発売から1ヵ月以上が経つも、追加サイドミッションが配信されたり、DLC「M次元ラッシュ」のリリースを控えていたりと、まだまだコンテンツが増える『Pokémon LEGENDS Z-A(ポケモンZA)』。

その舞台となる大都市「ミアレシティ」には数多というNPCがおり、それぞれにユニークな固有会話が存在します。大半のNPCはゲーム本編に絡むことは無いため、人によっては聞く機会の無い彼らのセリフですが、笑えるものから思わず考えさせられるもの、そしてDLCと関連ありそうな、無さそうなものまで、その種類は様々です。

前回記事では、そんなNPCたちのセリフから『ポケモン』世界を見ていきましたが、今回は趣向を変えて日英版で比較。日本語版とはニュアンスの異なる、“ローカライズ”での変化などを覗いてみましょう。
アイドルはウンチしない、ピカチュウもウンチしない?日英で同じだったり違ったりする糞セリフ

日本語版:ポケモンのフン、どうやって始末してます?
英語版:How are you supposed to get rid of Pokémon droppings?
英語版の筆者訳:ポケモンのフンってどうやって始末すればいんですか?
言われてみれば気になるポケモンのフンの処理。種類によっては爆発することもあるため、トレーナーにとって把握するのは重要なのかもしれません。

そんなトレーナーの苦労が垣間見える本セリフですが、英語版のキーワードをピックアップすると以下のようになります。
「How are you supposed to=(一般的に)どうすることになっているの?」
「get rid of=取り除く/始末する」
「Pokémon droppings=ポケモンのフン」
日本語版の雑談のような口調に対し、「How are you supposed to...」は適切な手段を知りたがっている印象を強めに受けるため、英語版の彼はより切実に悩んでいるのかも?……しれません。
なお、ポケモンのフンに関する台詞は他にもあります。

日本語版:野生ポケモンのね、フンを掃除していたの
英語版:I've been cleaning up the, um, droppings of wild Pokémon.
英語版の筆者訳:野生ポケモンの、えーっとフンを掃除していたの

野生ポケモンが増えつつある街で立派な貢献活動をする人物による発言です。英語版のキーワードをピックアップすると以下のようになります。
「cleaning up=掃除する」
「droppings of wild Pokémon=野生ポケモンのフン」
こちらでは、日本語版で「野生ポケモンのフン」と一言で言い切らなかった間を、「um=えーっと」という言い淀みを挟むことで表現。原文の雰囲気を英語で再現したローカライズとなっています。
しかしフンにまつわるセリフには、日本語版から意味が欠落してしまったものも存在します。

日本語版:ピカチュウのウンチ、いつもより多くて心配だ
英語版:My Pikachu's been having tummy troubles recently. I'm worried ...
英語版の筆者訳:ぼくのピカチュウ、最近お腹の調子が悪いんだ。心配だ…

おそらく本作で有名なNPCのセリフの一つ。“シリーズの顔であるピカチュウもウンチはする”そんな現実を唐突に突きつけるつぶやきですが、英語版のキーワードをピックアップしてみると以下のようになります。
「My Pikachu=ぼくのピカチュウ」
「tummy troubles=お腹の不調」
ここでお気づきの人もいるかもしれません。なんと英語版のセリフには「ウンチ」が存在しないのです。
「tummy troubles」という形で暗喩はされているものの、これだけでは下痢か便秘なのか判断がつかず、もっと言えばストレスから来る胃潰瘍の可能性もギリギリあり得ます。
この結果、日本語版で観測できた“ピカチュウのウンチ”を英語版プレイヤー達は見られなくなってしまったわけですが、恐らくローカライズにあたり、英語版スタッフは“ピカチュウ=ウンコ”のイメージ定着を憂慮し、原文を正確に訳すよりボカすことを優先したのかもしれません。
ちなみに“日本版に存在するピカチュウのウンチ”は海外で注目を浴び、“Pikachu pooping“といった形で様々な英語メディアにより取り上げられています。
深いコメントが大胆かつユーモラスにアレンジ?

