
先週3月6日、Bungieが放つ期待の新作『Marathon』がついに発売されました。筆者自身、担当している「ラジオ善意X」で何度も言及し、メールインタビューの記事も執筆するなど、並々ならぬ期待を寄せてきたタイトルです。今回の記事では、そんな『Marathon』を筆者が実際に(サーバースラムと合わせて)20時間ほど遊んで抱いた正直な感想をレポートしていくものとなっています。
ちなみに筆者は、FPSがそれほど「上手」なわけではなく、対人ゲームとしてはどちらかといえば苦手な部類に入りますが、ジャンル自体への抵抗はなく、ある程度遊び慣れている……といった感じです。と、いうわけで今回の記事はめちゃくちゃ「腕に自身あり! 撃ち合い最高!」というタイプではないプレイヤー視点でのレビューとなります。

『Marathon』はいわゆる「脱出(エクストラクション)シューター」と呼ばれるジャンルのゲームです。詳細については昨年末の【年末年始特集】でも触れましたが、改めてざっと解説しておきましょう。 近年人気のこのジャンルは、物資を装備して出撃し、戦利品の回収やタスクの遂行を目指すというもの。最大の特徴は、倒されると持ち込んだ装備をすべて失ってしまうという、強烈な緊張感を持っている点です。筆者の実感として、このあたりは『不思議のダンジョン』シリーズ的な、古典的ローグライク/ローグライト作品との共通点を感じています。
「脱出シューター」の代表的なタイトルには『Escape from Tarkov(以下、EFT)』や『ARC Raiders』などが挙げられます。 本作『Marathon』は、SF色の強いビジュアルかつ『EFT』よりはややカジュアル、という立ち位置であることから、発売前から『ARC Raiders』と比較されることも多かったです。筆者は両方の作品をプレイしましたが、似ている体験も確かにあるにはあるのですが、『Marathon』はそういった先駆者たちとちゃんと差別化出来ていると感じました。

本作の最大の特徴は、何よりもそのビジュアルと世界観の格好良さです。正直なところ、このアートスタイルが刺さるかどうかが、本作を気に入るかどうかの決定打になると言っても過言ではありません。個人的にはぶっ刺さりまくりで、史上もっともカッコいいゲームのうちの一つだと思います。
蛍光色が鮮やかに映え、無機質な幾何学形状が連なる建物や銃器のデザインには、「これがきっと機能的なのだろうなあ」と想像させる絶妙なSF感があります。ただマップを歩いているだけでも、思わずため息が出るような美しい光景に幾度も巡り合うことができました。
グラフィックのみならず、サウンドもまた格別です。音楽を担当しているのは、Son Lux(ソン・ラックス)のライアン・ロット。近年では映画「エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス」や、マーベル・スタジオの「サンダーボルツ*」の音楽を手掛けたことでも知られる、今まさに旬のアーティストです。ライアン・ロットは以前、アドベンチャーゲーム『Tell Me Why』のサウンドトラックを担当した実績もあり、ビデオゲームのサウンドトラックとしての完成度は折り紙付き。こういった起用もBungieのセンスの良さが伺えます。

世界観の作り込みも秀逸です。旧『Marathon』シリーズとの繋がりを巧みに織り交ぜつつ、独特な「SFスリラー」としての空気を醸し出しています。本作には直接的な「ストーリー」というものがあまり存在しないのですが、そのあたりはコデックスで補完されており、読み物としてなかなかのボリュームです。筆者としても全部読んではいないのですが、時間があるときにじっくり目を通してみたいと思っています。
特に印象的なのが、複数の「企業」とのコネクションを利用し、傭兵(ランナー)として任務を遂行していくという構図。このドライな関係性は、どこか『アーマード・コア』シリーズを彷彿とさせます。あのシリーズのような、企業の思惑が交錯する世界観が好きなプレイヤーなら、本作の空気感もきっと気に入るはずです。

