADV【プレイレポ】

プロモーションから想像していた内容とはやや異なる作品でした。

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『魔法少女ノ魔女裁判』は、「かわいそうはかわいい」だけでは終わらない―“圧倒的に好評”も頷ける高品質なデスゲーム系ADV【プレイレポ】
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Re,AER発のクリエイティブブランド「Acacia」が手がける魔法議論ミステリーADV『魔法少女ノ魔女裁判』。7月18日にSteamで発売され、記事執筆時点(2025年8月8日)では2,900件以上のレビューのうち96%がおすすめする“圧倒的に好評”を記録しています。

そんな本作の物語は、13人の少女たちが突如として閉鎖空間に囚われるところから始まります。混乱する彼女たちに、囚人生活のルールを伝える正体不明のマスコット「ゴクチョー」。そして発生する殺人事件。犯人を探し出して処刑するための「魔女裁判」が幕を開ける……。

このあらすじに既視感を覚える方は多いのではないでしょうか。本作では『ダンガンロンパ』シリーズなどでお馴染みの、デスゲーム系ADVの基本の型ともいえるような舞台設定をそのまま採用しています。

※『ダンガンロンパ』は、学園内に閉じ込められた15人の少年少女が「モノクマ」の監視の元、外に出るためにコロシアイとその犯人を見つける「学級裁判」に挑むという物語。

そんな本作ですが、ファンや開発関係者らを“共犯者”と呼び、登場人物の少女らが残酷なゲームに巻き込まれ酷い目に遭う……という点を強調したプロモーションをSNS上などで展開。そのため、筆者は「『ダンガンロンパ』のフォーマットを使用し、女の子たちが悲惨な最期を迎える様を描く作品」であり、俗にかわいそうはかわいい」と呼ばれるような表現に重点を置いているのだと考えていました。

そのような作品自体を否定するつもりは、もちろんありません。前述のように舞台設定があまりにオーソドックスなこともあって、推理もの、デスゲームものとして見た際の物語の作り込みには「力を入れていないのではないか」という疑念があったのです。加えて、筆者は「かわいそうはかわいい」系の描写にあまり惹かれるタイプではなかったので、not for meな作品だと判断していました。

そんなとき、編集部から本作のプレイレポの打診が舞い込んでくることに。それをきっかけに食わず嫌いをしたままなのもよくないと考え直し実際にプレイしてみたところ、前述の疑念を払拭する完成度の高いADV体験を楽しむことができました。

なお、物語に関する記述はゲームをクリアした上での抽象的な感想・意見にとどめており、重大なネタバレは含まれていません(公式発表済みの情報は除く)。

13人の少女たちに待ち受ける運命は……

本題に入る前に、もう少し詳しく本作のあらすじを紹介しておきましょう。

主人公「エマ」を含む13人の少女たちが閉じ込められているのは、絶海の孤島に築かれた牢屋敷。そこを管理するフクロウのようなマスコット「ゴクチョー」から、13人は世界に災厄をもたらす魔女候補であるがゆえに収監されることになったと告げられます。

突然の監禁生活に混乱する少女たち。「ゴクチョー」の言いつけを破って、脱出を企てる者やマイペースな性格を活かしてすぐに状況に適応する者、率先してリーダーになろうとする者など、思い思いの方法で異常な事態に向き合っていきます。

いくつかの派閥が出来上がり集団生活が回り始めた矢先に、魔女化が進行し殺人欲求が高まってしまった少女の手により牢屋敷内で殺人事件が発生。不可解な事件の謎を解き、魔女を見つけ出すために少女たちが議論する「魔女裁判」が開催されます。

物語は、少女たちが交流する日常パート→事件が発生→裁判パートの繰り返しで進行。日常パートから事件の発生までは、基本的に一本道のノベルゲームスタイルで読み進めていきます。

システム自体に目新しさはないものの、歯ごたえある推理を楽しめる裁判パート

「魔女裁判」に突入すると、各キャラクターの発言を聞きながら矛盾を指摘していく、『ダンガンロンパ』風の推理ミニゲームが始まります。

ゲームが進行すると、相手の指摘に対して嘘で返したり、誰かの意見に賛同したりすることも可能に。とはいえ、一連のループする会話の中から正解の選択肢を探し出すという点は変わらないので、『ダンガンロンパ』の推理パートのプレイ体験が好みであれば、問題なく入り込めることでしょう。

興味深かったギミックとしては、同じループの会話の中で先に矛盾Aについて指摘することでループが進展し、矛盾Bを含む内容に会話の後半が変化するというものがあります。そのほかにも、先達の作品との差別化を試みているであろう工夫がチラホラと見受けられました。

事件には魔法といういわば超常現象が関与しますが、そのような能力が存在する世界だという前提を受け入れてさえいれば、トリックや議論の内容は十分に納得できる仕上がりでした。

また、その魔法も思うがままに何でもできる万能なものではなく、液体を自由に操る魔法、身体が空中に浮く魔法といったように、キャラクターごとに使える能力が決まっています。これらが物理的に不可能であるように思える犯罪、けれど「この人物の魔法をこうやって使うと成立させられるかも?」と、推理を盛り上げる要素の一つとして上手く機能しています。

特に中盤からは、推理の難易度もそれなりのものになっていた印象。間違った選択肢を選んだ場合、ヒントとなる台詞を聞くことができますが、それでもしっかりと考えないとピンとこない絶妙なラインを攻めたヒントが多めでした。

個人的には、少し間違っただけで答えを言っているも同然なヒントを教えられるのは好きではないので嬉しい仕様です。しかし、全くわからない謎にぶつかった際は苦戦を強いられる可能性も。とはいえ、セーブ&ロードを繰り返して総当たりで試すこともできるので完全に詰んでしまうことはないはずです。

