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『大神』20年を回顧:その輝きはなぜ強いのか?色褪せない鮮やかさ、その秘訣を探る

時代を超えてもなお唯一無二の輝きを放つ『大神』。「太陽は昇る」になぜ心を動かされるのか。

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今から約14年前の2012年、毎年「世界で最も影響力のある100人」を発表しているアメリカの「TIME」誌は、その派生として「歴史上で最も偉大なゲーム100本」を公開したことがありました。

『ドンキーコング』『ゼルダの伝説』や『ストリートファイターII』など、後続に大きな影響を与えた作品が並ぶ中、2000年代のタイトルとして、とある作品がピックアップされていました。

そのタイトルの名は、カプコンの『大神』。日本タイトルも多く選出されている中、唯一の『和風』を基調としたゲームです。洋風ファンタジーや銃で戦う現代作品が多い中で、異彩を放っていました。

「歴史上で最も偉大なゲーム100本」のほかにも文化庁メディア芸術祭のエンターテインメント部門大賞など、2006年発売作の中で最も高い評価を得た作品と言え、続編が『大神伝 ~小さき太陽~』の1作だけでありながら、今もなお忘れがたい傑作としてプレイヤーに愛され続けています。

そして今年2026年は記念すべき20周年で、物語や登場キャラクター、「筆しらべ」の魅力が改めてあちこちで語られていることでしょう。

そこで本稿では少し視点を変えて、『大神』という作品が何故強く輝いたのかを、当時の周辺事情から探ります。

「今までにはない新しいワクワクさ」―そんな期待を抱かせてくれた『大神』

PS2が世代機になっていた、2000年代を振り返りましょう。当時は開発の大規模化で商業的にリスクが高い完全新作は作られにくくなり、ひとつのIPからスピンオフ、マイナーチェンジなどを含め、4~5作ほど連続して作られる傾向が強まっていました。

1~2年でナンバリング1作という、今では難しいようなハイペースで続編が作られていきますが、その分マンネリ化や期待外れの声もプレイヤーから挙がります。既作の延長だけでなく、驚くような新しい世界を見せて欲しい――そんな“餓え”を、当時のプレイヤーは少なからず抱えていたように思います。

後に『大神』を生み出したカプコンも同様に、『デビル メイ クライ』『鬼武者』『逆転裁判』などのシリーズを矢継ぎ早にリリースしていました。

同社の得意とするギラギラ濃いめのラインナップの中、柔らかな色彩の『大神』は、今までにはない新しいワクワクがあるかもしれない、そんな期待を抱かせてくれたのです。

咲き乱れる桜の美しさを打ち出すパッケージ

『大神』の異色さを語るには、宣伝ビジュアルについても欠かせません。木村圭吾氏の「野生の胎動」を全面にあしらい、咲き乱れる桜の美しさを打ち出すパッケージのことです。

普通は主人公やライバルキャラをセンターにドンと置きますが、主人公「アマテラス」は控えめに「神代桜」を見守っているという配置。なお『絶景版』ではアマテラスがセンターに来ています。

また今ではすっかり無くなってしまった分厚い説明書も、和綴じの物語草子風のデザインで、ゲームを起動する前から「どんな世界が広がるのだろう」と、大いに期待を膨らませたのです。

そんなPS2で表現された豊かな世界で、いつでもあらゆる物に線画を描いてインタラクションできる。『大神』最大の特徴は、画面上にアナログスティックで筆の線を書く「筆しらべ」です。

アナログスティックで描いた画がゲームに関わるシステムは『大神』が最初ではなく、PS2では2002年発売の『ラクガキ王国』が先行していました。そして2004年にタッチパネルを搭載した携帯機・ニンテンドーDSが登場すると、画面にペンで線や図形を描く遊びを使ったゲームが増えていきます。

それでもDSではグラフィック性能が低く、かといってPS2で描く場面は一部だけ。『大神』はそこを乗り越えており、リッチな3D空間でいつでもインタラクションができる、という点に新しさがあったのです。

筆しらべももちろんですが、アートとアクション面で高水準にまとまった「自由闊達なプレイフィール」ということも、『大神』が愛される理由のひとつではないでしょうか。

鍬形蕙斎や北斎の略画(デフォルメ)を彷彿とさせるアートスタイルは浮世絵風として完成されていて、その中を風切って駆け回れるだけでも爽快です。

20年が経過した今なお古さを感じさせない理由としては、キャラクターの表情や遠景など、PS2の技術的な限界が出やすいところを省略し、筆の滲みを表わした揺らめきを全体にかけているからこそ、ビジュアルの粗が目立ちにくいというのもあるかも知れません。