FPSとしての手触りは、かなりシビアで難度が高いと感じました。まずPvPの側面でいえば、筆者の対人戦における生還率は、現時点では50%を大きく下回っていると感じています(実際に数値で見たわけではないですが、体感としてほとんど勝ててないと感じます)。銃声によって他パーティーを誘い込んでしまいやすい点や、装備格差が顕著に出る点、そして何より個人のスキルが勝敗に直結する設計は、慣れていないプレイヤーにはかなり厳しいです。
またPvE要素も過酷です。モブ敵であるUESCの上位個体は驚異的な戦闘能力を誇りますし、マップの各所に仕掛けられたクレイモア地雷、突如降り注ぐ雷、そして原生生物「ティック」など、周囲は常に危険に満ちています。
プレイ中に何度も死を繰り返すなかで、「このエリアは危ない」「あの敵とは交戦せずに避けていこう」と知識を積み上げていく。そんな、死をもって学習していくサイクルが本作の根幹にあると言えます。

ただ、洗練された銃器デザインも相まってか、撃ち合いそのものは非常に楽しく、抜群の爽快感があります。 「撃っている」という手応えが如実に感じられるのはもちろん、着弾時のSEや画面エフェクトの演出も極めて心地よく、病みつきになる仕上がりです。この「撃ち合いの楽しさ」も、本作が持つ大きな魅力のひとつでしょう。

FPSとしての「死にやすさ」を補うかのように、本作のインベントリ(倉庫)管理は非常に簡潔で、装備の選択に迷うことはありません。弾薬さえ用意すれば個別のマガジン管理は必要とならない点など、システム面は極めてシンプルに整理されています。 さらに、無料の「スポンサー装備」も選択できるため、全ロストした際の再起も非常に気楽。そのおかげで筆者も死んでいくうちに「数撃ちゃ当たる」の精神で、タスク達成のために何度も出撃を繰り返すプレイスタイルになっていきました。
本作は、スタッシュ整理やインベントリ管理のような要素は控えめに設計されています。どちらかと言えば、再出撃のストレスを極限まで削ぎ落とし、素早く戦闘のサイクルに戻れるようなバランス調整がなされている印象です。 この点は、先述した先駆的タイトルとの明確な差別化となっており、「サクサク出撃して、ガンガン他プレイヤーと渡り合いたい」というアグレッシブなプレイヤーには、まさにうってつけの作品と言えるでしょう。「撃ち合いは難しいが、リトライは簡単」というイメージです。

本作のプレイスタイルは、大きく分けて「プリメイドでのパーティー」「ソロ」「野良プレイヤーとのマッチング」の3通りがあります。 このうち、ソロプレイはNPC勢力であるUESCなどの攻撃を一身に受けるため生存率が低く、非常に困難な道のりとなります。一方、野良マッチングでは、メンバーごとに目的のタスクがバラバラになりがちで、足並みを揃えた連携が難しい場面が多く見受けられました。
筆者の体験から言えば、やはりプリメイドのパーティーで遊ぶのが、本作を最も楽しめる方法だと確信しています。理想は3人のフルパーティーですが、デュオ(2人)であってもソロや野良に比べれば格段に遊びやすく、面白さも跳ね上がります。もし本作に興味があるなら、ぜひ友人を誘って戦場に赴くことを(個人的に)強くおすすめします。

Steamのユーザーレビューでも、現在は「非常に好評」を獲得しており、発売から1週間が経過した今もプレイヤー人口は非常に安定しています。マッチングで待たされることもなく、安定している印象です。
また、価格が4,480円(税込)と、先行する競合タイトルと比較してやや抑えめに設定されている点も嬉しいポイント。課金要素は存在するものの、これらはあくまで外見を変更するコスメティックに限定されています。ゲームバランスに影響を与える「Pay to Win」の要素はなく、誰もが対等な条件で競い合える公平さが保たれています。
個人的には、本作『Marathon』はこれから先もしばらく遊び続けるであろう、お気に入りのタイトルとなりました。ただ、世界観やデザインがあまりに素晴らしすぎるがゆえに、「この舞台設定でRPG的なストーリーFPSを遊びたかった……」という本音も少しあります。
とはいえ、これほどまでに洗練されたビジュアルを誇る作品は、当分現れることはないでしょう。結論として、筆者は本作を自信を持って「おすすめ」とさせていただきます。 もちろん、戦闘の比重が大きいバランスや、不気味で硬派な世界観、さらにはロード画面に多くの虫が登場するといった、人を選ぶ側面があるのは間違いありません。ぜひ本記事を参考に、ご自身の感性に刺さりそうかどうかを吟味していただければ幸いです。
『Marathon』は、PC(Steam)/PS5/Xbox Series X|S向けに発売中です。
¥12,480
(価格・在庫状況は記事公開時点のものです)













