「SUSHIレーンミュージカルアクションアドベンチャー」「敵も味方もキルキルキル 死ねば死ぬほど強くなる育成RTAシミュレーションRPG」「レベル至上主義超絶やり込みシステムハックシューティングRPG」。まるでタイトルのような長さですが、これは今後発売されるゲームタイトルのジャンル名です。
『魔界戦記ディスガイア』などで知られる元日本一ソフトウェア社長の新川宗平氏は、現在合同会社スーパーニッチを立ち上げ、“唯一無二の体験”を掲げた作品づくりに挑んでいます。本記事では、新川氏の言葉を通して、ジャンルとは何か、なぜ壊すのか、そしていまのゲーム業界に求められているものは何かをひも解いていきます。

紐解けば、意外と納得感のあるジャンル名たち
――自己紹介をお願いします。
新川宗平(以下、新川):合同会社スーパーニッチの新川宗平と申します。元々は日本一ソフトウェアで新卒第1号組から26年勤めて、そのうち13年ほど社長も務めさせていただきました。代表作としては『マール王国の人形姫』『魔界戦記ディスガイア』『流行り神』などがあります。日本一ソフトウェアの昔からのタイトルが中心ですね。
――スーパーニッチとして初のゲームとなる『エトランジュ オーヴァーロード』が発売となりますね。いまの心境をお聞かせください。
新川:日本一ソフトウェアから独立したのが3年半ほど前だったのですが、そこからまず喜多山浪漫というペンネームで小説を書くというところから人生2周目をスタートさせました。そこからようやくゲームが発売されて皆さんのお手元に届けられるので、非常に感慨深いです。
――『エトランジュ オーヴァーロード』楽しみです。今回は、新しい体験を求めるハードコアゲーマーに向けたインタビューをお願いしております。まずは、現在発表されている3作品のジャンルについて教えてください。
『エトランジュ オーヴァーロード』は、「SUSHIレーンミュージカルアクションアドベンチャー」というジャンル名ですが、ずばりなぜこのような組み合わせジャンルになっているのですか。
新川:ジャンル名だけ聞くと「何事か!」と思われると思いますが、実際に遊んでいただくと非常にわかりやすく、「これは確かにSUSHIレーンミュージカルアクションアドベンチャーだね」とわかっていただけるかと思います。
まずゲームとしては、大きくストーリーパートとアクションバトルパートに分けられて、後者にSUSHIレーンとアクションがあります。フィールド上には攻撃できる武器や強化アイテムが回転寿司のように流れているので、そこを取捨選択しうまく活用しながら敵を倒していきます。序盤は何も考えなくても勝てますが、後半になるにつれて成長のさせ方やパーティの組み合わせ方など戦術が変わってくるんです。

もう一方のミュージカルとアドベンチャーは、ストーリーシーンの要所要所でディズニーアニメのようにキャラクターが歌って踊る場面が頻繁に登場します。
本作を開発しているのはジェムドロップさんなのですが、実は北尾(雄一郎)社長が私と日本一ソフトウェア新卒第1号の同期で、当時も一緒に『マール王国の人形姫』などを作ったんですよ。そして、今回は26、7年ぶりに一緒に組んでゲームを作るにあたり、久々にミュージカルやりたいよねとなりました。当時と比べてはるかに技術力も上がっているので、派手で豪華なミュージカルシーンになっています。ぜひ楽しんでください。
3月12日からは体験版も配信しています。SUSHIレーンアクションとミュージカルアドベンチャーの両方がしっかり楽しめるので、まずは触ってみてください。
――SUSHIレーンはシステムから入った結果つけられたものなのですね。
新川:そうですね。最初に小説があったので、それをゲームにするにはどうするかを決めるとき、ジェムドロップさんに3種類くらいのデモを用意していただいたんです。そのなかにSUSHIレーンシステムの原型になるものが入っていて、ゲームとして幅が広がりそう、面白くなりそうと満場一致で決まりました。

当初はベルトコンベア的なデザインだったのですが、宙に浮くような表現になり、その上にお菓子や剣、牛肉などいろんなものが回り始めて、開発の中で「これ寿司レーンだね」と呼ばれていました。あくまで開発内での呼び方でしたが、ジャンルを決めるとなったとき、「もうSUSHIレーンでいいんじゃない?」ということで、そのままわかりやすくシステムを表した形になりました。
