2026年8月26日(水)~30日(日)にかけて、ドイツ・ケルンで世界最大のゲームイベント「gamescom 2026」が開催されました。
会場に忽然と姿を現したのは、アラビアの空気感を漂わせる巨大なブース。会場では、「gamescom Opening Night Live」にて発表されたMBC Game Studio開発『1001 Threads of Mizan』の試遊とインタビューの機会をいただきました。

本作は、「千夜一夜物語」を題材にした協力プレイアクションアドベンチャー。文学の博士号を持つ専門家や人類学者まで動員した徹底的なリサーチのもと、原典の世界を丹念に再構築しているといいます。
プレイヤーは空飛ぶ絨毯を駆り、砂漠と遺跡を颯爽と駆け巡りながら、姿を偽り実体化する謎の存在「ジン」との戦いに挑むことになります。最大3人までの協力プレイに対応し、クロスプレイも予定されています。
そんな『1001 Threads of Mizan』のプレイレポートと、MBC Game Studioのインタビューをお届けします。
「アラジン」でお馴染みの「千夜一夜物語」を爽快アクションゲームに
『1001 Threads of Mizan』は、「千夜一夜物語」の世界観をベースにした協力プレイアクションアドベンチャー。「千夜一夜物語」は、「アラビアンナイト」という題名でも知られるイスラム世界の説話集。日本では、ジーニーが登場するディズニーアニメ版「アラジン」の元となった作品として、名前を聞いたことがある人も多いかもしれません。

本作では、プレイヤーはユシュラ、マリク、スフィアンという、それぞれ異なる背景を持つ3人の英雄となり、かつて人間とジンの共存を支えた「ミザーンの騎士団」の力を取り戻すべく戦います。
ひとりでもプレイできますが、最大3人でそれぞれのキャラクターを使って協力プレイできるのが本作の特徴。広大な砂漠地帯を颯爽と駆け巡りながら敵を倒していく爽快感抜群のアクションに、ストーリーにも力を入れた作品となっています。
デモ版では、いくつかの雑魚戦、中ボス戦、そして大ボス戦を体験することができました。今回筆者が選択したのは、弓と槍を持った遠距離特化型キャラクターであるユシュラです。

戦闘はプレイを始めて数分もあれば基本操作を理解できるほどシンプルかつ明快。小攻撃・大攻撃・魔法のような特別スキルという3つの手段を駆使して攻撃を行い、防御はドッジ(回避)と、タイミングが良ければパリィも狙える盾防御の2種類が用意されています。回復も、全キャラクター共通のシステムとして導入されていました。
攻撃スキルと回復は、画面右端にあるゲージを消費することで発動できます。ただし、このゲージは敵と積極的に干渉して戦わなければ溜まっていかないため、「回復したいから敵から距離を取ってゲージを溜める」といった消極的な立ち回りはできません。プレイヤーにアグレッシブでスピーディな戦闘を求める、明確な意図を感じるシステムです。
また、回避と盾防御(パリィ)にはジャスト判定が存在するため、危ないタイミングでとにかく連打すれば攻撃を無効化できる、というわけにはいきません。相手の攻撃パターンをしっかり読む必要があり、特にボス戦は、戦いの中で敵のパターンを学習しながら一つひとつ対応していく、いわゆる「ソウルライク」に近い手応えでした。
とはいえ、一撃で体勢が大きく崩れることはなく、こちらの攻撃の手数も多いため、次々と登場する敵を薙ぎ倒していく無双系アクションと、ソウルライクの緊張感を足して2で割ったような、独特のテンポで戦闘が進んでいく印象を受けました。

空飛ぶ絨毯が生み出す、爽快な移動と立体的な戦闘
本作を語るうえで欠かせないのが、プレイ感覚の根幹を支える「空飛ぶ絨毯」というシステムです。徹底的なリサーチのもとに作り込まれた美しい砂漠や遺跡の数々を、この絨毯に乗って爽快に飛び回りながら移動できるという体験はシンプルに心を打たれるものがあります。
絨毯の役割は、移動の快適さだけに留まりません。戦闘においてもその真価を発揮します。絨毯で移動しながら、そのままボス戦へとなだれ込んでいくシームレスな流れも印象的でした。

特に新鮮だったのが、大ボス戦の体験です。プレイヤーは非常に巨大なボスを相手に、フィールドを立体的に使いながら戦うことになります。ボスの攻撃も多彩かつダイナミックで、フィールド全体を使ってくるため、回避や防御だけでなく、絨毯を使ったアクションで攻撃をやり過ごす場面も用意されていました。
さらに、この絨毯を単独で操作することで、敵を妨害したり、味方を手助けする様々なアクションが可能になるとのこと。この点については、後述のインタビューで詳しく触れられています。
『1001 Threads of Mizan』公式サイトまた、大ボス戦で耳にすることができた、デスメタルとアラビアの伝統楽器を組み合わせた楽曲も非常にクールでした。「千夜一夜物語」を題材にしているだけに、伝統楽器と現代的なサウンドがどれだけ大胆に混ざり合ったミクスチャーを聴かせてくれるのか、製品版のサウンド面にも期待が高まります。
操作自体はシンプルながら、3人のキャラクターによるスタンスの違い、地上戦と空中戦のメリハリ、多彩な動きを見せるボスキャラクター、そして協力プレイとソロプレイでのシステムの変化など、様々な要素が絡み合うことで、多様なプレイスタイルが求められるゲームになりそうな手応えを感じました。

