『Heathen』は、初代『ディアブロ』から強い影響を受けた一人称視点のダークファンタジー・ダンジョンクローラーです。
ひとつの町、ひとつのダンジョン、そして狂気へと降りていく構造。クラシックなARPGの装備収集やビルド構築の楽しさを持ちながら、暗闇の奥に何かが潜んでいるようなホラーの緊張感も強く押し出されています。
本作を手がけるのは、個人開発者のクリストファー・ヤブスリー氏。その原点には、幼い頃に母と遊んだ『ディアブロ』があるといいます。
初代『ディアブロ』のどこに惹かれたのか。一人称視点に置き換えるうえで何が難しかったのか。そして、“強くなっていく楽しさ”と“恐怖”をどのように両立させようとしているのか。クリストファー氏に訊きました。
ダークハクスラの原点は……お母さんと遊んだ『ディアブロ』!?
――まずは自己紹介をお願いします。あわせて、お気に入りのゲームについてもお聞かせください。
クリストファー・ヤブスリー:クリストファーです。インディーゲーム開発者として、もう12年ほど活動しています。現在は、ダークファンタジー・ダンジョンクローラー『Heathen』を開発しています。
好きなゲームを挙げるなら、『ディアブロ』『ダークメサイア オブ マイト&マジック』『Warhammer: Vermintide』『DARK SOULS』『Quake』『S.T.A.L.K.E.R.』ですね。

――読者に向けて、『Heathen』がどのようなゲームなのか紹介していただけますか?
クリストファー:『Heathen』は、1997年の初代『ディアブロ』のようなクラシック作品から影響を受けた、一人称視点のダークファンタジー・ダンジョンクローラーです。
ひとつの町、ひとつのダンジョン、そして狂気への下降――そういうゲームです。
――『Heathen』は、初代『ディアブロ』の「ひとつの町、ひとつのダンジョン」という構造から強い影響を受けているとのことです。多くの開発者は『ディアブロ II』以降のシリーズ作品により惹かれているようにも見えますが、初代『ディアブロ』のどのような点に魅力を感じたのでしょうか?
クリストファー:私には、あのゲームに強い個人的な思い出があります。初めてクリアしたのは、PlayStation版を母と協力プレイで遊んだときでした。
その後、インディーゲーム開発者として人生を歩む中で、初代『ディアブロ』のレーザーのように焦点が絞られた作りと、ミニマルなデザインを称賛するようになりました。
――初代『ディアブロ』はハック&スラッシュゲームでありながら、ホラーゲームのような強い緊張感も持っていました。『Heathen』では、その恐怖感をどのように再解釈しているのでしょうか?
クリストファー:ホラーは、初代『ディアブロ』を、その後に続いた他のあらゆるARPGと分ける中核的な要素のひとつです。
その恐怖は、デザインのあらゆる側面に浸透していきます。おぞましいモンスターのコンセプトから、暗闇の中に潜む遠くのクリーチャーのサウンドデザインまで。さらに言えば、プレイヤーに決して強くなりすぎたと感じさせないことに至るまでです。

――クラシックなアイソメトリック視点のARPGの構造を、一人称視点へ置き換えるうえで、難しかったことは何でしたか?また、一人称視点になったことで、戦闘、探索、アイテム収集、ダンジョンの見せ方へのアプローチはどのように変化しましたか?
クリストファー:これまでのところ最大の課題は、本質的に作業量が倍になることでした。
武器は、それぞれ異なる手触りを持っているように感じられなければなりません。プレイヤーは、一人称視点における感触にとても敏感だからです。加えて、ARPGの要素を満たすために、それらすべてについて満足感のあるステータス進行も用意する必要があります。
――『Heathen』の戦闘は、近接アクションにおいてスピード感と重さが強く感じられるものになっているように見えます。戦闘の手触りをデザインする際には、どのような点に注力していますか?また、キックのように、強い物理的な干渉を感じさせるアクションを加えた意図についても教えてください。
クリストファー:最初に注力したのは、アニメーションを可能な限りタイトにすることでした。そこから、衝撃をしっかり伝えるために、肉厚なサウンドを重ねていきました。
戦闘は『Heathen』における主要なメカニクスです。だからこそ、剣を振るうことが、1,000回目でも初めてのときと同じくらい気持ちよく感じられるようにしたいのです。

――『Heathen』では、Saltgraveの町と、その先に広がるダンジョンの双方が重要な役割を果たすように見えます。町とダンジョンの関係性は、どのように設計しているのでしょうか?
クリストファー:Saltgraveは、ゲームを動かす鼓動する心臓です。町の人々は少数ですが、そのひとりひとりが豊かなキャラクター性を持っており、ほとんどの話題について会話できるようになっています。彼らは取引を持ちかけ、さまざまなクエストを与え、彼らの悲劇的な過去や、なぜこの地に留まり続けているのかを少しずつ明かしていきます。
――ハクスラにおいて、町へ戻ることは、補給やアイテム整理だけでなく、プレイヤーに安全の感覚を与えるものでもあると思います。『Heathen』において、町はどのような場所であってほしいと考えていますか?
クリストファー:その安全の感覚が鍵になります。セーフルームは、あらゆるホラーゲームにとって不可欠なものです。危険から一息つける時間を与えてくれます。Saltgraveは、その役割を担っています。