――最初は「なんだこれ!?」と思いましたが、いま理由を聞いて腑に落ちました。ドリコムさん開発、アークシステムワークスさん発売の『デモンズナイトフィーバー』は「敵も味方もキルキルキル 死ねば死ぬほど強くなる育成RTAシミュレーションRPG」ということで、ある程度想像しやすい気がします。
新川:私が独立してゲーム業界でやり直すにあたって、ジャンル名を聞いたらある程度ゲーム内容が想像できる、あるいは混乱する……けどなんか面白そう!と思わせられることが大事だと考えました。
『エトランジュ』は先程言ったように、しっかりゲーム内容を表してはいるんですが、おそらく「SUSHIレーン」が混乱の種(笑)。一方でこちらは、見るとどんなゲームかある程度はわかりますよね。元々のコンセプトに忠実に作っている作品なのですが、ジャンルで言いたいことを全て言ったらこうなりました。
――なるほど。
新川:「敵をキル」するというのはわかるじゃないですか。ただ本作は味方さえもキルしてしまうというのが大きなポイントなんです。味方をキルするとどうなるかというと、転生してさらに強くなって戻ってくる上、敵と巻き添えにすることでスキルも発動されるんです。
「死ねば死ぬほど強くなる」という言葉通り、味方をさんざん利用するだけ利用して、使い捨てて敵を殺すという非常にひどいゲームなんですが(笑)、他のゲームでは体験したことのない味わいが出せているという手応えはありますね。人によっては大味に感じる人もいるかもしれませんが、少なくともこんなゲームはいままでなかったと思ってもらえるはずです。

本作のベースはシミュレーションRPGで、物語の目的は「力を失った自称・邪神の復活」です。それをなるべく早くやってあげなければならず、育成にじっくり時間をかけすぎてはダメなんです。できるだけ効率よく早くクリアして、復活させてあげなければなりません。ここが、「育成RTA」にあたる部分ですね。このように、本作のジャンルを構成する要素がひとつひとつわかっていただけると思います。
業界を離れた“天才”との再会
――おもしろいですね。キマイラ機関で発売される『宇宙銀河ウォーズ』は、「レベル至上主義超絶やり込みシステムハックシューティングRPG」と、こちらも長いジャンル名です。
新川:キマイラ機関は、「異能力者たちを発掘し、プロデュースするための特務機関」を掲げる合同会社スーパーニッチの100%子会社です。『宇宙銀河ウォーズ』のクリエイターは、日本一ソフトウェア時代、私と一緒に『ラ・ピュセル 光の聖女伝説』初代『ディスガイア』『ファントム・ブレイブ』などを作ってきた、いわば戦友ともいえる 小林良綱さんです。
彼は2005年の『ファントム・キングダム』を最後に、実家の家業を継ぐために業界を去られました。事情が事情なので声をかけずにそっとしておいたんですが、私が30年ほど業界を見てきたなかで一番の天才で、彼ほどのゲームデザイナーは見たことがない、という気持ちがずっと残っていました。
独立して会社的なしがらみもなくなったので、もう一度彼と組みたいという気持ちが強くなってきて、話をしてみたんです。変わらず家業を続けていたんですが、「久々にゲームつくらないの?」と聞いたら、「実は、そろそろ作りたいと思ってたんだ」と偶然合致して、スタートしました。これが2年半ほど前の話で、春にはリリースできそうです。
――小林さんはどんな方なのですか。
新川:小林さんは、元々RPGが大好きな人なんですが、世の中に自分が満足できるRPGがないので、仕方なく自分で作るという考え方なんですよ。小林さんが作るゲームはやり込み要素が非常に強く、その代表例が『ディスガイア』です。
RPGはやはり成長要素が醍醐味だと思いますが、レベル至上主義ということでレベルさえ上がれば何でもできると。最初のうちは手こずっていた相手なんかをゴミのようにやっつけられるという考え方自体は、強くなってスライムをサクサク倒せることと同じです。
ただ、シューティングRPGにしたことで、爽快感の得られ方が全然違うんです。弱いスライムって、やっぱりもうエンカウントすらしたくないじゃないですか。だからこそ、レベルが上がって弱くなった敵を撃って倒すという気持ちよさに変えているんです。

