コロナ禍の「電話で救われた」体験から生まれた―“ボタンを押す意味”を5年弱突き詰めた新作ADV『シュレディンガーズ・コール』【インタビュー】 | Game*Spark - 国内・海外ゲーム情報サイト

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コロナ禍の「電話で救われた」体験から生まれた―“ボタンを押す意味”を5年弱突き詰めた新作ADV『シュレディンガーズ・コール』【インタビュー】

大賞を受賞した「Game BBQ vol.1」の開催からおよそ5年……待望の本作への思いをお聞きしました!

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集英社ゲームズから、アクロバティックチリメンジャコが手掛ける『シュレディンガーズ・コール』が2026年5月28日に発売されます。

本作は、集英社ゲームズが主宰するゲームクリエイターズCAMPにて実施されたゲームコンテスト「Game BBQ vol.1」で、見事大賞を受賞した作品です。「Game BBQ vol.1」の募集期間は2021年7月1日~9月30日でしたので、企画書から発売まで実に5年弱の歳月がかかったこととなります。

待望の本作は、いったいどのような思いで作られたのでしょうか。Game*Sparkでは過去にもインタビューを実施させていただいたことがありますが、本作のリリースに合わせて再度実施させていただけることになりましたので、お話を伺っています。ぜひプレイレポートとあわせてご覧ください。


左からSeishi氏、Achabox氏、ame氏、林氏

――自己紹介をお願いいたします。お好きなゲームについても教えてください

Achabox氏:アクロバティックチリメンジャコの、ディレクターとアートを担当しているAchaboxです。好きなゲームはたくさんあるのですが、『ICO』『龍が如く』それから『Ghost of Tsushima』が好きです!

ame氏:アクロバティックチリメンジャコでエンジニアとサブシナリオを担当していますameと申します。好きなゲームは『OneShot』と『サイバーパンク2077』です!

Seishi氏:音楽とシナリオとスクリプトと映像編集と……いろいろやっています、Seishiと言います。子供のころにパソコンのゲームをいろいろプレイしていて、日本ファルコムのゲームやアドベンチャーゲームをたくさんプレイしました。最近のゲームで好きなのは、『The Last of Us』や『ペルソナ5』ですね。

林氏:集英社ゲームズ、シニアプロデューサーの林真理です。よろしくお願いいたします。僕自身が好きなゲームは『ゼルダの伝説 時のオカリナ』と、『イースI』ですかね。1も2も好きですが……PC-88版の1をプレイしたときの衝撃はやはりすごかったですね。

――「アクロバティックチリメンジャコ」の由来についてお聞かせください。

Achabox氏:私が命名しました。企画書を出すからチーム名を決めなくちゃいけない、どうしよう……って、ちりめんじゃこのパックを開けながら悩んでいた時に、パックがパーンって飛び散っちゃって。それを見て「アクロバティックチリメンジャコ」という名前が脳内に浮かんだので、それにしました。別の名前を考えていたんですけれどね、でもこの名前良いなと思います。

――とても楽しみにしていたタイトルでした!本作の初報は結構前だったように記憶しています。様々な苦労があったとは思いますが、特に印象深い出来事をお聞かせください。

林氏:アクロバティックチリメンジャコは、集英社ゲームズが運営している「ゲームクリエイターズCAMP」というサイトで実施した「Game BBQ vol.1」という公募の第1回の優勝チームなんですね。その時に応募してもらった『シュレディンガーズ・コール』は企画書のみだったので、まずはビルドを作ってみようというところからスタートしました。当初は本当に、動いているだけで感動していましたね。

Seishi氏:「Game BBQ vol.1」に応募したときは動くものがない状態でした。

Achabox氏:ゲームを作るのは本作『シュレディンガーズ・コール』が初めてですし、何のプロトタイプもなくて。なので週1で違うビルドをどんどん作って、どんどんチェックしてもらって、「これは良い、これは変えよう」みたいにして進めていきました。

ame氏:最終的に没になったビルドも面白かったです、パズルを解くと物語が見えていくやつとか。

Achabox氏:しかも最初は縦型で開発していたんですよ、元々スマホで出す予定だったので。

林氏:そう、スマホに合わせてタッチパネルで作っていましたね。

ame氏:懐かしいなあ。最初のデモ版を出す直前に、3人で和歌山に合宿したんです。3年くらい前だと思います。
元々Seishiさんが最初のキャラクターを確定する過程のシーンのラフを出してくれたものがあって、そこにAchaboxさんの指示を受けて、僕がプログラミングで追加演出を実装します。で、その実装したものを見て、Seishiさんが更に動画や音楽を追加していって、すごく良くなったんですよね。