PS2のゲームではこれまでよりキャラクターの等身が上がるなど、3D表現が前世代より大きく強化されてはいたものの、『鬼武者』シリーズなど、リッチな表現をするために固定カメラを採用しているタイトルも多くありました。

より多くの処理を必要とする3Dフリーカメラの作品は、今の基準からすればかなり「ローポリ」感が強く、キャラクターモデルの角張っている部分もまだ目立ちます(もちろん当時としては最先端でしたが)。

一方で『大神』は3Dフリーカメラを採用しており、その上オープンフィールドを自在に駆け回るので、グラフィック処理はそれなりに軽くしていると推察されます。発生する角張り感を線画の表現にすることで違和感をなくし、ビジュアルの統一感を出すことに成功していました。

同世代でフリーカメラを採用していた『戦国BASARA』『新 鬼武者 DAWN OF DREAMS』などと比較しても、彩り豊かなビジュアルは頭ひとつ抜けていますし、その鮮烈さが「まさにアート」という高い評価に繋がったのです。

ハードコアで難しい作品が多いカプコンの中でも、最も進めやすいゲームとも言える本作は、難易度の面では「易しすぎる」という指摘も出ています。

それは裏を返せば物語を進めるための障害が少ないということでもあり、アマテラスの無双の活躍を誰でも楽しめる利点です。おとぎ話の絵巻物を読み進めるように、涙あり笑いありの愉快な旅の雰囲気、嫌いな人はまずいません。

『デビルメイクライ』譲りの軽快なアクションがベースにあって、ここぞと言うときに時間を止めて使う筆調べのカタルシス。その全てが日本画調を崩さずに動いてくれる。御伽草子の主人公になって八面六臂の大活躍するような楽しさは、時間が経過した今でもその代わりを務められる作品はない、と筆者は思います。

押しも押されもせぬ大名曲「太陽は昇る」

そして『大神』を語る餓えで絶対に外せないのが、押しも押されもせぬ大名曲「太陽は昇る」です。ゲーム音楽全体で見ても屈指の人気を誇り続け、コンサートでもオーケストラで度々演奏されてきました。


ゲーム全体で主旋律を担っている笛の音はアマテラスを表わし、和楽器とハープは神々の領域、オーケストラは市井人々の活気と自然の営み、を表現しているかのよう。「太陽は昇る」はそれら全ての楽器が鳴り、クライマックスに相応しい圧倒的な音の厚みを持っています。

特に注目したいのは、0:30秒ほどで流れるBメロに移る部分。ラドシラソのメロディをよく聴くと笛の音は吹ききれておらず、ユニゾンから落ちてしまいます。それを補うようにして、オーケストラのブラスパートが主旋律を引き継いでいるのが分かるでしょうか?

Aメロのオケパートは主旋律とは違う副旋律を奏でているのですが、戦いで倒れそうになるアマテラスに人々の声が届き、笛の音を主旋律へ引き戻しています。ここでホルンチューバの低音部が細かく吹いているのも聞き所ですね。

Bメロ後半では和楽器と共にユニゾンへ加わって、今度は逆にオーケストラの副旋律に尺八が寄り添うように合わせ、「神と人が心を合わせて戦いを見守っている」というドラマが見えてきます。

そしてサクヤ姫のテーマの後からループまでの間、主旋律がなくなります。そこから様々な楽器が出せる限界に近い音域で弾く長音が朧気に去来し、遠い場所にいる誰かが声の限り応援しているのが聞こえてくる、そんな情景をイメージさせるのです。このループ前の盛り上がり部分でグッと来る人は、きっと多いと思います。

「太陽は昇る」は、これまでにオーケストラ演奏も度々行われてきました。けれど、やはり和楽器が揃っているAUN J CRASSIC ORCHESTRAとの共演が叶った先日のコンサート版は、できることならCD化してほしい……!

『大神』のCDには「編曲集」としてアレンジされた作品もあり、「太陽は昇る」は「其の弐 ジャズ」のバージョンがとても素晴らしいので、ぜひ一度聴いてみて下さい。

そうして時を経て再び動き出した『大神 完全新作』プロジェクトは、混迷極まる今の時代にどんな新しい風を吹かせてくれるのか……。お後は次のお楽しみ。

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(価格・在庫状況は記事公開時点のものです)
ライター:Skollfang,編集:八羽汰わちは


ライター/好奇心と探究心 Skollfang

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編集/ 八羽汰わちは

はちわたわちは(回文)Game*Sparkの共同編集長。特技はヒトカラ12時間。

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