また、本作は小林さんからの挑戦状だと思っています。というのも、丁寧なチュートリアルはいれておらず、ゲーム内にふんだんに用意された謎や仕掛け、隠し要素に気づけるかな?実はこんなこともできるんだぜ、という「システムハック」できる余地がふんだんにあるんですよ。とはいえ、決してただ不親切というわけではありません。全部を説明するのではなく、紐解いていく楽しみを若いユーザーの方にもこのゲームで味わってほしいです。
――小林さんも、既存のものを壊すことに喜びを感じるタイプのクリエイターなのですね。
新川:そうなんです。天才でもあり、変態だとも思っているので(笑)。なんでこんなこと思いつくんだろう、という発想がそこかしこにあるんですよね。何食ったらこんなこと思いつく人間になるんだろう。もうちょっと頭おかしいんじゃないかな(笑)。
『宇宙銀河ウォーズ』は、ほぼ1人で作っているのもあり、イケてる画面のあるゲームではありません。ただ、ゲームメカニクスは天才的で、驚かされるところのオンパレードなので、「すげえ」と感じると思います。ハードコアゲーマーにこそ遊んでほしい作品ですね。
野望は 「エンターテインメントで世界平和」
――お話を聞いていると、やはりゲームメカニクスを重視されているのですね。
新川:ゲームである以上、ゲームメカニクスでどう遊ばせるかがいちばん重要な部分だと思っています。先にコンセプトやストーリーを作った場合でも、メカニクスを最重要視するという考え方に変わりはありません。
――新しい体験、変わった体験を求めるゲーマーは確実にいるという手応えはありますか。
新川:ゲームに限らず、お客さんが求めることって、普段自分が生きている人生では得られない体験だと思うんですよね。新鮮、珍しい、驚き、そういった体験。合同会社スーパーニッチは「唯一無二のエンターテイメント体験を提供する。」という企業理念を掲げていて、コレこそが価値だと思うんですよね。
エンターテインメントって、衣食住と関係ないじゃないですか。無くても人間死にはしないんですよ。ただ、人の心を豊かにするものはエンターテインメントだと思っていて、その豊かになった心で明日も頑張れるでしょうし、作る側に回ることもあるでしょう。いろんな作用が働くと思うんです。
――そのとおりですね。
新川:私の野望は、エンターテインメントで世界平和です。いまもいろいろな地域で紛争や戦争が起きていますが、現場で戦う兵士の方たちが、ゲームや漫画やアニメが大好きになって、「いや、殺し合ってる場合じゃない」「ゲームで遊ぼうぜ」「上から命令されようが嫌だ。俺はゲームで遊びたいんだ、漫画を読みたいんだ」という世界が作れたら勝ちだと思っています。そのためには、心に残るエンターテインメント体験を提供し続けることが大事なんです。

私は日本人なので、日本から発信するということにこだわっているのですが、これは国防にも関わることだと思っています。日本ほど、コンテンツが豊富に生まれる国はないと思うんです。毎月どころか、毎週、毎日、なにかしらが生まれて発信されている。こんなにたくさんのエンターテインメントが生まれていて、いつどこで未来の鳥山明先生が、未来の尾田栄一郎先生が生まれるかわかんないじゃないですか。そんな国を攻撃しようものなら、世界的損失だと。そんなふうに思ってもらえれば、日本のことを攻撃できなくなると思うんです。だからこそ、エンターテインメント産業の大国として、世界にどんどん発信していくというのも大事な国防のあり方だと思っています。エンタメで世界平和は私が死ぬまでのライフワークです。
――素晴らしいです。ゲームのジャンルというのは、ゲーム選択を助けるラベルだと思います。この長いジャンルを見るに、もしかしたらジャンルというものを疑っているのではないかな……と思ったのですが、そういうわけでもないのでしょうか。
新川:ジャンルというのは、すごく大事なものだと思っています。アクションゲームやアドベンチャーゲーム、RPGやシミュレーションなど、ゲームには基本となるジャンルがありますよね。これは、インベーダーゲームのような初期の作品から積み重ねられてきた、遊びのルールそのものだと思うんです。そのルールに名前をつけたものがジャンルであり、どんなゲームにも必ず何かしらの基礎ジャンルが存在していると考えています。
