
2026年5月22日から24日にかけて、京都府「みやこめっせ」にて開催された日本最大級のインディーゲームイベント「BitSummit PUNCH」。
個性豊かな作品が集まったコーラス・ワールドワイドブースから、本稿では花屋になってお客さんの注文に応えていくノベルアドベンチャー『あなたに花束を』のプレイレポートと開発者インタビューをお届けします。
ブーケ、ドーム、スワッグ……華やかなり花屋業務!
今回出展されていたデモ版では、新たに花屋をオープンする主人公の「花畑 唯樹」が、手伝いに来てくれた友人の「環奈」を相手に、商品を作ってみるというチュートリアル兼プロローグが体験可能。
ゲームのタイトルは『あなたに花束を』ですが、デモ版でもすでに花束(ブーケ)だけでなくバスケットやドーム、リースなど非常にバラエティ豊かな商品を作れるようになっています。
筆者は花に詳しくないので、おすすめを聞くと環奈さんがテーマや使用する花をサジェストしてくれるのも嬉しいポイントでした。

まずは素直にブーケづくりに挑戦。画面下部から花をドラッグして配置していく、直感的な操作でどんどんと花を並べていくのが楽しく、茎は自動的にブーケの中心から伸びてくるため上手く隠すよう意識して飾り付けていきます。
最後に包み紙のカラーやリボンなどでより鮮やかに彩り、ブラッシュアップして完成!

えっ、なんだか綺麗じゃないですか……?
実際にはこの大きさで花5本+αだとちょっと寂しいかもしれませんが、レイヤーを簡単に調整できることもあって上手く隙間が隠れていて、温かみのあるアートのおかげでシンプルに並べただけでもすごく見栄えがします。
今回は「バラを使って」とのテーマに従ったところ、使用した花によって環奈さんのコメントも変わりました。花言葉についても教えてもらえるので、少し知識が増える喜びも。


製品版ではこうした花束作りを本格的にお客さんのオーダーに合わせて行っていき、提供した内容によって物語が変化するという仕組みです。
同パブリッシャーから発売されている『コーヒートーク』に近しい仕組みで、開発者も同作から影響を受けていることを名言しています。
デモ版は、その後ストーリーが少しあって終了となりました。
せっかくなのでもう1周して、今後はフラワードームを作ってみましょう。あまりイメージは湧かないのですが、スノードームを意識しながらお題の花と、なんとなく綺麗な花たちを並べていきます。

よし、完成!

会場で作っていた頃は結構満足していたものの、家に帰って原稿を書きながら改めて見てみると、「ネモフィラで」というテーマに対してちょっとヒマワリが主張しすぎているような気もしますし、ノリで追加した「Thank You」ポップも不要だったかも……などと思えてきますが、これもまた私の作品。
撮影用モードもあるので、気に入った作品をロゴや背景を調整して記録できるのもポイントです。
僅かなプレイ時間だけでもほのぼのとした雰囲気が味わえる作品になっており、温かみのあるグラフィックやBGMによって演出されるムードが大きな魅力の作品になると感じました。
「可愛いものが好きな男性にもプレイしてほしい」
会場では、本作の開発を手がける個人開発者のabyss氏(@ab_good_games)と、作曲担当のMURASAKI(@yukarinmurasaki)氏にお話を聞きました。
――本日はインタビュー、よろしくお願いいたします。
abyss:よろしくお願いいたします。個人でゲーム開発をしている「abyss」と申します。
MURASAKI:作曲家のMURASAKIです。『あなたに花束を』でBGMを担当しています。
よろしくお願いいたします。