その和歌山合宿中にパスしていってSeishiさんに戻って、最後ブラッシュアップしてもらう……という流れができて、これがすごいハマった瞬間だったな、と思います。ピタッと綺麗にハマったというか、勝ち筋が見えたというか、チームワークが完成したというか。

Achabox氏:この作り方だと時間かかっちゃうんですけれどね。

Seishi氏:合宿は結構やっていまして、『都市伝説解体センター』の開発陣である墓場文庫さんたちや、個人開発者のところにょりさん、OdencatのDaigoさんたちと一緒に合宿したこともあります。

ame氏:ありましたね。23時くらいに集まって「この機能があればうまくいくんじゃないか」って話になって、「わかりました、朝までに実装します」と返して、そこから5時間かけて作ったものをSeishiさんに投げて寝る……みたいなこともしました。翌日の夕方くらいにはその機能が追加されたバージョンができていて。

林氏:それ自体はよかったのですが……墓場文庫のおでーんさんがずっと料理を作ってみんなをサポートしてくれるものだから、『都市伝説解体センター』の方が進まないと少しヤキモキしていましたね(笑)。

――ハムレットが黒猫なのは、やはり「シュレディンガーの猫」からかなと思っています。ゲーム内容としてもそういった要素を感じています。他にも影響を受けているものやゲームがあれば教えてください。

Achabox氏:SILENT HILL』シリーズと、『OMORI』は影響を受けていますね。『SILENT HILL』シリーズに限らず、ホラーゲームはいろいろプレイしました。

Seishi氏:SILENT HILL 2』のリメイクをみんなでプレイした時期があって、得体のしれない雰囲気や説明しすぎない空気感というものを参考にしました。

Achabox氏:手帳にメモするとかミステリアスなストーリーテリングとか、そういうところはかなり影響を受けていますね。

Seishi氏:影響を受けようとして迷走したところでもありますね……(笑)。
インディーゲームもたくさんプレイして、「こういうところを取り入れよう」「こういうところはやっていないからやめておこう」みたいな感じで影響を受けました。それこそ、『都市伝説解体センター』も繰り返しプレイしましたし、実際に墓場文庫さんたちにたくさんお話を聞きましたね。

ame氏:あとは映画もいろいろ見ましたね。

Seishi氏:“月が落ちる”ことをテーマにした、「メランコリア」というデンマークの映画があるんです。月が落ちる設定の前日ぐらい前から描いている話なんですけれど、主人公含めて登場人物はみんな気にしていない感じなんですね。最後はとても静かに終わる作品で。

「月が落ちる」ことに焦点が当たっているというよりも、「月が落ちる」ということがきっかけでお話しよう、というところに焦点が当たった作品なんです。そういう意味ですごく参考にしました。

いわゆるビジュアルノベルって、こう……絵がドーン!って出てきた後は文字で進んで、実は絵が止まっていることも多いじゃないですか。
でも、たくさん表現しなくちゃいけないことがある。なのでどの絵が最適か、というのはいろんな映画やビジュアルノベルを見て研究しましたね。

林氏:アクロバティックチリメンジャコの面々は、映像とか舞台とかの経験がある人たちなんです。なので、ゲームからの影響だけでなく、多様なところからの経験を参考にしています。映画に関しても、メジャーな映画よりコアな映画の知識を持ち、研究をしているチームなんです。

――確かに、演出面が映画的というか舞台的な感じはありました。プレイしていて、BGMがすごく印象に残ったんです。変な言い方なのですが襲い掛かってくる瞬間もあれば、真相に迫る一言が発された瞬間に大音量がピタッと止まったりだとか。BGMのこだわりや大切にされたことがあれば、ぜひお聞きしたいです。

