高品質なアクションとピクセルアートを引っ提げて、初期インディーゲームシーンにその名を轟かせた『ショベルナイト』。開発元ヨットクラブゲームズによる最新作『Mina the Hollower』が発売され、Metacriticで今年1位のスコアを獲得するなど好評を博しています。
アート面では、紛れもなくゲームボーイ時期の『ゼルダ』……それもゲームボーイカラーの『ゼルダの伝説 大地の章・時空の章』を強く意識していそうな本作。一方で、ゲームのサイクルには『ソウル』シリーズからの影響が感じられますし、世界観や音楽は『悪魔城ドラキュラ』シリーズのようでもあります。
全体として過去の名作たちの要素を組み合わせ再構成したようなゲームとなっており、特段に目新しい遊びが発明されている作品ではありません。けれど、それらの素材を活かす腕には卓越したものがあると感じられるのです。
『Mina the Hollower』を遊ぶと、ゲームには何か奇抜なものがなくても、多彩なギミックと緻密なレベルデザインさえあればいいのではないかとあらためて思わされます。
※記事執筆にあたって、パブリッシャーよりキー提供を受けています。
アートは『ゼルダ』、サイクルは『ソウル』、世界観は『悪魔城』

『Mina the Hollower』は、発明家で穴掘り師の主人公「ミナ」になって突き進む見下ろし視点のアクションゲームです。ミナが過去に開発した「スパーク生成装置」によって発展を遂げ、旧友「ライオネル伯爵」が治める島テナブラス塔に帰還したミナは、何者かによって破壊された6つのスパーク生成装置を修復する旅に出ます。
ゲームボーイカラー風のアートからは『ゼルダの伝説 夢をみる島』、『ゼルダの伝説 大地の章・時空の章』からの影響を明確に感じられるわけですが、キャラクターの挙動においてもそこは同様です。ミナを上下左右に移動をしているだけでもその感覚が蘇ってくるはず。

本作は、そういったGB『ゼルダ』から謎解き要素を減らして、戦闘とプラットフォーマーアクションを中心に再構成したようなゲームです。
GBの『ゼルダ』シリーズには、ジャンプを可能にする「ロック鳥の羽」というアイテムがあるのですが、ミナには素のアクションにそれと同じ挙動のジャンプがあります。フィールドには落下してしまう穴が大量にあり、プラットフォーマーアクションのようにジャンプを駆使してそれらを突破していくのです。

そして、そのジャンプボタンを長押ししたとき、穴掘り師のミナはそのまま地面へと潜ります。この地面に潜るアクションが本作の遊びのベースとなっており、『ショベルナイト』の「スコップ」のように最大のフィーチャーといえる部分です。
地面に潜ることで、地上からはいけなかった狭い通路や、柵の下といった場所に入り込むことができるほか、オブジェクトの下に入り込んでから地上に出ることで物を持ち上げることもできます。
戦闘においても、この潜るアクションが活躍。地面に潜っているあいだは地上のほとんどの攻撃が効かなくなります。一方で、地面に対して行ってくる地割れなどを含む攻撃は防ぐことができません。そういった攻撃は単にジャンプでかわせるようになっていることが多く、このジャンプと潜りの使い分けが本作の回避の駆け引きの基本となっています。

ミナはいくつかの種類の武器を使うことができるのですが、その中には『悪魔城ドラキュラ』を彷彿とさせる鞭のような武器も。長いリーチを持つ反面、発生が遅く範囲が狭いという独特な操作感がしっかりと再現されていました。この絶妙な操作感が気持ちいいんだ。
本作の世界観、特に音楽についても『悪魔城ドラキュラ』シリーズからの影響を強く感じられます。ゴシックホラー、ダークファンタジーな雰囲気の町並みやダンジョンの背後で、8bitサウンドでありながら重厚な音楽が奏でられるこの雰囲気は“まさしく”な感覚。燭台を壊すとアイテムが現れるのもオマージュなのでしょう。