なお今回のgamescomブースは、アラビアの空気感が漂う巨大な作りで、開発陣の力の入れようがうかがえるものでした。石造りの壁が張り巡らされ、天井付近にはゴージャスな紫色の布が幾重にも垂れ下がっています。
さらに近づいていくと、作品に登場するようなきらびやかな絨毯が展示されたエリアが現れます。とにかく大きく、ふわふわとした質感で、目を引く派手な絨毯が展示されており、実際に本作の絨毯がどれほど大きなものなのか、実物大で体感できる展示になっていました。

そして極めつけは、ヘナタトゥー(ヘナという植物由来の染料を使った、時間が経つと自然に消えるタトゥー)の体験会。ゲーム内容そのものだけでなく、装飾から人、体験まで、世界観そのものを五感で楽しめる、非常に力の入った面白いブースとなっていました。

珍しい題材や、その本格的なアクションが気になる本作。MBC Game Studioのスタッフに、詳しい話を伺いました。
これまで使われてこなかった「千夜一夜物語」をゲームにした理由
──なぜ「千夜一夜物語」をモチーフに選んだのでしょうか?
MBC Game Studio:これまでに「千夜一夜物語」をベースにしたゲームを遊んだことはありますか?あまり無いかと思います。
これほど豊かな素材がたくさんあるオープンなIP(知的財産)であり、素晴らしい物語やキャラクターが数多く存在しているにもかかわらず、ゲームとしてはほとんど活用されてこなかったと考えたためモチーフとして選択しました。
──ゲーム内に登場する語り手として、原作の「千夜一夜物語」にも登場するシェヘラザードを起用した理由を教えてください。
MBC Game Studio:彼女は世界で最も有名な語り手の一人です。数多くのカットシーンを見せる代わりに、彼女をナレーターに据えてゲームプレイを進行させるというのは、非常に強力なメッセージになると思いました。物語を前進させるための手法ですね。

──3人の主人公について、それぞれの背景を教えてください。
MBC Game Studio:それぞれのキャラクターには独自のバックストーリーがあります。ユシュラは冒険家です。「インディ・ジョーンズ」や『トゥームレイダー』をイメージしてもらえればいいでしょう。彼女は探索し、何かを見つけ出すことを望んでいて、グループの中では知識人でもあります。
マリクは復讐に燃えるキャラクター。過去の出来事が理由で、邪悪なジンを殺すことだけを目的として生きています。
スフィアンは、多くを語らないキャラクターです。複数のストーリー背景があって、「自分は何者なのか」という答えを探しているんです。
──そもそもこの作品における悪役としての「ジン」とはどういった存在なのでしょうか?
MBC Game Studio:ジンはこの作品においては悪人ですが、他の作品だったら善人だったりと、描かれ方が様々です。
イスラム文化におけるジンを知らない方に説明すると、彼らは霊的な存在に近いんです。神ではなく霊的であり、長寿ですが不死ではなく死ぬこともあり、非常に強い力を持っている。
「ランプの魔人(ジーニー)」のコンセプトは知っていますよね?3つの願いを叶えてくれる、あれもジンの一種です。ドラマ版『Fallout』に出てくる、長寿の存在としてのグールも本質的にはジンの一種なんです。ほかにも「マリード」「イフリート」など、ジンには非常に多くのカテゴリーが存在します。