Seishi氏:BGMは元々舞台作曲のストックがありまして、ゲーム制作の終盤にBGMを当てはめていきました。
実は本作は他のゲームと少し違いまして、ふつうはプログラムとBGMデータが連動するのですが、本作はプログラムの中にシナリオとかセリフとかBGMとかがごちゃごちゃになっているので、好きなタイミングで好きなBGMをかけることができます。良い意味でフレキシブルなんですよ。

林氏:本作は3人で作っているので、状況に合わせていろんなアイデアを詰め込むことができて、3人がオッケーすれば制作がすすめられるんですね。
普通のゲームだと音の鳴らし方のルールがあるので事前に作る、と進行するのですが、彼らの場合はその場で「こうした方が良いよね」というアイデアに基づいてその場で変更する、というやり方で進めています。
特にシナリオと音楽のスクリプト部分を、基本Seishiさんがメインで担当しているので、「ここにこの音が欲しいな」となったら都度発注するのではなく自分で制作して音を入れちゃう、ということができます。

先ほど仰っていた音が襲い掛かってくるだとか急に止まるだとかも含めて、3人という少ない作家が集まってできた表現なんじゃないかな、と思いますね。3人だからこそできた、すごい魅力的なところだと思います。

Achabox氏:本当、直書きみたいな感じなんです。セリフもBGMも上から下まで、全部1行のテキストの中にガーっと書いちゃうので。

林氏:こういう作り方、普通だったらあまり良くないです(笑)。3人だったから何とか可能だった、って感じですね。

――ローカライズも3人が担当されたのですか?

林氏:集英社ゲームズで「ローカライズマネージャー」を立てて、翻訳いただいたものを言語チェックしました。
かつ、弊社には英語ネイティブや中国語ネイティブも働いているので、「現地語として読んで問題ないか、ニュアンスが間違っていないか」という確認を集英社ゲームズ側でできるのは大きかったです。「翻訳としては間違っていないけれど、言い回しが少し子供っぽいよね」みたいな感じですね。翻訳に関しては3人でなかなかできない部分を僕らがサポートできたのかな、ローカライズの質はかなり担保できたんじゃないかな、と思います。

Seishi氏:全部任せるわけではなく、レイアウトを言語によって変更するなどの作業は行いましたね。英語では英語の表現、中国語では中国語の表現をしています。

ame氏:作品のことを理解している人、プレイしている人が見てくれる、というのがかなり大きいですね。

本作はお話しをするゲームなので書き言葉が混ざってはいけない、というこだわりがあります。話し言葉として自然なものにしたくて、書き言葉としてはあるものだけれど話し言葉としては少し自然ではないものに赤を入れてもらったりして。すごく、恵まれていますね。

林氏:僕のチームに中国語ができる方がいまして、彼に読んでもらって細かいところまでチェックしてもらいました。

Seishi氏:デモ版も、中国のプレイヤーから中国で開発されたゲームだと思われたくらいなんです。本当に感謝しています。

――関連してお聞きしたのですが、音声も独特ですよね。聞き取れるような聞き取れないような、意味がわかるようなわからないような、何語でもなく何語でもあるような……それぞれの言語に合った音声ではなく、この独特な音声にしたのには、どういう経緯で至ったのでしょうか?

Achabox氏:テストでは実際に声優さんに音声を入れてもらったケースもあったのですが、演技が付くと答えが1つになってしまう印象があったんですね。「このキャラクターは今、こういう感情を持っていて、すごく悲しんでいる」みたいな。それが、すごく狭くなった感じがしたんです。
なのでビジュアルも含めて不思議で、いろんな感情をプレイヤーの想像によって膨らませることができるようにしたくて、今の音声に落ち着きました。
実は音声自体は、セリフを読み上げてもらって逆再生して、更に通話っぽいノイズ交じりの音を入れています。

Seishi氏:墓場文庫のあだPさんにもボイスをご協力してもらっています。

林氏:住んでいるところは全然違うのですが、兄弟チームみたいなところもありまして、良い関係が築けているんですね。『都市伝説解体センター』が終わってあだPさんの手が少し空いたところで手伝いに来てくれて、そこでお願いしました。

――今ビジュアルのお話が出ましたが、メアリ以外の登場キャラクターは、動物と人間の要素をどちらも併せ持つデザインが非常に印象的です。デザインにあたり、大切にされたことは何でしょうか?