日本版:たいていの人はね、熟成せずに腐っちゃうんだ
英語版:Some people age like good cheese! But most age like ... bad cheese.
英語版の筆者訳:良いチーズのように熟成する人もいる!だが大半は悪いチーズのように腐っちゃうんだ

とくに根拠は示されていないものの、なぜか心に沁みる一言。英語版のキーワードをピックアップすると以下の通りです。
「age like=のように年を重ねる」
「good cheese=良いチーズ」
「bad cheese=悪いチーズ」
日本語版ではシンプルな格言だった一方、英語版は年を重ねて“熟成すること”と“腐ること”を“チーズ”に例える、ユーモアあふれるセリフとなっています。原文のどこか重い印象は薄れたものの、洒落のきいた言い回しであり、筆者個人は本作で一番好きなローカライズです。
なお、「age like」から始まる肯定的な言い回しとしては、「age like a fine wine=良いワインのように熟成する」が既に存在します。しかし、過去に任天堂『スーパーマリオカート』日本版にあった飲酒描写が変更されるなど、海外ではアルコールに関する表現規制が強い傾向にあるため、全年齢ゲームとしては“チーズ”の方が適正だったのかもしれません。
すなあらしパーティの鉄板コンビ「バンドリ」、海外でのローカライズは?

日本語版:バンギラスとドリュウズでバンドリって呼んでました
英語版:Tyranitar and Excadrill, no doubt. I had the BEST Sandstorm team.
英語版の筆者訳:間違いなくバンギラスとドリュウズです。最高のすなあらしチームを組んでいました。

こちらは「昔はどんなポケモンがお好きだったんですか?(What Pokemon were your favorite when you were young?)」という質問に対する回答のセリフ。バンギラスとドリュウズ、この2匹は本当に過去作の対戦環境に存在していた組み合わせであり、一種のメタネタとなっています。英語版のキーワードをピックアップすると以下の通りです。
「Tyranitar=バンギラス」
「Excadrill=ドリュウズ」
「Sandstorm=すなあらし」
一見、全く違うセリフに見える両言語版ですが、実は話している内容は概ね同じ。その理由を知るには背景を把握する必要があります。

大半のシリーズ作品ではポケモンにパッシブスキル「とくせい(特性)」が用意されており、バンギラスには「すなおこし(Sand Stream)」という特性が付与されていました。
この「すなおこし」はこの特性を持つポケモンが場に出ると、フィールドの天候を「すなあらし(Sandstorm)」にする効果が存在。一部のタイプや特性を持つポケモンは「すなあらし」下でバフを受けることができ、「ドリュウズ」もその中の1匹だったりします。
これらに着目して「バンギラス」と「ドリュウズ」を使ったパーティが構想され、ユーザー達は両者の名前から2文字ずつを取って“バンドリ”とこの組み合わせを呼んでいた…というのが背景です。
英語圏でもこの組み合わせは存在していたようですが、何かを4文字に省略しがちな日本語(例:Game*Spark=ゲムスパ)と違って、わかりやすい略称が定着していなかったらしく、今回の英語版セリフが日本語版に対してやや説明口調なのはこれが理由かもしれません。しかし残念な点として、本作にも「バンギラス」と「ドリュウズ」は登場するものの、「とくせい」は実装されてないため、過去作のように相性がいいとは言えない環境です。
なお、「バンドリ」と言えば“メディアミックスで展開されるガールズバンドプロジェクトじゃないのか!?”と思われる方もいるかもしれませんが、実は『ポケモン』の「バンドリ」は「ドリュウズ」が初出の2010年発売『ポケットモンスターブラック・ホワイト』の辺りから既に生まれていた用語だったりします。
「なにしにきたんだよ」同じ言葉でも2通りの翻訳!キャラの違いが見えるローカライズ


日本語版:なにしにきたんだよ
英語版1:Ugh. Then why are you even here?
英語版2:Hey, now. Why'd you come talk to me, then?
英語版の筆者訳1:ったく、じゃあ何しに来たんだ?
英版の筆者訳2:おいおい、じゃあ何で話しかけてきたんだ?