そして、本作には経験値&通貨として機能する「ボーン」のロストと回収のシステムが存在。中間地点での回復アイテムの補給や敵の復活などの仕様からも、『ソウル』のサイクルをベースにしていることがわかります。予備動作と多彩な攻撃を持つ敵キャラクターも、『ゼルダ』というよりは『ソウル』に近いデザインです。
このように、全体として過去の名作たちへのオマージュを散りばめつつも、サイクルは『ソウル』と近年のゲームらしい側面も持っています。しかし、その真価は、なによりもそれらの素材を丁寧にステージへと配置していく“レベルデザイン”の妙にあるように思えます。
多彩なギミックを活かす緻密なレベルデザイン
筆者が「レベル」という言葉の意味を明確に理解したのは、『スーパーマリオメーカー』で作ったコースに海外ユーザーから「Nice Level!」というコメントがついた時でした。つまるところ、“レベル”とは“ステージ”のことであり、レベルデザインとはステージやフィールドに適切に地形やギミック、敵を配置することでプレイヤーの体験をデザインする仕事のことです。
プレイヤーにハラハラとした体験を与え、それでいてしっかりと攻略ができるように丁寧に導くことも欠かさない。これをステージ上に実現することの難しさは、『スーパーマリオメーカー』や『RPGツクール』、もしくは他のゲームエンジンを触ったことがある人ならばわかるはず。

『Mina the Hollower』は、見下ろし視点の2Dアクションゲームとなっており、上述の通りゲームボーイカラーの『ゼルダ』に似たデザインを持っています。ステージクリア型の横スクロールアクションゲームだった『ショベルナイト』と比べ、このタイプのフィールドは上下左右に自由に移動できるため、自らの手で冒険している感覚が強い一方、道に迷いやすいです。
本作は、マップにかなり多くの分岐がありますが、テキストやマーカーによる行くべき場所の指示などはほとんどありません。そのため、新たな地域に訪れた時、まずどこに行けばいいのかわからず、手探りでの探索をはじめることになります。
しかし、不思議と路頭に迷うようなことはありません。それは、本作が丁寧にルートの「合流」をデザインしているからです。本作のフィールドをよくみてみると、新たな地域を訪れて、まずどこから探索をはじめたとしても、最終的にはその地域の冒頭の場所に戻ってくるというようなデザインが全体で行われていることがわかります。

そして、この合流のデザインでより効いてくるのが古き良き「ショートカット」の存在です。ステージをある程度進めると現れる、片側からしかアクセスできないギミックを作動させると冒頭の地点へと往復できる道が拓けます。
ショートカットは、『ゼルダの伝説』シリーズや、『ダークソウル』シリーズなどで多く使われている、アクションアドベンチャーゲームの伝家の宝刀のようなギミックです。しかし、こういうものが適切に配置されていることがアクションゲームの手触りに大きく貢献することは間違いありません。
それに、前に通った時はどうやって行くのかわからなかった場所に、あとからアクセスできるようになるというのは、ある意味で冒険における“伏線回収”のような体験になりえます。本作はこのショートカットの作り方が非常に上手いです。


このように丁寧に導線がデザインされた冒険の道中に、多彩なギミックと敵キャラクターが適切に配置されていれば、そりゃ面白くないわけがない。アクションアドベンチャーの面白さの基本にしっかりと向き合ったデザインが随所で光る作品となっていました。
そして、登場するギミックの豊富さも、本作がプレイヤーを飽きさせないために妥協していない部分です。登場するステージの一つ一つに、かならず前回のステージと異なる遊びになるような大きなギミックが盛り込まれており、さらにステージを進めると、その派生となる遊びや、サブとなる別の遊びが求められる場面が出てくる、というのが基本的な作りです。

