ディアナ自身の「プラグマタ」とは?SFお約束の神話イメージを『プラグマタ』から読み解く【ゲームで世界を観る#131】 | Game*Spark - 国内・海外ゲーム情報サイト

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ディアナ自身の「プラグマタ」とは?SFお約束の神話イメージを『プラグマタ』から読み解く【ゲームで世界を観る#131】

「BABEL」なんて不吉な名前にするから……。

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ディアナ自身の「プラグマタ」とは?SFお約束の神話イメージを『プラグマタ』から読み解く【ゲームで世界を観る#131】
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本記事では『プラグマタ』の物語の内容に言及しています。

超常的なテクノロジーによるあれやこれやが起きるSFと、古今東西の神話・伝説は常々相性が良く、月面基地が舞台の『プラグマタ』も例に漏れず、神話関係からいくつかの名前を引用しています。

ディアナ(ダイアナ)

主人公・ヒューの心強い相棒になるディアナは、ローマ神話における月の女神に由来します。実質的にギリシャのアルテミスと同一の存在で、ローマが信仰をまとめていく中で、元々月を司っていた「ルナ」のポジションに収まりました。アルテミスは狩猟を司り、弟アポロンと共に対を成す太陽と月を司ります。熊や猟犬を引き連れた狩猟の女神でもあり、黄金の弓矢のアトリビュート(持物)で西洋絵画に描かれるので、世界の数ある月神の中でもよく知られているほうでしょう。水浴みのぞき見したアクタイオンを鹿に、父ゼウスと密通したカリストを熊に変えるなど、その気性は意外にも荒いのです。動物変身させられたく無ければ、決して機嫌を損ねないようにしましょう。

IDUS

月面基地「クレイドル」のシステムを統括するAI。これは月と関係があり、古代ローマで使われていた月齢基準の暦で15日、つまり満月を意味する「Idus(Ides)」から来ています。ローマ暦では新月を月初めに定め、1日を「カレンデ」、上弦の月になる5日または7日を「ノネ」、満月の15日を「イドゥス」としました。この1日の「カレンデ」が、現代まで残っている「カレンダー」の大本というわけです。

バベルの塔

舞台に置かれた銃はいつか撃たれる。カプコンのヘリは墜落する。それと同様に、バベルの名の付いた何かしらは必ず崩壊すると相場が決まっています。なんでそんな縁起の悪い企業名にしたのかは分かりませんが、「バベルの塔」は旧約聖書の創世記に登場する、人間が作り上げた天まで届く「塔」を指します。ピーテル・ブリューゲルの絵画が有名ですね。

ピーテル・ブリューゲル「バベルの塔」(1563年)

人間は最初ひとつの言語を話しており、レンガとアスファルトの技術を結集して巨大な都市を造ろうとしました。それを見た創造主は建設を邪魔しようと人々の言語をばらばらにしてしまいました。互いに話が通じなくなった人々は作業を続けられなくなり、建設途中の街を放棄して世界の方々へ去って行きました。一般的に「崩壊」のイメージがありますが、聖書に記述されている内容としては放棄に留まっています。朽ちていくという点では崩壊とも言えるでしょうが、勢いよく破壊された……というわけではありません。言語で言えば、コンピュータのプログラムもまた言語ですし、現在の人類が再び共通言語を獲得し、宇宙進出に協力し合うのも「塔」の再現なのかもしれません。

ピグマリオン

ディアナ達プラグマタを創造した「ヒギンズ博士」で思い当たることがある人はなかなかの映画好きですね。映画「マイ・フェア・レディ」でオードリー・ヘプバーン演じるイライザを上流階級の淑女に仕立てていく人物です。この映画の原作は舞台「ピグマリオン」で、これもギリシャ神話に通じるのですが、大本のピグマリオンは自ら彫った彫刻の女性を愛してしまう物語で、創造物に生命や心は宿るか、というテーマの作品で良く引き合いに出されます。

キプロス島の王・ピグマリオンは女性が苦手で結婚もできていなかったのですが、ある日手に入れた象牙に彫刻を施していくと、それは自然と理想の女性像へ近づいていきます。その像に心を奪われたピグマリオンは服を着せて生活を共にし、本物の女性になるよう神に祈りを捧げました。女神アフロディテはそれを聞き入れ、命を宿した女性と王は結婚するのです。『プラグマタ』はヒューとディアナが対話を重ねながら、親子のような絆を結んでいく過程が描かれていました。これもピグマリオンの変奏と言えるのではないでしょうか。

ゲームのタイトルでもある「プラグマタ」はギリシャ語で「行為」を表わし、文脈次第で様々な意味が生まれるのですが、基本的には「ある強い意志や理念、信仰に基づいて実践すること」です。キリスト教文脈では聖書の教えに従った生き方を指しています。物語中、ヒューは折々でディアナは何がしたい?どうしたい?と問いかけます。作られた目的や託された使命ではない、ディアナ自身の気持ちに従って歩んでいく。それこそがディアナの「プラグマタ」なのかもしれません。


プラグマタ -Switch2
¥7,990
(価格・在庫状況は記事公開時点のものです)
ライター:Skollfang,編集:宮崎 紘輔



ライター/好奇心と探究心 Skollfang

ゲームの世界をもっと好きになる「おいしい一粒」をお届けします。

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編集/タンクトップおじさん 宮崎 紘輔

Game*Spark、インサイドを運営するイードのゲームメディア及びアニメメディアの事業責任者でもあるただのニンゲン。 日本の新卒一括採用システムに反旗を翻すべく、一日18時間くらいゲームをしてアニメを見るというささやかな抵抗を6年続けていたが、親には勘当されそうになるし、バイト先の社長は逮捕されるしでインサイド編集部に無気力バイトとして転がり込む。 偶然も重なって2017年にゲームメディアの統括となり、ポジションが空位になっていたGame*Sparkの編集長的ポジションに就くも、ちょっとしたハプニングもあって2022年7月をもって編集長の席を譲る。 夢はイードのゲームメディア群を日本のゲーム業界で一目置かれる存在にすること、ゲームやアニメを自分達で出すこと(ウィザードリィでちょっと実現)、日本武道館でライブすること、グラストンベリーのヘッドライナーになること……など。

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