Achabox氏:メアリが記憶をなくしている状態で電話の声だけで相手を想像する必要があり、「メアリが想像しているから」ということを強調したかったんです。後は、動物にすることで、相手がどういう人物かとか年齢とかがぼやかされるんですよね。
例えば、1章でルーシーというお母さんのキャラクターがいるのですが、自分と年齢層が違う相手でも動物にすることで、自分に近い存在に置き換えられちゃう。その辺がすごくいいな、と思いました。

あとは、メアリを際立たせたかったからです。やはり、「世界最後の話し相手」というくらいなので、それ以外のキャラクターは人間はないように表現することでメアリを強く出せたのかな、と思っています。

デザインするうえで難しかったのは表情ですね。先ほど言ったように、年齢が出づらいんですよ。なので、おじさんのキャラクターをおじさんっぽく表現することが難しくて、体格を良くしたり、小物で年齢感を表現したりとかしました。もう、描いても描いても年齢が全然上がらない……!みたいな時もありましたね(笑)。

――先ほど舞台経験があると仰っていましたが、今回ゲームという媒体を選んだ理由をお聞かせいただけますか?ゲームという媒体にどういう可能性があるか、というところも含めてお聞きできればと思います。

Achabox氏:私はもともと映像を作っていたのですが、映像って1つのものを受け取って楽しむ媒体じゃないですか。ゲームはそこに介入して感情で共感するというか、自分がインプットする、入力して返ってくる体験って、やっぱりゲームでしかできないなと思います。
『ICO』にはめちゃくちゃ感動したんですよね。最後の場面のあの瞬間って、やっぱりこう、手を取りたくなるじゃないですか。能動的にボタンを押す。そこでゲームの可能性を強く感じました。選択するだけといえばそうなのですが、入力を迷ったり押す瞬間に感情が入る……という体験は、ゲームでしかできないものだと思います。

ame氏:ゲームの強みを言うと、アルファ版の際に集英社ゲームズさんからのフィードバックとしてすごく印象的な言葉をいただきました。「このゲームの選択肢は感情の入力だ」というものです。

元々能動的になってほしいからこそ、選択肢を作るのが簡単な技術を選んだんですね。結果として、ふつうのADVと比べると選択肢の多いゲームになったのかな、と思います。じゃあ、今度はその選択肢の多さにどういう意味を持たせるの?というのが課題になりました
そして試行錯誤した結果、行きついたのが「感情の入力」なんです。「選ぶ」ことに、ユーザーの感情入力という役割を持たせたんです。それに成功したようにアルファ版で言っていただけて、すごく腑に落ちました。

Seishi氏:僕は実は、本作を応募するときにAchaboxさんから「テキスト書いてください」と言われて、応援するつもりで結構立派なものを作ったら受賞して、テキストだけでは足りなくて他の仕事も……という風にいろいろ担当するようになりました。

でも、「ゲームでしかできないこと」というのをずっと考えていて、結局プレイヤーがボタンを押さないと進まないじゃないですか。そこは映画や舞台と決定的に違う。そこはずっと考えていますね。

Achabox氏:Seishiさんはやっぱり映像の人で、本作でもシナリオと音楽を作りながら映像をつけてくれました。
冒頭で生きているのか死んでいるのか選んだ時に、月が落ちてきて曲が流れてくるシーンがあるのですが、Seishiさんがそこで「入力をして体験させる」というところを作ってくれました。ゲームでしかできない体験だとすごく思っていますね。

林氏:ゲームの仕組み自体はすごくシンプルなんですよ。だけど、それゆえにどう深く表現するか、というところをこの何年間かかけてやってきたところだと思います。ボタンを押す意味って何だろうとか、その結果どういうリアクションが返ってくるんだろうとか……チームはそういうところを突き詰めてきました。

――配信プラットフォームについては、Steamとニンテンドースイッチを予定されていますが、発表当初企画されていたスマホなどは予定されていませんか?