方角の変わる強い風に吹かれながら穴に落ちないように進むステージや、壁が動く中で挟まれないように進むステージ、穴掘りをしてガラスの床の下に潜り込みながら進むステージなど、アクションゲームでおなじみのものから本作ならではのものまで、とにかく多彩なギミックがミナを待ち受けます。
そして、これらのギミックの攻略に関しても、テキストによる指示などは一切なく、ステージ側の段階的な要素解放によってプレイヤーを丁寧に導いています。プレイヤーの発見を奪わず、それでいてプレイヤーを見捨てない。そのどちらが欠けてもいけないのだとあらためて痛感させられます。
とっても丁度良い「かなり難しい」難易度
ここまで褒めてきた内容、つまり「緻密なレベルデザインと多彩なギミックがあるゲーム」がやりたいんだったら、それこそ任天堂のゲームでもやっていればいいじゃないかと思われるかもしれません。しかし、インディーゲームであるからこそ、そういったある種大衆向けのタイトルには実現できない壁を突破している部分もあります。

それはずばり、「難しい」ことです。『Mina the Hollower』は、アクションゲームとしてはかなり難しいのです。
上述したとおり、本作はゲームのサイクルのベースに『ソウル』シリーズ的なアイテムロストの要素、そしてチェックポイントベースの回復アイテム個数制限を軸としています。敵のトリッキーな挙動や、大きめのダメージも『ソウル』を強く意識していることがうかがえる部分であり、しっかりと対処しながら進まなければ次のチェックポイントに辿り着く前に容易に力尽きてしまいます。
登場する多彩なボスキャラクターも熾烈な攻撃を行ってくるものばかりです。HP減少による行動パターンの変化や形態の変化などももちろんあり、あともう少しで倒せるという場面こそ気が抜けません。

ゲームを進める中で、プレイヤーは幾度となく倒されることになります。そのたびにチェックポイントに戻され、死んだ場所まで進めてようやく「ボーン」を回収する。そして、今度こそ次のチェックポイントにたどり着く、もしくはボスを突破するのです。
一方で、参考にしているであろう『ソウル』シリーズほどに難しくはしていないというのが本作の魅力でもあると思っています。特に、ボスは数回の挑戦でコツを掴んで倒せる程度の絶妙な難易度で、何十回と挑むことはありませんでした。
同じ場所で何時間も詰まるほどのバランスになっていない、けれども大衆向けタイトルとくらべて確かな歯ごたえが味わえる。そして、それらの歯ごたえを生むギミックや敵を大手に匹敵する品質で配置する手腕。ローグライトやオープンワールドでは味わえない、手作りで密度の詰まった高品質なアクションゲームがここにあります。

ヨットクラブゲームズによる、6年の歳月をかけた渾身の一作である『Mina the Hollower』。過去作『ショベルナイト』で見せた丁寧なレベルデザインと、多彩なギミックを使いこなす手腕は健在であり、横スクロールのアクションゲームから見下ろし視点のアクションゲームと異なる形式になってもまったく見劣りはありません。
本作は、一見ゲームボーイの『ゼルダ』のようなアートですが、その実は『ソウル』のような高難度な戦闘と、ジャンプと「穴掘り」によるプラットフォーマーアクションが中心となっている作品です。それでいて『悪魔城』のような世界観と音楽が冒険を彩ります。
こういったオマージュが中心のため、なにかインディーらしい斬新さを見せてくれるタイトルではないものの、アクションゲームの面白さの基本に忠実な、丁寧にデザインされた体験がプレイヤーの期待を裏切ることはありません。
Game*Spark レビュー 『Mina the Hollower』 PC/PS5/Xbox Series X|S/ニンテンドースイッチ/ニンテンドースイッチ2 2026年5月29日
多彩なギミックと緻密なレベルデザインさえあればアクションゲームはこんなにも面白い
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GOOD
- テキストやマーカーなしでプレイヤーを導く優れたマップ構造
- とにかく多彩な敵、ボス、ギミック
- それらの素材を活かす緻密なレベルデザイン
- 丁度良く「難しい」。歯ごたえと上達の絶妙なバランス
BAD
- あくまでもジェネリックな体験