一方で、新しいゲームを作ろうとすると、いろいろなアイデアが組み合わさって、いわゆる複合ジャンルが生まれてきますよね。最近でいえばローグライトやヴァンサバライクのようなものもそうです。ただ、それらも突き詰めていくと、シューティングなど、既存の基礎ジャンルに行き着くと思っています。
だからこそ、その基礎を踏まえた上で、ジャンルとして何か革新的なことが起きたときに、「ジャンルの垣根を越えた」と感じる瞬間が生まれるんだと思います。
最近でいうと『Vampire Survivors』や『Balatro』は、まさにそうしたジャンルの“革命”を感じさせる作品でした。そういう体験を求めている人たちも、確実にいると思います。
――新川さんもいろいろプレイされますか。
新川:私はジャケ買いのような感覚で、見た目の面白さやタイトルのキャッチーさで面白そうと感じたらとりあえず触ってみることが多いですね。ドハマリして何十時間もということはあまりなく、いろいろなものに手を付けまくるといった感じです。
ホラーゲームが好きで、最近は『日本事故物件監視協会』をプレイしました。あとは『バックパックバトル』は時間が無限に溶けるからヤバい(笑)。静かにゆっくり遊べるパズルやアドベンチャーも遊びます。『Slay the Spire 2』と『ジシアステリー』はまだ手を付けていないので早く遊びたいです。
あ、『ウンコテクニカ』には実は私出てますよ。ウンコのキャラクター募集してたので、自分の顔をウンコにして送ったら採用されました。今更ソリティア遊ぶこともあります。あと、スネークゲーム。あれは面白い。自分でも一度作ってみたいです。
面白いのは当たり前。その先にある“体験の価値”
――先程、少し大味に感じるかもしれないという言葉がありましたが、自分の目指すものがもしかしたらあまり理解されないかもしれない……という怖さや躊躇いはないのですか。
新川:あまりないですね。コンセプトとして面白い特徴があって始め、そのコンセプト通りにできたという手応えがありますから。『エトランジュ』はすでに海外のプレスツアーも実施して、私の過去作を遊んでくれている海外メディアの方たちがプレイとインタビューをしてくれましたが、「いままであなたが作ってきたゲームの息吹を感じる。すごく楽しい。」と言ってくださっています。自分の目指したものは間違っていなかったなと安心しています。
――そもそも、変わったゲーム体験を好むゲーマーはどういった方なのでしょうか。
新川:特にコアなゲーマーには、新しいもの、いままで体験したことのないものを求めている方たちがいるんですよね。より深く見ていくと、作家の魂や熱量を味わいたいというのがあるのかなと思っていて。一方で、同じジャンルや傾向のものを好んでずっと遊ぶ人もいらっしゃいます。どっちが良い悪いではなく、選び方にも傾向がありますよね。
私の作品は、完全に新しくて難しくて面白そうなものに率先して手を出すような方を狙っています。そういった方たちこそ声も大きいと思いますし、お眼鏡にかなえば味方になってくれて「これいいよ、面白いよ」と広めてくれると思うんです。その口コミに乗れれば、長く売っていける商品に育っていくのかなと思います。
――ゲーム業界では、ローグライトやデッキ構築型など、売れ線ジャンルを目指す人も多いですよね。そうしたなかで、あえて説明が難しい作品を作ることへの思いはありますか。
新川:やはり唯一無二のものを作りたいという思いが第一にあります。他の売れているものと同じものを作ることにどれだけの意味があるんだろうか、という考え方なので。それはその人たちが作ればいいし、もうあるものを遊べば良いじゃないですか。私の考えの根底に、私自身が遊んだことがないものを遊びたいという思いがあります。
例えば、A/B/Cという種類のゲームがあったとして、私はAもBもCも存在していて、全部好きです。ただ、ABCがすべて合体したものは存在しておらず、誰も作りそうにない。だから自分でつくろうという考え方ですね。

――やはり、見たことがないものであることは大事なんですね。