林氏:今のところ予定していないですね。元々はモバイルで縦画面の予定だったんです。電話をするゲームなので実際に電話を持つ感じでやりたかったのですが、「Steamでも出したい」「縦画面と横画面の両方を作るのは、3人だし限界があるよね」ということで、横画面だけ作ることになりました。こんなに時間をかけるつもりはなかったんですけれどね……(笑)。

Achabox氏:思えば遠くに来たものです。最初は「スマホだから3時間ぐらいで」と考えていたのですが、PC・コンシューマで出すし、10時間ぐらいにしましょうと言われて「嘘でしょ!?」と思いつつ今に至るという。

林氏:これはね、市場との兼ね合いだと思っています。ゲームユーザーの人が求める刺激やボリューム、質というものが、急激に右肩上がりになっていってるなと感じていまして。それはもう僕らがコントロールできるものではなかったので「ボリュームが少ないものだと手に取ってもらえないかもしれない、しっかりとした体験を作らなくちゃいけないかもしれない」という判断からボリュームアップに至りました。

――ボリュームアップしたとのことですが、3時間から10時間というと3倍以上ですよね。いろいろ新しくシナリオも追加されたと思うのですが、制作していく中でテーマがぶれたりとかはしなかったのですが?

Achabox氏:エンディングのテーマだけは一貫して、絶対譲れませんでした。

林氏:こちらとしてもやはり、コンセプトに対して賞を出していたこともありましたので、コンセプトがずれるのであればプロジェクトを中止した方が良いという思いがありました。その分、年月がかかりましたが……(笑)。

2023年8月に完成したビルドを社員にプレイしてもらい、泣いたという感想も出てきたので「これはいける」とすっごく感じました。ただ、そこからまたいろいろ迷走して大変でしたね。体験版の評価もすごく高くいただいているので、2023年に見極めたものを2025年に公開して反応を見て、間違っていなかったなと思いました。本当に、あの体験版がこのゲームを決定したかな、と思っています。

Seishi氏:僕は正直あまりピンと来ていなかったですけれどね。「これだ!」というよりは「もうこれしかできねえ!」みたいな感じだったので、「まだまだいけるぞ!!」という気持ちもありました。

林氏:でもね、7月の段階だと全然できていなかったんです。2週間くらいで急激に良くなった。胸をなでおろしたことを覚えています。

Achabox氏:本当に、提出の3~4日前にSeishiさんが最後のあたりをバーッと作ってくれたのですが、私とameさんはそれを見て「すごくいい!」「めっちゃいい!!」となっているのに、本人だけ「え。本当?」みたいな反応でした。Seishiさんはずっとピンと来ていなかった……(笑)。

Seishi氏:僕としては、もっとマニアックなものをイメージしていたのですが、なかなかうまくいきませんでした。そこで、演出をうまく入れて「こういうことですか?」と提示してみたところ、「そういうことです!!」と強く反応されて、逆に迷ってしまったんです。でも、結果的にそこから作ったものは、実際に良いものになったと思います。

作っている人たちの感覚と、外から見ている人たちの感覚には、かなり乖離があります。ゲームの場合は、最終的にはお客さんがどう感じるかがすべてですから。そこに向き合う戦いだったのかなと思います。

林氏:過去のBitSummitでも体験版を出したことがあるのですが、そこでプレイして泣いている人がいたんです。それを見て、ゲーム内部だけの評価じゃないなと思いましたし、やってきたことは間違っていなかったなと思いました。

社内のベテランディレクターも、最後は「泣くから家に帰ってやるわ……」と言って、実際に家で泣きながらやったそうです。その話を聞いて、おじさんを泣かせたというのは手ごたえとして感じました。

――今のところ、体験版の手ごたえというのは海外含めてどんな感じでしょうか?

林氏:そうですね。Seishiさんと集英社ゲームズ側のプロデューサーやマーケティングチームが、中国語で発信してくれているのもあり、中国の人からもすごくコメントや評価をもらい、手ごたえを感じています。中国でも喜ばれるといいな、と思いますね。

あとは、「gamescom latam」という、ブラジルで開催されているラテンアメリカ最大級のゲームイベントがあるのですが、それに2つノミネートされました。受賞はできませんでしたが、やはりノミネートまで入ったということは大きなことですし、実際に会場まで行かれたSeishiさん自身も向こうでいろんな人に声をかけていただいたそうです。
ブラジルで評価されたということは予想していなかったことなのですが、すごくうれしかったですね。いろんな国の人に遊んでいただきたいな、と思います。

Seishi氏:日本のカルチャーを好きな人は世界中にいて、日本のびっくりするようなマニアックなゲームも遊ばれていたりします。

ame氏:英語圏の配信を見ていると、電話の合言葉を言うところで皆さん「もしもしだ!!」っていうんですよ。アニメとかで知っていらっしゃるんですね。英語版はもしもしをHelloに翻訳しましたが、それを見て「もしもしのままにしても良かったな」と思いました。

――集英社ゲームズさんとしては、本作を多くの人に届けるという役割もあると思うのですが、その中でも開発面での取り組みとかはありますでしょうか?