デスゲーム・推理モノとして十分に楽しめるストーリー

物語は全体を通して非常に丁寧に作られており、事前のプロモーションから受けた印象との変化が、良い意味で大きい作品でした。

先の展開に興味を持たせるための謎や種明かしが序盤・中盤・終盤と過不足なく、そして巧妙に配置されており、プレイヤーの心を常に掴み続けます。デスゲーム系の作品はしばしばプレイしており、さまざまな仕掛けやどんでん返しに触れてきましたが、それでも先の展開を何となく予想はできても完璧に読み切ることはできませんでした。

デスゲーム系ADVに全く新しい風を持ち込んだとまでは言えないかもしれませんが、これまでの作品で扱われてきたそれ単体では、目新しさのない要素に捻りを加えることで「なるほど、そう来るか!」と関心させられる場面を生み出しています。

デスゲーム系のジャンルをよく遊ぶプレイヤーでも楽しめるよう、お約束を守る部分と飽きさせないためのアレンジを加える部分のバランスが良いシナリオであるように感じられました。

また、それぞれのキャラクターも丁寧に描写されています。各々が何かしらのトラウマを抱えており、過去にその直接的な原因となる出来事があって、それによって今の人格が形成されているという一連の情報が、少しずつプレイヤーに開示されていきます。

そして、非日常の中で他の少女たちと交流することにより、その人格にも変化が生まれ、仮面の下に隠れた本心が見え隠れしていく様もしっかりと描写。ただ単にひどい目に合っている少女を見たいがためだけに作られたのではない、考え抜かれたキャラクター性であることが伝わるものでした。

とはいえ、この少女たちは殺人事件の被害者になったり、犯人として処刑されたりするので、本作のセールスポイントとされていた「かわいそうはかわいい」的な描写も存在します。

しかし、キャラクターの背景に上手く組み込まれていたり、殺人に行きつくまでの心情・人間関係の変化などが丁寧に示されるので、無理やり感はなかったように思います。

描写それ自体を切り取った場合は悪趣味に映るものもありますが、物語の一部分として感情移入しながら直面することになるので、最後までプレイした上で振り返ってみるとそれほどの不快感はなく、むしろ本作を良作たらしめるために必要なものだったとすら思うことができました。

気になったポイント

最後にいくつか気になったポイントについても触れておきます。まず、ひとつ目はセーブについてです。

本作はオートセーブに対応していないため、常に手動でセーブする必要があります。セーブスロット数は180個用意されており、裁判中でも会話パートであれば、いつでもセーブ可能と比較的柔軟なシステム。

ただし裁判の推理ミニゲーム中に時間切れでゲームオーバーになってしまった場合、タイトル画面に戻されてしまいます。手動セーブを怠っていると、かなり巻き戻されてしまう羽目に。筆者は夢中になってプレイしていて、セーブを忘れてしまっていたために数時間分巻き戻ることになってしまいました。

ゲームオーバー以外にも万一のエラー落ちなどに備えるためにも、こまめにセーブを行いましょう。せめて、裁判の終了時などの節目の部分でオートセーブされたり、セーブを促す表示が出たりする機能があればよかったのではないかと思います。

また、BADENDも人によっては要らないように感じられるかもしれません。日常パート中に稀に選択肢が登場するのですが、片方はBADENDに直行するという作りになっています。

本筋の要素を掘り下げる興味深い内容のBADENDもありますが、フレーバー程度の設定を付け足すものだったり、ただ単に少女が酷い目に遭うだけだったりするものも少なくありません。

設定で選択肢のヒント表示をオンにしておけば、BADENDの方の選択肢にマークがつくため、先にBADENDを見てから進むことも正規ルートを進み続けることも可能です。見たい人だけ見ればいいという位置づけの、おまけ程度の要素という印象でした。

また、プロモーションを見て「かわいそうはかわいい」描写を存分に摂取できると考えていた方の場合、暗転するだけのBADENDにやや拍子抜けしてしまうかもしれません。


結局のところ、ノベル・推理系のゲームは一定以上の水準であれば、その物語が刺さるかどうかという個人の好みの話になってしまうので、最終的には実際にプレイして確かめてもらうしかありません。

しかし、本作のメインシナリオは「かわいそうはかわいい」を描くための手抜きや二の次ではなく、しっかりと作られたものだったという点は断言できます。

個人的な意見としては、群雄割拠のデスゲーム系ADVのジャンルの中でも上位に食い込むだけのポテンシャルを持ち、なおかつ新鮮な体験となるような工夫も凝らされている、推理・デスゲーム系作品として十分に楽しめるものでした。

推理の要とも言える、それぞれの殺人事件周りのシナリオもおおむね満足できる仕上がり。人数が減ってくるとメタ読みが当たってしまうこともありましたが、裁判が始まった時点では犯人や犯行手順の全貌が見えてこないことが多く、しっかりと現場の状況や証拠を把握し、二転三転する議論の中で巧妙に隠された真相に迫る体験を堪能できます。

全体を通して値段相応のチープな作りの部分もありますが、よくできた物語体験を楽しめる作品でした。

Steamにて配信中&スイッチ版2026年春リリース予定

『魔法少女ノ魔女裁判』はSteamにて3,500円で配信中。また、ニンテンドースイッチ向けには2026年春にリリース予定です。


魔法少女ノ魔女裁判 クリエイターズアートブック -表裏-
¥3,850
(価格・在庫状況は記事公開時点のものです)
ライター:kamenoko,編集:八羽汰わちは

編集/多趣味オタク 八羽汰わちは

はちわたわちは(回文)Game*Spark編集部員、デスク担当。特技はヒトカラ12時間。

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