──人間とジンの対立の歴史、そしてこの世界における武器の魔法について教えてください。
MBC Game Studio:本作で描かれる時代のずっと昔、人間の王とジンの王が共存していました。彼らはジンと人間のための完璧な世界を創り上げ、両者のバランスを保つ警察のような存在「ミザーンの騎士団」を創設したんです。
3人の主人公はそのミザーンの一員ですが、長く忘れ去られていました。1000年後、語り手のシェヘラザードがミザーンを再発見し、邪悪なジンの王を倒すために彼らの力が必要だと気づくんです。なぜ力が必要になったかというと、人間とジンの2人の王が対立し争いはじめたからです。
人間の王は、人間の技術とジンの魔法を利用してジンを打ち負かし、ジンの王たちを幽閉してボトルの中に封印したんです。人間はジンを追放しましたが、今、彼らが解放されようとしています。
ジンは強力で巨大であるほど、より多くの力を生み出せます。ただデモプレイにも登場した雑兵のジンは想像力がないため、見たことのないものにはなれません。彼らは人間の世界の「兵士、鎧、兜、剣」を知っているので、それを模倣して実体化するんです。
人間は技術と魔法を融合させてジンを倒しました。ミザーンは元々その両方を使えたからです。だからこそ、巨大なジンを小さなボトルに封印できる。
ゲーム内にある壊れた盾や弓も、ジンの魔法を吹き込むことで修復され、非常に強力なエネルギーを放つようになります。空飛ぶ絨毯も同じで、人間の絨毯をジンの魔法で飛ばしているんです。
『1001 Threads of Mizan』公式サイト徹底的なリサーチ、「千夜一夜物語」を元に新たな物語を紡ぐ
──本作を作るにあたって、どのようなリサーチをされたのでしょうか?
MBC Game Studio:私自身もリサーチを通じて本当に多くのことを学びました。「千夜一夜物語」について調べるのならHusain Haddawyによる英訳版を読んでください。これは、最も信頼されている翻訳の一つです。
というのも、この本には複雑な歴史があって、オリジナルのアラビア語写本には1001の物語はなく、実は200~210ほどの物語しかなかったんです。残りの物語は、フランスやイギリスの翻訳者たちが後から付け足したものなんですよ。

例えば「アラジン」は知っていますよね?実はアラジンはオリジナルの物語には存在しないんです。シリア人女性から話を聞いたフランスの翻訳者が作り上げたもので、しかも本来のアラジンはディズニーで描かれた中東らしき所の人物ではなく、中国人なんです。
だから私たちのゲームに登場するアラジンも中国人にしています。それが本来の真実だからです。私たちはそれくらいリサーチを重んじています。
そして、私たちはこうした原典の真実を活かして、ユニークなものを作ろうとしています。
これを支えているのが、専門のリサーチチームです。文学の博士号を持ち、アメリカの大学で「千夜一夜物語」を教えてきたロバートというメンバーがいますし、サウジアラビア出身の人類学者もいます。
ゲーム内の衣服や布地を正確に表現するための織物研究の専門家、砂岩を現実の砂岩として正しく表現するための地質学者まで招いて、それぞれの分野からリサーチ結果をもらいながら、世界観構築が正しいかを細かく検証して制作を進めているんです。

──シンドバッドやアリババ、アラジンといった原典のキャラクターは、本作にも登場するのでしょうか?
MBC Game Studio:メインの物語は私たちのオリジナルです。ただ、オリジナルに根ざしつつ「この本の出来事が実際に起きたかもしれない」「数々の物語の舞台になったかもしれない」世界を構築しています。
「漁師と魔神」のエピソードのように、原典の物語のいくつかはゲーム内にも登場しますし、シンドバッドやアリババ、アラジンといった原典の人物たちにも出会うことになります。
主人公たちも、原典からインスピレーションを受けている部分があります。例えばスフィアンは少し海賊のようで、シンドバッドのような側面を持っていますし、ユシュラのことを深く知っていくと、少しアラジンに似ていることに気づくと思いますよ。
シングルプレイと協力プレイでは、攻撃のアプローチが変化する
──製品版になるにあたって、キャラクターの武器や攻撃方法は増えていきますか?
MBC Game Studio:デモ版をプレイされた際、(筆者の使用キャラクターの)強攻撃ボタンは「弓」になっていたと思います。でも実際の製品版では「スタンス」システムを導入する予定です。
槍のスタンスの時は槍の強攻撃と弱攻撃があり、弓のスタンスの時は弓の強攻撃と弱攻撃がある。武器や攻撃方法は増えていく予定だということです。
今回のデモ版では遊びやすくするために、それらを一つに組み合わせて簡略化していました。

──魔法の絨毯を使った空中戦は非常に新鮮な体験でした。戦闘では他にどのように活用されるのでしょうか?
MBC Game Studio:絨毯を戦闘で活躍する方法は、急降下爆撃だけではありません。詳細は今後さらに詳しくお伝えしますが、私たち自身の中でも様々なアイディアが湧き出ており、とてもワクワクしています。

──シングルプレイと協力プレイでは、どのような違いがありますか?
MBC Game Studio:単純な被ダメージ量の違いではなく、敵への攻撃アプローチが変わるようなデザインにしています。
例えば、敵には弱点があるのですが、協力プレイでは時間内にすべての弱点を攻撃しないとリセットされてしまう仕様でしたよね。
ただシングルプレイでは、リセットされずより時間的な猶予が与えられます。大型ボスでも、3人プレイなら全員で同時に攻撃して最大ダメージを与えられますが、1人プレイの場合は特殊攻撃を駆使する必要があります。
基本はシングルプレイ用のバランスであり、協力プレイは追加の拡張体験という位置づけです。

『1001 Threads of Mizan』は、PC(Steam/Epic Gamesストア)、PlayStation 5、XBOX Series X|S、ニンテンドースイッチ2向けにリリース予定。発売時期は現時点で未発表です。
『1001 Threads of Mizan』公式サイト