新川:面白いのはもう当たり前だと思うんですね。そのうえで、どれだけ新しさや体験を提供できるかというところが大事だと思うんです。その体験に賛同してもらうことが、イコール売れるというところにもつながるはずです。
――コアゲーマーほど、いろいろなゲームを遊んでいることもあって、既存の文法みたいなものはわかっていて、ある程度内容が想像できてしまうと思います。そんな方々に向けて、「これは見たことがない!」と思わせるにはどういった発想が必要だと思いますか。
新川:お作法にしたがって良いところはお作法通りにやったほうが良いと思うんですけど、そのお作法をあえて破ったほうが面白くなる部分もあるんですよ。常識を破壊することから驚き、新鮮さ、おもしろさが出てくると思うんです。まだこの業界、宝はいっぱい眠っているはずです。
――ゲームというメディアはまだまだ新しいものが生まれる余地はあるんですね。
新川:まだまだ進化の途中だと思います。最近の傾向としては、デッキ構築やヴァンサバライクに多くの開発者が一気に向かっていますが、これ自体は悪いことではないんです。『VampireSurvivors』単体では掘り起こしきれなかったポテンシャルがあり、いろんな作品が追随することで新たに見えてくる面がどんどん出てくるんですね。
そうやって掘り尽くしていった結果、そこには多くのものが積み上がっているはずです。そして、その蓄積の中からさらに革新的な何かが生まれてくる可能性もある。開発者同士が競い合いながらそれぞれが新しい面白さを模索していくこと自体が、結果として業界全体の前進につながっていると思います。今の流れはとても健全で、いい状態なんじゃないでしょうか。
守りに入れば衰退する―新しいことに挑戦する意義
――アバウトな質問ですが、今後どういったタイプの新しいものが生まれてくると思いますか。
新川:AAA級作品においては、かなり安定的な遊びが提供されていくと思います。たくさんのお金をかけているので、突飛なことや実験は少ししづらいでしょうから。
やはりインディーの領域から、新しい体験が生まれてくるんじゃないかと思っています。実際に何が出てくるかは予測できないんですけど、これまで相性が悪いと思われていた要素同士を組み合わせることで、まったく新しいジャンルが立ち上がる可能性は十分にあると感じています。
たとえばシューティングとRPGのように、一見すると噛み合わなさそうなものでも、うまく“料理”することで革新的な体験になることもあり得ると思うんです。そうした実験は、いままさにいろいろな場所で行われている印象があります。だからこそ、ジャンルの革新というものは、まだまだこれからも起き続けるはずですし、その中心にいるのはインディー開発者たちなのではないかと思います。
――私個人の視点からは、それこそ日本一ソフトウェアさんのような、国内の中堅ゲーム会社から生まれるクリエイティブも独特なものだと感じます。
新川:中堅クラスの企業がどこまで新しいものを生み出せるか、そこは今後の日本のゲーム業界にとってかなり重要なポイントだと思っています。もちろん、ビジネス的な事情や、守りに入らざるを得ない側面があるのも理解しています。ただ、守りに入りすぎてしまうと、やはり衰退に向かってしまう可能性が高いとも感じています。
いまは海外勢の技術力もどんどん上がってきていますし、競争環境は確実に厳しくなっています。その中で、日本には新しいコンテンツを生み出せる土壌があるにも関わらず、ゲームだけが安定志向に寄ってしまうのは、少しもったいないですよね。だから、ガンガン攻めたらいいんじゃないかな、というのが率直な気持ちです。

続編自体はもちろん悪いことではないですが、それだけに頼るのではなく、新規IPにも積極的に挑戦していくべきだと思います。特定の会社に限らず、業界全体としてもっと攻めていく姿勢が求められているのではないでしょうか。
――小島秀夫さん、須田剛一さん、SWERYさん、飯野賢治さん、飯田和敏さんのような、作家性の強いクリエイターが企業から出てくるのも少なくなったと感じます。
新川:それは少し残念だと感じています。自分の言葉で言うと、「クリエイターのサラリーマン化」が進んでいるのかなと。
