■『時のオカリナ』を支えた画期的なカメラ「Z注目システム」

また、『時のオカリナ』が評価された理由は、従来の魅力の増幅だけに留まりません。3D化に合わせて導入されたシステムも好評を博しており、そのなかでも「Z注目システム」には多くの賞賛の声が寄せられました。
当時、PlayStationの登場などをきっかけに、3Dゲームが一気に増加します。しかし、ゲームの世界が立体的になったことで、それまでの2Dゲームにはなかった問題もいくつか生まれます。敵との距離感をつかみにくくなることも、そのひとつでした。
そうした時代のなか、『時のオカリナ』では、敵を画面中央に固定する「Z注目システム」を導入しました。リンクを前後左右に動かしても敵を中心に視点が固定されるため、戦闘中に敵を見失う心配が少なく、相手との距離感も把握しやすくなっています。当時の3Dアクションにつきまとっていたもどかしさを、見事に解消したシステムでした。

こうしたロックオン的な仕組みそのものは、『ゼルダの伝説 時のオカリナ』よりも先に実装した作品も存在します。しかし、「Z注目システム」が特に優れていたのは、プレイヤーが操作するリンクによって視界が妨げられないよう、敵とリンクの位置関係に応じてカメラが自動的に調整される点でした。
「プレイキャラクターは画面の真ん中に置く」という固定観念にはとらわれず、「どうすればプレイヤーがスムーズに遊べるのか」を考えて作られた「Z注目システム」は、プレイ体験を快適なものへと導き、その遊びやすさも格別でした。
こうした優れたシステムに支えられながら、「探索」と「ひらめき」の魅力がさらに増幅されたことで、『時のオカリナ』は名作と呼ぶ声が相次ぐほど高く評価され、多くのプレイヤーに鮮烈なゲーム体験を残したのです。
■『時のオカリナ』が現代に届くまでの長い道のり

シリーズ初の3D化を果たし、ゲーム史に名を残すほどの名作となった『ゼルダの伝説 時のオカリナ』。しかし、この名作にアクセスできる手段は、これまで決して豊富ではありませんでした。
まず残念なことに、NINTENDO 64自体の売れ行きが芳しくなかったため、オリジナル版を遊べた人自体が少なかったのです。『時のオカリナ』をプレイした人が高く評価しても、NINTENDO 64を持っていなかった多くのユーザーは、羨ましく思いながらも指をくわえるほかなかったのです。
それから13年後となる2011年に、待望のリメイク版が登場します。当時遊べなかった人にとっては、まさに念願の展開と言えるでしょう。しかし、このときリメイク版が発売されたハードはニンテンドー3DS、つまり携帯機でした。

もちろん、携帯機には携帯機ならではの魅力があります。TVを占有せず、しかも場所を選べる利便性の高さは、代えがたい魅力です。
しかし、3Dで描かれた広大な世界を描くのは、携帯ゆえの小さな画面でした。「『時のオカリナ』の世界を大画面で遊ぶ」という体験を求めるプレイヤーにとっては、どうしても物足りなさが残ります。
それからさらに時が過ぎ、2021年に「Nintendo Switch Online+追加パック」のサービスが始まりました。その初期ラインナップにはNINTENDO 64版『ゼルダの伝説 時のオカリナ』も加わり、これでようやく大画面で『時のオカリナ』を遊ぶ環境が身近になりました。

ただし、このサービスが始まった時点で、オリジナル版の発売から23年が経っています。往年の名作を懐かしむ手段として十分に楽しめる一方、現代のゲームに慣れたプレイヤーにとって、23年前のプレイ感にはどうしても古さを感じる部分があります。
オリジナル版はハードの不振から遊びにくく、最初のリメイク版は携帯機としての制限があり、ようやくスイッチで遊べるようになった時には、時間の流れが立ちはだかった『ゼルダの伝説 時のオカリナ』。高いポテンシャルを持ちながら、状況と時代に翻弄されてきた作品ともいえます。