――ダンジョンの雰囲気を作るうえで、最も重要だと考えていることは何ですか?また、プレイヤーがより深く潜っていくにつれて、どのような感情を抱いてほしいと考えていますか?
クリストファー:雰囲気作りは、しっかりとサウンドデザインと視界の手に委ねられるものだと思っています。
サウンドデザインは、その空間についてプレイヤーがどのように感じるべきかを伝えます。一方で、揺らめく松明や薄暗いランタンによる限られた視界は、プレイヤーの感覚をかき乱します。
――お母様とPlayStation版『ディアブロ』を遊んだ体験は、『Heathen』にどのような影響を与えているのでしょうか?
クリストファー:正直なところ、多くのことに影響しています。ARPGというジャンルを好きになるきっかけになったという点だけではありません。
『ディアブロ』のクリエイターであるデイビット・ブレヴィクは、複雑さに関して社内に「Mom Test(※1)」というデザイン哲学を持っていたことで有名です。私も、自分が行うすべてのことにおいて、その考え方を大切にしています。
※1 Mom Test:「自分の母親でも理解して遊べるか」を基準にするデザイン上の考え方。
――お母様と協力プレイをした記憶は、『Heathen』のゲームデザインや協力プレイの設計にも影響していますか?また、そのプレイ中の特に印象的なエピソードがあれば教えてください。
クリストファー:開発者ログで話したように、『Heathen』が完成したら、私は母と協力プレイで『Heathen』を遊ぶつもりです。
そのことがあるので、私が何かを追加するたびに、その複雑さについて考えるようになります。母は、あまりゲーマーというわけではありませんから。
母とのプレイでは、戦利品をめぐる争いがたくさんありました! 私は間違いなく、小さなルートゴブリンでしたね。

――『Heathen』は、非常に暗く過酷な世界を描いているように見えます。その一方で、その原点が家族との記憶に結びついている点も、とても印象的です。その対比について、ご自身ではどのように感じていますか?
クリストファー:ホラーの側面は、実は父から来ています。私が8歳のとき、父が一緒に「死霊のはらわたII」を観てくれました。その時点から、私は夢中になりました。だから、私にとってホラーもまた家族なんです。
私が最も好きなホラーは、悪に直面したときの、人間の精神が耐え抜く力についてのものでもあります。『Heathen』にも、似たテーマがあります。
――ランダムな戦利品や装備収集は、ARPGの大きな魅力です。『Heathen』では、アイテムのバリエーションやビルドの多様性をどのように設計していますか?
クリストファー:その答えは、主にユニークアイテムにあると思います。
まだ制作には着手していませんが、面白いアイデアを思いつくたびに書き留めているリストがあり、そのリストは増え続けています。ユニークアイテムはあらゆるビルドの中心となり、どの組み合わせが最も効果的かをプレイヤーが理論構築できるようにするものになります。

――装備を集め、強くなっていく楽しさは、ときにホラーの緊張感と衝突することもあります。その2つの要素を、どのようにバランスさせているのでしょうか?
クリストファー:私は、画面上の敵を一掃することではなく、生存能力を得ることに焦点を当てる形でアプローチしています。
ビルドは、ダンジョンで遭遇する恐怖を乗り越える助けになります。しかし、それでもなお、それらは致命的な存在であり続けます。プレイヤーがどれほど強くなっても、常にひとつかふたつのミスで死に至る距離にいるのです。
――ビジュアルやサウンドの面で、『Heathen』のアートディレクションやオーディオデザインに影響を与えた作品やイメージはありますか?また、一人称視点からホラーの雰囲気を支えるために、特に注力しているディテールはありますか?
クリストファー:アートディレクションは、初代『ディアブロ』が発売された当時に存在していた技術的制約から影響を受けています。
つまり、限られたカラーパレットや、それらの色のあいだを移り変わる際のディザリングです。Plastibooによるアートブック「Vermis(※2)」シリーズや、フランク・フラゼッタ(※3)の作品も、私のスタイルに強い影響を与えています。
※2 Vermis:アーティストPlastibooによるアートブックシリーズ。実在しない古典的ダンジョンクローラーRPGの“公式ガイドブック”という体裁で、ダークファンタジー世界を描いている。
※3 フランク・フラゼッタ:アメリカのイラストレーター。「コナン・ザ・グレート」などに代表される、筋肉質で荒々しい英雄像や幻想的な怪物描写で知られ、ファンタジー/SFアートに大きな影響を与えた。

――『Heathen』は日本語対応も予定されています。日本語対応を入れることになった理由と、日本のプレイヤーに特に注目してほしい点について教えてください。
クリストファー:日本からのウィッシュリスト登録という点で、非常に大きな反応を受け取ったことが、明確な決め手になりました。
それに、私は日本が大好きなんです! 過去に訪れたことがありますし、将来また行きたいと思っています。おそらく、『Heathen』が完成したら、かもしれませんね。
――個人開発者として、あるいは小規模な開発体制として、これまでの開発で最も難しかったことは何でしたか?逆に、このプロジェクトが形になってきたと最も強く感じられた瞬間は何でしたか?
クリストファー:制作における非常にタイトな締め切りに従うには多くの規律が必要でした。特に、自分が疑念でいっぱいだった時期にはそうでした。ひとりで作っていると、自分が止まれば、ゲーム全体が止まってしまいます。
Steamページの発表と開発者ログへの反応は、私が作っているものに対する自信で満たしてくれました。あれは、人々が私の見ているものを見てくれているのだとわかった瞬間でした。
――最後に、『Heathen』を楽しみにしている日本の読者へメッセージをお願いします。
クリストファー:みなさん、『Heathen』をウィッシュリストに登録してくれて、本当にありがとうございます!
――ありがとうございました。
『Heathen』は、PC(Steam)にて配信予定です。










