世界が終わる時に、もし貴方が電話をしている途中だったとして……その電話が最後まで出来ずに死んでしまったのなら、あなたはどう感じるでしょうか。
本作『シュレディンガーズ・コール』は、集英社ゲームズが主宰するゲームクリエイターズCAMPにて実施されたゲームコンテスト「GAME BBQ vol.1」で、見事大賞を受賞した作品です。
主人公である少女は、どこまでも闇だけが広がっている、見知らぬ場所で目を覚ましました。目の前には黒電話だけがある。
なぜ少し回りくどい言い方をしているのかと言いますと……実は彼女は、全ての記憶を失っているのです。もちろん、自分の名前さえも。
しかし、そんな少女をせかすように、謎の声は彼女に受話器を手に取るよう促してきます。電話の先には、「君とお話したい魂たち」が待っているとのこと。なぜなら主人公は、「世界最後の話し相手」だから。

ここでまた衝撃の事実を明かすのですが、実は主人公はもう死んでいるのです。もっと言うとみんな死んでいます。主人公も、通話相手もです。世界が終わっているので、みんな死んでいるのです。

正確に言うのであれば、世界はあと21ナノ秒後に終わります。そんな瞬きよりも短い時間で、一体何ができるというのでしょうか。
「生」と「死」が重なっているとしか解釈できない、そんな世界で、主人公のメアリという少女は「世界最後の話し相手」として、世界が終わったことを受け入れられずに苦しんでいる魂たちのお話を聞いて、彼らに寄り添っていきます。
筆者は先ほど、主人公は「自分の名前を覚えていない」と言いましたし、「主人公のメアリという少女」とも言いました。一見矛盾しているように見えますが、いえいえそんなことはないのです。主人公は自分の名前を、黒猫のハムレットから教えてもらったのでした。


メアリに語り掛けていた謎の声の主が、何を隠そうこのハムレットなのです。

ハムレットに促されるまま受話器を手にしたメアリが、電話の合言葉――「もしもし」と口にしますと、途端に無数の声が返ってきました。



この無数の声である「魂の群れ」は、会話を重ねたり問いに応えたりすることによって、メアリと同じ悲しみを共有した誰かになります。無数の声の中から魂を確定させることで、やっとメアリとお話しできるようになるのです。

まずお話しできるようになったのは、「ルーシー」という女性でした。

悲しい思い出を共有している……ルーシーの悲しい思い出とはいったい?メアリの悲しい思い出とはいったい?そもそも、ルーシーというのは、一体全体どういう人なの?
そんな風に困惑するプレイヤーとメアリのことなどお構いなしに、電話は切れてしまいました。


受話器を置いて、落ち着いてあたりを見渡しますと、そこは窓ひとつない部屋であることが分かります。メアリがぽつんと椅子に座っていて、その前のテーブルには黒電話と、ハムレットがいます。

ハムレット曰く、これからメアリがするべきことは電話をしてルーシーを救うことだそうです。

気が付けば目の前にあった手帳に、聞いたお話をメモしたり、いつの間にか書き込まれていた電話番号を見ながら、いろんな人に電話をかけて、あるいはかかってきた電話を手に取って、お話を聞いていく。そういうゲームとなります。
まずは、手帳に書き込まれていたルーシーに電話をかけてみることに。



因みに電話をかける際には、黒電話を使用します。実際にプレイヤーもダイヤルを回す操作をするのがレトロで、本作のクラシックな雰囲気に合っていてとても楽しいです。

かけた電話は、無事にルーシーに繋がりました。


メアリには記憶がありませんが、ルーシー(というよりも、今後の電話相手)も記憶がどんどん消えていく状態にあるのです。
本当に忘れたくないことでも、本当に大切にしていた人のことでも、忘れていってしまう……そんな状況にある彼らは、メアリと電話越しにお話しをしていくことで、記憶を繋ぎ留めたり思い出したりしていくのです。
時折、通話の中で話し相手は支離滅裂なことを言います。これは記憶を取り戻しつつある状態で、錯乱しているのです。


ルーシーの場合は、メアリのことを先ほどまでちゃんと認識していたにもかかわらず、突然「ウィリアムでしょ!?」と言い始めました。ウィリアムというのはルーシーの家族で大切な人です。しかし、先ほども軽く触れましたが、魂たちは記憶がどんどん消えていく状態にあり……ルーシーも、大切なウィリアムの記憶が消えつつあるのです。

電話相手たちは未完了通話――人生最後の通話をしている最中に月が落ちて死んでしまいました。

なぜ月が落ちたのか。ハムレットによると、世界が寿命を迎えたそうなのです。月が落ちて、メアリを除く全人類は粒子となりました。
自分の死を認められない、死にきれない魂たちのお話を、「世界最後の話し相手」としてメアリは聞き続けるのです。メアリの記憶が戻るまで……。
お話を聞いて、言葉を選んで相手の気持ちに限りなく寄り添い続けることで、生と死を結ぶ円環が閉じて何も思い残すことなく死に切らせて救う。これがメアリのするべきこととなります。
また、お話しをする中で、メインの通話相手以外にも電話を掛けられるようになります。

彼らの電話番号は関係因子番号といい、メインの電話相手(今回で言いますとルーシー)の「何らかの関係を及ぼした人」に繋がり、いろんなお話を聞くことができます。
無論、彼らも自分の死を認められない、死にきれない魂となります。彼らのお話にも耳を傾けて寄り添う必要があります。
自分自身の過去について知るためにも、メアリは再度、受話器を手に取りました。
こうしてメアリは、「世界最後の話し相手」となったのです。

コンセプトや雰囲気が最高な本作ですが、個人的にはBGMも凄く大好きです。なんというか、少し強い言葉になるのですが、映像と合わせて「襲い掛かってくる」のです。
月が落ちたとわかったあの瞬間、未完了通話を聞いている時、そして魂たちに寄り添う時……。随所随所でBGMと映像が、プレイヤーの感情を揺さぶるように襲い掛かってきます。月が落ちるところが、破壊的でありながらミステリアスで美しく、しかし無常感も漂っていて、筆者はとても大好きです。初めて見た瞬間に引き込まれました。

また、テーマから想像できる人もいるかもしれませんが、本作は優しいけど苦しい、温かいけどつらい……そんな作品です。翌日お休みの日にプレイした方が良いかも……!
しかし、だからこそ素敵な作品でもあります。プレイした人は最後までメアリを見届けて欲しい、筆者はそう切に願います。
『シュレディンガーズ・コール』は、PC(Steam)/ニンテンドースイッチ向けに、2026年5月28日発売予定です。
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