映画やアニメ、音楽などと比べると、ゲーム業界は特にスタッフを社員として抱えながら制作を行う構造が強いですよね。たとえば漫画家の方は出版社に所属しているわけではなく、作品単位で勝負している。だからこそ、外れるかもしれないし、見放されるかもしれない、失敗するかもしれないけれど、「これだ」と思うものを追いかけることができる。
一方で企業に所属すると、会社の方針や意思決定、利益を出せるかどうかといったさまざまな要素が絡んできます。その結果、どうしても無難なものに寄っていく傾向が出てくるのだと思います。AAAタイトルが似た方向性になりがちだったり、続編が増えていくのも、その構造と無関係ではないと感じています。思い切ったチャレンジをするという意味では、やはりインディーであったり、自分で会社を立ち上げて取り組む形のほうが、自由度は高いのかもしれません。
もちろん、この「サラリーマン化」が悪いと言いたいわけではありません。安定した環境で制作できることや、生活や家庭を大切にできることも、とても重要です。ただ、純粋に“ものづくり”という観点で見ると、その両立のバランスを取るのは簡単ではないですよね。
――新川さんらしい作家性についてきてほしいという想いはありますか。
新川:そこを選ぶのは、最終的にはユーザーさんだと思っています。自分の作るゲームや表現が、どうしても合わない方も確実にいると思うんです。それはもう仕方がないことですし、「合わなかったらごめんなさい」という気持ちですね。
その一方で、「好き」と言ってくださる方に対しては、ちゃんとその人たちの心に刺さるもの、響くものを作り続けていきたいという自信があります。
おそらく、そういう方たちとは好みが近いんですよね。自分は、自分が本当に好きになれるものを作っているという感覚があって、その好きなもの同士を組み合わせて作品にしている意識なんです。だから、自分の作品を好きだと言ってくださる方は、きっと自分が好きなゲームや漫画、アニメといったものも、かなり重なっていると思います。
最近よくある「自分を構成する9つ」みたいなものがありますよね。映画や漫画、ゲームなどを並べるやつ。ああいうものの一致度が高ければ高いほど、自分の作るゲームも合うんじゃないかな、という感覚があります。
――ゲームという媒体でしか表現できないものは、ずばり何だと思いますか。
新川:やはりゲームメカニクスで遊ばせるところと、インタラクティブ性ですね。ボタンを操作したら反応があって、アクションとリアクションの繰り返しで構成されるというエンターテインメントはゲームだけにしかないので、やはりそこが醍醐味であり、一番大事にしたい箇所です。
――Game*Sparkは次なるゲームを求めるハードコアゲーマーが集うメディアです。彼らに向けて、アピールメッセージをお願いいたします。
新川:私は、ゲームは面白くてナンボだと思っています。衣食住に関係ないものなので、面白くなくちゃいけない。
私は面白いものを出し惜しみせず詰め込むという作り方をするので、闇鍋みたいなものが出来上がることもあるのですが、その闇鍋は不味い闇鍋じゃなくて、好みの合う人にとっては美味しく感じる闇鍋なはずです。一瞬「これ大丈夫?」と心配になるかもしれませんが、ぜひ一度手にとって、怖がらずに試食してみてください。
『エトランジュ オーヴァーロード』は体験版を用意しているので、まずは一口、どうぞ!
――ありがとうございました!ではこれで終了とさせていただき……
新川:あ、最後に少しだけ!今回はジャンルにフォーカスしたインタビューだったので、私がいま開発中の作品の「ジャンルだけ」をチラ見せします。4本あります。
1つ目は「ホラーサスペンスリミテッドRPG」。2つ目は「やりたい放題ルールブレイクシミュレーションRPG」。3つ目は「タイムループホラーRTAステルスアクションアドベンチャー」、4つ目は「ハイスピードうんこ推理アクション」。この4本はすでに開発が動いています。お楽しみに!
――リミテッド…?タイムループホラーRTA…?うんこ……!?想像が膨らみます。いや、うんこ推理アクションって何だ……?ありがとうございました!
『エトランジュ オーヴァーロード』は、PC(Steam)/PS4/PS5/ニンテンドースイッチ向けに3月26日発売。
『デモンズナイトフィーバー』は、2026年内に発売予定。
『宇宙銀河ウォーズ』は、PC(Steam)向けに今春発売予定。