本作でも特に印象に残る…かもしれないセリフ「なにしにきたんだよ」。英語版1は「ヌーヴォカフェ」で注文する寸前まで行って何も頼まなかった時、英語版2は「ラシーヌ工務店」前で“カラフルなネジ”と景品を交換する寸前でやめた時に聞けます。
英語版のキーワードをピックアップすると以下の通りです。
「Ugh=ったく/げっ」
「Hey, now=おいおい/ちょっと待て」
今回は“コレ!”といったキーワードはありませんが、興味深い点は、日本語では全く同じだったセリフが英語版では2パターンで翻訳されていることです。

日本語版で見た場合、両方ともただの不愛想な店員というイメージな一方、英語版は1の方が少し荒っぽいツッコミ、2は呆れや困惑が入ったツッコミとなっています。1の店員についてはもう少しパーソナリティを知る機会もあり、そこの情報も含めると中々に味わい深いローカライズ。不愛想は不愛想でも方向性の違いが見える翻訳です。
海外には無かった過去作ネタ?知る人ぞ知る「ポッポメール」

日本語版:昔はポッポメールを使っていましたね
英語版:Anybody else remember using Pidgey Mail way back when?
英語版の筆者訳:昔、ポッポメールを使っていたのを覚えている人いますか?

『ポケットモンスタークリスタル』を遊んだ人なら知っているかもしれない“ポッポメール”。同作には携帯電話等に接続できる周辺機器「モバイルアダプタGB」と連動するシステムが実装されており、幻のポケモン「セレビィ」や“なぞのタマゴ”を入手できました。
そして本システムでは当時は当たり前じゃなかった遠距離でのポケモン交換ができ、その遊び方の一つとして、アイテム「メール」にメッセージを書き、お互いに「ポッポ」に持たせて交換することが“ポッポメール”として公式に紹介されていたのです。そんな過去作ネタを語るセリフの英語版のキーワードをピックアップすると以下の通りです。
「Pidgey Mail=ポッポメール」
日本語版は「使っていましたね」と共感や同意を求める表現なのに対し、英語版では「覚えている人いますか?」と直接的に聞いています。ただ「Anybody else remember」は、“覚える人いない?いるよね?”という形で使われるため、ニュアンスとしては日英共にあまり変わりない文章と言えます。しかし興味深い点として、“「モバイルアダプタGB」との連動システムは日本版にしか無かった”事実があります。
例えば様々なゲームの裏話を語る海外YouTubeチャンネル「DidYouKnowGaming」では、この周辺機器を使ったサービスについて紹介しており、コメント欄ではその革新性などに驚きを示す声が多く存在。このことから察するに、海外勢からすれば“覚えていますか?”どころか“知っていますか?”という話なのかもしれません。
なお、一応海外版アニメで「ポッポメール」の概念は登場しているため、日本ユーザーにとっては過去作のゲームネタと解釈できる一方、海外ユーザーの中にはアニメのネタと捉えている人もいる可能性があります。
おわりに


本記事はこれにて以上です。シリーズでお馴染み「科学の力ってすげー!(The power of science is amazing!)」や、「マーイーカだものまあいいか(My Inkay is ...well, it's mm-kay.)」といったダジャレなど等、候補に入れつつも紹介できなかったセリフがまだまだあります。


本作は「日本語・国内専用ニンテンドースイッチ2」でも関係なく、ゲーム開始時に好きな言語を選んで遊べるため、“あえて2周目は英語版でプレイする”と様々なセリフから新たな発見があるかもしれません。