林氏:もちろん基本的な宣伝は全部するのですが、そういうこと以上にお客さんに本作をどうやって届けるか、ということについては考え続けなくちゃいけないなと思っています。このゲームならではの届け方をずっと考えてきている感じですね。
本作は特に映像美だったりシナリオだったり音楽だったり、魅力がたくさんあるので、そういうものに興味があるお客さんにどうやって接触していくか、というところが僕らが今すごく頑張っているところですね。映像をXで流すなどの企画に対して、実際にすごく反応をもらえましたね。

――少し気が早い話になりますが、アクロバティックチリメンジャコとしての次回作は予定されていますでしょうか?

Achabox氏:やっと『シュレディンガーズ・コール』を出せるというところにあるので、今はそれで頭がいっぱいですし、アップデート含めてしばらく本作に集中していこうかなと思っています。やりたいことのストックはあるんですけれどね。

ame氏:やはり今後もチームとしていろいろやっていきたいな、という考えはあります。

林氏:やはり、小規模開発でやっているので、情報発信なども自分たちからもやられていますので、そういうところが一段落しないと、なかなか次というのは見えてこないですね。本作が大ヒットしたらそれどころじゃないかもしれないし。

Achabox氏:本当に……どういう風に受け取れられるかというのは、出してみないとわからないところですし、怖いところでもありますね。緊張します。

Seishi氏:最終章が物語の核心に触れる章なのですが、1番不安な章でもあります。体験版として公開されている1章の評判は良いんですけれど、最終章をやったときの評価がどうなるか……ちょっとわからないんですよね。不安だけれど、でも1番やりたかったことでもあるので。

ame氏:そうなんだ……僕はもう、やっと遊んでもらえる!って気持ちですね。

林氏:途中でやめずに、ぜひ最後までプレイしていただきたいと思います。

――最後に、本作を楽しみにしていた人たちに向けて一言ずついただければと思います!

Achabox氏:本作は元々、コロナ禍で人と会えなくなった時に電話で救われた、という私の体験をもとにしています。
今は少しコロナも収まってはいますが、それでもやっぱり誰かとお話したかったとか、お話を聞いてあげたいとか、そういう気持ちは誰しも持っていると思うんです。そういうところに共感してもらえればと思います。
また、最後までプレイして勇気がもらえるゲームでもあると思っているので、ぜひ最後まで遊んでいただけたらなと思います。

ame氏:待っていただいてありがとうございます!
チームとして迷走していた時期がかなり長かったので、体験版をプレイしてくれたお客さんの声が今までずっと支えというか、灯台みたいな存在でした。そういう方々に製品版をお届けできるのはとても嬉しいです!ぜひ遊んでください。

Seishi氏:世界的にアドベンチャーゲームやビジュアルゲームの新しい波が今来ていると思っていて、その中の流れに乗れた作品じゃないかな、と思います。楽しんでいただければ!

――ありがとうございました!


シュレディンガーズ・コール』は、PC(Steam)/ニンテンドースイッチ向けに、2026年5月28日発売予定です。

ライター:羊めり,編集:みお


ライター/ゲームと読書と紅茶と強い女が好き 羊めり

ゲームをする羊、羊が苗字でめりが名前です。雑多にコンシューマーゲームやインディーズゲームを遊んでいますが、特にナラティブ重視なゲームが大好きです。人外娘もめちゃくちゃ好きです。探偵小説もはちゃめちゃ好きです。辛い食べ物は得意ではないです。

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編集/Game*Spark共同編集長 みお

ゲーム文化と70年代の日本語の音楽大好き。人生ベストは『街 ~運命の交差点~』。2025年ベストは『Earthion』。 2021年3月からフリーライターを始め、2025年4月にGame*Spark編集部入り。2026年1月に共同編集長になりました。

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