――他に開発に携わられている方はいらっしゃいますか?
abyss:もうひとり、アート担当の方がいます。ゲームの部分は私で、アートとBGMをアーティストさんにお願いしている3人体制で開発しています。
――まずは「なぜ花屋さんのゲームを作ろうと思ったのか」から教えていただけますか?
abyss:私は昔から可愛いものが好きで、雑貨屋にあるプレゼント用のフラワーボックスなどを見ながら「手芸のスキルがないと自分では作れないけれど、ゲームで出来たら面白いかな」と考えたのがきっかけですね。誰しもできることではないですし、そうした体験ができるゲームがあればと、私の趣味からスタートしました。
――ゲームシステムとしては「お客さんの要望に合わせて花束を作り、その結果で物語が変化していく」というもので、SNSでも『コーヒートーク』の影響があるとコメントされていました。今回は隣に並んでの出展になっていますね。
abyss:恐れ多いです(笑)。
――そのゲームシステムの作り方についても深掘りして教えていただけますか?
abyss:構想段階でプレイしたゲームが『コーヒートーク』で、すごく面白かったですし、お花屋さんが花束を見繕っていくシステムにも合うと思ったので、「花屋版コーヒートーク」と言えるアイデアからスタートしています。その中でこのゲームならではの要素として、花束を作る部分を作り込んでいますね。
――「この条件で花束を作ってほしい」というのは現実の花屋でも起こり得る注文なのかなと思われますが、ゲームに落とし込むにあたっては、実体験や取材などがベースになっているのでしょうか。
abyss:私はお花屋さんで働いたことはないんですけれど、実際にバイト経験のある開発者の方にはたくさんお話を聞かせていただきましたし、花が好きで写真を撮って投稿されているという「花を楽しむ側」の方にも取材しましたね。
MURASAKI:実際にアレンジメントもされたんですよね?
abyss:そうでした(笑)。本物のお花ではなく造花にはなるんですが、フラワーアレンジメント教室に通ってブーケや花冠を作る経験はしてみましたね。
そこで感じた面白い部分はゲームに落とし込んで、ちょっと難しかったり扱いが大変だったりする部分はあえてそぎ落として、楽しい部分だけを抜き出したようなゲームにしています。

――ゲームには入れなかったフラワーアレンジメントの大変な部分とは、具体的にどんなところなのでしょうか。
abyss:一般に花を生けると言うと花瓶に水を入れて花を飾るイメージだと思いますが、大きなアレンジメントをする時は「吸水フォーム」という専用のスポンジのような土台を使って刺していくんですね。これが見えないよう上手く飾っていくのが大事なのですが、それは難しいので省略しています。
ほかにも本当は長い茎をカットして葉っぱを取って……と色々なステップがありますが、今回のゲームには入れていません。
――そうだったんですね……!そしてBGMについてもお聞きします。MURASAKIさんはいくつものゲーム音楽を担当されていますが、舞台がお花屋さんとなるとかなり珍しいシチュエーションだと思います。どういった点を意識して作曲されましたか?
MURASAKI:花屋さんという点だけでなくノベルゲームに近いジャンルなので「お花屋さんで流れていそうな、心地良い音楽」を意識しました。ゆるくて優しいチルなムードや、いわゆる「Lo-Fi」と呼ばれるような性質にしようと決めて、作曲しています。
『コーヒートーク』に近いゲームということで補足をすると、あちらは夜のゲームなのに対して『あなたに花束を』は朝から昼、夕方とさまざまな時間帯で物語が展開されていきます。そのため、「この曲は11時くらいで、こっちは16時くらいに……」という擦り合わせもかなり行いましたね。
――開発状況や今後ブラッシュアップしていきたい点についてもお聞かせいただけますか。
abyss:本作はキャラ数が多いので、今は立ち絵やアニメーションをアート担当の方と一緒に取り組んでいます。状況は60%くらいでしょうか。『コーヒートーク』のフォロワー作品ではありつつ、違う良さを出していけたらと思っています。
今回、コーラス・ワールドワイドさんにパブリッシングをお願いできることになって、グローバルでの展開にすごく強みのあるパブリッシャーさんだと思っているので、そちらも力を借りて取り組んでいきたいです。
――テーマ的には女性の方に好まれるとは思いますが、「ぜひこういう方に遊んで欲しい」という考えがあれば教えてください。
abyss:そうですね。仰る通り女性のユーザーさんがメインにはなると思うんですが、私個人としては「可愛いものが好きな男性にも遊んでほしい」という想いを重要なポイントとして持って開発しています。
アートも優しい雰囲気なのでお子さんや女性向けというイメージを持たれることも多いのですが、ゲームは誰が遊んでも良いものですし、「趣味として可愛いものは好きなんだ」という方にも刺さるようなキャラクターも考えていますので、楽しみにしていただければと思います。
――私も花に詳しい訳ではないのですが、創作でよくある「花言葉に隠されたメッセージ」みたいな演出はすごく好きなので、楽しかったです。
abyss:花に触れる機会になると嬉しいです。過去にもイベントでプレイしていただいた男性の方に「花が気軽に買える世界だね」と言っていただいたのが印象的で、現実では毎日のようにお花を買うのは大変だと思うんですが、このゲームでならそれができますので!
――ビジュアルが好きな方にはきっと刺さるゲームになっていますね。楽しみにしています。ありがとうございました!
手軽にフラワーアレンジの魅力とさまざまな登場人物との会話が楽しめるノベルアドベンチャー『あなたに花束を』は、現在開発中です。













